今年2月に購入した2001年式のBMWの車載オーディオは
純正のカセット・ラジオプレーヤーだった。

カセットプレーヤーが不調ならばCDデッキなどに交換しようかと思い、試聴のためにヤフオクでミュージックテープを購入した。
納車の際に、購入したミュージックテープをプレーヤーに挿入した。
カセットテープが吸い込まれると、
懐かしい「ガチャガチャ」音がしてスタンバイとなった。
テープの1曲目は「いっそセレナーデ」だった。
この曲はイントロ無しで、
「甘い口づけ・・・」という歌声から始まり、
ピアノの伴奏がそれに続くのだが
その柔らかで温かみのある音質にいたく驚かされた。
一昨年の秋、私は長野在住の友人と晩秋の軽井沢を共に走った。
私の愛車は少々無理して購入したポルシェカレラのカブリオレ(997後期型PDK)。
長野の友人も購入してさほど間の無い
1991年式のユーノス(NA型)ロードスター(MT)で現れた。
友人の前車は左ハンドルのMTのポルシェボクスター、
以前はBMWのM3(E30)を愛車にしていたこともある。
そんな車歴の友人であったが、以前ボクスターでご一緒した時より
ロードスターでのオープンドライブを大いに愉しんでいるように感じられた。
ドライブの道中、友人のロードスターを運転させてもらった。
自分のカレラカブリオレと比べると、
機械的には何一つ優れた点がないような、
遅くて、ユルくて、騒がしくて、ガタガタした、
なんとも古めかしいクルマだった。
でもなんだか不思議と楽しかった。
高原を自転車のペダルを漕いで気持ち良く走っているような気持になった。
帰り道の高速道路上、
カレラカブリオレをクルーズコントロールで走らせながら、
自分は何か大切なものを失っているように思った。
それからしばらくして、私はカレラカブリオレを手放した。
ポルシェカレラのオープンカーを所有したという記号のような記憶と、
それなりの額のローン残債だけが自分に残った。
季節が一回りした頃、その友人と再会しビーナスラインを共に走った。
私の愛車は現代的機能満載の非力な青いオープンカーに変わっていた。
彼がボクスター、私がB3Sカブリオレ、だった頃に、
二人で伊豆の山道を猛スピードで駆け抜けたものだが、
このビーナスラインでは、昨年の軽井沢の時と同様に、
お互い終始スローペースで風を感じながらのんびりと走った。
DIYでの地道なレストアが進み愛車の仕上がりは上々とのことで、
バックミラー越しに映る友人の笑顔は昨年よりもさらに明るいものとなっていた。
「昨年とは変わりましたよ。運転してみますか?」と誘われたが、
「楽しいに決まっているからやめておきます」と笑顔で辞退した。
正直なところ、NAロードスターを今さら保有したいとは思わない。
私の今の愛車は、
滑らかな9速ATと刺激ゼロの1.6リッター直噴過給機付エンジン、
停止まで自動でやってくれる賢いクルーズコントロール機能を搭載し、
屋根を閉めれば快適空間、の現代的なオープンカーである。
あえてそれを選んでもいる。
また、19年落ちのBMWの車内で
カセット音源をいつも聞いているわけでもない。
最新型のFMトランスミッターに
百枚以上のCD音源を取り込んだUSBを接続し、
クルマ趣味において、現在の私は、
最新技術を使った製品からの便益・効用をそれなりに享受している。
そんな私であるが、
ミュージックテープから流れ出る「いっそセレナーデ」の音色は
一昨年の晩秋の高原で体験したNAロードスターの運転は
すこぶる楽しく愉快だった。
新しい製品は旧い製品より多くの点で優れているが、
世代交代を経て失われた特質もあるのだろう。
カセットデッキを再び持ちたいとは思わないが、
NAロードスターのようなコンパクトで軽快なオープンカーを、
いつかまた所有したいと思っている。
Posted at 2025/11/24 10:14:21 |
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