
国際安全保障の権威、米カリフォルニア大学政治学教授)バーバラ・F・ウォルター著。本書はファイナンシャルタイムズなどで2022年のベストブックに選ばれている。分断と言うなら分かるけど、アメリカで内戦とは読者を引き付けるための誇張したタイトル設定かと思ったが、読み進めるとブラフでないことが分かった。
筆者は過去の内戦に関するデータを分析、内戦が発生する条件や心理などについてパターンがある事を見出し、アメリカが直面している内戦の危機について警鐘を鳴らしている。本書では、ユーゴスラビア・北アイルランド・ミヤンマーなどの事例を示し、そのパターンに気付かせてくれる。
ポリティインデックスは、年ごとにある国がどの程度民主的か専制的かを21段階で評価し(最も民主的:+10、最も専制的:-10)、+6 ~ +10は民主主義国家、-6 ~ -10は専制国家と認定、その中間をアノラクシ―国家としているが、内戦が起こりやすいのは専制国家でなく、アノラクシ―である。近年のトルコやジンバブエのように、アノラクシ―では国民は選挙を通じて民主的統治に関与するが、権威主義的な大統領が現れることがあり、内戦に繋がっている。専制国家からアノラクシ―へ、また、民主主義国家からアナラクシーへ移行する時が最も危ない。
20世紀前半には階級やイデオロギーを巡る内戦が主であったが、後半は異なる民族・人種や宗教に起因する内戦が多く見られるようになった。特定の民族や宗教だけを優遇して他から搾取する政治は、社会全体を分裂させて内戦に導くことになる。
近年の特徴として、SNSがそのアルゴリズムによって分断を助長し、暴動を加速させている。フランスの黄色いベスト運動や米国の国会議事堂占拠などは正にその好例だ。米国のポリティインデックスは、建国直後の混乱期を除いて民主主義国家の範囲に留まっていたが、2021年にはアノラクシ―国家に転落した。
米国には中央集権的選挙管理制度がない事、特有の選挙権登録制度(国民全員が選挙権を持っているわけではない)事が大きな要因となっている。内戦を回避するためには、これらの改善と共に、STEM教育偏重から歴史公民教育の強化やSNS規制の必要性を説いている。私が米国に住んでいた時には考えられなかったことだが、確かに内戦の危機は迫っているようだ、、、
Posted at 2024/11/28 11:51:28 | |
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