
昨年評判になった本だが、人気のため図書館に予約してから1年経ってやっと順番が回って来た。最年少でドイッチャー記念賞を受賞した大阪市大院経済哲学)斎藤幸平准教授著。最近目にするようになった言葉、人新生:環境破壊が地表を覆う痕跡から地質学的に見て新たな年代に突入したと言う意味、と資本論がどう結びつくのか?
気候変動に代表される環境破壊と格差社会が地球規模のそして喫緊の課題であることは誰もが知るところである。この解決策に繋がる考えを晩年のマルクス(生産力至上主義からエコ社会主義へ転換)に求めており、グリーン・ニューディールやSDGSでは解決策にならず(退職前にCO2回収利用を研究していた身としては耳が痛い)、資本主義における終わりのない利潤追求と過剰生産・消費に根本原因があり、脱成長こそが唯一の解決策であると主張。
考えは分かるが所詮理想論、欲望に満ちた人間の合意形成は難しい、と批判的な目で読み進めていたが、紹介された実例を見るとあながち不可能ではないと思えて来た。
フランスの黄色いベスト運動がもたらした市民議会:くじ引きで選ばれた国民の構成に近い市民150人が気候変動防止対策案を提出、その多くが国民投票で実際に採択された。
バルセロナのフィアレスシティー(国家が押し付ける新自由主義的な政策に反旗を翻す革新的な自治体):市民の力を結集して具体的行動計画を記した「気候非常事態宣言」は国際的な連帯を生んでいる(すでに77拠点以上)。
3.5%の人々が非暴力的な方法で本気で立ち上がると、社会が大きく変わるとの研究があるようだが、このような運動が解決に繋がって行くことを願うばかりである。
Posted at 2022/12/15 04:46:36 | |
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