
世界で最も重要なビジネス思想家50人に選ばれた、米国ペンシルバニア大学)組織心理学教授アダム・グラント著。知性とは従来、考える・学ぶ能力であると認識されてきたが、変化の激しい時代を生き残るために、考え直す・学び直す能力が重要であると説く。
人間の思考様式は、無意識的に3つの思考モード:牧師・検察官・政治家に切り替わると言う。信念がぐらついている時は確固とするために牧師モードで説教する、他者の推論に矛盾を感じれば検察官モードで間違いを論拠する、多くの人を味方につけたいときは政治家モードになるのだが、そこには自分の見解が間違っているかも知れないと再考する科学者の思考モードが欠けている。
科学者の思考モードが欠けていたために投資詐欺にあった(なぜ人は騙されるのかと言う本を執筆中の)心理学者、過去の成功(モバイル端末で一世を風靡)に捕らわれ過ぎて再考できずに衰退したブラックベリー創業者など列挙に暇はない。一方、iPodで息を吹き返したアップルはそこに留まらずスマートフォンでさらに飛躍を遂げたが、その陰にスマフォの提案を何度もスティーブ・ジョブスに拒絶されたエンジニアチームがジョブスに再考を促す方法:既存の物を変えることに抵抗する人には、その一部に古いもの・継続するものを含める説得方法があった。
自らの心がけで再考することも重要だが、対立する意見を持つ相手に再考を促す手法はさらに重要なスキルだ。ついやりがちな事だが、完璧な論理と正確なデータでは人の心は動かず、多すぎる論拠は逆効果である。相手の主張にも一理ある事を認めた上で、シンプルな問いを投げかければ、相手は興味をそそられ正しい答えを探そうとする。また、相手を正したい衝動を抑え、相手を変えようとするのではなく、自力で変われるように動機を見つける手助けをすることが肝要である。
本書では再考に関する数々の手法や事例が挙げられていて、うんうん成る程と頷かされるばかりであった。現役時代にこの本を読むことができていれば、もっと良い結果をもたらせたかも知れない。いやいや、リタイヤ後の人生にも活かせるシーンは沢山あるだろう。多いに為になる本であった。
Posted at 2023/10/04 15:05:13 | |
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