
日本エネルギー経済研究所の専務理事・主席研究員、小山堅の最新著作。長年、エネルギー資源・鉱物資源には深く関わってきたが、最近の動向を理解するため本書を手に取った。本書ではエネルギー資源をメインに述べられているが、スマフォや電気自動車など最近の生活に欠かせなくなってきたクリティカルミネラルやレアアースについても触れられている。
副題に「地政学から読み解く」とあるように、資源問題は地政学的に捉えなければならない。米国はシェール革命によって石油は自給自足、天然ガスは輸出するまでになり、エネルギー資源大国であるロシアやサウジに対して強い対応を行使できている。冷戦後、EU特にドイツは米国の忠告に従わず、ロシアにエネルギーを依存して来たため、ウクライナ戦争勃発後、エネルギーコストの増大ひいては安全保障に悩まされている。中国は石油・天然ガスが不足しており、米国と関係が悪化しているロシアやサウジからの輸入を増やしつつ結びつきを強化している。また、中国はクリティカルミネラルやレアアースの資源大国であるので、しばしば禁輸処置で西側諸国に脅しをかけている。ロシアは経済制裁を受けても中国やインドなどにエネルギー資源の輸出を増やしているので堪えていない。これからの鍵を握るのは経済発展目覚ましいインドや東南アジア諸国の動向だ。欧米につくのか中ロに付くのか、、、
温暖化対策により再エネ利用が進み、化石燃料の消費は減少していくのであろうか? 長期的には減少していくであろうが、途上国の経済発展による消費拡大、CO2の2大排出国である中国の対策遅れ、米国のパリ協定離脱などにより短期的には容易でない。著者は、石油需要のピークは2030年代後半から40年代と見ている。また、カーボンニュートラルになったとしても化石燃料の消費はゼロにはならない。CO2の貯留・有効利用技術などの進歩により一定量の消費は続く。
日本は太陽光発電の平地設置率はすでに世界一で頭打ち、風力発電にシフトして行っているが、安定した偏西風に恵まれた欧州と異なり、沖合洋上しか場所は残されていない。水素・アンモニア(アンモニアに関しては脱石油依存を目指すサウジとの協業が興味深い)に活路を見い出そうとしているが、、、
思い返せば学生時代にオイルショックを経験、物価高・企業の採用中止(私も大きな影響を受けた)・買い占め騒動など日本は大混乱に陥った。一方、その影響で日本の省エネ技術が大進歩、省エネ機器や低燃費自動車に代表されるように日本の産業の国際競争力が高まった。資源の少ない日本、今回も同様に技術開発で飛躍してもらいたいものだ。
Posted at 2025/02/11 05:28:39 | |
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