
その①でシングルスプリングとツインスプリングで乗り比べて、あまり差は感じなかったと書きました。もちろん角が丸くなる、接地感が良くなることは感じています。
では何故ツインスプリングを選択するのか?の前に、乗り心地の悪化、接地感の希薄さ、ケツが出やすい、トラクションがかからないなどの不具合・不快感は何故発生しているのでしょうか?
前提条件として、シングルスプリングの構成、バネ上重量300kg、レバー比1.0の車高調で考察していきたいと思います。
また、ここでは分かりやすさのためバンプラバーは無いものとし、計算に入れていません。私見ですが、バンプラバーは厚みはどうあれ、ダンパー保護のためには必須だと考えてます。
◆パターン①:いわゆる街乗り用の低レートの車高調の場合
例えば車高調に使用しているスプリングレートが5kgf/mmだと、静かに地面に接地されている状態(=1Gと呼ぶ)ではスプリングに300kgfの荷重が掛かります。スプリングが縮む量は300kgf ÷ 5kgf/mm = 60mmとなります。スプリングが縮むということは、ダンパーも60mmストロークして縮んでいます。
このとき、ダンパーのフルストロークする量が80mmであったら、どうなるのでしょうか?
あと20mm縮んだらダンパーが底づきしますよね?底づきすると、スプリング&ダンパーはそれ以上に動くことは出来ませんので、衝撃はもろにボディに伝わり、中の人にも伝わります。いわゆる突き上げですね。
底づきする荷重は80mm × 5kgf/mm = 400kgfとなりますので、1G=300kgfから計算すると、400kgf ÷ 300kgf/1G = 1.33Gとなります。1.33Gだと街乗りでも普通に掛かりますので、底づきばかり発生して乗り心地が悪くなり、またタイヤも流れる原因になります。
◆パターン②:サーキット向けの高レートの車高調の場合
反対にサーキット向けの高レートのスプリングの場合はどうでしょうか?
例えばスプリングレートが15kgf/mmで考察してみましょう。
1Gでは300kgf ÷ 15kgf/mm = 20mm縮みます。同様にダンパーのフルストローク量が80mmだと、1Gから更に60mmは縮むことはできます。80mm × 15kgf/mm = 1200kgfとなりますので、1G=300kgfから計算すると、1200kgf ÷ 300kgf/1G = 4.0Gとなります。
ここまで余裕があると底づきは発生しないと判断できますので底づきによる乗り心地の悪さは発生しません。
ただ、1Gで縮んだ量が20mmと少ないため、少ないストロークで衝撃を抑えることになりますのでどうしても乗り心地が悪くなりますし、簡単にインリフトするようになり、ケツが出やすい状態になったりします。
要はダンパーを機械的に見た場合、ダンパーのストロークをきちんと使いこなせることが重要であるということです。
1G状態からの伸と縮の比率が、5:5~6:4あたりでストロークの調整できていると良いと言われています。
反対にこれさえ守れば、それなりに不都合がないとも言えます。
実際にその①で例として出した赤スイスポはこれをしっかりと守れるように調整を行っています。そのために白スイスポとの差があまりなかったと考えられます。
上の例のダンパーは80mmのストローク量がありますので、1G時に半分の40mm縮むレートは300kgf ÷ 40mm = 7.5kgf/mmとなります。この7.5kgf/mmのスプリングを使えば上記パターンの不具合は発生しにくいと考えられ、それなりに満足出来るレートかと思います。
もちろん、ダンパーの減衰などの他のパラメータも重要ですが。
これで解決ですと言いたいところですが、7.5kgf/mmのレートのスプリングって無いんですよね。また家族を乗せたい方はもう少し柔らかくしたいとか、サーキット走られる方はもう少し硬くしたいと考えると思います。
では、どうするのか?
柔らかいスプリングで伸・縮の比率を5:5になるように調整しようとするのは比較的簡単です。
例えば6kgf/mmのレートを使う前提で考察してみましょう。
1Gでは300kgf ÷ 6kgf/mm = 50mm縮みます。
となると、伸びが50mm、縮みが30mmとなり比率でいうと、62:38と少し伸び側が大きくなります。また底づきは1.6Gとなります。
街乗りオンリーならなんとかなるかも、少しスポーツ走行だと足らないかと思います。
ではここから10mmのプリロードを掛けてみましょう。
すると1Gでは50mm縮みますが、プリロードで10mmを先に縮ましていますので、50mm - 10mm = 40mmが縮むことになり、あと40mm縮むことができます。
1G状態で伸・縮の比率が5:5、底づき荷重はは1.8Gまで改善します。
これなら不具合も出ず乗り心地は硬さはあるがそれなりに衝撃を緩和し、普通のハイグリップタイヤでのサーキット走行も可能かと思います。
※プリロードについて
プリロードを掛けると乗り心地が悪くなると言われていますが、ほぼ関係ありません。悪くなるパターンはスプリングの許容するストローク量が不足しているだけと断言します。
長くなるのでプリロードについてはまた別途書きたいと思います。
ではサーキット向けの高レートのスプリングはどうなるのか?
その③へ続きます?
(色々教えていただいた先人へお礼を込めて)