
みなさん、こんにちは。
映画『コレラの時代の愛』、さっそく月曜日に試写会に行って来たけど、よかったですね。原作は知っての通り、コロンビアが生んだ文豪、ガブリエル・ガルシア=マルケス。ぼくは本の方は読み始めたばかりなんだけど、「魔術的リアリズムの旗手」と言われただけあって、ページをめくるたびに赤や緑や黄色といった原色の光の洪水、土や雨や動物や汗や香水や熟れ過ぎた植物などのにおいがあふれ出てきて圧倒されます。
僕は今、4冊の本を同時に読んでいるんだけど、この本だけは深夜、みんなが寝静まった後、ウイスキーのオン・ザ・ロックを飲みながら、ゆっくりと味わうようにしています。
さて、映画の方なんだけど、まず物語を簡単に解説すると、背景は内戦とコレラの蔓延に揺れる19世紀後半から20世紀前半のコロンビアのカルタヘナという港町。
若く貧しい電報配達員のフロレンティーノ(ハビエル・バルデム)は、裕福な商人の娘フェルミーナ(ジョヴァンナ・メッツォジョルノ)に一目惚れし、彼女に何通もの情熱的なラヴレターを送ります。彼の想いは彼女の心を動かし、二人は結婚を誓い合います。しかし、フェルミーナの父親は二人を引き裂くために、娘を遠く離れた親戚の家につれていってしまいます。時が経ち、町に戻って来たフェルミーナはフロレンティーノを一目見て、私たちの恋は青春の幻想にすぎなかった、と言い、父の望みどおり、高名な医者のフナベル(ベンジャミン・
ブラット)と結婚してしまいます。
失恋の苦しみに長い間喘ぐフロレンティーノはそれでも彼女への永遠の愛を誓い、富と名声を得て彼女に相応しい男になるんだと決意します。
長い長い時が流れます。徐々に名声と富を手に入れつつも一途にフェルミーナのことを待ち続けるフロレンティーノ。そんな彼の甘く切ない香りに引き寄せられるのか、たくさんの美しい女性が彼に愛を捧げます。彼は彼女たちの求愛に肉体で応えながらも、心は純潔を守り通していると信じ、フェルミーナにたいする想いが揺らぐことはありません。
さらに長い長い年月が流れ、彼女を待ち続けて51年9ヶ月と4日、622人の女性と体で結ばれてきた彼に、やっとその時がやってくきます。 フェルミーナの主人が事故で命を落とし、70を過ぎてやっと一人身になった彼女の元へ彼は向い、求愛の言葉を投げかけます…
すごいストーリーでしょ?
一人の女性を51年間、一途に待つ…
いくらなんでもそんなの絶対無理だよって最初は思ったんだけど、この映画を観ているとなんか自分もやれそうな気になってくるんですよね。
彼にとって、彼女に対する愛が全てなんですね。彼は絶対に彼女のことを諦めようとしない。でも、彼はフェアなんですね。彼女をつきまとったり、自分を押し付けようともしない。彼女のことを遠くから見守りながら、自分の人生を静かに送っていく。
唯一救いなのは、たくさんの美しい女性が彼を愛し、欲する、ということ。孤独を一人で抱える彼の優しさに惹かれるんでしょうね。
そんな悲劇的なフロレンティーノをハビエル・バルデムは絶妙なタッチで演じています。
タイプ的には彼が演じた『空を飛ぶ夢』の主人公に似ていますけど、今回の作品の彼からは愛の病に侵され、それを喜んで受け入れて自分の生きがいにするという、狂気に近い情熱を感じることができます。
唯一どうかなあと思ったのは、だんだん禿げてきて、猫背で、爺っぽくなっていく彼のことをホントに女の人は魅力に思ったり欲したりするんだろうか、という点ですね。もう少し肉体的な魅力を彼に与えてもよかったんじゃないかな、と思いました。
あと、何といってもすばらしかったのは、フェルミーナを演じるジョヴァンナ・メッツォジョルノというイタリアの女優ですね。フェルミーナという女性は美しいだけではなく、自立していて、頑固で、他人が押し付けようとするものを全て拒絶するタイプの女性です。優しくて気品があるんだけど、根は独創的で鼻っ柱が強い、タフな女なんですね。そんな複雑な役を彼女は堂々と、見事なまでの集中力を持って演じています。
この作品でいちばん心に響いたのは、フロレンティーノが彼女に送った手紙の中のこんな言葉です。
─“愛というものは何かを達成するためにあるのではない。愛こそが人生のアルファであり、オメガなんだよ」─
かっこいいですよね。僕もこんなことを堂々と言える男になりたいですね。
この映画を観てますます確信したのは僕が次に書こうとしている長編小説のテーマ、というかメインフォーカスは愛に生きる男の青春物語だということです。僕が今まで体験してきた恋の甘さから苦さ、天に昇るような喜びから地獄の底をのたうちまわる苦しみまで、全部、激しく、そしてユーモアのセンスを持って書きたいなと思っています。
今回アップした写真は、僕が最近ずっと乗り回している“彼女”です。僕の家の近くで撮りました。可愛いでしょ?
車ってそれぞれ顔があるし、少し乗っただけで、こいつは男っぽいな、この子は女っぽいなと性別から性格まで感じられる気がするんですけど、この白のマスタングは気性の激しい、そして激しいゆえに可愛い、女性ですね。そう、怒らすと怖いんだけど、ちゃんと愛してあげると男のことを体を張って守ってくれる...そんなイイ女ですね。乗れば乗るほど愛着を感じます。
最近は家でものを書いていることが多いので、気晴らしにこれに飛び乗って、横浜の元町とか山下公園とか山手のほうにドライヴに行きます。
つい先日も元町の仲通りで僕の親友が経営している霧笛楼のカフェ、「NEXT DOOR」へ行って、名物のカレーを食べたんだけど、うまかったなあ!ここのカレーはとても上品な味で、辛さも程よい程度なんだけど、一度食べるとやみつきになります。ぜひ一度トライしてみてください。
そうそう、この霧笛楼の社長、クリスチャン・ネームがアンジェロっていうんですけど、先週の日曜日に還暦の誕生日パーティを自分の店でやって、仲間みんなで集まって、ブルース・バンドの演奏があったり、ダンスをしたりしたんですけど、元ゴールデン・カップスのエディ・バンがゲスト・シンガーとして、哀愁のこもったブルースを歌ってくれました。彼も僕の青春時代の登場人物の一人なんですけど、彼の歌、ホントによかったです。
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2008/06/10 18:14:36