KTC(京都機械工具)のラチェットハンドルの話が続きましたので、ラチェットハンドルのリペアーキットの交換方法や、洗浄注油などのラチェットメンテナンスについての「KTCあるある」なお話を。
まず普通の人はラチェットハンドルを分解することは無いと思いますし、私も仕事で使ってるものはほとんど注油やメンテナンスなどしません。
防錆の為以外に注油はほとんど必要なく、仕事で使ってるなら粉塵の場所で使った時や、ねちょねちょ系スケール混じりのグリスの現場で使った時に洗い油の中にドボンとぶっ込んで洗浄機で洗ってエアブローとかする以外、ほとんどメンテなんてしません。
TONEもCRC吹いとけば十分と言ってますね。
自動車整備士なんかはゴミ噛みでギヤが歯飛びした時にエンジンオイルにどぶ漬けしたりすると聞きます。
分解してまでとか、リペアーキット組み換えてまでメンテナンスする人は稀な様です。
ただ、KTCやTONE、スタビレーやスナップオン、ハゼットなど有名メーカー、一流工具ブランドは、リペアキットを用意してくれていることが多いです。
私の様な工具ヲタは、
「ラチェットメンテ」と称して、グリースやオイルの種類を変えてラチェットサウンドやラチェットフィーリングをチューニングしたり、
バネをカットして空転トルクを軽くしたり、仕様違いのリペアキットを取り寄せて、カタログにはない仕様に組み換えてみたり、グリップ入れ替えてみたり・・・
結構遊べます。
オイルやグリスの定番は、シリコングリスですが、
私はスナップオンなどのシールドラチェットでOリング等のゴムシールへの攻撃性が無いという理由でシリコングリスを使うことはありますが、他の理由でラチェットにシリコングリスは使いません。
歯車の潤滑には不向きだからです。
そもそもほとんどのメーカーは、
グリスが埃を呼んで摩耗や歯飛びの原因になったり、劣化して固化してバネやフラップの動きを阻害したりとよろしくないことが起きることを懸念して、グリース潤滑は推奨していません。
サラサラオイルが無難ですね。
ただ私はグリースならスズキ機工のベルハンマーグリースちょう度2号がオススメですね。
空転も軽くなり、おともコクコクコクっと静かになります。
グリース潤滑は昔ながらの2枚独立の羽根式(爪式)のラチェットや、
小判形ではなく、内歯式の丸型ラチェットなんかには不向きだと思いますが、
KTCの現行の(21世紀バージョンツール)BR3E系とかのラチェットには良いですね。
EPグリースとか極圧系の性能のあるものが良いと思います。
あとはボールの当たる部分だけグリスで、歯車部はオイルとかですね。
オイルなら
AZ CKM-001超極圧・水置換(かなりサラサラ)
AZ CKM-002超極圧・極潤滑(少しサラサラ)
とか、
スズキ機工 LSベルハンマースプレー
スズキ機工 LSベルハンマーゴールドスプレー
なんかもオススメです。
さてここまではKTCに限らずですが、
ここからはKTCラチェット独特のあるあるです。w
そんなラチェットメンテの時に開けるヘッド裏蓋のビスがナメ易いんです。
例えば
BR3EとかBR3LとかBR3F、BR3FLとかの9.5sq.(3/8“)のラチェットヘッドに使われている裏蓋のねじは、
皿ビスのM2.5 。
・・・なんですが、
通常M2.5は規格では確か+0番(PH0)の十字溝なところ、
KTCのラチェットの裏蓋ビスの場合、+1(PH1)のドライバーを使わないとなりません。
サイズが合わないドライバーを使ってナメてしまう事例をよく聞きますね。
更にねじ山にはロックタイト(ねじロック剤)を塗布してありますのでヒートガンで予め炙ってからしっかり十字溝にフィットする良質なドライバーで弛めたいところ。
さもなくば舐めてしまうかも?
ナメてしまった時は、「ANEXのナメたねじ外しビット」などで穴を開けたあとナメたねじ外しビットのエキストラクタ側で抜き取ります。
その後は画像の様に六角穴付き皿ビスやトルクス穴付き皿ビスに変更してしまうのも良いですね。
私は強度区分10.9のSCM435 六角穴付き皿ビスに交換しています。
もともとロックタイト(ねじロック剤)塗ってありますが、私は塗りません。
もし塗るならスティックタイプの半固形ロックタイトが塗りやすいですね。
もし私が塗るなら低強度222あたりをちょんと塗ります。
KTCのリペアキットを買うか、エヒメマシン様の様なKTCに強い工具店さんなんかでは、ビスを単品で補修部品として購入することもできます。
六角穴やトルクスの皿ビスは入手性悪いので、それも一つの方法です。
9.5sq.(3/8)のラチェットはM2.5ですね。
全長(首下ではなく皿頭からの全長)は8mmです。
先程書いた通りドライバーはPH1(+1)を使用。
六角孔付き皿ビスにするならヘックスレンチのサイズは1.5mmです。
トルクス(ヘックスローブ)ならT8かな?
6.3sq.(1/4”)ラチェットや、1/4“ボディーを持つ3/8”差し込みのコンパクトラチェットなどは、 ビスのサイズM2 x6mmです。
ドライバーはこれこそ普通は0番使いたくなりますが、KTCラチェットの場合は+1(PH1)を使いましょう。
さもなくばナメます。
KTCラチェットメンテあるある第一位ですw
画像はネプロスの、シブイチ(2分)ボディーに3/8(3分)の差し込みを持ったコンパクトラチェットですがKTCのスタンダードラインのBR2系統と同じでM2でした。
M2の六角穴付き皿ビスやトルクスビスは更に入手性が悪いです。
アリエクを利用するのが一番安上がり。
M2の皿ビスはヘックスレンチサイズ1.27mm(1/20“)ですので9本組みや6本組みのセットには無いサイズです。)
トルクスならT6かな?
12.7sq.(1/2”)のBR4系統の場合は、
M4x10mmと入手性が良くなります。
工具も+2(PH2)が使えます。
六角孔付にするならヘックスレンチは2.5mm。
トルクスならT20ですかね。
うろ覚えですのでサイズ間違ってたらすみません。
あと市販の皿ビスは時々頭の径が少し違うのとかテーパーが微妙に合わないのあったりしますので要注意です。
「KTCのラチェットは、ドライバーサイズが普通のビスと違うのとロックタイトが塗られていてナメやすい。」
までは工具好き界隈ではよく知られたKTCあるあるで補修部品も手に入るのは良いのすが、
代替ビスを買う際の購入すべきサイズの目安まではあまり語られないので記事にしてみました。
材質は私はSCM435(クロムモリブデン鋼)の強度区分10.9にこだわっていますのでなかなか入手性悪いですが、
+0番の普通の十字溝ので良ければ結構見つかります。
それかチタン製やSUS304(オーステナイト系ステンレス鋼)、なまくらのビスの単なる黒仕上げでよければネットで安価に買えますね。
ビスが外れて混入させたくない系の仕事に使うならロックタイトも塗布すべきですが、私は趣味で使うほうのは色々チューニングしたいのでロックタイトは塗りません。w
皆さんも音のチューニングにグリスやオイルを色々試してみては??
元の響きが好きならサラサラ系の極圧添加剤入りのオイルがオススメです。
グリースはいっぱい詰めるとラチェット内の空間を埋めてしまうので響きが変わります。
塗布する量でもラチェットサウンドチューニングが可能です。
埃を呼びますし劣化もするので、自己責任で、頻繁にメンテするとかが必要になるかもしれません。
暇な時に手でラチェットカリカリやって遊ぶとかフタ開けてイタズラするとかが好きな人以外にはオススメしません。w
KTCラチェットあるある小噺でした。