
V8のスポーツ・エンジンで、最初に思い浮かぶのは
「ミッドシップ・フェラーリ」のV8エンジン。
誰もが、その排気音に痺れてしまう。
他のV8とは、クランクシャフトの形式が異なっている。
フェラーリ V8のクランクは、「シングルプレーン」形式で、
左右バンク共に90度の均等爆発となる。
E92 M3 は、「クロスプレーン」方式。
クロスプレーンのV8は、270度、180度、90度と不等間隔爆発となる。
フェラーリ以外のシングルプレーンのV8エンジンを探してみる。
最新の
マクラーレン MP4-12C、生産終了となった
ロータス・エスプリ の3.5リッタV8。
両車とも、片バンクにタービンをブラ下げている。
均等爆発の排気が、タービンを回すには都合が良いからであろうか?
両社とも、F1界 の雄である(あった)。
ミッドシップ・スーパーカー・タイプ以外で探してみると、FR車にもシングルプレーンV8を積んでいるケースがあった。
マセラティ・シャマル。
3.2リッタで、こちらもツインターボ。
マセラッティ市販車のV8でシングルプレーンは、後にも先にもこのシャルマだけのようだ。
もう一台は、
TVRのAJP8。
これは、
サーブラウに積まれていた。
しかし、バンク角が75度で不等間隔爆発である。
そして、RR。
去年(2010年)のジュネーブ・ショーで発表された「RUF RGT-8」。
ドイツのルーフがポルシェ911 のボディに、自社開発の4.5リッターV型8気筒エンジンを搭載したのが、「RUF RGT-8」である。
アロイス・ルーフ氏が普段からアドバイスを求めていた故ポール・フレール氏との8気筒911に関するやり取りが、今月(2011年11月)号のCG誌に掲載されている。
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911とV型エンジンは初めての組合せなだけに、慎重にスペックを選ばなければ、ファンから拒絶反応が出てしまう。そこで、非常に軽量な造りとして、潤滑は低重心が見込めるドライサンプ、そして、シングルプレーン・クランクシャフトのV8ならどうか、とPF先生に問うと、長らく眼を閉じて考え込んだ後で、「それならいいでしょう」と答えたという。
<中略>
「それならいいでしょう」という言葉の裏に、どれだけの真意が潜んでいるかは、我々にとっては今や推測するしかない。しかしながら、最も外せない要件は「シングルプレーン・クランクシャフト」であったようだ。
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このV8エンジンの中身は? (2011年11月号のCG誌より)
・マーレの鍛造アルミ製ピストン
・バンクルのチタン製鍛造コネクティングロッド
・アルフィン社の鍛造クランクシャフト
・ヒョアテクノロジー社の中空カムシャフト
・F1のキャスティングを行っている会社(公表不可)のシリンダーブロック
と、ほとんど「公道も走れるレーシングカー」の文脈で作成されている。
こうして完成したV8は、4.5リッタで
404kW(
550hp)/8500rpm
500Nm/5400rpm
を絞り出し、最高許容回転数は、
9000rpm である。
3.8リッタフラットシックスに比べて、全長は2cm長いだけで、重量は逆に40kg程度軽く仕上がっている、という。
このエンジンの設計者「ラインハルト・クネカー」氏のインタビュー記事も興味深い。
「
でも、正直言うと、ディメンジョンはチョットだけ大き過ぎるかな。
パワーに対して余裕のあるサイズになっている。
このサイズだと、1100psを絞り出しても耐えるだけの剛性と、何十年も使用できる将来性を
秘めていると言えます。」
1100馬力のターボエンジンにすることも可能で、いろいろと流用可能な頑丈なエンジン、ということだろうか?
そして、エンジン屋の神髄が次の言葉に現れている。
「
すぐに(安直に?)電子制御可変で最適化するのではなく、メカニカルなソリューションで答えを 丹念に出していくことが、今の時代、大切さを増していると思うのです。
私は、そのメッセージも、このエンジンに込めたつもりです。」
このエンジン、既存のV8エンジンをベースに改造しているわけではなく、全てがオリジナルらしい。
それに関するコメントに、思わずニヤリとしてしまう。
「
サプライヤーにも系列という考えがあって、義理があるからどうだとか、いろいろと面倒なことが
あってね。結局、全部造ってしまった。
だから、本当にルーフオリジナルなんだよ。」
フェラーリ、マセラッティ、マクラーレン、ロータス、TVR、ポルシェ、と来て、
では、BMWは?
「BMWER(ビマー) vol.08」に、iDingpower の井手氏のコメントが載っていた。
「今度(E9*M3)のV8は、ヘッドやブロックの設計など、素性は本当に良いですよ。
ただ、我々チューナーにも手を入れる余裕が残されている。
具体的には、クランクを
シングルプレーンで造り直して、点火順序も変えていく。
これで、上まで回るようになる。ただ、その分どうしても
震動は出る。
後は、排気量。排気量を上げて、トルクを出してやると、高級感やパワー感に繋がるからね。」
フェラーリのような快音を発して、ターンパイクを駆け上がっていくリアシート付きFR車。
8000rpmを超えてからの排気音は、どんなものになるのだろう?
ちなみに、ヤマハのMotoGPマシン「YZR-M1」は、クロスプレーン・クランクシャフトである。
クランクシャフトにまとわりつく慣性トルクのノイズを取り払い、スロットル操作とリアタイヤの
トラクションが1対1でつながったかのようなダイレクト感を実現することを目的としている。
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Posted at
2011/10/16 08:33:48