
超マニアックなお話しです。ヒマな方、ウンチク好きな方だけ推奨のシリーズです。
<第1弾>
<第2弾>
<ブレーキパッド編>
<ブレーキロータ編>
色々書いてきましたが、フルードの役割は圧力を伝えることです。前回ペダルタッチについても触れましたが、エアを噛んでいればすべて台無しになります。
厄介なのはパスカルの法則は系統すべてに関わるので、油圧経路のどこかにエアが潜んでいるだけで全体に影響を及ぼすところです。
ということで、今回は「究極のエア抜き」について書きたいと思います。
ピストンシール部の詳細形状まで描かれている良素材をネットで見つけました。
上図のようにピストンシール溝部には隙間と面取りがされていて、その中でシールが「たわむ」ことにより押し出したピストンを戻す仕事をしています。
エア抜き時にペダリングをしますが、赤丸のところのフルードは循環しないのでココに古いフルードが残りがちなのと、エアが入ると非常に抜けづらいです。
(走行中のサスストロークの振動で出ていくこともありますが…)
ペダリングによるエア抜き作業時に、ピストン戻しなどで何度かバックさせてあげるとこの周辺の古いフルードと一緒に後ろに追い出されてエアを抜くことが可能です。一度もやったことがないクルマだと劣化したシールグリスなどと一緒に変色したフルードが出てくることが多いです。
お店では嫌がられて「そんなことしなくても大丈夫です」と諭されると思いますが、DIYでやられる方はそれほど手間ではないと思うのでオススメします。特にキャリパーOHした後にタッチが甘くなった場合はピストンシール裏のエアが抜けて直ることがあります。
次に、DIYでやられる方は一人でエア抜き出来るようにワンウェイプラグを使っている方も多いかと思いますが、タッチが悪い場合は最後の仕上げは通常の2人作業によるエア抜きをオススメします。
ペダルを踏んで戻すときに、古いフルードが逆流しないようにワンウェイを使いますが、代わりに赤矢印のネジ部からエアを吸い込むことがあります。ブリーダーの緩め具合や個体差によって問題なかったり、人によっては封をするためにネジ部にグリスを塗る方もいるようですが、確実性にかける作業になりがちです。
全量交換するときにワンウェイ使って、ペダル連打で古いフルードを一気に抜くのはアリだと思いますが、個人的には最後の仕上げは2人作業でブリーダー開閉のエア抜きがオススメです。
※今まで問題なかったという方は、そのやり方で良いと思います
それでも以前のタッチが元に戻らないという方には「脱気フルード」という飛び道具があります。
ピストンバックさせてもタッチが甘い以外に、エア抜き時にうっかりリザタンを空にしてしまったり、ブレーキホースを換える時にエアが上流まで回ってしまったりすると、ABSユニットの中は複雑な迷路とバルブがあるので中々抜けないことがあります。
それを気体が溶け込みやすい状態のフルードにより吸収してしまおうというのが、脱気フルードの使い方です。
もともとは、ハイブリッド車のバイワイヤブレーキの油圧回路が複雑な造りのエア抜き性改善のために用意されたものですが、普通車でももちろん使えます。
大気を吸収したら意味ないので、このような小分けパッケージで製造から半年の賞味期限つきで供給されています。
溶け込みやすいフルードでエアを吸収するのが上記の手段ですが、溶け込みやすい状態にする=高圧状態を維持することによってもエアを吸収することができます。
具体的には、ブレーキペダルとシートの間に突っ張り棒などを入れて、加圧状態を保つことでエアを取り込んで、そのあとすぐにエア抜き作業して排出するというやり方です。すぐにやらないと、炭酸飲料から徐々に泡が出てくるように、大気圧環境下では再析出する可能性があります。
ブレーキランプでバッテリー上がりを防ぐために、セット後にバッテリー端子外しが必要です。
また油圧系統の負荷になるので、圧のかけ過ぎには注意必要。自己責任でm(__)m
S耐やラリーなどで持ち込んだ車両のタッチがイマイチの時に、セットして一晩放置して翌朝エア抜きみたいな使い方をします。
通常はここまでしなくて大丈夫ですが、マニアックトリビアとしてご紹介しておきます(笑)
Posted at 2025/10/04 14:18:21 | |
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