
かなり涼しくなりました。歳を重ねると今年の秋は○○しようと思うこともあれば、何かのきっかけで忘れ去りたい過去を思い出したりもします。
で、徒然に秋の夜長の問わず語りは初代スバルR2です。360CCのRRです。考えるとスバルってポルシェと似てますね、水平対抗エンジンの車を出したりとかRRの車とか。大学時代の友人の車でしたが、最高に楽しい車でした。思いのほか、よく走るし感動したのがラジオ。まず、選曲ツマミをゼンマイを巻くように片方に巻き上げます。でボタンを押すと周波数の低い方から高い方に流れて電波を取れたところで止まるんです😳

大学は違いましたが彼とは高校時代からの付き合いで、絵に書いたようなボロアパートに住んでいました。寡黙で力持ち、不必要にデカい不器用な男です。
その彼から初めての愛車を買いたいと相談がありました。新宿小田急でのエレベーターボーイのバイトに加えてアパートをアダルトビデオ撮影に貸したら謝礼をくれたから金はあるとのことでした。アパートのボロさ加減がビデオのイメージにピッタリで、普段に彼が使用している家具や生活雑貨の醸し出す薄幸具合にも監督が惚れ込んだらしいです。当時のエロビにはストーリーがありましたもんね、早送りするやつ。
若干19歳にして昭和枯れすすきな雰囲気をまとっていた彼のアパートの面影も今は無し、すっかり変わっちまいました。
そんな彼は「めぞん一刻」の三鷹さんが乗っていたシルビアが欲しいんだって言っていましたが「この予算でドアだけ買うつもりか?」って酷いことを言い放ち、まともな車屋で買えるはずもなく、雑誌の個人売買を読み漁った挙句に清瀬市の若い夫婦が乗っていたスバルR2を譲り受けることとなりました。20万円くらいだったと思います。
当日、彼と一緒に取引に向かうと有名店でレストアされたオレンジ色が美しい個体でした。ただ、オルタが故障していてほとんど充電はしませんでしたが。
若いご主人の趣味で、とても大事にされていました。今でも覚えていますが「彼」に負けず劣らずペローナに励まされそうな限りない薄さが印象的で、取引をしたアパートは玄関開けたら0分でご飯な一間でした。
最後までR2を愛でていて、奥さんとの思い出が詰まっている感じでした。その場の雰囲気はお通夜以上に真っ暗で自分が女衒にでもなった気分でした。
とは言え、友人にとっては初めての自分のクルマ、興奮さめやらずその夜にもう1人の友人と3人で狭山湖目指して初ドライブを敢行しました。ほとんど充電しないのでエンストする度に押しがけしてました、なんてったって軽いですから。途中でポツリポツリと雨が降り出したのでワイパーを動かしたら、健気に動くさまに車内は大盛り上がり。ただ、ライトにワイパーまで動かすと頻繁にエンスト。私が一番車に詳しくワイパー作動禁止を宣言しましたが、スイッチ押しちゃいけないとなると押したくなるのが人の常。禁止宣言した私が何度か押してしまい、遂に押しがけでもエンジンが掛からなくなりました。
田舎道の深夜、通りがかりのタクシーをなかば強引に停めてバッテリージャンプさせてもらいました。お客さんも乗車中でスナックのお姉さんとぐてんぐてんに酔った中年サラリーマンの方でした。当時はまだ「学生さん」に優しい社会でしたね。そのサラリーマンの方が「もう、捨てちまえよ、こんなボロ車!」って叫んだので「いやぁ、それがですね、今日買ったばかりなんですよ。人生初めてのマイカー」って言うなりサラリーマンと肩組んで深夜の五日市街道脇で笑い転げた極悪人です、ええワタクシ。結局、バッテリーも完全にダメで一晩を車内で過ごし、翌日に私のコルベットで牽引して帰りつきました。

(極悪人の横で変なサイン出してる黒ずくめの奴が当時の彼です。写真撮る時に背を丸めるクセがあり私より小さく見えますが身長180センチ超えてます
)
それからも「ルーフを白に塗ればオシャレ」とそそのかして多摩川の河川敷で缶スプレーしました。脱脂だとかプラサフなんて塗装のトの字も知らずに挑んだ塗装。缶スプレー2本もあれば大丈夫だろう思いましたが当然に足りません。「金ないから今月は2本が限界」ってことで、美しかったオレンジ色のルーフは白のまだらぶちになりました。
2ヶ月ほどして彼の吹けば飛ぶようなアパートを訪れると、荒地の駐車場にぽつねんとR2がその景色に溶け込んでいました。アダルトビデオの監督は、強力なアイテムの追加をもう少し待つべきでした。「捨てたのか?」と声をかけるまでもなく彼とR2はお互いに順応して歩み寄っていました。仕事関係でも夫婦関係でもB型でも歩み寄り・・・重要ですね。
オルタを修理する発想は当然に無く、予備バッテリーを積むと言うことで解決していました。ドライブした後は2個のバッテリーを充電して、今に思えばEVの原点ですね。
雨が降ってもワイパーは動かさず、運転しながら窓から手を伸ばして雑巾で拭きあげるテクを身につけていました。360CCでルーフが白のマダラなオレンジ色のR2、180センチの大男が背を曲げ気味に乗って窓から手を伸ばしフロントガラスを拭きあげている図。「シュール」って言葉はこういう時に使っていいんですかね。
後は彼女をせている時にシフトチェンジしたらシフトノブがもげたらしいです。大学寮まで迎えにも行ったらしいですけど世間様はバブルの真っ最中、スーパーホワイトのマークIIがハイソともてはやされた時代、ベンベンベンって排気音で主張するオレンジ色の憎いやつで寮まで迎えにこられたクミコさんの心中、察するにあまりあります。
秋の夜長にダラダラと土佐の場末の飲み屋でクダを巻くように書いてしまいました。今日は三日月のうっすいのが出てます。書き始めの時の彼への申し訳なさは既に微塵もなく、一人の大男を成長させた達成感で包まれています。幸せだから寝るう~😪
Posted at 2025/09/27 10:27:25 | |
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