A6サスペンション比較
45と55のフロントサスペンションの写真を参照ください。
まずはブレーキディスクの径とキャリパーの違いに驚きました。
調べると、55は6ポッドらしいです。どうりで、よく停まるわけです。
以下本文です。
AIってすごいです。ショックアブソーバーの寸法とスプリングバネレートを教えて。と聞くと、スラスラ〜と返答があるんです。ただ、純正の数値はわからないとのことで、ザックスなどのOEMメーカーから推定値を導き出したようです。またまた、私の超個人的思考でサスペンションについて、備忘録として掲載したく思います。オタク話なので、ドン引きされたら申し訳ないです。
1. フロントショック寸法
* 標準ダイナミックサスペンション
* 最大長(伸びきり): 522 mm
* 最小長(縮みきり): 359 mm
* 有効ストローク量: 163 mm
* S lineスポーツサスペンション
* 最大長(伸びきり): 502 mm (標準比 -20mm)
* 最小長(縮みきり): 359 mm (標準比 ±0mm)
* 有効ストローク量: 143 mm (標準比 -20mm)
2. リヤショック寸法
* 標準ダイナミックサスペンション
* 最大長(伸びきり): 657 mm
* 最小長(縮みきり): 450 mm
* 有効ストローク量: 207 mm
* S lineスポーツサスペンション
* 最大長(伸びきり): 637 mm (標準比 -20mm)
* 最小長(縮みきり): 450 mm (標準比 ±0mm)
* 有効ストローク量: 187 mm (標準比 -20mm)
◯2cm低い「S lineスポーツサス」のマジック
両車を乗った立場からすると、この数値だけで、自分が感じた印象を裏付ける結果となりました。アウディがS lineのスポーツサスペンションのセッティングの意図を想定したく思います。
マジック①:縮み側のストローク(最小長)を1mmも犠牲にしていない
一般の社外ローダウンスプリング(H&Rやアイバッハなど)を標準ショックに組むと、車高が下がった分だけ「縮み側のストローク」が物理的に減り、段差で簡単にバンプタッチ(底突き)して「ズシン!」と不快な衝撃が出ます。それだけではなく、フルブレーキ時、ショックのストロークで人間がロッタタイミングをコントロールするのですが、サスペンションストロークが短いと、ブレーキは即ロック。クローズドコースのバックストレートから白煙あげてのフラットスポットを作るのは恐怖以外の何物でもありませんでした。やはり、スプリングには最低限の自由長は必要と実感した出来事でした。とはいえ、今はABSがある。が、私は今でもロックするか、しないかギリギリは大概コントロールできる。かも。
アウディ純正S lineは、最小長(縮み限界きり450mm/359mm)を標準車高と「全く同じ」にしています。これは、ショックアブソーバー内部のピストンロッド長(またはケース内寸)をショート化し、「伸び側のストローク(リバウンド)だけを20mm短縮して車高を下げている」いわゆる、ショートストロークショックアブソーバーです。スプリングで車高を落とす時の常套手段です。これにより、2cm低い車高でありながら、段差に乗った際の縮みきりまでのマージン(バンプトラベル)は標準車高とほぼ同等にキープされています。これが「低くても底突きしない」純正のマジックです。
マジック②:伸び側を規制(リバウンドストロークのカット)したことによる「低速アンダーの解消」
標準のダイナミックサスペンションはリヤに207mmもの膨大なストロークがあります。そのため、悩みの始まりであった120km/hで横風外乱が入った際、イン側のリヤサスが「ビヨーン」と大きく伸びようとします。アウディはこれを嫌い、イン側が伸びて姿勢が崩れるのを防ぐために、あえてアウト側の縮み減衰を突っぱねてロールを抑える(結果としてドアンダーになる)という力技のセッティングをしています。
対してS lineは、リヤの伸び側を20mm最初から規制(187mmへ短縮)しています。
イン側が必要以上に伸びないため、アウト側の縮み減衰をそこまでガチガチに突っぱねる必要がなくなり、サスペンションの左右の連携(過渡特性)がスムーズになります。もちろん、スタビライザーの影響はないとの仮定です。確かに前車S lineのときの方が、素直に曲がると感じたのですが、この伸び側カットによる恩恵と思われます。
1. ローダウンは車体上部のロールは逆に増えるんですよね
ショックアブソーバーのケース長(筒)を変えずにロッドを20mm短くしてローダウンすると、車両正面から見たロワアームはバンザイ、逆ヤジロベエとなり、(車体側が下がり、ハブ側が上がる)平行を通り越してバンザイ側へ深く入ります。
これにより、ロールセンターが変わるのです。
1. ロールセンターが「車高の下がり幅(20mm)以上」に、地面の下へと急降下する。
2. 重心とロールセンターの距離(ロールモーメントのレバー比)が物理的に長く(遠く)なる。
3. つまり、コーナリング時に「車体をロールさせようとする力(ひねり)自体は増える」。
これは、ローダウンをして、ロワアームの角度が変わるとロールセンターが下がりルーフなど、車体上部のロール量が増え、不安定を助長することにつながります。対策としては、車高調や、筒のみを短くしたダンパーでロワアームの角度をダイナミックサスペンションと同じ角度を維持するしか方法はありません。
では、ローダウンで増えたロールはどうやって抑えているのか?
車体上部のロールが増えるはずなのに、S lineがシャキッと走る理由は「バネレート」と「減衰力」強化です。S lineの設計において、スプリングのバネレートをダイナミックサス比で約10〜15%アップし、ショックアブソーバーの縮み側の低速減衰力を高めています。ジオメトリの悪化(ロールモーメントの増加)を、「バネとダンパーの硬さ」で物理的に突っ張らせて、ロールスピードを力技で抑え込んでいるのがS lineの正体です。
2. 45 S lineと55 ダイナミックの「体感の差」の正体
◯私が感じた45 S lineで「車体の方が下にある感覚」
45S line試乗の時点ですぐに感じたのが、段差を越える際、足が車体より上にあるというか、車体が下へ引っ張られる感覚を覚えました。55のダイナミックサスペンションの比較できたからこそわかる、「伸び側ストローク(リバウンド)の不足」と「高すぎるバネレート」が原因かと。
S lineは前述の通り、伸び側ストロークを20mmカットしています。段差の凹みにタイヤが落ちる際、サスがしなやかに伸びて路面を追従する余裕が足りず、すぐにショックが伸びきり「突っ張った足が、車体を下にガツンと引きずり下ろす」動きをします。だからこそ、サスの下に車体があるような、余裕のない感覚になります。
◯55 ダイナミックサスペンションで感じた「車体の下で足が自然に動く感じ」
やはり、標準車高のジオメトリ(下反角)が機能している証拠と思いました。
標準車高ではロワアームに理想的な「下反角」もしくは限りなく水平な角度がついており、ロールセンターが重心に近いため、無駄なロールモーメントが発生しないと確信できました。バネや減衰力を必要以上にガチガチに硬くしなくても、ジオメトリの妙で自然にロールが抑えられます。
さらに、フロント163mm / リヤ207mmという膨大なストロークが1Gの上下にたっぷり確保されているため、段差を越える際も車体(マス)はフラットを保ったまま、文字通り「車体の下で、足(アームとダンパー)だけが独立して綺麗に上下にストロークしている」状態が作れます。セッティング屋が理想とする「フラットライド」の動きです。
「ダイナミックサスペンション」 vs 「S lineスポーツ)」
特性項目 標準ダイナミックサスペンション S lineスポーツサスペンション 変化の割合と設計意図
フロントバネレート 約 8.5 kg/mm 約 9.6 kg/mm 約 12〜15% アップ
V6エンジンの荷重によるバンザイを抑える
リヤバネレート 約 7.8 kg/mm 約 8.8 kg/mm 約 10〜12% アップ
アバントの積載時の沈み込みを抑制
ショック減衰力(縮み) 低速:しなやか
高速:強め(突っぱね) 低速:20%強化
高速:標準と同等 低速域(ロール初期)の減衰を強化
アームが動く初期の粘りを持たせる
ショック減衰力(伸び) 全域:標準(戻りは速い) 全域:25〜30%大幅強化 リバウンド(伸び)を強烈に引き戻す
ショートストローク化の底付きを防止
🔳55TFSIにおける2つのサスの「味付け」の決定的な違い
① バネレート:なぜ15%近くも上げているのか?
ショックアブソーバーのケース長を変えずにロッドを20mm短くするとロワアームがバンザイ、逆ヤジロベエになるため、旋回時に車体を転がそうとするロールモーメント(レバー比)が物理的に大きくなります。
55TFSIはV6の重い心臓を積んでいるため、標準のバネのまま車高を下げると、コーナリング中にフロント外輪がソッコーでストローク限界を迎えてしまいます。アウディはこれを防ぐために、バネレートを15%近く高める(約1.0kg/mm強のアップ)ことで、バンザイによるロール量の増加を相殺しています。
② 減衰力:伸び側「30%アップ」がもたらすマジック
あなたが感じ取った「S lineの伸び側が穏やか(もっさり)だった」というインプレッションの裏付けがこれです。
アウディはS lineのショックの「縮み側」の減衰は初期(低速域)を20%ほど締めるに留めていますが、「伸び側」の減衰力は30%近くまで大幅に引き上げていますこの、初期の減衰がもっとも大切です。通常のコーナーでは初期の減衰に依存しており、初期の立ち上がりに優れたダンパーであれば、鋭い動きを実現できます。
そして、バネが15%硬くなっているため、段差を越えた後はバネの反発力で「パツン!」と勢いよく足が伸びようとします。それをこの30%強化された伸び側減衰が「グググッ」と強烈に抑え込むため、ピストン速度が上がらず、結果として「もっさり、穏やか」という上質な一体感に化けるわけです。
◯45 S lineのスポーツサスペンションと、55 ダイナミックサスペンションの「動きの謎」を考える。
* 55ダイナミック(現車)は、バネをあえて「遊ばせる(自然に動かす)」
バネレートを抑え、伸び側の減衰もニュートラルに抜いているため、段差に対して「車体の下で足が自然に動く」という100点満点のストロークをします。しかし、バネがしなやかなぶん、超高速域での姿勢を安定させるために、アウディはリヤのショックの縮み(高速域)を突っぱねるという歪んだ減衰特性を与えざるを得なかった。
* 45 S line(前車)は、バネと伸び減衰で「車体を強固にホールドする」
アームがバンザイしていても、硬いバネと、それを強烈に引き戻す伸び減衰のせいで、足が勝手に動く余地(遊び)がありません。常に車体と足が一体化して「もっさり」と動くため、段差では「足より車体の方が下あるような違和感」が出ます。
つまり、S lineはジオメトリの不利(バンザイ)を、「バネと伸び側減衰力のツインコンポ」で完全にロックアップしてごまかすマジックを使っていました。ラグジュアリーカーとしてクレームが出ないギリギリの線で、もっさりと動かして硬さを隠しているのではないかと想定しました。
現車の55ダイナミックサスペンションは、バネ(約8.5k)もダンパーもジオメトリ(下反角)も最高に素直です。ただ一つ、アウディが超高速巡航のために仕込んだ「リヤサスの突っぱり」という悪癖のせいで、サイドの緩いADVAN dBを履いたときにだけ、高速道路の横風で過渡特性が破綻してお釣りをもらう。そこで、もう一つ。大切なギミックが隠れていました。
その答えは高速道路の一定速度でプロペラシャフトを停め、完全FFの動きになる「ウルトラクワトロ」です。もし、トルセンデフのように常時4輪にトルクがかかっていれば、ここまでリヤの圧側(縮み側)の減衰を高くしなくても良かったのではないかと感じます。とはいえ、フロントヘビーという物理的制約がある以上、ある程度圧側の減衰を上げざるを得ないはずです。
『運転していて頭が揺すられるのはスポーツサスペンション』
ローセンターが低いほど、頭を揺さぶられる感覚になるんです。というより、本当にゆさぶられています。もう、おわかりかと思いますが、slineのほうが頭を揺すられます。しかし、なぜ車高の低いS lineの方が、コーナーで「頭が揺れる感覚(上半身が揺さぶられる感覚)」が大きくなってしまうのか。そのメカニズムを掘り下げたく思います。
1. ロールセンター降下による「ロールモーメント(ひねる力)」の増加
S lineでアームがバンザイしてロールセンターが地面の下へ落ちると、重心(車体の上家)を横に倒そうとする「レバー比」が長くなります。これにより、ハンドルを切った瞬間に車体をロールさせようとするエネルギー(ロールモーメント)自体は、標準の55 ダイナミックサスよりも物理的に大きくなっています。
2. 「バネの突っぱり」と「伸び側減衰」のケンカ
アウディはこの増えたロールを抑えるために、バネを15%固め、伸び側の減衰を30%近く強めました。コーナリング中、イン側の足が伸びようとするのを強力な伸び側減衰力で「グググッ」と抑え込み、アウト側の足は硬いバネで突っ張らせます。
一見、これでロールが止まってフラットに曲がれそうに見えますが、ここに落とし穴があります。外から見れば車体は傾いていない(ロール角は小さい)ように見えますが、車体の内部(乗員)にかかる「横Gの伝わり方」が、ジオメトリが綺麗なダイナミックサスとは根本的に変わってしまうのです。
3. 「頭が揺れる感覚」の正体
* 55 ダイナミックサス(現車):自然なロール
ジオメトリが綺麗(下反角がある)なため、ロールセンターが重心に近く、車体は「乗員の腰のあたり」を中心に綺麗に、自然にロールします。そのため、車体は傾いても頭の位置はブレにくく、視線が安定します。
* 45 S line(前車):支点が低いロール + 逃げのない突っぱり
ロールセンターが地面の下(低い位置)にあるため、車体は「足元のずっと下」を支点にして、扇形のように大きく振られる動き(振り子運動)の成分が強くなります。
しかも、バネと伸び側減衰でロールを力技で止めているため、路面の微細なうねりや横Gの立ち上がりが、サスペンションでいなされずにダイレクトに車体上部(キャビン)へと突き抜けます。
結果として、コーナー中に「車体自体はあまり傾いていないのに、乗員の頭は左右にカクカクと大きく揺さぶられる(もっさり動くのに頭の座りが悪い)」という不自然な挙動が完成します。
『今回のまとめ』
自動車メーカーが本気で作り込んできた黄金比には敵わない。億単位の開発費と何万キロものテスト走行から導き出されたメーカー純正のバランスには、必ず「その数値にせざるを得なかった黄金比」が存在するはず。ちなみにC43のショックアブソーバーは筒自体も短くして、理想な足でした。しかも、筒を短くした分、ダンパーのガス容量不足を危惧したのでしょうか?
なんと、ショックアブソーバーに、別タンクがついていた事や、頑強そうなナックルアームなど、最初みたとき「ほえーっ」と感嘆の声が出ました。残念ながら、アウディA6ではそこまでコストはかけていないようですが、ソフトな乗り心地を求めるとA6に落ち着くわけでした。
後日、ウルトラクワトロについても触れたいと思います。