地元民なら誰でも知ってる北陸道下り、尼御前サービスエリア数キロ手前。
(ピー、ピー、ピー・・・・)
さっきから、レーダー探知機が突然鳴りだしては止まっていた。
感度を上げすぎると、なんでもないところでいきなり鳴りだすこともある。
正直あまりアテにしてなかった。
そのとき 背 後 に 殺 気 。
ミラーごしに見える、エラの張ったバンパーに吊り目ぎみの四角いクリアレンズ。
その奥にギラリと光る丸目4灯のヘッドライト。
メッシュ状のフロントグリルに斜めに跳ね上がった”ATHLETE”らしき浮き文字。
え、さっきのクラ〇ン!?
雰囲気からして、エンジンはおそらくアスリート最強のワンジェーターボ。
バブル後半の70スープラやソアラ、ツアラーVにも積まれた2.5リッター6気筒のターボエンジン。ノーマルのままでもヘタなスポーツカーを喰ってしまうパワーと加速をほこる。
・・・でも、なんで?ずっと先を走っているはず??
頭の中で整理できずにいるとみるみる車間を詰めてきた。
速度はすでに70マイル(=112km)を超えている、80km規制の区間でだ。
走行車線に入ってやりすごそうにも、タイミング悪くダンゴ状態が続いている。
イヤな感じ。ワゴン車を執拗にアオっていた先ほどのあのイヤな光景がよみがえる・・・
加速して一気に前に出るか?
いやいや、ここで暴走すればヤツと同類。
バカはやめて車線が空いたところで道を譲ろう、この先オービスも近い。
しかし、一方でこの状況でタイムマシンをゆっくり走らすことは、
獲物におどりかかりたくてウズウズしている猛獣をなんとかなだめているような気分だった・・・
不意にミラーに大写しになる〇ラウン。
センターラインを割るように半車線はみ出しかと思うと右に左に車体をゆすって露骨にあおってきた。
そこから先、カタルシスがなかったと言えばウソになる。
いやむしろ、自分自身がこのときを待ち望んでいたんじゃないかとさえ思う。
アクセルべた踏み、押さえていた欲望を一気に解放。音が変わった。
フードの下、ものすごい吸気音、タガがはずれたような場違いな加速。
ほんのさっきまでミラーに大写しだったそのクラウ〇が委縮するかのように小さく遠ざかっていく。
・・・だが、そんな衝動的行動の結末はあっけない形で幕を下ろす。
次の瞬間、
強烈な赤い光が一瞬またたいたかと思うと残像を残し、視界から去って行った。
気がつけば、絶叫とも嗚咽ともつかぬ叫び声をあげていた。
ヤツは知っていた。
そして、それはワタクシも「わかっていた」・・・・なのに。
急激に失速するタイムマシンの横をあざ笑うかのようにヤツはゆっくりと本当にゆっくりと通り過ぎていった・・・。
「すごいな~コルベット、今日は乗ってきてないの?ちょっと見てみたいわ~w」
出頭した高速機動隊の事務所で、調書の合間に目を輝かせながらそう話す坊主頭でコワオモテの隊員を今でも思い出す。
一応、今はゴールド免許です。
Posted at 2026/10/11 06:50:36 | |
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