
今日はNASの整理をしていたら昔の写真が出てきて、ノスタルジーに浸りすぎてしまいました。
普段こんなことを書くタイプではないので、ちょっとポエムっぽくなってしまって申し訳ないです。
まあ、たまにはこういうのも許してください。
神奈川から広島まで、MR2で行ってきた。
片道17時間。
往復1600km。
目的は、遊びでも旅行でもない。
ちゃんと関係を終わらせるためだった。
長かった。
付き合っている間、相手から「一緒に結婚したいね」と言われていた。
俺も、そのつもりでいた。
だからこそ、相手の今だけじゃなく、その先のことまで考えてしまった。
2ヶ月契約のリゾートバイトを途中で辞めようとすれば、本当にそれでいいのかと思った。
仕事もせず、学生でもなく、ずっと親の脛をかじって生きていくような状態なら、それが本人のためになるとも思えなかった。
結婚まで考えているなら、なおさらだった。
ただ楽しく付き合うだけなら、そんなことまで考えなくてもよかったのかもしれない。
「本人がそうしたいなら好きにすればいい」
そう言って、もっと適当に接していればよかったのかもしれない。
でも、俺にはそれができなかった。
ちゃんと愛していたから。
相手がしんどいことから逃げてしまうような弱さを持っていることも、今になって考えれば分かっていたはずだった。
ODやリストカットに逃げてしまうくらい、自分一人で抱えることが苦手な人だった。
そんな相手に、俺の価値観で「こうしたほうがいい」「こうあるべきだ」と言い続けたことは、もしかしたら間違いだったのかもしれない。
でも、俺にとっては相手を責めるためじゃなかった。
一緒に生きていくつもりだったから、言わなきゃいけないと思った。
本当に相手のことを考えているなら、嫌われる可能性があることだって言わなきゃいけない。
何でも肯定して、「大丈夫だよ」と言うだけが優しさじゃない。
そう思っていた。
でも結局、そういう「ただ優しいだけ」の人のほうが、ずっと一緒にいて楽なんだろう。
俺はそこでも間違えたのかもしれない。
「共依存だね」と言われたこともあった。
でも、大事な相談は俺ではなく、俺の男友達にする。
その時点で、俺はかなりしんどかった。
そして、ちゃんと別れられていなかった頃。
なんとなく、相手がその男友達を好きになっているんじゃないかと思った。
探ってみたら、すぐに確信に変わった。
間違っていなかった。
俺は本人の口から言ってほしかった。
最後くらい、自分の口で言ってほしかった。
だから、言いやすい環境をいろんな方向から作った。
責めるためでも、追い詰めるためでもない。
ただ、最後くらいちゃんと向き合ってほしかった。
できれば最後は、俺のことをガッツリ嫌ってほしかった。
「もう無理」
「嫌い」
「あなたとは終わり」
そう言ってくれたほうが、俺も諦められたと思う。
でも、そうはならなかった。
だから、自分で終わらせに行くことにした。
MR2で、神奈川から広島まで。
片道17時間。
そして、話をして、帰ることになった。
帰り道。
どこをどう走ったのか、今でもあまり覚えていない。
ただ、すごく疲れていた。
関係が終わったことが辛かったのか。
17時間かけて来た道を、今度は一人で17時間かけて戻ることが辛かったのか。
それとも、その両方だったのか。
自分でも分からなかった。
高速道路を走りながら、なんで俺は泣いてるんだろうって思った。
笑ってしまうくらい疲れていて、高速道路の上にウサギがいるように見えたりもした。
今考えれば、完全に限界だった。
でも、当時は止まりたくなかった。
逃げるように呉自動車道に乗った。
そこからすぐ山陽自動車道へ。
広島を出る。
とにかく広島から離れたかった。
アクセルを踏む。
3S-GTEが回る。
タービンが回る音がする。
直列4気筒が、必死になって上まで吹け上がっていく。
その音が、あのときはものすごく心地よかった。
180km/hでも足りないと思った。
リミッターカットでもしようかな、なんてことまで考えた。
もちろん、今になって考えれば、そんな状態で速度を出すこと自体が危ない。
疲労でまともな判断ができていなかったんだと思う。
でも、あのときの俺には、MR2が必要だった。
タービンが回る。
ブーストが掛かる。
アクセルを踏めば、後ろから車体を押してくれる。
SW20はミッドシップだから、エンジンが自分の背中のすぐ後ろにある。
3S-GTEが唸るたびに、まるで「まだ走れる」と言われているような気がした。
俺がどれだけボロボロでも、MR2は何も聞かない。
慰めてもくれない。
説教もしない。
ただアクセルを踏めば、後ろから押してくれる。
それだけだった。
でも、それが良かった。
人間関係が全部めちゃくちゃになって、自分が何を信じればいいのか分からなくなっていたあの夜に、少なくともMR2だけは裏切らなかった。
キーを回せばエンジンが掛かる。
アクセルを踏めばタービンが回る。
シフトを入れれば前に進む。
ただそれだけ。
でも、あのときの俺には、それだけで十分だった。
生涯、何をやってもうまくいかない。
何かを大切にしようとすればするほど、手の中からこぼれていく。
良い人間であろうとすればナメられる。
相手のためを思って言葉を選べば、嫌われる。
最後まで好きでいようとしても、相手の気持ちは変わる。
そんな人生の中で、俺の後ろからずっと押してくれるMRがいる。
それだけが、妙に心強かった。
車なんて所詮機械だ。
壊れれば直す。
部品がダメなら交換する。
油脂類を替えて、壊れたところを直して、また走る。
人間みたいに「もう好きじゃない」なんて言わない。
こっちがちゃんと面倒を見てやれば、また走ってくれる。
だから俺は、MR2が好きなんだと思う。
速いからでもない。
古いからでもない。
希少だからでもない。
人生がどうしようもなくなったときに、こいつに乗ってアクセルを踏めば、とりあえず前に進めるからだ。
あの日、広島から神奈川まで帰れたのも、たぶんMR2のおかげだった。
途中で何度も泣いた。
何で泣いているのか自分でも分からなかった。
別れが辛いのか。
疲れているのか。
悔しいのか。
寂しいのか。
それとも全部なのか。
でも、3S-GTEが回っている間だけは、余計なことを考えなくて済んだ。
タービンの音を聞いていると、少しだけ頭が空っぽになった。
直4が一生懸命回っている。
車体が前に進む。
広島が遠ざかる。
そして少しずつ、神奈川に近づいていく。
あれから時間が経って、NASを整理していたら、あの頃の写真が出てきた。
また少し苦しくなった。
「絶対に離さない」
「捨てない」
「ずっと好き」
そんな言葉も思い出した。
結局、最後まで好きだったのは俺だけだったのかもしれない。
人間の気持ちは変わる。
それは仕方ない。
でも、自分で口にした言葉には、できるだけ責任を持ちたい。
俺は不器用だったと思う。
相手のことをちゃんと考えすぎた。
ちゃんと愛しすぎた。
もっと適当に接していれば、もっと楽だったのかもしれない。
でも、あのときの俺は本気だった。
結婚したいと言われたから、その先まで考えた。
相手の人生まで考えてしまった。
嫌われるかもしれないことも言った。
最後までちゃんと別れようとした。
そして、1600km走った。
だから今は、それでいいと思っている。
少なくとも俺は、俺なりに最後までやった。
そして、あの日の帰り道を思い出すたびに思う。
あのとき俺を家まで連れて帰ってくれたのは、もしかしたらMR2だったのかもしれない。
俺がどれだけ泣いていても。
どれだけ疲れていても。
どれだけ人生が嫌になっていても。
3S-GTEはいつも通り回っていた。
タービンもいつも通り回っていた。
そしてMRは、いつも通り俺の背中を押してくれた。
人生で何もかもうまくいかなくなっても、こいつだけは俺を前に進ませてくれる。
だから、まだMR2を降りるつもりはない。
これから先も、こいつと走っていこうと思う。
いつかまた、あの写真を見ても何とも思わなくなる日が来るだろう。
そのときにはきっと、あの1600kmの道のりも、ただの思い出として笑えるようになっていると思う。
その日まで。
俺はまた、3S-GTEに火を入れる。
キーを回す。
セルが回る。
エンジンが目を覚ます。
タービンが回る。
そして、MRは今日も俺の背中を押してくれる。