アルピーヌ V6ターボ5MT ノワール
内装は標準の黒革シート車に乗っていました。人生2台目の車です。今は無き、西宮市鳴尾のベルテイルの松井オーナーを通じてルノーインプ大阪に探して貰った車です。
フルオリジナルで乗っていました。
今は亡き母親がこの黒のV6ターボが滅茶苦茶お気に入りで、貴婦人みたいで素敵だと生涯言い続けていました。自分自身も大層気に入っていたからこそ後年紺色の2台目を入手することになったわけであります。(黒が格好良いわねと言われつつ、紺を購入。)
最後は東名高速上り線、藤枝インター近くでガードワイヤに激突全損炎上となってしまいました。関西の実家に帰省して横浜の自宅に戻る道中でありました。複数の事が幸いして、怪我も無く私は生き残れました。
1990年10月30日の夜であります。集中豪雨のような雨の中、追い越し車線を前車の大型トラックの後を走っていた私が、後方の大型トラックのヘッドライトの明るさに変だなと思ってルームミラーに目をやると、グングンとその姿が大きくなってくるではありませんか。
あっ、挟まれると感じた瞬間、挟まれるのか、いちかばちかステアリングを切って左に逃げるか、ステアリングを切ったらこの豪雨の中、ハーフスピンは避けられない、さあどっち。一瞬の私の判断は、走行車線に逃げるしかないと。そしてその結果が、ガードワイヤに接触、ギアを右手で押さえながら左手でステアリングを切って止まった瞬間、一瞬の間に頭の中でシミュレーションしておいた通りに、シートベルトをはずし、サイドシルにあるエマージェンシー用のドアオープナーを上に引き上げたら、ドアが開きました。ガードワイヤに角度を保って真っ直ぐにつっこめたからこそ、ドアが開くスペースが確保されていたのです。左側に運転席がありますからね。急いで車から降りた2、3秒後には車はフロントのガソリンタンクからの猛火に包まれて天を焦がす大炎上となりました。人間、究極の事態に直面すると、コマ送りのように映像化して見えるという事を生まれて初めて体験しました。手前名古屋方面に非常電話があったなと思い、歩き出したところ、1台の大型トラックが止まってくれて、運転手さんが、にいちゃん1人乗車か?ほんなら良かった。折角拾った命を大切にせなあかん。これ持って行きと発煙筒を渡してくれました。
お陰様で無事に非常電話に到着し、乗車は自分1人であること、救急車は必要ないですが、ガソリンの大炎上と伝え、パトカーと消防車の手配を頼みました。非常通報とは関係ありませんが、幸い携帯電話はポケットの中に所持しておりました。
パトカーで藤枝署に行き、事故の調書を作成してもらった後、タクシー会社の電話番号を教えて貰って携帯で掛けてタクシーに来てもらい、今度はタクシーの運転手さんにビジネスホテルを紹介してもらって、連れて行ってもらいました。
その晩は何ともなかったのですが、事故発生の翌日新幹線で関西の自宅に帰って寝て起きたら、立ち上がれませんで、2、3日這って暮らしている内に治っていきました。全身打撲の恐ろしさを味わいました。
シートベルトの跡は見事にタスキのような青タンができ、やがて茶色に変わり、その年の忘年会の出し物になってしまいました。(上半身裸で人間茶色タスキの披露)
事故の1週間後には再び藤枝市へ。今度は当時住んでいた横浜から、新幹線と在来線で。
消防の調書作成のため。事故の実車見聞はまさかの事態に。ボディがFRP製で燃えたため、灰になって雨で地面に落ちて流れさったと。エンジンはアルミ製で、溶けて金属のオブジェができ上がっているし、シャシーの鋼管がかろうじて残っているだけでした。消防署の皆さんが銘々車雑誌を買いに走ったとかで、調書よりも車の説明会が執り行われた次第です。皆さんご興味があったからです。アルピーヌの知名度が一気に上がってしまいました。
消防署の方々が、異口同音に貴方は守られている。もし脱出出来なかったら、骨も無い事になっていた。それぐらいの高温だったのだよと教えられました。だから、ガードワイヤとその支柱の修理だけで無く、路面の修理も必要かもと。満タンのせいで、フロントのガソリンタンクからの大炎上で済んだんだとも。浜名湖のサービスエリアでハイオク満タンにしていたんです。もし満タンにしていなかったら、爆発炎上で逃げる間も無く即あの世だったと真面目な顔で宣告されました。また、車両保険に入ってたかと問われ、入ってますと答えたら、良かったなと皆で喜んで頂けました。
事故当日、警察署で聞いた話しも滅茶苦茶恐ろしかったです。前の年、1989年にもこの時期同じような事故があり、BMWで車の全損だけで済んだとの事でした。2年前はポルシェ928で全損&乗員2名が大怪我との事でありました。
後日、1991年の10月か11月の新聞記事には衝撃を受けました。私が事故ったあの場所で、パジェロミニがガードワイヤを突き破って東名高速の土手から転落。乗員2名が犠牲になられたと報じられていました。
今現在も東名高速上り線、藤枝インター近くにオービスが設置されていますが、まさにその場所であります。
合掌礼拝。