
モノタロウで部材を集めて校正用エアゲージを自作してみました。
使っているエアゲージが不正確だと残念なのでJISマーク付きな精度が確かなエアゲージを作って、時々手持ちのゲージを校正できるようにする
|
という目論見です。
この投稿内容は「作成するにあたり無駄に沢山調べたもののメモ」です。先に投稿した整備手帳で「(エアゲージの)精度については気にしてません」と書いておきながら「精度精度と何回も書いとるやんけ」...な感じですがそんなものなので悪しからず。
事前調査
■ JIS について
よく見かけるアナログエアゲージの圧力計は「ブルドン管式」というもののようです。この形式の圧力計のJIS規格は、「JIS B 7505-1」でした。
「B 7505-1:2017、アネロイド型圧力計−第1部:ブルドン管圧力計」
https://kikakurui.com/b7/B7505-1-2017-01.html
このJIS規格を参照して色々調べてみます。
今回JIS規格から調べたものの主な点は、
です。
■ 誤差について
ブルドン管式圧力計 JIS B 7505-1 の「7. 精度等級及び最大許容誤差」によると、精度等級(CL/クラス)には、0.6級、1.6級、2.5級などがあります。圧力計の場合の各級の意味は誤差 ±0.6%、±1.6%、±2.5%とのことです。
※ 製品によっては 0.5級のものもありますがISOにはこの級がありますがJIS規格にはない級なのでJISマークは入っていないのかも知れません(?)
圧力計の誤差は等級(CL)とフルスケール値から算出され、
[許容誤差] = [フルスケール値] x [等級] / 100
という計算になります。
例えば、測定値が 200kPa と表示されたとしても、それぞれ真値の範囲は、
[フルスケール 400kPa 1.6級の圧力計]
193.6kPa 〜 206.4kPa
[フルスケール 300kPa 1.6級の圧力計]
195.2kPa 〜 204.8kPa
[フルスケール 300kPa で高精度な 0.5級の圧力計]
198.2kPa 〜 201.8kPa
のように、等級が高いほど、また、フルスケール値が小さいゲージほど誤差が少ないということになります。
さらに...この±1.6%などの値は中央の80%の領域(目盛範囲A)のもので、その外側10%の低い方と高い方の領域(目盛範囲B)の誤差は大きな誤差で規定されています。
※ そこまで外側は使わないとは思いますが
| 製品 | フルスケール (kPa) | 精度等級 (CL) | 許容誤差A (kPa) | 許容誤差B |
| 高精度圧力計 | 300 | 0.6 | ±1.8 | ±2.7(±0.9%) |
| 一般圧力計 | 300 | 1.6 | ±4.8 | ±7.2(±2.4%) |
| 一般圧力計 | 400 | 1.6 | ±6.4 | ±9.6(±2.4%) |
| 一般圧力計 | 500 | 1.6 | ±8.0 | ±12.0(±2.4%) |
| 手持ちの古いカート用 | 294.2(3kgf/cm2) | 1.5 | ±4.4 | |
| | | | |
| 今回の自作エアゲージ | 400 | 1.6 | ±6.4 | ±9.6(±2.4%) |
■ 検査証明書
誤差にこだわるならば検査証明書が欲しくなります。今回モノタロウで買ったものも証明書付きが+1万円で購入できるようです。
持ち込みサービスもあるようですが結局新規購入と似たような費用がかかり、そもそもずれていたとしても修正もできないでしょうから、証明書付きを購入する方がコスパは良いのかなという印象でした。
建前としてはJIS規格の製品でモノタロウという通常の流通経路で販売されているものであれば、初期不良や輸送事故がなければ規格通りの性能で納品されていると考えられると思いますので、今回はその認識で証明書はないものを購入しました。検査証明書があると出荷時の誤差がわかるので面白そうではありましたが。
■ 耐久性に関すること
[ご注意]
自分用のメモです。素人の戯れ事をダラダラとメモしてますので読み飛ばし推奨です
耐久性に大きく影響するのは「繰り返し使用による摩耗と疲労」「吸い込む物質による汚れ」「ゼロ点ストッパーによる針のずれ」ではないかと思いますので、この観点で色々確認してみました。
JIS B 7505-1 によると、耐久性に関係しそうな項目の用語の定義としては、3.8、3.9 にある、
[定圧力] ... スパンの1%/秒、スパンの5%/分
[変動圧力] ... スパンの10%/秒
があります。定格条件は、8.1 にある、
[定格常用圧力] ... 使い続けて良い上限は、定圧力使用の場合3/4、変動圧力の場合2/3
とのことです。
「スパン」は最大圧力と同じになると思いますので、400kPa の場合の 1% は 4kPa、10%は 40kPa ということで、
変動圧力としてみても200kPaを測定するには5秒かける
|
ことになります。
実際の現場においてはこのような使い方はできそうにありませんが、
「JISで定義されているこの条件で使うと長期に安定して使用できる」、もう少し勝手に解釈すると
「この使い方に近い方が長持ちする」ということだと思います。
市販品を調べているとリリーフバルブ付きのものでしっかりとした設計のものは、加圧時にリリーフバルブ部で減圧される仕組みが組み込まれているものがあるようです。
ゲージボタルEXで内部構造のイラストがあってなんのことか分かりませんでしたがこのことの説明なのかも知れません。
※ さすがに5秒かかけるようなことではなく実用範囲での対策をしているという感じではないかと思いますが
さらにJISを見ていくと、「12.8 耐久試験」の項目があり、こちらの試験では、
1秒間隔で最大圧力に対して30%から70%の脈動圧力を15,000回」かける試験
|
をクリアすることが要件となっています。定格を超えるような激しいことをしても最低限性能が維持される目安ということかと思います。
ただし、エアゲージの耐久性については、このような繰り返し使用による
「内部の疲労や摩耗」と、使っているうちに
「内部に付着する油水分や埃などによるもの」と
「ゼロ点ストッパーによるもの」と思いますが、この試験でもって前者2点については実際の使用で15,000回行ける、というわけではないと思います。
ちなみに、机上の空論で15,000回を計算すると、
耐久試験の 1/3回として5,000回
1回にタイヤ4本測って 1,000回以上
月に4回測って20年
|
ということになります。が、実際にはそんなに長持ちしないと思います。
現実との違いでいうと
「この耐圧試験は最低圧力が30%なのでゼロにはしない」というところが大きいと思われます。つまり、ストッパーによる針の故障はメーカーの対策次第という感じでしょうか。
ということで、市販のエアゲージにはホールド機能がついているものがありますが、この機能があれば少なくとも減圧時にゆっくり抜くということができて良いという印象がします。また、ゼロ点ストッパーが無いものであればそもそも針がぶつかる故障も減り長く使えることになると思います。
※ いい加減な設計のものだと針が内部ギアを超えて0に戻らなくなる心配があるようですが
■ ネジの規格について
G ... 並行ネジ。ISO規格と同一。ISO規格ではBSPP
R ... オスネジ。55度テーパーネジ。旧JISのPTと同一。ISO規格と同一。ISO規格ではBSPT
Rc ... R規格のメスネジ
PT ... 55度テーパーネジ。旧JIS規格。ISO規格と同一のRネジと同一。
NPT ... 60度テーパーネジ。アメリカ独自規格
| よく見る表示 | 山の角度 | JIS規格 | ISO規格 | 備考 |
| G | 並行 55度 | 新 | BSPP | 平行ネジ |
| R | テーパー 55度 | 新 | BSPT | 同一のテーパーネジ |
| Rc | テーパー 55度 | 新 | BSPT | |
| PT | テーパー 55度 | 旧 | BSPT | |
| NPT | テーパー 60度 | アメリカ独自規格 | 独自テーパーネジ | |
新JIS表示に移行していると思いますが、実際の現場は未だ過渡期で、 G, PT, NTP をよく見かけ R/Rc は見たり見なかったりな印象ですが、要するに、GとPTは別物。R/RcとPTは同一という感じです。また、これられとは全く別にNPT規格のネジがあるという感じだと思います。
■ ネジの規格と圧力計のサイズの関係
JIS B 7505-1 の 11.3 に圧力計のサイズに対する標準的なネジのサイズが規格化されています。
※ 別のサイズでの特注も認められています
標準的なネジはRもしくはGで、サイズは 60φ は 1/4、75φは 1/4もしくは 3/8、100φは3/8または1/2と規定されています。
75φは規格上は色々選べそうですが、実際の製品の多くは G3/8 でした。
60φでR1/4の圧力計を選べば直にスイベルやニップルに接続できますが、75φ以上では簡単にニップルに接続可能な口金の製品が無くて形状変換するのに費用がかかりました。
部材の調達
■ 選定
気持ち的には 0.6級の圧力計を選びたいところですが、流石に圧力計本体だけで2万円程度することになるので候補から外れ、一般的な 1.6級で制作することにしました。
1.0級でそこそこな値段ならば...と思いましたが1.0級で入手が簡単にできそうなものは見つかりませんでした。
フルスケール値は、常用するならば最大測定値を考慮しても良いかも知れませんが校正のみで考えると少し低めでも良いのではと思います。
とはいえ、現在のメインがXL規格のタイヤなので、いちいちエアを抜いて測らないといけなくなるとそれは面倒なので300kPaまでで使うことにしてフルスケール 400kPa 1.6級( ±6.4kPa )のものにしました。
表示盤のサイズはせっかくなのでそれっぽく見える少し大型の75Φのものにしました。
ちなみに、60φと75φのものは1.6級まで、100Φのものは0.6級など高い等級のものがあるような印象でした。
■ 購入したもの
合計で8,500円程になりました。
モノタロウで以下のものの購入とホームセンターで耐圧ホース 50cm を購入しました。
合計 7,542円(税別)/8,296円(税込) + ホース 300円
| メーカー名 | 品名、規格 | 価格 |
| ミシュラン | ダイヌゲージ用エアーチャック タケノコ7.8mm | 659 |
| TOKO | 一般圧力計A形Φ75(簡易防滴型) BL-AT3/8G 75x0.4MPa | 2,968 |
| TASCO | 圧力計用ジョイント TA271CA-32 G3/8 x R1/4 | 2,528 |
| モノタロウ | 内ネジホースニップル PT1/4 タケノコ8mm | 417 |
| 千代田 | ロータリージョイント RJ-2F-2M RxRc 1/4 x 1/4 | 516 |
| カクダイ | ニードルバルブ | 1,209 |
■ 圧力計について余談
今回は校正用測定器っぽく75φの約3千円の大きめサイズの圧力計にしましたが、60Φなら圧力計が2千円程度になります。
60Φの圧力計で口金がR1/4のものになると、R1/4-タケノコ8mm 400円弱のニップルに直接接続してニードルバルブも省略するとトータルで4千円ほどで作れそうでした。
ちなみに、JIS マークが無いもので誤差±1.6表示のものであれば、75Φで2千円程度、60Φならば千円程度で購入可能ですが、今回はなんちゃってですが測定器として使用したかったのでJISマーク付きのものにしました。
組み立て
■ コネクタの接続関係
以下のように規格の変換をしながら接続しました。
G3/8 [圧力計]
↓
G3/8 -> R1/4 [圧力計用ジョイント]
↓
Rc1/4 -> R1/4 [ロータリージョイント]
↓
Rc1/4 -> R1/4 [ニードルバルブ]
↓
メスPT1/4 -> タケノコ8mm [ホースニップル]
↓
8mm [ホース]
↓
タケノコ7.8mm [エアーチャック]
ちなみに、内径10mmのホースを使うならば G3/8 で 11mmのタケノコが400円弱でありました。
しかし...圧力計の受けは底面も平行研磨された圧力計ジョイントを使うのが正しい取付けとのことですので一般のGソケットを使う場合は自己責任という感じのようです。
今回のように全部部品で揃えるのではなく、安い完成品のエアゲージの圧力計を取り外して欲しい規格の圧力計に交換すると安上がりになりそうです。
ちなみに...アストロの圧力計のメーターを外してみました。ネジサイズはどうやらアメリカ規格の並行ネジ 1/8 NPS のようでした。
※ 投稿時、「樹脂製?」と思っていたのはシール剤がこびりついたものでした
いろいろなものをつけてみてその差から想像。写真とは別の 1/8 NPTが一番奥でギリかかる感じでした
■ 完成品
このような感じになりました
校正結果
手元のアストロのゲージと古いカート用のTOKOゲージ(ゼロ点調整済み)で測定してみました。

このように、カート用TOKOゲージもゼロ点がかなりズレていましたので調整してから確認しました。
校正用エアゲージで
270kPa, 250kPa, 200kPa, 170kPa に調整して測定した結果が以下です。そもそも校正用エアゲージの誤差が±6.4kPaあるので結果の見方には注意が必要です。
検査証明書が欲しくなるところです
ひとまず大幅に狂っていたアストロのゲージはゼロ点調整で復活したようにみえました。
密かに、電動ポンプのエアゲージもそこそこ正確そうなことが確認できました。
まとめ
ひとまず自分なりのこだわりで制作した
「高精度」とはいかないまでも
「精度が確かな校正用エアゲージ」ができたのではないかと思います。
※ 自己満足です
校正結果は、
という感じでした。
実は「耐久性に関すること」の項目のJISで規定されている規格を調べているあたりでうすうす気づき始めましたが、
圧力計のみ高性能にすることはある程度可能そうですが、市販の高級エアゲージのように製品としてトータルで高性能にするのはなかなか大変そう
です。
費用について
ちなみに、かかった費用的には、使えない部品を買ったりして勉強代もかかったので、トータルで1.5万円ほどになりました。
お高いゲージボタルEXが、
AGE-600(チャック無し) 17,800円
AGE-600-F48 21,700円(実質2万円)
で買えるので費用的にはアレですし使い勝手もアレですが得られた知識は多かった気がします。
費用もかかったし得られたものは正しい知識かどうかは分かりませんがDIYなので調べる行為が目的なところもあるので、まぁこんなものだと思います。
■ 汎用圧力計とエアゲージの圧力計のダンパーの違い
今回制作した圧力計は何も対策せずエアバルブから一気に外すとサイズが大きいこともありかなりの勢いでゼロ点に戻りますが、アストロのエアゲージを使ってみるとアストロのエアゲージはゼロ点への戻りが少し穏やかな気がしなくもありません。
※ 「気がしなくもない」なので気のせいかも知れません?
もしかするとアストロのゲージは衝突対策がされているのかも知れません(?)
今回制作したものはゼロ点ストッパーへの衝突問題対策でバルブを入れました。
■ 結局行き着く先はあのエアゲージ?
調べてたり作ってみたりして改めて良いエアゲージの良さを知って
「良いエアゲージの購入意欲が増した」という残念な結果な気もします。とはいえ日常使いすればどんなに高いエアゲージであっても空気を吸い込む以上老化には勝てないし、対策をしているとは言え普通に使っていても
「定格以上の使い方をする消耗品」という印象もしました。
ただ...来年の今頃はゲージボタル使っている気がします。DIY的には今回制作した校正用エアゲージの圧力計部を検査証明書付きにして誤差を確定させてゲージボタルのチェックをしながら使うというのが理想かな、と思っています。
※ デジタルの方が狂いにくいかも?という印象が今回したのでデジタルで考えるかも知れません? まぁ、アナログメーターの方が好きなのでアナログのままだと思いますが
■ アストロゲージのその後
アストロのエアゲージはまだ半年程度しか使っていませんでしたが最初は特に変には感じませんでしたが気づけば大幅にずれていた感じでした。
狂ってしまった理由が当初分からなかったのですが、エアゲージを作成している過程で自分のコンプレッサーの扱い方が間違っていたことによるゲージへの過負荷が原因なことが判明しました。
ひとまずゼロ点修正で復活した感じで
一軍復帰です。
■ デジタル式についての余談
「デジタル式良さそう」ということで少し調べてみました。
どうやらイマドキはパッケージ化された圧電MEMSセンサーが安定的に大量生産されていて、それの品質が良くて安価なデジタルエアゲージでも公称は2.5級(400kPa ±10kPa)であっても、実際にはそれ以上の精度が出る場合がかなり多いということのようですね。しかもブルドン管式のような機械的な弱さが無いので取り扱いによる故障誤差が発生しにくいようで。
どの製品を買っても中身のチップがほぼ同じで似たような意外と良い精度が出るような状況なのかも知れません。
アナログな工作が楽しめるのも今のうちかも知れません...