秋うららな日差しに照らされつつ自宅警備もそろそろ終わりを告げるのか?
とかいう神託が下される予感のする日々を過ごしてますが、皆様いかがお過ごしで。
ハゲ散らかった上に脳味噌のダシも薄くなり気味であるっぽいこのワタクシに、
あろうことかこんな質問がやってまいりました。
アウトインアウトって何なの?死ぬの?
・どんなラインを引けばいいの?
・そもそもやる意味自体があるの?
ごもっともな質問ですが、
俺も良く解ってないんだけど、
それでもよろしければ知ったかぶり講釈にお付き合い頂ければと。
そもそも、コーナリングスピードってどうやって決まるのか?という話ですが、
残念ながらこのBlogエントリは「自動車の教養」カテゴリなのでチョット数式を使います。
定常円旋回をしている状態というのは、クルマが自重等で路面に押し付ける力と、
コーナリングによる遠心力が釣り合った状態の事を言います。
ダウンフォースの事は考えずに、コレを教科書(?w)を見ながら書き直すと、こうなります。
摩擦力 = 遠心力
↓
車重(kg)x 重力加速度 x 摩擦係数 = ( 車重 x 周速の2乗 ) / カーブ半径
↓
周速(m/sec) = ( 摩擦係数 x カーブ半径(m) x 重力加速度 )の0.5乗
※0.5乗を計算するのに電卓で叩く場合は「√」のボタンでも押してください。
とかいうところで具体的なコースを考えて線を引いてみる作業に移ろうと思います。
用意したのはヘアピンコーナーといえばこのぐらい?という気がしないでもない、
「道幅15mの30R」とかいうコーナーを通過する事を考えてみます。
15mの道幅っつーと一般道ではあり得んと思いますが、例って事で。

図1 : 30Rと45Rの走行ライン例
ぐるっと回り込むコースですが、手前に15m程度の直線部分もついてます。
この15mの直線部分ってのがミソなんですが今はさておいて、
「直線部分はコーナリングスピードと同じ速度で通過」というルールで計算。
とりあえず距離的には最短であろう30Rコースと、一番外側を通る45Rコースで、
どのぐらいの差が出るかちょっと計算してみましょう。
青色のコース(30R) : 5.04秒 ( 周速は55.1km/h )
赤色のコース(45R) : 5.36秒 ( 周速は67.6km/h )
※円周率は3.14で計算、少数点第2位で切上げ
※摩擦係数は0.8で計算
※重力加速度は9.8で計算
直線部分では加速/減速があるのでもう少し実際の差は詰まると思いますが、
15mも道幅があるのに0.32秒落ち程度しか変わらんみたいですな。
両者のスピード差が12.5km/h程度なので0.32秒落ちの差が1.11m程度みたいっスね。
ハナ差ぐらいってところでしょうかね。
そこでもう一捻りして、赤色のコースの通り方を変えたらどうなるか?

図2 : アウトベタラインをイン側にズラす
(アウトインアウトの一例)
図2の場合、赤色コースは直線区間が無しになるので円弧の長さを周速で割った時間のみ、
という計算になるので「ええっ?!そんなに?」という結果が。
青色コース(30R) : 5.04秒 ( 周速は55.1km/h )
赤色コース(45R) : 3.76秒 ( 周速は67.6km/h )
※円周率は3.14で計算、少数点第2位で切上げ
※摩擦係数は0.8で計算
※重力加速度は9.8で計算
あらあら、なんか遠くを通ってる気がするのに通過時間はむしろ、
外周コースが4秒も上回ってるという不思議な現象が発生します。
通過速度等は図1の時と変わらんのに1.28秒差だと大体4.45m程度の差になるので、
小型乗用車であれば1台分というか1馬身差とかの差なので大きな差ですな。
もっとも、遠くを通ってる気がしますが経路の長さを測ると、
赤色コースのほうが29m弱短いので当たり前かも?といえばそうかもです。
とはいえ、アウトインアウトの何が難しいのかというと、大抵は道幅なんて一定ではないし、
ゆえに理想的なラインとか言われる物体の位置を見極めるのも難しい訳ですが…
なんでコース幅をいっぱいに使わないんだ!
んもー全然インに寄れてないじゃーん!
とかいう怒号、でなくて指導が飛ぶのも、前述までの理屈があってこそなのかと。
図2を見れば解るとおり、「コース幅をいっぱいに使う = 大きい円弧を描く」ということで、
コーナリングスピードを上げる事が可能であることもそうなのですが、
「回転半径が大きくて周速が低い = タイアに掛かる負担も減る」ということもあり、
何れにせよ「大きい円弧を描いてコーナーを曲がる」のはメリットが多い感があります。
でも30RといえばFSWの
ヘアピンコーナーぐらいじゃん納得いかねー
というのもあるかと思いますがコース図や車載映像を見る限りでは…
○そもそも回りこむ角度が90度未満(30度あるか?)
○道路自体に少しバンクが付いてる
○道幅が広いのでもっと大きな円弧を描ける
とかいう要因もあり、まさか67.6km/hとかで通過することはないと思います。
暇だったらコース図からコーナー外周の長さを計算してやってみるといいかも。
レーシングカーの様に、ダウンフォースを含めて「路面に押し付ける力」が強く、
タイアの摩擦係数も高い(F1用だと1.6とか?)というクルマならともかく、
いわゆる「ハコ車」と呼ばれる乗用車の場合においては「急」が付く操作は向いてない、
という話になってくるような気がします。ジワジワと「寄せ」とかするという意味で。
いわゆる、スポーティー(笑)なドライビングとして思い浮かぶところの
ギャンっ!と止まって
ギュンっ!とハンドルを切って
バカーンとアクセルを開けて
とかいうのをヤッてるのはダメだよという、
なんかどっかのDVDで聞いたような話があるのもこのへんからかと。
ゆえに、普段から丁寧な操作を心がけて練習しましょう(普段の癖が絶対出るから)
とかいう「それって安全運転の勧め?」と思わないでもない話は、
一般人のスポーツドライビングにも活かせる話にも思えてきます。
もっとも、アウトインアウトをやりたかったらラインの勉強もそうですが
「きっちりと車輌をコース外側/内側に寄せる車両感覚」
というのをしっかり会得しておくのも大事でして、別にコレは街乗りでナンボでも練習できるし、
とはいっても事故っちゃったりしないように気をつけるのは当たり前ですが、
サーキットに走りに行かなくても出来る練習って確かに腐るほどあるなとも思います。
あでおす
追記 :
大変申し訳ありません。
初出の計算結果が間違ってましたので訂正します。
つーか「なんか30Rって割にスピード低くね?」と思って考え直したら、
垂直抗力(クルマが発生する摩擦力)の計算に重力加速度が入ってませんでした。
謹んでお詫び申し上げます。
初出の結果に9.8の0.5乗( 約3.13 )を掛けた数が正しい速度の値になります。
本文中の結果は初出から訂正してあります。
結果の傾向についての話の筋は変わりませんが…
バカ過ぎる… or2
追記2 :
この記事の補足 → https://minkara.carview.co.jp/userid/373596/blog/20368891/
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自動車の教養 | 日記
Posted at
2010/11/11 16:33:54