電波ではなくて電パ、つまり電動パワステの話。
詳しい話…というか積もる話は本編で落書き始めたけど、こっちは短縮版で。
電動パワステとは?
操舵力を検知してモータで操舵力をアシストする機械、なことぐらいはご存知かと思う。
なのだけど、じゃあその制御は何を制御してるの?という話を少々。
例えばステアリングをセンター位置から左右どっちかに操舵、ある角度で保舵するだかラックエンド突き当て後にセンター位置へ戻すなんて操舵した場合のグラフを適当に手書きしてみたんじゃが。
じゃが。
上記図において、緑線の入力(操舵力)に対して橙線の出力(モータトルク)を発生させる制御をするんじゃけども、モータトルクが足らないと緑線の高い所がもっと高くなったりもするし、最近だと車速に応じてモータトルクを変えて操舵感をアレしようとかいう小細工があったりs
…とかいう機能的な話というよりは、もっと根本的な制御のよもやま話。
モータは簡単には回らない
モータ?電池につなぎゃすぐ回るっしょ、というのはブラシモータの場合の話。
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ところが電パに主に使われているブラシレスモータは、単に電池に繋いだだけでは回ってくれない。
ブラシモータの場合はブラシという機構が回転角を検知するセンサの役目もあるので適度に回転力を出してくれるのだけど、ブラシレスは名前のとおりブラシがないので、回転角を検知する何らかの手段を併せてコイルに電流を流す必要がある。
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ラジコンカー用途でもブラシレスモータを使ってるみたいだけど、ブラシがないのでメンテナンスフリーに近いブラシレスモータは自身を回転させるのに何らかの制御器が必要なのはそのため。
つまり電パの制御として必要なのは「モータをどのぐらい回すか?」だけではなく、「そもそもモータをどう回すの?」という制御も行っている訳じゃ。
細かいことは適当に google 先生に聞いてほしい(というか俺は説明できるほど詳しくない)けど、例えば3相交流モータで動かすなら3相2軸変換→…→中点変調→…→2軸3相変換とかを含むベクトル制御を行ってるはずで、コレがまた普通に本が何冊か書かれちゃうぐらいの理論の賜物なんですよエエ。
モータは滑らかに回ってくれない
動力とかに使うのであればあんまり気にならないが、操舵用に使うとなると問題が一つ露見する。
実は細かく見ると、モータ出力トルクは一定ではなく結構波打ってるのである。
その波打ちっぷりを「リップル」と言ったりする。
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上記動画だと影響としては動作音に現れてるけども、その波打ちの影響は具体的に言うとステアリングの振動となって出てくるって話。
人間の手の触覚ってかなり優秀で、数字だけでは小さいリップルに思うんだけど、いざ組み付けてみると「あ、駄目だこりゃwww」っていうのが稀によくある、というか普通にあるから大変。
それを解消すべくアレやコレやと制御を入れてるのだけど、その具体的な方法は複数冊の本ができちゃうぐらいに一杯あるし、俺も全部を知らないどころか専門外過ぎるので割愛する(´・ω・`)…
つーかトルクリップルが発生する原因はクッソ沢山あるんじゃ。
基本的にはハードウェア的に生ずる要因をソフトウェア的に補正して消す…というより「更に細かい振動(次数の高い振動とか言うらしい)にしちゃって、人間にわからない領域に追い出す」という手段を取ったりする。
余談だけど、「6発エンジンは一次振動が~」とかしたり顔で言う人がたまにいるけど、「一次振動ってなんですかー?」とか聞いてみそ。
ちゃんと答えられるヒトってクルマ趣味界隈の人間だと圧倒的に少ない気がする。
操舵力という入力の問題
前述の【滑らかに回らないモータ】の影響での振動がステアリングに伝わって、入力がガタガタになる…という問題を仮に解消できたとしてもだ。
物凄い短時間(1/1000秒とか)の単位で反応して出力トルクを変更する…というのは割と適当に作っても出来る話だったりするのじゃが、そもそも人間が操舵するという時点で【入力トルクも酷く波打ってる】という問題や、ギアボックスとタイアと組み合わせたときの周波数特性の問題というのがある。
ギアボックスとタイアを履いてステアリングを回した時の応答性とかいう話になると制御工学の出番となってきて、離散時間におけるアレがナニとかいう議論が始まった挙げ句にゲインや位相の余裕が足らないとかいう議論が出てきて
アタマ沸騰しちゃうよぉぉぉぉ というアレが始まることになる。
あとはドライバーが操舵した時だけでなく外力で操舵される場合(ワダチを踏んだとかサーキットで縁石乗ったとか)とかも考えなくてはアカンので、なかなか一筋縄にはイカン難しい制御だったりするのじゃコレ。
つーか昔は ECU というか制御に使う
マイコンの性能がクソもクソだったので複雑な処理はデキなかった 、近年は工学的で複雑なアルゴリズムを入れたもリアルタイム性(※)が確保できる性能があるので、別の意味で沼にハマってる…という気がしないでも。
更には安全性のためにアレがナニで冗長構成したらギャー!!!とか結構枚挙にいとまがない分野だったりしなくもないのが電パの世界だったりする。
【電パキット】ってどーなんだろー?
話がちょっと難しくなっちゃったけど、要は昔のように「パワステ移植したろ」とかいうのが電パって結構難しいはず、車両によって特性が違うのがモロに制御に影響するので単純な移植って難しいのが電パのはず
…と思ってたんだけど、旧車とかで【電動パワステにしました!】とかいうのをボチボチ見るので、アレってどーしてんだろーね?というのが割と疑問。
とりあえず舵が切れればいい!というなら割と適当な制御…というか、そこまで難しくない制御を実装すればイケそうではあるが。
はて、さて。
電パの制御を切りたい!
サーキットで乗ったら変にハンドルが重くなったりするし、電パの制御を切りたい!とかいう話を聞くけど、どーだろね。
車両の仕様によるとしか言えないというか詳しくは判らんけど、あと付けのトラクションコントロールとか全カット出来る装置とかの制御からは対象外だと思うぞ、電パは。
というか電パの制御切ったらマジ地獄(重ステとかいうレベルじゃない※)になるんで、一般道で似たような症状が出るかどうか試してからメーカーの相談室にタレこんだら解決してくれるかもね。
個人的には
油圧パワステってホント良くデキてる機械だな と思うんじゃが。
じゃが、世の中のアレからすると油圧パワステの復権はないんだろうなぁ…残念。
(※)リアルタイム性:
演算が速いというのは回答として50/100点の内容。
もう少し詳しく言うなら、所定の演算が所定の時間内に得られる事が大事。
20年前のマイコンじゃ PI 制御の簡単な実装がせいぜいだったと思うよ…?
(※)重ステというレベルじゃない:
電パのアシストを想定したギア比で設計してると思うので、
電パというかアシスト力がなくなったら今のクルマはマジ操舵が地獄やぞ…多分だけど。