HONDA公式より
⁂最近遠くからプリウス来ると、プレリュードかと思ってしまう(笑)。
プレリュードのように“復活”をテーマにした車が、抽選販売という手法を取ったとき、
私たちの心理はどう動き、どのように市場の数字を歪めてしまうのか――。
その構造を、心理学とマーケティングの視点から考えます。
◆1. 希少性バイアス(Scarcity Bias)の威力
人間は「手に入りにくいもの」を、実際以上に価値あるものだと感じる傾向があります。
心理学ではこれを希少性バイアスと呼びます。
「限定」「抽選」「先着順」などの言葉は、理性ではなく感情を直接刺激します。
つまり、ホンダが“抽選制”を採用した時点で、多くの顧客は「欲しい」ではなく「当たりたい」という感情で行動している。
その結果、購入意志のない応募までをも受注数としてカウントしてしまう構造が生まれるのです。
◆2. “購入”ではなく“参加”としての応募心理
抽選販売は、購入そのものよりも“イベント化”しやすい。
特にSNS時代では、「当たった!」「落ちた!」という投稿が波のように広がります。
このとき、多くの応募者はクルマそのものよりも抽選という体験に参加している。
いわば、販売が「所有」ではなく「体験コンテンツ」に変化しているわけです。
この現象を行動経済学では「ゲーム化された消費(Gamified Consumption)」と呼び、近年では高級スニーカーや限定家電などでも同様の購買行動が見られます。
◆3. “一度逃すと買えない”という損失回避バイアス
人間は「得をすること」よりも「損をしたくないこと」に強く反応します。
これを損失回避バイアス(Loss Aversion)と呼びます。
「今申し込まないと二度とチャンスがないかもしれない」――この感情が、購買動機を理屈抜きに高める。
つまり、プレリュードの初期応募ラッシュは、
“本当に欲しい人”よりも“逃したくない人”の集団心理が後押ししていた可能性が高いのです。
◆4. 数字の“膨張”と報道の連鎖
抽選方式で得られた応募数は、実際の販売見込みを超えて膨らみやすい。
それが「受注〇〇倍」という見出しに変わり、さらに報道が人気をあおる。
ここで重要なのは、報道が「応募数」と「実際の納車数」を区別していない点です。
メディアが「8倍の人気」と報じた時点で、社会はそれを“事実”として受け止めてしまう。
こうして、マーケット心理が現実を上書きしていく現象が起きます。
◆5. 抽選制がブランドに与える両刃の効果
抽選販売には二つの側面があります。
一方では「プレミア感」「ファンの熱意」を高める強力な装置。
しかし他方で、「買えないブランド」「遠い存在」という印象も同時に生み出します。
つまり、短期的には盛り上がっても、長期的には心理的距離を広げるリスクがあるのです。
ホンダがこれをどこまで計算していたか――それは今後の通常販売フェーズの展開で明らかになるでしょう。
◆まとめ:数字よりも“心理の温度”を読む時代
今回のプレリュード抽選販売は、マーケティング的には見事な成功例と言えます。
しかし、2400という数字の背後には、**人間の心理的な“熱”**が織り込まれている。
それを読み解くことが、今後のクルマ社会を考える上で欠かせない視点です。
数字は冷静でも、心は常に熱を持つ――その交差点にこそ、プレリュードという名前の意味があるのではないでしょうか。
Posted at 2025/10/08 14:04:59 | |
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