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2025年11月10日 イイね!

スープラが眠りにつく夜、プレリュードが目を覚ます朝に

スープラが眠りにつく夜、プレリュードが目を覚ます朝にトヨタが、スープラの生産を終える。
そんなニュースを読んだとき、何かが胸の奥で小さく崩れた。
それは悲しみというより、ひとつの“リズム”が止まったような感覚だった。

スープラという言葉には、不思議な響きがある。
鋼のように硬質で、しかしどこか夢の中の音のようでもある。
90年代の空気を知る者にとって、それはただの車名ではない。
あの頃の深夜、海沿いの道を走り抜けるエンジン音、
心臓の鼓動と混ざって響いたあの低い唸り――
それらすべてが「スープラ」という名に溶け込んでいる。

だが、時代は変わった。
車が詩を語る時代は、もう終わりに近い。
今、道路を流れているのは、効率と安全性と沈黙のエネルギーだ。
それは悪いことではない。むしろ正しいことだ。
けれど、どこかで誰かが静かにため息をつく。
「これでいいのだろうか」と。

社会学者なら、こう言うだろう。
“個の速度から、集団の静寂へ”。
スープラの終焉は、一台の車の消滅ではなく、
「加速する夢」という概念そのものの終わりなのだと。

そんな中で、ホンダはプレリュードを“再び”この世界に呼び戻そうとしている。
名前の意味は“前奏曲”。
それはつまり、何かが始まる前の、あの静かな一瞬を指す。
プレリュードはかつて、都市の風景の中で最も美しい孤独を描いた車だった。
恋人を乗せた帰り道、交差点の青が雨に滲み、
ワイパーがその記憶をゆっくりと削り取っていく――
そんな時間を知る車だった。

そして今、その前奏曲がもう一度奏でられようとしている。
けれど、それは“同じ曲”ではない。
時代が変わり、聴き手が変わり、
音の意味が変わってしまったのだから。

学術的に言えば、それは「感性の再定義」である。
エンジン音はもう“力”の象徴ではなく、
“記憶”の残響になった。
プレリュードがもしこの時代に生き延びるとしたら、
それは速さではなく、静けさの中に宿る詩情によってだろう。

スープラが夜に消え、プレリュードが朝に現れる。
それは交代劇のようでいて、実は同じ旋律の別章にすぎない。
時代は、形を変えてもなお、
人が何かに心を動かされる瞬間を探し続けているのだ。

そして、私たちもまた――
静かにエンジンをかけ、
その音の奥に残された“人間の鼓動”を、まだ探している。
Posted at 2025/11/10 08:07:42 | コメント(1) | トラックバック(0) | 日記

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