
街灯の下で、新型アクアのフロントがふと光を拾った。
その瞬間、僕は思いがけず昔のセリカGT-FOURを思い出してしまった。
理由なんて、きっと誰にも説明できない。
ただ、あの鋭い目つきが、記憶のどこか深い場所を刺激したのだ。
アクアZのヘッドライトは細く、ひどく静かだ。
まるで、夜の海の水平線を薄くなぞったような光の線。
それはかつて峠道を駆け抜けていった
セリカの切れ長のランプと、どこか重なるところがあった。
ボンネットに浮かぶ控えめな盛り上がりを指先で追ってみると、
そこに確かに“走り”の匂いが残っていて、
僕はなんとなく胸の奥がざわつく。
日常の街に溶け込んだコンパクトカーが、
ほんの少しだけ、僕の過去の扉を開いたような気がした。
アクアはセリカではない。
ハイブリッドで、静かで、穏やかだ。
だけど、時折こうして過去と現在がゆっくり重なることがある。
それはほんの短い出来事で、
たぶん風が吹けば消えてしまうような儚い重なりだ。
それでも僕は、その一瞬が好きだ。
思いがけず過去と今とが擦れ合う、
その静かな摩擦の感触が。
アクアZの前に立ちながら、
僕はそんなことをぼんやり考えていた。
セリカという名前を声に出すこともなく、
ただ昔の気配だけが、
夜の空気の中でゆっくり漂っていた。
Posted at 2025/12/04 16:14:12 | |
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