
喫茶店のテーブルに置かれた読了した一冊、
Hamish McRae『The World in 2050: How to Think About the Future』。
そのタイトルを見つめながら、今朝の日経新聞記事を思い出した。
高校生の平均読書時間は1日10分、スマートフォンの使用時間は138分──
半数以上が「本をまったく読まない」と答えているという現実だ。
一方で、高市首相は「強い経済をつくる」と明言している。
だが本当に経済の強さとは、数字や成長率だけで測れるものだろうか。
McRaeが説くように、2050年の世界で生き残る国は「人口」や「資源」ではなく、
“思考の質”を保てる社会だ。
つまり、未来を設計できる国とは、
自ら考え、読み、問い、創造する力を持つ国民が支える国である。
だが、読書10分・スマホ138分という比率を前にすると、
日本は今、“強い経済”を語る前に、
「考える力の衰退」という構造的リスクを抱えているように見える。
情報が過剰に流れる社会では、「思考」はすぐに流される。
だが、経済もまた“思考の産物”である以上、
知的基盤が弱れば、経済の土台も脆くなる。
車の世界に置き換えれば、それはエンジンオイルを抜いたまま
「最高のパフォーマンスを出せ」と言っているようなものだ。
人の思考力や読解力は、社会を動かす“知の潤滑油”にほかならない。
移動時間にオーディオブックを聴く。
信号待ちの間に短いエッセイを読む。
そのわずかな習慣が、国全体の知的エンジンを再起動させる。
“強い経済”は、「考える国」からしか生まれないのだ。
🧮 なぜ「知的基盤」が経済政策とリンクするのか
創造性・応用力の源泉
高度化・複雑化する経済では、単純労働から脱して、思考・判断・分析・問題解決能力が求められます。読書・継続的な学習習慣はこれらの能力を支えます。
情報リテラシーと質の高いインプット
スマホ利用時間が長いということは、断片的・速読的・浅い情報接触になりやすく、深い読み・思考・熟考の機会が減る可能性があります。経済も「速さ」だけでなく「質」で勝負する局面が増えています。
人的資本の維持と更新
人口減少・高齢化の進む日本において、若年層・中年層が強い知的土台を持つことは、技術革新・生産性向上・持続可能な経済成長のための必須条件です。先の読書時間のデータは、潜在的リスクを示しているわけです。
Posted at 2025/10/26 10:57:07 | |
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