
第二戦が中止とされこれが事実上のグラベル開幕戦となるRFANシリーズ「ダートデビルラリー」が去る6月25日にモーターランド野沢で開催された。
天候は生憎の雨、群馬でのクラシックイベントや中国語検定などの影響で、顔をそろえたエントラントは7台と少々寂しいものであったが、それだけにエントリーした選手の意気込みたるや相当なものがある。
ここにインタビューをいくつか紹介してみよう。
グ「今日が待ちに待ったグラベル開幕戦ですが、今シリーズの意気込みをお聞かせ下さい」
ピ「今日の目標は早めに宿について15時には飲みはじめることだね。久しぶりのグラベルだから早めにスタートしたいよ」
グ「(ちょっと意味が分かりませんが)今日はGC8が多いですが、やはりライバルになりますか?」
ピ「そうだね、今日は気温も上がらなそうだからいきなりテキーラ勝負になると思うけど負けないよ」
グ「(???)と、とにかく健闘をお祈りしております」
ピ「うん、あんがと。ところで灰皿持ってきてくれた?」
グ「久しぶりのグラベルなのにエントリーされなかったんですね?」
ま「そうなんだよ。ドラパレで5速がなくなって、帰りの高速で2速もなくなっちゃってさ。さすがにプジョー307WRC以下の3速MTじゃ勝ち目ないからねぇ」
グ「では、今日はライバルの走りを研究に来たわけですね?」
ま「そうだね。グラベル初戦だから立ち上がりはゆっくりだろうけど、その分早めにテキーラが投入されそうだから、注意して飲まなきゃね」
グ「(???)と、とにかく健闘をお祈りしております」
ま「うん、あんがと。ところでGDBの6速ミッション持ってない?」
RFANイベントの常でパルクフェルメは和気藹々とした雰囲気に包まれているが、そこは歴戦のつわもの同士、心のそこではライバルをいかに早く撃沈するかという作戦を着々と練っていることはこれらのコメントからもお判りいただけるであろう。
豪雨の影響でタイスケから30分ほど遅れてスタートしたラリーは、11:15に待ちに待ったSS1がスタートした。
ゼッケン1のピ・ロナンデス選手(GC8)は雨によってルーズグラベルが落ち着いた事もあって先頭走者となった不利から解放され1’06’’25の好タイムをたたき出し、まずはこれが目標タイムとなる。
続くゼッケン2のキャッツ・ヴ・チョウ選手(GDB)が1’07’’46で2番手、3番ゼッケンのH田選手(CE9A)は慣れないコンディションで若干遅れ1’14’’35で暫定3位に。
二輪駆動部門トップの4号車グン・メガ選手(Saxo)はトラクションのかからない路面ながら1’20’’78と健闘。
続く5番ゼッケンのクルク・ル・パンダ選手(GC8)は1’17’’31で総合4番手に割り込む事に成功した。
ここで最初の波乱が発生する。
ゼッケン6のS野選手(GC8)がスタート地点に姿を見せなかったのである。
結局、センターデフトラブルとアイドリング不調を併発したGC8はスタートラインに立たずしてラリーを終えてしまう。
そして、最終ゼッケンの#7、イツモ・オワシ選手(CT9A)が小さなドライビングミスもあり、ピ選手から0.27秒遅れの1’06’’52で2位に滑り込んだところでSS1が終了する。
同じルートをループするSS2ではイツモ選手がピ選手を4秒逆転し総合トップに浮上、#2ヴ・チョウ選手も3秒逆転し総合2位に上ってきた。
また2駆トップのメガ選手もSS1のタイムを2秒近く更新しル・パンダ選手を追い上げるが、ル・パンダ選手も2秒以上タイムアップしてむしろその差を広げにかかる。
そして、サービスを挟んで迎えた午後のSS3。
ここでも1番時計はゼッケン7のイツモ選手、1’08”26というタイムで後続を突き放す。
これに続いたのは#2ヴ・チョウ選手で1’09’’75というタイムながら、この時点でトップのイツモ選手との差は4秒85という差がついてしまっている。
最後のSS4はSS3のループになるため、この差はイツモ選手にとって十分安全なマージンといえた。
しかしここでもアクシデントが発生する。
オフィシャルのタイム集計機器が雨の影響で一時出力不能になり、最終SSを前にしてドライバーに正確な前後とのギャップが伝わらなかったのである。
これが後々の大波乱を引き起こすとは誰の知るところでもなかった。
続いて総合3位につけるのは、圧倒的な安定感を発揮するピ選手、トップとの差はしかし17秒と大きく開いてしまった。
これに、夏風邪をおしてエントリーしたル・パンダ選手が総合4位に浮上。
メガ選手もH田選手のリタイヤもあって総合5位に順位を上げる。
もちろん二輪駆動部門のクラストップは堅持したままである。
そして迎えた最終のSS4。
SS3までの順位のリバーススタートとなるこのSSを最初に出走したのはメガ選手、1’21’’43というタイムで見事クラス優勝を勝ち取った。
続いてル・パンダ選手も1’17’’53と大幅なタイムアップを果たして総合4位に入賞。
夏風邪が良い方向に働いたのか、ル・パンダ選手の走りは今日一番ギャラリーを沸かせていた。
見事表彰台の一角を獲得したのははるばるメキシコから駆けつけたピ・ロナンデス選手。
SS4を1’13’’09というタイムで、ル・パンダ選手に21秒の差をつけて3位表彰台を得た。
さらに、逆転優勝に一縷の望みを託してスタートしたヴ・チョウ選手も、1’09’’39という自己ベストタイムを刻んでフィニッシュ。
この時点で、暫定トップのイツモ選手が1’14’’25よりも遅いタイムでフィニッシュすればヴ・チョウ選手の逆転優勝が決まるのだが、SS3のイツモ選手のタイムはこれをほぼ実現不可能なものに見せていた。
そしてついに最終走者のイツモ選手がスタート、落ち着いた走りでひとつずつコーナーをクリアしていく。
ルート後半のインフィールドセクションに入ってもその走りは破綻せず、ほぼ総合優勝が手中に収まったかと思ったZコーナーの一つ目、我々の眼に信じられない光景が飛び込んできた!
豪快にアウトから横を向いて入ってきたイツモ選手のCT9Aがなんとそのままハーフスピン、貴重な数秒を失い勝負をあっという間に分からなくしてしまったのである!
どよめく管理棟、飛び交うテキーラの瓶、会場を埋め尽くした観客の歓声と怒号が薄日も差してきた野沢の空にとどろき渡った。
そして、最終コーナーを全開で飛び込んできたイツモ選手のフィニッシュタイムは、なんと、1’14’’63!
0.38秒という僅差でヴ・チョウ選手の大逆転優勝が決まったのである!
もちろん、この大接戦を演じた二選手に贈られる惜しみない拍手が止むことはなかった。
こうして、2011年RFANシリーズ第三戦「ダートデビルラリー」はその幕を下ろすこととなった。
ラリーの神様の遊び心に乾杯!
もちろん、ラリーの神様はテキーラをご所望である。