
さて、昨日はめでたく2速まで入ったドグミッション講座ですが、シフトアップとシフトダウンはあざなえる縄の如し、ということで、今日はシフトダウンでもしてみましょうか!
シフトダウンするときにもクラッチを切る方法と切らない方法の二つがあります。
ドグミッションでもシフトダウン時はクラッチを切ったほうが良いと教わった私は、初めのころはこれでもかとヒール&トゥ(以下H&T)を多用しておりました。
が、何ともうまくシフトダウンできないのです。
回転を合わせてるはずなのに、シフトチェンジしようとすると「ガガガガガガ!!」と弾かれてしまうのです。
で、これまた引出しの奥から引っ張り出してきたのが「ダブルクラッチ(以下W/C)」という技術です。
というか、W/Cを踏んだらうまくシフトダウンができたことがきっかけでT/Mの構造を考えるようになったというのが正しい順番なのですが。
W/CとただのH&Tの一番の違いは、ニュートラルのときにクラッチをつなぐかつながないかです。
シンクロ付きの車に乗っているとH&Tで十分なのですが、その実は大きく違います。
では、通常のタイトコーナー進入などでブレーキングしつつ2速→1速のシフトダウンをする場合を想像してください。
<ヒール&トゥ使用時>
まず、2速全開からブレーキングを開始します。
T/Mの中はこんな状態です。
このときもちろん車速が落ちるに従ってエンジン回転数も下がっていくわけです。
で、2500rpmになった時にレブリミットまで吹かせばスムーズに1速につながるわけですね。
(実際はブリッピングの間にも車速は落ちているわけで4500rpmぐらいでつながるのだとは思いますが、ここではそういうリアルな話は横に置いておきます。)
で、H&Tをやってみましょう。
まず、ブレーキを踏んだままクラッチを切りますね。
このときの【アウトプットシャフト】【ドグクラッチ】【両2速ギヤ】【インプットシャフト】の回転数は全て2500rpmです。
次に、この状態のままブリッピングをして1速ギヤにエンジン回転を合わせてやります。
1速の減速比は2.000ですので、目標のエンジン回転数は5000rpmですね。
ただし、H&Tの場合、クラッチを切りっぱなしでこの操作を行うため、いくらエンジン回転を合わせてもクラッチ以降の【1速ギヤセット】には伝わらないわけです。
ちなみに、このときの【ドライブ側1速ギヤ】の回転数は2500rpmですが、【ドリブン側1速ギヤ】の回転数は1250rpmですね。
このままの2→1速のシフトダウンでは2500rpmの【ドグクラッチ】を1250rpmで回転している【ドリブン側1速ギヤ】にぶち込むことになるのです。
これが前出の「ガガガガガガ!!!」の原因になるわけです。
ちなみに、このとき回転がいくら合わないからって、焦ってクラッチを踏みっぱなしのままアクセルを吹かしまくったりしてしまいますが、要するにクラッチをつながない限り何をやっても無駄なわけです。
が、シフトチェンジできない状態でクラッチをリリースするのも恐怖ですし、自分の手と足が今何をしているのか全く分からなくなってしまうことも多々ありました。
俗にいうパニックですね~。
そういう時は迷わずハザードをたいて路肩に止まって頭を再起動です。
ミッションの構造をよく考えながら再チャレンジしましょう!
<ダブルクラッチ使用時>
また2速全開からブレーキングを開始します。
2500rpmになった時にまずクラッチを切ってシフトをNに入れます。
で、おもむろにクラッチをつないでブリッピングをします。
これこそまさにW/Cの真骨頂ですね!!
このときのT/Mの中の状態はこんな感じです。
【アウトプットシャフト】【ドグクラッチ】の回転数は前と同じ2500rpmです。
で、ブリッピングしてやることによってエンジン回転を5000rpmにしてやります。
このとき、クラッチはつながっているため【インプットシャフト】の回転数も5000rpmになるわけです。
つまり、常時噛み合いの【ドリブン側1速ギヤ】は減速比によって2500rpmになるわけです。
これで【ドグクラッチ】と【ドリブン側1速ギヤ】の回転数がちゃんと合いました。

合った瞬間にクラッチを切ってシフトチェンジをすれば極めてスムーズに1速に入るわけです。
ここでお気づきでしょうか?
実はこの操作の間でクラッチは何の役割も果たしていないわけです。
シンクロ付きミッションの場合は、クラッチつないだままではエンジン回転があっていない場合シンクロナイザーに負荷がかかりすぎてぶっ壊れてしまうという理由がありますが。
(分かりにくいですよね~、忘れてください!!)
きっちりエンジン回転をあわせられるならクラッチを切らなくてもよいのか?
良いんですよ~!!
<クラッチを切らずにシフトダウンする場合>
また、2速全開からスタートします。
コーナーが近づいてきて、あなたはおもむろに『左足で』フルブレーキングを開始します。
で、エンジン回転が2500rpmになった時にアクセルを吹かします。
と同時に【ドグクラッチ】にかかっていたトルクが消えるのですかさずギヤをNに入れます。
そのままブリッピングをして5000rpmになった時にアクセルを離すと同時にN→1速にシフトチェンジをすれば2500rpmで回転している【ドグクラッチ】が、同速で回転する【ドリブン側1速ギヤ】に吸い込まれてシフトチェンジが完了するわけです。
画像にすると連続してこうなります。
実際はこのときにも、ブリッピング中もブレーキングを続けることによる【アウトプットシャフト】の回転落ち分や、エンジンのトルク曲線=回転の上がるスピードの差なども考えながらのシフトチェンジになるわけです。
メンドクサイでしょ!!
じゃ、結局H&Tとは何なのか?
私の中の結論はシンクロ機構が付いている車だからできる究極のシフトチェンジだと思っております。
T/Mの中身は、こうやって考えてみると大きく分けて3つのパートに分かれると考えられます。
「前(トップの画像でピンク)」=エンジンからクラッチのドライブ側まで。
「中(同グリーン)」=クラッチのドリブン側からドリブン側のギヤまで。
「後(同ブルー)」=ドグクラッチ、もしくはシンクロメッシュからアウトプットシャフトまで。
このなかで「前」はエンジンに直結、「後」はタイヤの回転数に直結しています。
が、「中」だけはどちらかに連動して動くだけで、随意に回転させることはできません。
スムーズなシフトチェンジのためには、3つのパートの回転数を合わせてやることが大事なのですが、シンクロなしの場合、「中」はクラッチを使って「前」パートで回転を調整してやるしかないため、W/Cという技術が必要になるわけです。
しかし、シンクロ機構付の場合、シンクロメッシュが「後」の回転に合わせて「中」を同調させてくれるため、ドライバーはクラッチをつないだときのクラッチ前後の回転数差さえ気にしておけばいいわけです。
三度目になりますが、ここでもシンクロコーンの優秀さが証明されたわけですね~。
じゃ、ドグのメリットは何か?
レース用のミッションでは、ギヤの繫がりのダイレクトさとかシンクロナイザーにかかる負荷の大きさとかの理由によって、ドグが使われているようです。
ミッション自体の重量も軽く出来るようですし。
後は、左足ブレーキが自由に使えればな~。
最近は練習しているのですがねぇ。
結局シンクロ付きでもクラッチを切らずにシフトチェンジは出来るのですがね~!
ということで、『明日ドグ講』これにて終了です~。
皆様も是非悶々としてみてください~!
ではでは!