B18Cリクエスト受けつつも違うネタ。
なんとも面倒な物理のお話。
と言っても、流体力学はろくにやってこなかったので適当(笑)
吸気、排気、どちらの場合でも良いんだけど、何がベストなのか、という事を考える。
まず、すぐに思い浮かぶのが「配管抵抗」
吸気抵抗とか、排気抵抗とか、そっち系ですな。
これが無い方が望ましいのはみんな知ってる事。
であれば、まぁ最高に良い状態っていうのは、吸気配管も無し、排気配管(マフラー)もなしでいきなり大気解放。
そんなトヨタ7
(参考)
みたいななのがベストと思われるわけだけど、現実こういう事をするわけにもいかないし、実際のところこれがベストなわけでもないのは良く知られるところ。
よく言われる慣性吸気、慣性排気っていう奴。
慣性吸気や慣性排気が何故起きるかっていうのをまず考えないと、どうすべきかが見えてこないので、とりあえず吸気も排気も基本は一緒なので吸気で。
まず、エンジンって奴は空気を連続的に吸ってない。
4サイクルエンジンは吸気→圧縮→爆発→排気なので、吸気は1工程全体のうち1/4の時間しか空気を吸ってない。
まず吸気する。
空気は吸われて左から右へ移動。
次にバルブが閉じて、エンジンが圧縮、爆発、排気の時間に入る。
この時、空気はバルブに遮られて動けなくなる。
でも空気も質量を持っているので急には止まれないから、バルブの直前にかっ詰まる。
つまりバルブの前の空気は圧縮されて圧力が高まる。
次にバルブが開いて空気が動き出す。

開いた直後はバルブ直前のちょっと圧縮された空気を吸えるけど、そのあとの後ろの空気は動きが止まってしまってるので、右に(エンジンの中に)なかなか流れていけず、空気をあまり吸えない。
で、そのタイムラグの後、空気が流れだして、そうこうしてるうちにバルブは閉まり、次のサイクルへ向かう。
大雑把に言うと、こういう現象が吸気の過程で起きてるというわけ。
この時注目するのはバルブが開く直前に、バルブの前で空気が圧縮されている状態。
次に、バルブが開いてから、空気が流れだすタイムラグ。
この二つ。
バルブが開く時は常に圧力が高い状態なっていれば過給状態にもっていけるしパワーアップする。
そのためにはバルブが閉まって空気が停滞するんだけど、次にバルブが開くまでに空気が停滞しないようになっていれば、常に吸気バルブのところでは過給状態にもっていける。
これが慣性吸気って奴ですね。
理想的には停滞しないで配管内の空気は常に流れている。
前知識終了(長い)
じゃあ慣性吸気(排気でも良いけど)の効果を高めるにはどうすべきか。
要するに、空気の質量による慣性力を利用している現象だから、慣性力を強く発生させれば良い。
慣性力を増やすには、まぁあたり前だけど質量を増やすか、速く移動させるか、どっちかをすれば良いわけ。
まずは空気の流速を上げる事を考える。
エンジンが吸う空気の量が常に一定であると仮定するなら、流速を速くするには配管を細くすれば良い。
例えて言うなら、ストローでジュースを飲もうと思ったとする。
ある人は太めのストローで飲んでて、ある人は細いストローで飲む。
その二人が同じ速さで飲めって言われたら、ストローの細い人は必死に素早く吸い込むしかない。
ストローが細くて沢山吸えない分、速く吸う必要があるというわけ。
だから吸気配管を細くすれば流速を一気にあげられるし、慣性力は速度の2乗に比例するのですごく効果が大きいのだ。
つまり細ければ細いほど良いのだ!
…まぁそんなわけなくて、もし空気を吸う量が増えた場合。
簡単に言うと高回転までエンジンを回した場合。
もちろん流速はどんどん速くなるんだけど、流速が上がると配管抵抗も増える。
配管抵抗が大きいと圧力損失が生じるので空気流量が減る。
要するに糞詰まり状態になるわけ。
必死に細いストローで吸っても辛いだけって事ですな。
というわけで、言うまでも無い事だけど、細ければ良いという物じゃない。
ちなみに配管の抵抗による損失は流速の2乗に比例して、配管の直径に反比例する。
つまりちょっとでも太くすれば一気に配管の抵抗が下がるというわけ。
ここで仮に太すぎる配管であった場合、小さなエンジンや低回転においてどうなるのかというと、配管内で動く空気が少ない=流速が遅いため慣性吸気の効果望めない。
だから、とにかく太い配管で、ってやると空気流量の多い高回転は良いけど、空気流量が少なくて流速が遅い低回転では慣性吸気の効果がなくなり、出力が相対的に落ちてしまう、というわけ。
結論、太すぎず、細すぎず、狙った空気流量(回転数)に合わせて太さを決める。
次、空気の質量を増やす。
慣性力は質量に比例するので、質量を増やしても良いのだ。
でも空気自体をどうにか出来るわけではない。
だから質量を増やすには空気の体積を増やす、つまり流れる空気の量を自体多くすればいいのだ。
体積を増やすには、中学生にもわかる事だけど、要するに配管を太くするか、配管を長くすれば良い。
太さは前述の通り、流速に密接に関係するのであまり大きく触りたくない。
というわけで、長くすれば良いのである。
配管を長くすれば
のように、長くした分空気の量が増える=質量が増える。
空気の流れは止まりにくくなり、慣性過給の効果が高まるという寸法だ。
だから配管は長ければ長いほど良いのである!
な、わけもなく。
エンジンルームなどの物理的制約もさる事ながら、またしても問題になってくるのが配管抵抗。
配管抵抗による損失は長さに比例するので、長ければ長いほど空気を吸いにくくなるのだ。
なが~いストローはシンドイってわけですね。
そしてもう一つ重要な問題。
慣性力が大きいって言う事は、空気はなかなか動き出さないという事。
つまり、もしスロットルを完全に閉じた状態=空気が止まった状態から、全開にして加速しようとした場合、空気がなかなか動き出してくれないのでエンジンが空気を吸えない=レスポンスが悪い、となるわけ。
長い配管の吸気系は慣性吸気を使えるので全開時間が長い場合はとても有利だけど、細かくオンオフを繰り返すような場合には不利。
つまり1速、2速を多用する場合は不利に働く。逆に4速とか5速とかで長いストレートを走るには有利。
結論、走り方に見合った長さにしましょう。
ちなみに、配管が長くても短くてもこの空気の流れの遅れは生じる。
1速なんかで吹けあがりが速いと空気の量が増えるスピードに対して、空気の流れがついてこない+エンジン自体のモーメントにパワーが取られる、っていうのもあるので、ほかのギアに比べるとパワーが出てない。
だからパワーチェックなんかは4速とか5速とか6速とかで計測するわけ。
スロットルを閉じたところ開いた瞬間はどうやっても空気の流れが悪いのでパワーがついてきにくい。
それをカバーするのがサクションボックス。
ただ、効果のほどとしてはどれほどあるかなぁ?と言うのが個人的な考え。
サクションボックス以外で考えられる方法としては、要するに空気が流れていれば良いので、アクセルを早めに開ける(笑)
あと、コンピューター的にそんな事出来るか知らないけど、スロットルあけたままで空気は吸うけどガソリンは吹かない、みたいな事が出来れば常に配管内の流速を保てるので素晴らしいレスポンスになるんじゃないかなーとかね。
もちろん電スロが必要になってくるけども。
吸気で説明したけど、排気でも全く同じ。
排気が流れる事によってエンジンの中から排ガスを吸いだす。
細ければ糞詰まりだし、太ければ抜けすぎて吸いだしてくれない。
長さは…まぁあんまり変えられないよね。排気は。
しっかり排気しないと次の吸気が出来ないので排気もとっても重要。
息吐いてないのに息吸えっていうのは無理あるよねって話(笑)
可変吸気、可変排気にしない限りは、基本的にはある特定の領域をターゲットにして設定するしかない。
だから、よほど画期的な事をしてない限りは、ある製品は全体的に劣って、ある製品は全てにおいて良いなんて事はあまり無い。
どこかが得意で、どこかが苦手、っていうトレードオフの関係にある。
純正もなかなか侮れなくて、特にスポーツ系車両は元から性能重視の給排気になっているから、社外品に変えたからと言って全てがよくなる事は滅多にない。
コストの関係で妥協した部分を改善した、とかいう製品ならあり得るけど、そういう製品は高い(笑)
後はフィルター性能や音量なんかを犠牲にすれば、その分性能アップはあるけどね。もちろん。
蛇足だけど、鋭角に曲がった配管やデコボコの大きい配管は当然ながら配管抵抗が大きい。
だから、出来る限り曲がりはゆるやかで、デコボコの少ない配管の製品を選択するのが無難かなー。
追記。
えーと、吸気でも排気でも良いけど、入口や出口だけを「絞って」疑似的に細くすれば良いっていう考えは間違いなのです。
配管の太さ自体は変わらないので流速は変わらない
配管の太さ、長さは変わらないので体積=質量は変わらない
絞ってあるので配管抵抗だけは増える。
よって特性は何一つ変わらないのに、配管抵抗だけが増えて効率が落ちるという、まぁ何一つ良い事はないってわけなのです。はい。