
調子に乗ってクラオタ薀蓄の三連発です(^_^;)
クラシック音楽の世界でもレコード大賞がありまして。
音楽之友社が発行しているレコード芸術という雑誌で高い評価を得たCD・DVDなどから、部門ごとに演奏や録音などの最も優れたものを選定し表彰するものです。
https://www.ontomovillage.jp/ontomo/news/12647
2017年度の大賞はクルレンツィス指揮ムジカエテルナ「チャイコフスキー:《悲愴》」、大賞銀賞も同コンビの「モーツァルト:《ドン・ジョヴァンニ》全曲」、大賞銅賞はルノー・カプソン「21世紀のヴァイオリン協奏曲集」が選ばれました。
銅賞のバイオリン奏者ルノー・カプソンは、フォーレの室内楽曲集とブラームスの六重奏のCDを所有していて、彼のバイオリンが作る硬質で透明感のある音楽が好きでした。
大賞と銀賞のダブル受賞(55年間で初めての事)のクルレンツィスは、凄いという評判は聞いていましたが、なんというかゲテモノ臭がして(^_^;)手を出していませんでした。
なにしろルックスからしてこれですから。

プロフィール
テオドール・クルレンツィス(セオドロス・クレンズィス)
ギリシャ出身の指揮者。1972年2月24日アテネの生まれ。
1994年にサンクトペテルブルク音楽院でイリヤ・ムーシンに指揮法を学んだ。
サンクトペテルブルク・フィルハーモニー管弦楽団のユーリ・テミルカーノフのアシスタントを経て2004年にノヴォルシビスク国立歌劇場の音楽監督に就任。
アンサンブル・ムジカエテルナとムジカエテルナ室内合唱団を創設して芸術監督となった。
2010年にノヴォルシビスク国立歌劇場の座を退き、2011年からペルミ国立オペラ・バレエ劇場の芸術監督となった。
やっていることもかなり変わっていて、デビューCDはショスタコービッチ交響曲第14番「死者の歌」。
1969年に発表されたこの曲(ビートルズのイエスタディよりも新しい!)に18世紀の古楽器演奏のスタイルを取り入れています。
いかにも怪しいんだけど、評論家の評価は高く、ネットのレビューも絶賛9割:批判1割。
とにかく聴いてみなきゃ分からないので、この機会に(私としては珍しく)新譜CDを購入してみました。
http://www.sonymusic.co.jp/artist/teodorcurrentzis/info/487798
↑ソニーミュージック新譜紹介ページのキャッチコピーは「天才か、悪魔か……」(^_^;)
チャイコフスキー
交響曲第6番ロ短調 作品74「悲愴」
テオドール・クルレンツィス(指揮)
ムジカエテルナ
【録音】2015年2月9~15日 フンクハウス・ナレパシュトラーセ、ベルリン(セッション録音)

んーーーーー(@_@;)
確かに凄いっ!
これまで聴いたことが無い「悲愴」です。
ちなみに私のCD所有盤は下記の通り。
ゲオルグ・ショルティ指揮シカゴ交響楽団(1976)
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリンフィルハーモニー(1988Last Concert)
ヴァレリー・ゲルギエフ指揮ウィーンフィルハーモニー(2004)
LPもいくつか持っていたと思います。
しかし比べるべくもない。どの演奏とも似ていない。
弦楽器の編成は小規模。低弦のコントラバス・チェロを厚めにした独特の編成のようです。
楽器自体はモダン楽器を使用しているそうですが、ヴィブラートは控えめで古楽の奏法を取り入れているようです。
アンサンブルを極めて精密に研ぎあげ、第3楽章など早いパッセージでは音の粒粒が見えるようです。
ダイナミックス(音の強弱)の表現も思い切り広くとっていて、聞こえるか聞こえないかの最弱音から、一気に爆音に盛り上げる。
これほどの明瞭さ、迫力、バランスが本当に人の手によって演奏できるのか!?と思わせるようなCDでした。
CDに限って言えば、録音の威力も相当あると思います。
まるでパートごとに別録音してミキシングしたような分離の良さ、地の底からとどろくような低音楽器、客席では聞こえないだろうという最弱音、コントラバスはこんなにキレ良く弾けるのか等々。
ライブでは違う聞こえ方がするかもしれませんが、録音は録音として独立したものと考えればアリだと思います。
ただし、この演奏は「悲愴」のファーストチョイスとして、この曲を初めて聞く人にはお勧めできません。
どう考えても異端・異質です。そうでありながら、魔力のような強力な説得力を持った演奏でもあります。
テオドール・クルレンツィス、目を離せない指揮者でした。
2019年2月、初来日が決まっています。
http://www.kajimotomusic.com/jp/news/k=2788/
2019年2/13(水)19時 サントリーホール
チャイコフスキー: 組曲第3番 ト長調 op.55
チャイコフスキー: 幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」op.32
チャイコフスキー: 幻想序曲「ロメオとジュリエット」