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山爺@Around60のブログ一覧

2017年12月08日 イイね!

Roll Over Beethoven

Roll Over Beethovenチャック・ベリーでもビートルズでもありません。
またまたクラオタ薀蓄です。スミマセン
しかも、自己最長の長文になってしまいました。
興味のない方は……最後までお付き合いください(笑)

9月に買ったショルティ/シカゴ交響楽団の全集を聴いています。
以前、この全集にはベートーヴェンの交響曲が全9曲、新旧2度録音が入っていると書きましたところ、みん友さんから「ベートーヴェンの交響曲全集が欲しいがお勧めはあるか?」とリクエストをいただきました。

ベートーヴェンの交響曲って、いったいどれぐらいCDが出てるのか分からないぐらいあります。
しかも、私自身ベートーヴェンの交響曲はあんまり得意じゃなくて、最近は中期~後期の弦楽四重奏を時々聴くぐらいでした。
クラシック音楽を聴きはじめたころはベートーヴェンもけっこう聴いていましたが、正直、飽きたというか「今さら」という感じで、遠ざかっていたのです。
何はともあれ、おかげで久しぶりにベートーヴェンの交響曲をじっくり聞くことができました。
あらためて聴いてみると「ベートーヴェンの交響曲って本当に隙が無いなぁ」という感想です。
クラシック音楽、特に交響曲は長い曲が多いんですが、ともすれば「ココいらないんじゃないか?」と思うような部分もあります。
しかし、ベートーヴェンの交響曲を聴いていると、どの部分もそこにそうあるべき必然性を感じます。
学生オケで3番「英雄」・5番「運命」・6番「田園」とたぶん7番も弾いたことがあると思います(記憶があいまい)。
自分が弾いたときも「不必要な音が全然ないなぁ」と同じようなことを感じました。
ここで私が言う「不必要な音」というのは、他の楽器に紛れてしまってあまり聞こえない音符の事です。
演奏者にとって「サボりどころがない」のがベートーヴェンの交響曲なのです。

ベートーヴェンの音楽の特徴として一般に、完成度が高い、構築性、堅固な構成、などが挙げられます。
そのことは別の面で考えると「解釈の入り込む余地が少ない」という事にもなります。
つまり、よほど極端なテンポ設定をしたり、表情付けをしない限り、どう演奏しても大差が無いということになってしまいます。
「全集」を出しているような大指揮者と一流オーケストラの演奏であれば、どのCDを買ってもそうそう大外れは無いという事です。
よって「お勧めは特に無し、これが良さそうだなと自分が思った全集を買えば大丈夫!」

では、あまりにも無責任ですね(^_^;)
せっかくリクエストをいただいたので、少々荷が重いんですが、私なりにいくつかお勧めを選んでみました。

先ずは手持ちのCDとレコードをひと通りリストアップしました。

交響曲 第1番 ハ長調 作品21
・ショルティ/シカゴ交響楽団(新・旧)
交響曲 第2番 ニ長調 作品36
・ショルティ/シカゴ交響楽団(新・旧)
交響曲 第3番 変ホ長調 作品55 《英雄》
・ショルティ/シカゴ交響楽団(新・旧)
・フルトヴェングラー/ベルリンフィル(1952)(LP)
交響曲 第4番 変ロ長調 作品60
・ショルティ/シカゴ交響楽団(新・旧)
・カラヤン/ベルリンフィル(ラストコンサート1988)
・アーノンクール/ウィーンコンツェントゥス・ムジクス(2015)
交響曲 第5番 ハ短調 作品67 《運命》
・ショルティ/シカゴ交響楽団(新・旧)
・コリン・デイヴィス/ドレスデン・シュターツカペレ
・アーノンクール/ウィーンコンツェントゥス・ムジクス(2015)
・カルロス・クライバー/ウィーンフィル(LP)
交響曲 第6番 へ長調 作品68 《田園》
・ショルティ/シカゴ交響楽団(新・旧)
・スウィトナー/ベルリン・シュターツカペレ(LP)
交響曲 第7番 イ長調 作品92
・ショルティ/シカゴ交響楽団(新・旧)
・カラヤン/ベルリンフィル(ラストコンサート1988)
交響曲 第8番 へ長調 作品93
・ショルティ/シカゴ交響楽団(新・旧)
交響曲 第9番 ニ短調 作品125 《合唱》
・ショルティ/シカゴ交響楽団(新・旧)
・フルトヴェングラー/バイロイト祝祭歌劇場管弦楽団(1951)(LP)
・フルトヴェングラー/ベルリンフィル(1942)(LP)

困りました(>_<)・・・・
思ったよりずっと少ないです。
演奏したことがある何曲かは、もっといろいろ聴いていたはずです。
一番よく聴いたはずのセルは全曲LPで持っていたはずですが、どこを探しても見つかりませんでした。
学生時代、お互いに貸し借りして聴いていたので、誰かに貸してそのままになってしまったんだと思います。
FM放送を録音したカセットを擦り切れるぐらい聞いた、ベームやカラヤンの演奏も記憶に残っています。
バーンスタインやケンペやワルターとかも持ってたと思うんだけど、かなり曖昧です。
誰かから借りて、カセットテープにダビングして聴いていたのかもしれません。

手持ちLPではカルロス・クライバー/ウィーンフィルの第5は70~80年代の決定盤と言われていました。
同じクライバーの7番も持っていたと思いましたが見つかりませんでした。
スイトナーも好きな指揮者で、この6番はレコードアカデミー賞を受賞した当時の名盤です。
フルトヴェングラー/バイロイトの第九は言うまでもない歴史的名演です。
同じフルベンの第3とベルリンフィルとの第九は買った記憶が無いのに持っていました。
たぶん誰かから借りて返し忘れたんだと思います(^_^;)

私のスタンダードはジョージ・セル指揮クリーブランド管弦楽団。
当時、一番信頼していた評論家の吉田秀和氏が絶賛していたので、影響されたのもありますが。。。。
セル/クリーブランドのキッチリした硬質な演奏にくらべると、ベームはもったりしていて、カラヤンは華美な気がしました。

LPを聴くのはいろいろひっぱり出してきて繋ぎなおさないといけないので、CDだけはひと通り聴いてみました。
「ショルティいいなぁ…」
ほとんどショルティしか聴いてないんですけど(笑)
ショルティを聴いていて、セルの演奏を思い出しました。
セルとショルティ、どちらもハンガリー出身。クリーブランドとシカゴ、同じアメリカのオーケストラ。
血は争えないのか、似た傾向になるのでしょうか。

ショルティ盤は新旧とも、一般には名盤・決定盤とは評価されていません。ガサツだとか乱暴だとかいう人もいます。
しかし、セル盤が手元に無くなってしまった私にとって、新しいスタンダードになりました。
旧録音は70年代アナログ時代の代表的なハイファイ録音。録音エンジニアは、もちろん神様ケネス・ウィルキンソンです。
新録音はデジタルですが、初期のデジタルにありがちなギスギスした固さは無く、響きや潤いや広がりを感じさせる好録音です。
刺激が欲しい時は旧録音、ゆったり聞きたいときは新録音です。

スタンダードはあっさり決まりました(笑)でも、あくまで私自身のスタンダードです。
他人に勧めるなら、こっちの方がいいんじゃないかという盤をいろいろ調べてみました。
私が次に買うならこの中からどれかにしようという盤でもあります。

先ずは古くから名盤と言われるスタンダード。

ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団、クリーヴランド管弦楽団合唱団
アデーレ・アディソン(ソプラノ)
ジェーン・ホブソン(メッゾ・ソプラノ)
リチャード・ルイス(テノール)
ドナルド・ベル(バリトン)
1957~1961年、クリーヴランド、セヴェランス・ホール

私のかつてのスタンダード盤。吉田秀和氏絶賛。
ソニーミュージック(タワーレコード)からSACDリマスターが復刻されました。
しかし、いかんせん原版が古すぎます。SACDは聴いていませんが、あまり音質を期待してはいけないでしょう。
私自身はもう一回聴き直してみたい盤です。でも、高いんです(^_^;)

レナード・バーンスタイン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ギネス・ジョーンズ(Sop)
ハンナ・スワルツ(Mez)
ルネ・コロ(Ten)
クルト・モル(Bs)
1977~1979年、ウィーン、ウィーン楽友協会(ライヴ)

クールなジョージ・セルとは対極の熱演。
スタンダードと言うのはちょっと違うかもしれないけど、忘れがたい演奏。
これも今年リマスターSACDが出ました。もともとの録音が良いので音質面も期待できます。

ちょっと風味の違うものも聴き比べたくなります。
オリジナル楽器を使用したり、古楽演奏の知見を取り入れた演奏です。

ジョン・エリオット・ガーディナー指揮オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティーク、モンテヴェルディ合唱団
リューバ・オルゴナソヴァ(ソプラノ)
アンネ・ソフィー・フォン・オッター(メゾ・ソプラノ)
アンソニー・ロルフ・ジョンソン(テノール)
ジル・カシュマイユ(バス)

1991~1993年、1番と3番は公開録音、5番はバルセロナでライヴ
このCDは持っていませんし、聴いていません。
同じ演奏者のフォーレのレクイエムを愛聴しています。
オリジナル楽器を使っていますが、癖のない演奏で聴きやすいのが、この団体の特徴です。
私が次に買うとしたら、一番手はこの盤です。

ニコラウス・アーノンクール指揮ヨーロッパ室内管弦楽団
シャルロッテ・マルギオノ(Sop)
ビルギット・レマール(Mez)
ロベルト・ホル(Bs)
1990~1991年、グラーツ、シュテファニエンザールでのライヴ

アーノンクールは4番5番をコンツェントス・ムジクスで持っています。
コンツェントス・ムジクスはオリジナル楽器ですが、こちらのヨーロッパ室内管弦楽団はモダン楽器です。
オリジナル楽器の演奏よりもこちらの方が聴きやすいと思います。

21世紀に入ってからの録音も聴いてみたいです。
最新録音でこれからのスタンダードと呼ばれそうな演奏です。

ベルベルト・ブロムシュテット指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団、MDR放送合唱団、ゲヴァントハウス合唱団、ゲヴァントハウス児童合唱団
シモナ・シャトゥロヴァー(ソプラノ)
藤村実穂子(アルト)
クリスチャン・エルスナー(テノール)
クリスチャン・ゲルハーヘル(バリトン)
2014~2017年、ゲヴァントハウス・コンサートホール(ライヴ)

90歳を超えて現役、長老ブロムシュテットと世界最古のオーケストラ・ゲヴァントハウスによる最新録音です。
これも是非聞いてみたい盤です。

ミヒャエル・ギーレン指揮バーデン=バーデン&フライブルクSWR交響楽団、ベルリン放送合唱団
レナーテ・べーレ(S)
イヴォンヌ・ナエフ(A)
グレン・ウィンスレイド(T)
ハンノ・ミュラー=ブラッハマン(Bs)
1997~2000年、フライブルク・コンツェルトハウス(ライヴ・デジタル)

ギーレンのCDはブラームスのセットを持っています。
ブロムシュテットがどっしりした正統派のドイツ的演奏なら、ギーレンは現代ドイツの先進的近代的な演奏でしょうか。
なかなか興味深い盤です。

サイモン・ラトル指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、バーミンガム市交響楽団合唱団
バーバラ・ボニー(S)
ブリギット・レンメルト(C)
クルト・ストレイト(T)
トーマス・ハンプソン(Br)
2002年、Groser Musikvereinssaa, Vienna(ライヴ)

バーンスタイン盤を熱い演奏のオールドスタンダードに挙げました。
ラトル盤はそれを現代に受け継ぐ演奏になるのかもしれません。
これはEMIの輸入盤なら廉価セットです。ベルリンフィルとも録音していますので予算が合えばそちらも。

そして、これから出るであろう未来の録音も一つだけ。

テオドール・クルレンツィス指揮ムジカエテルナ
未定2030年頃?

今注目の指揮者、鬼才クルレンツィス。
2017年のレコードアカデミー賞大賞と銀賞を同時受賞したことを先日のブログに書きました。
次はベートーヴェンとマーラーに取り組むとアナウンスされています。
いったいどんなベートーヴェンになるのか、今まで聴いたことが無いベートーヴェンになる事は間違いないでしょう。
往年のクレンペラーを思わせる巨大なスケールと驚愕に満ちた演奏を期待します。

以上、聴いていないCDも含めて、好きな指揮者だからとか類推や想像でお勧めを書きました。
違っていることも多々あるかと思いますので、あんまりあてにしないでください(^_^;)

みなさんのお勧めもぜひ教えてください。よろしくお願いします。
Posted at 2017/12/08 18:14:21 | コメント(4) | トラックバック(0) | クラシック音楽 | 音楽/映画/テレビ
2017年12月06日 イイね!

クラシックのレコード大賞

クラシックのレコード大賞調子に乗ってクラオタ薀蓄の三連発です(^_^;)

クラシック音楽の世界でもレコード大賞がありまして。
音楽之友社が発行しているレコード芸術という雑誌で高い評価を得たCD・DVDなどから、部門ごとに演奏や録音などの最も優れたものを選定し表彰するものです。
https://www.ontomovillage.jp/ontomo/news/12647

2017年度の大賞はクルレンツィス指揮ムジカエテルナ「チャイコフスキー:《悲愴》」、大賞銀賞も同コンビの「モーツァルト:《ドン・ジョヴァンニ》全曲」、大賞銅賞はルノー・カプソン「21世紀のヴァイオリン協奏曲集」が選ばれました。

銅賞のバイオリン奏者ルノー・カプソンは、フォーレの室内楽曲集とブラームスの六重奏のCDを所有していて、彼のバイオリンが作る硬質で透明感のある音楽が好きでした。
大賞と銀賞のダブル受賞(55年間で初めての事)のクルレンツィスは、凄いという評判は聞いていましたが、なんというかゲテモノ臭がして(^_^;)手を出していませんでした。

なにしろルックスからしてこれですから。

プロフィール
テオドール・クルレンツィス(セオドロス・クレンズィス)
ギリシャ出身の指揮者。1972年2月24日アテネの生まれ。
1994年にサンクトペテルブルク音楽院でイリヤ・ムーシンに指揮法を学んだ。
サンクトペテルブルク・フィルハーモニー管弦楽団のユーリ・テミルカーノフのアシスタントを経て2004年にノヴォルシビスク国立歌劇場の音楽監督に就任。
アンサンブル・ムジカエテルナとムジカエテルナ室内合唱団を創設して芸術監督となった。
2010年にノヴォルシビスク国立歌劇場の座を退き、2011年からペルミ国立オペラ・バレエ劇場の芸術監督となった。

やっていることもかなり変わっていて、デビューCDはショスタコービッチ交響曲第14番「死者の歌」。
1969年に発表されたこの曲(ビートルズのイエスタディよりも新しい!)に18世紀の古楽器演奏のスタイルを取り入れています。


いかにも怪しいんだけど、評論家の評価は高く、ネットのレビューも絶賛9割:批判1割。
とにかく聴いてみなきゃ分からないので、この機会に(私としては珍しく)新譜CDを購入してみました。
http://www.sonymusic.co.jp/artist/teodorcurrentzis/info/487798
↑ソニーミュージック新譜紹介ページのキャッチコピーは「天才か、悪魔か……」(^_^;)

チャイコフスキー
交響曲第6番ロ短調 作品74「悲愴」
テオドール・クルレンツィス(指揮) 
ムジカエテルナ
【録音】2015年2月9~15日 フンクハウス・ナレパシュトラーセ、ベルリン(セッション録音)

んーーーーー(@_@;)
確かに凄いっ!
これまで聴いたことが無い「悲愴」です。
ちなみに私のCD所有盤は下記の通り。
ゲオルグ・ショルティ指揮シカゴ交響楽団(1976)
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリンフィルハーモニー(1988Last Concert)
ヴァレリー・ゲルギエフ指揮ウィーンフィルハーモニー(2004)
LPもいくつか持っていたと思います。
しかし比べるべくもない。どの演奏とも似ていない。

弦楽器の編成は小規模。低弦のコントラバス・チェロを厚めにした独特の編成のようです。
楽器自体はモダン楽器を使用しているそうですが、ヴィブラートは控えめで古楽の奏法を取り入れているようです。
アンサンブルを極めて精密に研ぎあげ、第3楽章など早いパッセージでは音の粒粒が見えるようです。
ダイナミックス(音の強弱)の表現も思い切り広くとっていて、聞こえるか聞こえないかの最弱音から、一気に爆音に盛り上げる。
これほどの明瞭さ、迫力、バランスが本当に人の手によって演奏できるのか!?と思わせるようなCDでした。

CDに限って言えば、録音の威力も相当あると思います。
まるでパートごとに別録音してミキシングしたような分離の良さ、地の底からとどろくような低音楽器、客席では聞こえないだろうという最弱音、コントラバスはこんなにキレ良く弾けるのか等々。
ライブでは違う聞こえ方がするかもしれませんが、録音は録音として独立したものと考えればアリだと思います。

ただし、この演奏は「悲愴」のファーストチョイスとして、この曲を初めて聞く人にはお勧めできません。
どう考えても異端・異質です。そうでありながら、魔力のような強力な説得力を持った演奏でもあります。

テオドール・クルレンツィス、目を離せない指揮者でした。
2019年2月、初来日が決まっています。
http://www.kajimotomusic.com/jp/news/k=2788/
2019年2/13(水)19時 サントリーホール
 チャイコフスキー: 組曲第3番 ト長調 op.55
 チャイコフスキー: 幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」op.32
 チャイコフスキー: 幻想序曲「ロメオとジュリエット」
Posted at 2017/12/06 13:10:05 | コメント(1) | トラックバック(0) | クラシック音楽 | 日記
2017年12月05日 イイね!

昨日の続きで、あんまりニーズのないクラオタ薀蓄(^_^;) 第九

昨日の続きで、あんまりニーズのないクラオタ薀蓄(^_^;) 第九ベートーヴェン交響曲 第9番「合唱」

とは言うものの、やはりわが国では年末のクラシックと言えば「第九」なのです。
年末に第九を演奏する習慣。もともとは、第一次世界大戦終戦直後、ドイツの名門ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団が、大晦日に「第九」を演奏し続けてきたことが始まりだそうです。
日本では第二次世界大戦後の1947年の年末に、日本交響楽団(現在のNHK交響楽団)が「第九」を演奏したことが今日まで続いているとのことです。
もう一つ、年末の「第九」が日本で定着した理由として経済的な理由があると言われています。
古今東西、オーケストラは金食い虫です。強力なスポンサーがついていれば安定した経営ができますが、そうでない場合はチケットがたくさん売れて儲かる興業をしなければいけません。
残念ながらほとんどのオーケストラはいつも黒字の演奏会ができるわけではありません。
でも「第九」ならお客さんが入ります。その上、アマチュア合唱団を起用すれば、コンサートには合唱団員の家族や友人たちが駆けつけてくれて満席間違いなしです。
こうした理由から、年末の「第九」が完全に定着したと言われています。

日本で最初に「第九」が演奏されたのは1918年。徳島県の鳴門市にあった俘虜収容所で、ドイツの捕虜たちにより演奏されたそうです。
ということは、来年はちょうど「第九」の日本初演100年になるのですね。

「第九」のあの有名な合唱。
小学生の頃に教わった歌詞が記憶に染み込んでしまって、第四楽章が始まるとすぐに弦楽器で奏されるメロディーにあの歌詞が乗っかってしまいます。

晴れたる青空 ただよう雲よ
小鳥は歌えり 林に森に
心はほがらか よろこびみちて
見交わす われらの明るき笑顔

花咲く丘べに いこえる友よ
吹く風さわやか みなぎる日ざし
心は楽しく しあわせあふれ
響くは われらのよろこびの歌

実に大らかなのんびりした歌詞ですね。
こんな能天気な歌詞がついちゃってるので「第九というのはおめでたい時の歌なんだ」と誤解してしまいます。
でも本当はかなり違うようです。

Freude, Freude, Freude, schoner Gotterfunken, Tochter aus Elysium,
フロイデ,フロイデ,フロイデ, シェーネル ゲッテルフンケン,トホテル アウス エリーズィウム,

と謳い始められるドイツ語の歌詞は、ドイツの詩人シラーの詩をもとに、ベートーヴェンが手を加えたものです。

ベートーヴェンが「第九」を作曲した当時、フランスの国民はブルボン王朝による君主制度を打ち倒しフランス革命を成し遂げていました。
一方、ベートーヴェンが暮らしたウィーンでは、ハプスブルク王朝が革命許すべからずと自由主義を弾圧していました。
フランス革命の民主主義に憧れ、ウィーンでも自由主義を実現したいと願ったベートーヴェンは、シラーの詩を借りることで厳しい検閲を逃れ、普遍的な人間愛や思想や創造の自由を求める思いを込めて作曲したと言われています。
そして、歌詞の中にある「ひざまづかないか!人々よ!創造主の存在に気付かないのか!世界よ!」という一節で、人間の基本的人権を抑圧する為政者に対する弾劾を訴えているのだそうです。

そんな崇高な思想が込められた「第九」にふさわしい演奏がいくつかあります。

ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮バイロイト祝祭管弦楽団、合唱団
エリーザベト・シュヴァルツコップ(S)
エリーザベト・ヘンゲン(A)
ハンス・ホップ(T)
オットー・エーデルマン(Bs)
1951年 バイロイト音楽祭

あまりに有名なフルヴェンのバイロイト盤。
第二次世界大戦中もドイツに留まり、それゆえにナチス協力者の疑いをかけられたフルトヴェングラー。
大戦中はドイツ人の希望の星であった彼は、戦後は一転して犯罪者の疑いをかけられ、長い非ナチ化裁判の末に無罪となり、戦後6年の長い間禁止されていたバイロイトの復活を祝して指揮した「第九」。
フルトヴェングラーはもちろん、独奏者、合唱団、オーケストラも、祖国ドイツ復活に賭けた熱い思いを「第九」に込め、その熱気に聴衆も呼応してすさまじい高揚感の演奏です。

レナード・バーンスタイン指揮バイエルン放送交響楽団(シュターツカペレ・ドレスデン・メンバー、ニューヨーク・フィルハーモニック・メンバー、ロンドン交響楽団メンバー、レニングラード・キーロフ劇場管弦楽メンバー)
バイエルン放送合唱団(ベルリン放送合唱団メンバー、ドレスデン・フィルハーモニー児童合唱団)
ジューン・アンダーソン(Sop)
サラ・ウォーカー(Mez)
クラウス・ケーニヒ(Ten)
ヤン=ヘンドリンク・ローテリング(Bs)
1989年12月25日、東ベルリン、シャウシュピールハウス

1989年11月9日ドイツの東西分離の象徴であったベルリンの壁が崩壊しました。
ベルリンの壁崩壊を記念して、レナード・バーンスタインが東西ドイツに英米ロシアなどの混成オーケストラ・合唱団・ソリストのメンバーを揃えて「第九」を演奏しました。
この演奏では、ベルリンの壁崩壊を祝うために第4楽章の歌詞の“Freude(歓喜)”を“Freiheit(自由)”に変更して歌われています。
この時のバーンスタインはすでに肺ガンにより余命を告知されていたそうです。まさに命を削りながら渾身の指揮でした。

クルト・マズア指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団、ライプツィヒ放送合唱団、ゲヴァントハウス少年合唱団
シルヴィア・マクネア(S)
ヤルト・ヴァン・ネス(A)
ウヴェ・ハイルマン(T)
ベルント・ヴァイクル(Bs)
1990~91年、新ゲヴァントハウス

壁の反対側でも命がけで自由を求めた指揮者がいました。
1989年10月9日にライプツィヒで東ドイツの民主化を求めるいわゆる月曜デモが発生しました。
当時ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の楽長(カペルマイスター)を務めていたマズアは、ホーネッカー政権の武力弾圧の方針に命がけで反対するとともに、月曜デモに参加した市民にも暴力の自制を求めました。
マズアらの呼びかけもあり、月曜デモでは流血などは起きず、ホーネッカー議長は辞任し、11月9日ベルリンの壁が崩壊、1990年10月3日東西ドイツ統一を実現できました。
マズアは「東西ドイツの再統一の立役者の一人」「活動する音楽家」として国際社会から賞賛を受けた。
1990年11月3日にベルリンのシャウシュピールハウスで、東ドイツ政府が主催した公式記念式典でマズアは「第九」を指揮しています。この録音はその式典と同時期の別の録音です。
Posted at 2017/12/05 18:49:20 | コメント(5) | トラックバック(0) | クラシック音楽 | 日記
2017年12月04日 イイね!

クリスマスのクラシック音楽

クリスマスのクラシック音楽12月になって街中どこに行ってもクリスマスソングが聞こえてきますね。
私、小売業を生業としていましたので「クリスマスソング=年末=忙しい」というマイナスのスパイラルが体に染み込んでいて、マイケル坊やが「I Saw Mommy Kissing Santa Claus (ママがサンタにキスをした!)」と叫びだすと逃げ出したくなります(^_^;)
たまたま来店したお客様でも「どこへ行っても同じクリスマスソングばっかり」と感じられるでしょうが、店員にしてみれば毎日毎日繰り返し聴かされるんだからたまったもんじゃありません。

クラシック音楽の世界でもクリスマスの曲というのはあって、わが国ではベートーヴェンの交響曲第9番、いわゆる「合唱」がなじみ深い(クリスマスというより年末?)。
それ以外にも、ヘンデルの「メサイヤ」。ハーレルッヤ♪ハレルヤ♪ハレルヤ♪というハレルヤコーラスや、もーろびとーこぞーりーて♪というコーラスでおなじみ。
バッハの「主よ人の望みの喜びよ」とかも、この時期によく聴かれます。

他にもいろいろありますが、今回は私が好きなクリスマスにちなんだクラシック音楽のCDを2つ紹介させていただきます。

■コレッリ 合奏協奏曲 作品6
 コレッリはバッハよりちょっと前、いわゆる「イタリア・バロック」の作曲家です。
 合奏協奏曲というジャンルはコレッリによって確立され・・・・などという講釈は面倒なので他の方に任せます(^_^;)
 ヴァイオリンをはじめとした弦楽器群がチェンバロなどの伴奏でチャカチャカ歌う可愛らしい曲です。
 作品6は12曲の協奏曲の集合作品で、協奏曲1曲が5~6楽章ぐらいずつ、全部だとけっこうな量。CDにすると2枚組よりちょっと少なめぐらいの長さです。
 12曲の協奏曲の中で、第8番が「クリスマス協奏曲」と呼ばれています。どの辺がどうクリスマスなのか?聴いただけでは分かりませんが、その辺はあまり気にしなくてもいいんじゃないかと思います。
 
 ピーター=ヤン・ベルダー指揮ムジカ・アンフィオン
 指揮者のピーター=ヤン・ベルダーは1966年生まれのオランダ人。ムジカ・アンフィオンはベルダーがオランダ・ベルギー出身者を中心とした古楽器奏者を集めた演奏団体。日本のバロックバイオリン奏者、山縣さゆりも参加しています。
 一般的にはあまり有名な演奏団体ではないようですが、古楽のジャンルでは腕利きの奏者を集めた団体として知られた存在なようです。
 古楽の演奏はともすると学究的、先鋭的になりすぎて堅苦しかったり、取り澄ました感じだったりしてとっつきにくい感じがすることもあります。
 でも、このCDはリラックスして聴けます。古楽なのでピッチは低く基音のAは380hzぐらい。そのおかげなのか古楽器らしい「木」の感じがする音に感じます。
 2002年ごろの録音で適度な残響が心地よく、なおかつ各楽器は鮮明に聞こえます。小編成ですが曲によってリュートやパイプオルガンも使用されていていろいろな楽器の音色が楽しめます。

■チャイコフスキー バレエ音楽:くるみ割り人形(全曲)
 特に説明の必要が無いぐらいな有名曲。チャイコフスキーの3大バレエと言えば「白鳥の湖」「眠りの森の美女」とこの曲です。
 ドイツの作家E.T.Aホフマンの童話を原作にしたストーリーのバレエ。第2幕13曲の「花のワルツ」は誰もが聴いたことのある名曲です。
 全曲盤は約80分、CD1.5枚分とちょっと長いのですが、分かりやすいメロディーばかりなので、飽きずに聴けると思います。
 クリスマスプレゼントに少女クララがもらったくるみ割り人形。実は魔法で人形の姿にされた王子様でした。
 イブの夜みんなが寝静まり12時の鐘が鳴るとクララの体が小さくなり人形と同じになります。人形たちとネズミの戦争がはじまり大騒ぎの末、クララは呪いが解けて王子様に戻ったくるみ割り人形と結ばれてめでたしめでたし。という雑なストーリです(笑)
 まあしかし、チャイコフスキーの音楽というのは甘美なメロディーがテンコ盛りな上に、オーケストレーションが実に巧みで、聴いても弾いても楽しい!
 クラシックを初めて聴く人にも聴きやすいし、オーディオ的にも聴きどころが多いのでお勧めです。

 アンタル・ドラティ指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
 名曲の名演、かつ名録音です。1975年の録音ですが、コンセルトヘボウホールの美しい響きを余すところなくとらえた、蘭フィリップスのアナログ録音の集大成ともいえる優秀録音です。
 同時期の録音「眠りの森の美女」「我が祖国(スメタナ)」「オーケストラのための協奏曲(バルトーク)」なども合わせて聴いてほしい。
 このCDには思い入れがあって、学生時代にLPが発売され、欲しくて欲しくてしょうがなかったのですが、お金が無くて買えなくてずっと憧れのレコードだったんです。
 当時LPの新譜はたしか2800円だったと思います。このレコードはLP2枚組だったので5600円。
 それが今やタワーレコードの復刻CDで2枚組(オマケの曲が数曲ついて)2000円出せばお釣が来るという・・・
 素晴らしい時代になったもんです!
 あのころ欲しくても買えなかったレコードがCDになって、リマスタリングで音質も良くなって、しかも半額以下!嬉しくてしょうがないので買いまくってます(^_^;)

先に紹介したコレッリの合奏協奏曲も輸入盤なら2枚組2000円以下で買えます。
曲・演奏・録音の三拍子揃ったクリスマスのクラシックCD。みなさんもぜひお試しください。
Posted at 2017/12/04 20:12:17 | コメント(4) | トラックバック(0) | クラシック音楽 | 日記

プロフィール

「@グランツ@兵庫 さん、そのまんまのyoutubeあります。https://youtu.be/-fFOWwWTkDA
何シテル?   06/01 14:32
2代のプリウスを13年間約40万km乗り継いで、このたびアテンザ乗りになりました。 今度の車も大事にしてなが~く乗り続けたいなぁ
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