昨日は、ドラッカー学会に出席してきました。
今回の課題本は、いよいよ本格的なマネジメントの核心です。
ドラッカー名著集13 マネジメント[上]―課題、責任、実践/P.F.ドラッカー
¥2,520
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原題:MANAGEMENT:TASKS,RESPONSIBILITIES,PRACTICES
訳題:『マネジメント-課題、責任、実践』
(1973年、ピーター・ドラッカー63歳の著作)
第Ⅰ部 「マネジメントの役割」
【第4章 マネジメントの役割】
【第5章 事業のマネジメント~シアーズ物語】
【第6章 企業とは何か】
■コメント
ドラッカー学会出席にあたって、事前投稿したものを
以下掲載したいと思います。
率直な感想として、「マネジメントは学ぶのは一日でできるが、使いこなすには時間がかかる」ということです。
なぜなら、その意味を自分のなかで体系化したり、再構築したりすることで、感覚的に「腑に落ちる」とか「わかる」といった状態に昇華され、実行を通じて経験として「身につく」、そしてそれが再現できる実践力となる、というように。
◆【第4章 マネジメントの役割】
企業を、動的・創造的な事業体の組織と考えるとするならば、『7つの習慣』でいう創造的活動には次の二つのステップがあります。
それは、
第一の創造である「知的創造(リーダーシップ)」
第二の創造である「物的創造(マネジメント)」
です。
ドラッカー博士は、第一の創造として、
“正しい問い”が重要であるという【5つの質問】から始めよと言っています。
すなわち、
1.われわれのミッションは何か?
2.われわれの顧客は誰か?
3.顧客にとっての価値は何か?
4.われわれにとっての成果は何か?
5.われわれの計画は何か?
「“組織の構造は戦略に従う”これこそ最も重要な洞察である。目的、ミッション、目標、戦略なくしては、マネジメントの人間をマネジメントすることも、組織構造を設計することも、マネジメントの仕事を生産的なものにすることは不可能である。」
「組織はすべて、人と社会をより良いものにするために存在する。すなわちミッションがある。目的があり、存在理由がある」という言葉です。
これは、ドラッカー博士は、『プロフェッショナルの条件』の【7つの教訓】でも言っていたように、究極の質問である「何によって憶えられたいか?」に通じるものだと考えます。
そして、この「【5つの質問】が、知識と意図を行動に変える」と、そして、「明日の社会を創っていくのは、あなたの組織である。そこでは、全員がリーダーである。ミッションとリーダーシップは、読むもの、聞くものではない、行うものである。」と。
ドラッカー博士は、第二の創造として、
「“マネジメントの役割”こそマネジメントの存在理由であり、マネジメントの仕事の決定範囲であり、その権限と正当性の根拠である」と冒頭にあります。
そして「マネジメントは、それらの組織の機関である。マネジメント自体には機能はない。それだけでは存在もしえない」
陥りやすい官僚主義的な病として「自分たちが目的であり、組織は手段であると錯覚したマネジメントのことである。これは市場の試練にさらされていないマネジメントがかかりやすい病」(手段の目的化)と警鐘をならし、「この病を予防し、悪化を防ぎ、できれば治すこと」が、マネジメントの第一の仕事としてあげています。
<マネジメントの3つの役割と第4の次元>として
①経済的な成果をあげるための「事業のマネジメント」
②創造的・企業家的活動としての「経営管理者のマネジメント」
③「人と仕事のマネジメント」
④時間という要素…「現在と未来のマネジメント」
<企業の成果>のまとめとして
「あらゆる企業が、われわれの事業は何か、何でなければならないかを考えなければならない。そして、自らの目的とミッションから、鍵となる活動領域のそれぞれについて目標を設定しなければならない。さらには、それらの目標を戦略に具体化し、資源を集中して投入しなければならない。」
◆【第5章 事業のマネジメント~シアーズ物語】
シアーズ物語は、【5つの質問】による定期的な「事業の定義」の見直しを行い、成長発展させた成功例で、ドラッカー・マネジメントを象徴するものだと思いました。
◆【第6章 企業とは何か】
<企業の目的…「顧客の創造(と育成)」>
『企業とは何か』で学んだ、企業と社会の関係および企業内の人間との関係にかかわる三つの側面、つまり、事業体としての機能を果たしつつ(経営政策、リーダーシップ、評価の尺度)、社会の信条と約束の実現に貢献し(機会の平等、位置と役割と尊厳、自己実現)、社会の安定と存続に寄与しながら(企業の経済的機能と社会的機能)その調和をもたらすという前提です。
これは、「社会のニーズと、個人からの貢献を得るという組織のニーズと、自らの目的達成のための道具としての組織を使うという個人のニーズを調和させること」
“顧客の創造(と育成)”において、企業家的な機能として「イノベーションとマーケティング」が成果をもたらすと。また両社の関係は、コインのオモテとウラであるということです。
それを象徴する代表的な言葉が「成果は外にある」と「既存のものは陳腐化する」と「顧客の創造(と育成)」ではないかと思うのです。
またドラッカー博士は『イノベーションと起業家精神』(名著集)で、「イノベーションとは、富を創造する能力を資源に与える。ところが、インベーションが資源を創造する。」や「イノベーションとは、起業家に特有の道具であり、変化を機会として利用するための手段である。」と定義しています。ではその機会とは?→「予期せぬ成功と失敗」「ギャップ」「ニーズ」「産業構造の変化」「人口構造の変化」「認識の変化」「新しい知識」を七つの機会として挙げています。
個人的には、企業組織を多元社会の基礎的有機体とみるならば、「競争から共創へ」という「持続可能な社会」を事業活動のひとつの軸として取り入れながら、他方でミッション、ビジョン、コンセプトに沿った独自の「卓越性と一貫性」を磨いていくこと、この一見矛盾するものをドラッカー思考の真骨頂である“分析と知覚の統合力”をもってマネジメントしていく必要があると感じました。
余談ですがこれを弁証法的実存志向として“ハイブリッド思考”と名づけたいと思います。
またイノベーションを考えるとき、循環サイクル(摂取→消化→吸収→エネルギー→排泄→摂取)は、社会生態学的に参考になる視点かもしれない。そして「ノンカスタマー(非顧客)こそ、来るべき変化を知らせてくれる貴重な情報源である。」と「トップマネジメントたる者は、多くの時間を社外で過ごさなければならない。」を肝に銘じ意識的に実践していくための英断と勇気が必要と感じました。
Posted at 2010/07/29 18:06:27 | |
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ドラッカー学会 | 日記