EpisodeIの冒頭に書いた通りADVAN-MR2の誕生秘話から書いてきたエピソード編もこれが最終章となります。
87年鈴鹿での全日本戦
画像左上は決勝後にガッチリと握手を交わす山本選手と
土屋代表です。
画像内のタイトル通り、このデビュー戦でADVAN-MR2は衝撃的な勝利を飾る事になります。
このEpisodeⅢではその場にいなかった自分が想像や推測を交えて文章化するのではなく、あえて当時その場で衝撃を受けたであろうライターが書いた各紙記事の内容そのままをお伝えしたいと思います。
87年の「プレイドライブ」より~
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黒光りするアドバンカラーのMR2は、路面に吸い着くようなコーナーリングで鈴鹿を駆け抜けた。
完成以前から異次元の走りをするだろう、とうわさされていた山本真宏のMR2は、従来のジムカーナの常識をはるかに超える走りを見せつけた。

Dクラスの話題は’86年チャンプの山本真宏と、彼の持ち込んだMR2に集中した。
このマシンは素晴らしい仕上がりで、これまでのジムカーナDクラスマシンの常識を超えている。
美しい外見以上に内容も充実しており、その走りには熱い視線が注がれた。
ドライバーの山本は「10分ほどしか走った事がないので今回は様子見です。コーナーを攻められるほどマシンを分かっていないので、立ち上がりのみで勝負」と控えめな発言だ。
このコースで圧倒的な速さを誇るS800の魚田栄一郎と伊藤裕は、「いつものとおりの戦いをする。コーナーリングで勝負」と気合を入れ直していた。

完熟走行にもかかわらず、山本MR2の走りは異次元としかいいようがなく、加速も圧倒的だ。
620kgという軽量でバランスのよいボディのため、コーナーリングも自由自在。
山本をして「目がまだ追いつかない。低速からの加速なら絶対負けない」と言わしめた。
1本目の山本のタイムは、軽く走って57秒605。2位の魚田は1秒近く離されて、まるでやる気をなくしている。同じMR2に乗っている福山和寛と前野弘志も、かなりショックが大きかったようだ。

2本目に入ると、太陽が完全に沈み、ナイトトライアルとなってしまったため、1本目のタイムで山本がブッち切りの総合優勝、デビュー戦を飾った。

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87年の「スピードマインド」より~
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下馬評では、魚田栄一郎/伊藤裕のホンダS800コンビが有利と。決してパワーこそ大きくないものの、500kg強にまで軽量され、前後の重量配分をほぼ均等にしているためか、直線と同じスピードでコーナーリングが可能(?)という。ややオーバーな表現に思えるが、実際に見てみると、そう思うに充分なほどカート感覚でスッとコーナーを回っていってしまうのだ!
一方、最大の対応馬はなんといっても昨年のウィナー、山本真宏とMR2のコンビネーションだ。
シェイクダウンもそこそこに、この全日本をデビュー戦としたMR2は、エンジンもサスも充分な仕上がり、と山本は語るが、問題は自分が乗りこなすことだ、とも言う。
また、今年のDクラスの特徴としては、だんだんモンスターマシンが増えてきたことだ。
山本のMR2を始め、福山和寛/前野弘志のMR2、そして鈴木初男のCR-X、そしてスーパーチャージャーで武装した黒岩広資のAE86など、なかなかあなどれないものとなってきた。

まず最初に58秒台ををマークしたのは福山MR2だ。僚友前野のドライブ時に原因不明のエンジンストップを越えての結果である。そして伊藤S800も58秒台をマークする。
しかし、エスハチの軽快なコーナーリングですら、霞んでしまう走りを見せたのが山本だ。
コーナーは決して無理はしていない。それでいて抜群にスムーズなコーナーワークである。
なんといっても直線の伸びは会場全体を静まりかえらせるに充分。
決して長くはない直線ですら驚異的な加速を見せた。 57秒605。
驚きともいえる歓声があがったのは言うまでもない。
その後に走った車がすっかり影が薄くなってしまう程に。その中には2番時計の魚田も入っていた。
これからのジムカーナDクラスのトレンドをはかる上で重要なポジションを示すこととなったMR2。
これを完璧に乗りこなした時、山本は無敵の存在となるのだろうか・・・

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※因みに現在この87年鈴鹿での全日本戦の動画を探しています。どなかたか当時現地で撮影した8ミリやビデオをお持ちの方いらっしゃいましたらメッセージお願い致しますm(_ _)m。