
たまには、エ○ネタ&画像無しで車ネタ話でもと思っているMARKWONDERです。
期待していた方々、申し訳ありませんm(_ _)m
「頭文字D」、とうとう終わっちゃいましたね~!
車マンガ大好きなので、17年間ずっと読んでいました♪
しげの秀一先生、長い間お疲れさまでしたm(_ _)m
連載当初からの読者であった私ですが、ちょっとだけ「マンガ」に不満を持っていたんです。
「頭文字D」ファンの方に怒られそうですが・・・(--A)
今日は、私の好きな「頭文字D」の妄想小説をお送りします。
昔から、車マンガ・雑誌やDVD(エロじゃないですよー!)等を読み漁ってきて、私の理想に近い「車雑学」に巡り合えたので、その一部を紹介してみようと思います。
スーパー長文ですが、車好きな方、頭文字Dファンなら、楽しく読めると思います。
途中、構成に違和感を感じた人は、かなりの頭文字D通だと思います(笑)
神奈川県、K村:
三矢峠、T公園パーキングにて。
東山:「ついに今週はプロジェクトDとの下りのバトルですねぇー。」
山田:「うーん。先週の上りは悔しかった!! 今度は勝ちたいですねー。」
大林:「今度の相手は、ハチロクだよね?? 結構有名らしいですよ、ハチロクの下り。 噂によると、ドリフトの名手らしいし。
何でも茨城で「神の手」とか言われている、S2000に勝ったらしいですよ。 さー、どうします? お二人さん(笑)。」
東山:「いや、向こうから連絡があって、今回の下りはインプレッサでやるらしい。 ドライバーはハチロクのドライバーだけどね。」
福田弟:「イ、インプレッサ!! またまた反則じゃないですかー。」
東山:「GC8らしいけどね。」
山田:「バージョンいくつですか??」
東山:「Ⅴらしいよ。」
山田:「へー…。GC8のVerⅤかぁ。」
福田弟:「ん?どうしました?」
山田:「いや、ちょっとその車には思い入れがあって(笑)。」
大林:「へぇー。なんだろ。」
福田弟:「そんな事より最大の問題わー、今回は誰が相手するんですか??」
大林:「じゃあ、こっちもGDBインプで丘ちゃん何かどう?? 峠の反則車対決(笑)。」
山田:「それか、今度は東山さん、いっときます?? ミラで(笑)。」
東山:「いや、さすがにインプとミラは無いだろ(笑)。」
山田:「ジョーダンです(笑)。 S2でいいじゃないですか。」
東山:「残念ながら、今回も相手リーダーのご指名なんだ。山田さん。」
山田:「え?また俺??」
東山:「山田さん、前にインテグラで走ってた時に、白いFCに煽られた事無かった??」
山田:「うーーん。有ったような、無かったような…。色んなのに煽られたからね。特にセブンには・・・」
山田:「それでご指名??」
東山:「おそらくね。」
大林:「じゃあインテで走ったら喜ぶかもよ(笑)。なーんて、ジョーダン。」
山田:「うーむ、相手はインプレッサかぁ…。化け物の四駆ターボ。。。」
山田:「よーしゃ、どうせ遊びだし、相手の期待に答えますか。今度はインテ持ってくるよ。」
福田弟:「え?? マジですか?? S2の方がいいんじゃないですか??」
山田:「どうせS2は上り負けてるし…。まあ、久しぶりにFFもいいでしょう。」
東山:「へー、山田さんがFFねぇー。」
群馬県 秋名湖畔:
いつき:「拓海ぃー。この間の、神奈川遠征はどうだった??」
拓海:「やっぱり凄いよ、走りの本場だけあって。これからも、厳しい戦いが待ってるよ。」
いつき:「そっかあ。そういえばさ、インプレッサって大分乗れるようになってきたの?」
拓海:「うーん。ハチロクと比べると、桁違いにパワーあるしトラクション有るし…。ただ性能をどれだけ出せているのかは正直、まだ良く分からないよ…。」
いつき:「へー、お前でもそんなんものなのかー。俺のハチゴーも一応ターボ車だけど、やっぱりNAとは色々違うよな。」
「プルルー」
拓海:「ハイ、藤原…、あ、涼介さん。え?インプレッサ??」
涼介:「そうだ。今度はインプレッサで走ってくれ。」
拓海:「え?ハチロクは?? それにインプはまだ…。」
涼介:「いいんだ。今回は公式な遠征じゃないからな。とにかく、そういうことだから。」
拓海:「ハ、ハイ…」
群馬県 赤城山:
史裕:「涼介、どういった風の吹き回しだ?? ずっとハチロクで通してきたのに急に藤原にインプだなんて。」
涼介:「俺なりの考えがあってのことさ。それにDの遠征は勝つことだけが目的じゃないからな。」
啓介:「非公式な遠征とはいえ遊びすぎじゃないか?? それにインプとハチロクじゃあ、いくらなんでも戦闘力が違いすぎないか??」
涼介:「フッ、それはどうかな。啓介、お前も次のバトル、良く見ておくんだ。」
啓介:「…。」
ギャラリー:「あれ? プロジェクトDと言えば、FDとハチロクじゃなかったの?? 今回は、インプレッサで来てるよ。」
ギャラリー:「こっちは、一コ前のインテグラらしいじゃない。勝負になるのか??」
ギャラリー:「ただでさえ四駆ターボは反則だからなー。それにあれほどのドライバーが乗ったら…」
ギャラリー:「今度という今度は、さすがに勝負にならないんじゃないのかなあ??」
史裕:「どうだ藤原? このコースは。」
拓海:「…。やっぱり難しいコースですねぇ。でも、ハチロクと比べるとインプレッサはやっぱりパワーもトラクションもあるから楽だと思います。」
啓介:「インプにこのコースはバッチリはまってるんじゃないか? インプはこういうコースを一番速く走る為に作られているんだからな。
ラリーのターマックコースそのままじゃないか。」
松本:「今回のセッティングはとりあえずノーマルのままで行きます。まだいじる段階じゃないと思うので。」
涼介:「わかった。」
東山:「山田さん、久々のインテですね。」
山田:「うん。それじゃあ、俺もちょっくら練習してくるわぁ。久しぶりのFFだからさ。」
大林:「うい、行ってらっしゃーい。」
大林:「ねえねえ、東山さーん。ぶっちゃけどうなんですか?? 山田さんとインテの組み合わせって。勝ち目あるのかなぁ??」
東山:「うーん…。山田さんのストリーム覚えてる??」
大林:「ああ、あの激走ストリームね。あれ、面白かったなあ。」
福田弟:「いやいや、あれすごかったですよ。ミニバンとは思えない速さ!」
FD乗り石山:「そう言えば、2チャンにも書かれてましたねー。気持ち悪りーストリームが居るって(笑)。」
東山:「山田さんはコーナーだけなら、S2000と大して変わらないって言ってたよ。」
大林:「そりゃ無いでしょ、いくらなんでも(笑)。」
石山:「何か、いじってたんですか??そのストリーム。」
東山:「いやいや、あれS2がエンジンブローしたときの代車なんだよ。だから、タイヤも含めてドノーマル。エコタイヤに、195/65/15のテッチンホイールだよ。 重いしパワー無いから直線は話にならないけど、コーナーだけはホントに速かった!!」
福田弟:「僕も横に乗せてもらいましたけど、速かったです。何か、滑ってるんだかグリップしてるんだか分からないコーナリングでしたよ。」
東山:「うーん、滑ってたんじゃないのかなあ?? 実際代車なのに、1ヶ月でタイヤ4セット使ってディーラの人に怒られたのは皆が知ってる秘密(笑)。 ここでも、中途半端なスポーツカーはちぎれたらしいよ。」
石山:「にわかには信じられない話だなあ。だってストリームでしょう?? 7人乗りの…」
東山:「…。元々山田さんのことをFFマイスターと呼んだのは俺なんだ。あれで現行インテRなんて運転したら恐ろしいと思ったよ。
本人は絶対認めないと思うけど、S2運転するより現行インテR運転した方が速いと思うよ、俺は。」
福田弟:「それ、複雑ですねー。」
「カーーーン」
山田:「ただーいまっと。」
東山:「おかえりー。どうだったー?」
山田:「やっぱ、ストリームより速いですね。」
大林:「当たり前でしょ(笑)。」
山田:「東山さん、運転してみます??」
東山:「え? いいの?」
山田:「うん、行ってらっしゃーい。」
東山:「おー、いい感じだ!! シビック時代を思い出すぜ。シビックで首都高をブイブイ走らせていた頃を!! やっぱり、FFは楽だな。 S2は直線でさえ緊張する。薄氷の上のコントロールみたいな気分だからな。」
「カーーン」
山田:「お、帰ってきた。」
大林:「お帰りー。どうだった??」
東山:「うーん、S2売ってインテRに乗り換えようかな(笑)。」
山田:「あらっ。ごめんね、Rじゃなくて(涙)。」
東山:「いやいや、Rじゃなくても十分速いよ(笑)。」
東山:「お、そろそろゲートが閉まる時間かぁ。」
福田弟:「明日はいよいよバトルですね。」
山田:「うん、楽しい夜になりそうだ。」
史裕:「下りは、ゲートからゲートまでで先にゴールした方が勝ちということでいいですね?」
山田:「うい。」
史裕:「スタートはヨーイドン方式で。」
山田:「うん。オッケーだよ。」
史裕:「じゃあ、インテグラは左車線に入ってください。」
山田:「オッケー。てか、四駆ターボ相手じゃスタート位置関係無いけどね。」
大林:「山田さーん。期待しないで待ってます!!」
山田:「コラ。」
史裕:「それじゃあカウントするぞー!!」
史裕:「5、4、3、2、1、ゴーーーー!!!!」
スタートで4駆ダッシュを決める拓海。 遅れをとる山田。
山田:「おー、やっぱ速えーよ、インプは。」
ギャラリー:「スタートで完全にインプが離した。これで最後までちぎって終わりじゃないのか??」
ギャラリー:「しかもドライバーは、あのハチロクのドライバーだろ?」
ギャラリー:「ああ、抜かれるなんて考えられない。このまま逃げ切りだろ。それ以外の終わり方なんて有るのか??」
ジェットコースターのような強烈な加速。 序盤の下りでインテグラを離すインプレッサ。
山田:「…。俺はそのインプには特別な思い入れがあるんだよ。懐かしいなぁ。まだ街乗り位にしか車を使っていなかった頃、友達の結婚式の帰りに家まで送ってもらった車がそのインプだ。VerⅣだけどな。
その時下りでいきなり全開にアクセル踏まれてなー。マジちびるかと思った。こんな車や世界が有るんだぁーって。
それからだよ、車に吸い寄せられるように興味が出てきたのは。」
山田:「今から思えば、ドッカンターボの車で直線踏まれただけなんだけどな。そらすげー衝撃だった。車に対する見方を変えてくれた車なんだよ。まさかその数年後に俺もこんな事やってるとはな。フフ。」
啓介:「アニキ、今度は高速セクションは最後だからスリップなんて使えないだろ?? インプに藤原の運転だ。追い抜きはとても考えられない。このまま終わっちまうんじゃないのか??」
涼介:「そんなことは相手も計算ずくだろう。このまま離されたんじゃあ余りに策が無さ過ぎる。」
涼介:「俺は、車のチューニングの中で、第一のチューニングをエンジン、第二のチューニングをシャーシを含めた足廻り、そして空力を第三のチューニングとして考えている。現在のレーシングカーでは、もっぱらこの空力で差が出ると言われているのさ。そして今回のドライバーは、峠でその空力を使ってくる相手だ。だが、あのドライバーの本当の恐ろしさはそれだけじゃあない。」
啓介:「…。」
ブレーキングドリフトで始めの左コーナーに入っていく拓海。ワンハンドステアでの練習の成果を生かし、ほぼゼロカウンターで立ち上がる。
ギャラリー:「おー、すげー4駆ドリフトー!!」
山田:「ん~…。ドリフトねー。」
山田:「さてと、一個目の左か。それじゃあ一発FFの速さを見せてやるかぁ!!」
「カーーーーーン」
ギャラリー:「ウォー、どこでブレーキ踏むんだ、あのインテ!!」
コーナーのアールが始まる直前、インテのブレーキランプが一瞬だけチカッと点灯する。
ギャラリー:「うぉー、凄い突っ込み!!」
「カクン」
ギャラリー:「!!!」
「ガーーーーーー。」
ギャラリー:「なっ、何だ今のコーナリングは!! 入り口でカクンって、枝が折れるように向きが変わった。」
ギャラリー:「ああ、その向きのまま気づいたら次のストレートに居やがったぞ!! コーナリング速度が全く落ちなかった!!」
拓海:「!! えっ、すぐ後ろにインテが!!」
山田:「たかが200Kg、されど200Kg。この車はお前のインプよりちょうど200Kg軽いんだ。
一般に、絶対的な速さを求める上で、最も不利なレイアウトがこのFFという形式だ。構造上トラクションがかからないからパワーは上げられないし、フロントヘビーでとにかく前後重量バランスが悪い。更にフロントが重い上、駆動輪と舵を切るタイヤが同じだから、とにかくひたすらアンダーだ。
ただ一つだけ、FFのメリットをあげるならば、車重を軽く出来るということだ。ミッションとデフは一体構造だし、プロペラシャフトも無いからな。ドライバーの仕事はとにかく車の長所を引き出す事。200Kgの軽さを存分に生かすんだ。」
大林:「東山さーん、ぶっちゃけ山田さんのFFの運転ってどうなんですか??」
東山:「俺は山田さんのFFの運転はあるレベルまで達していると思うよ。ある種の究極の形だと思う。本人もFFのセッティングと運転は、ほぼ頂点近辺まで来たって言ってたからな。」
福田弟:「それで飽きちゃって、FR乗ってるんですか??」
東山:「うん。FRはまだまだ全然乗れてないって言ってるよ。でもそれが面白いらしい。」
大林:「しかし、初めてのFRがS2000とはチャレンジャーですのぉー。」
東山:「まあね。初めて飲む酒がテキーラみたいなもんだからなぁ(笑)。 昔、パワー上げたスカイラインに乗ってた俺でもS2は難しいよ、ホント。 未だに、まだまだって感じだな。」
石山:「なんせ、山田さん、俺のFD運転して、挙動がマイルドで楽だって言ってましたからねー。FDも一般にはピーキーだって言われてるのに…。」
東山:「S2が異常なんだよー。その代わりに、ひとたび乗りこなせればめっちゃ速いけどな。」
大林:「ねえねえ、それよりFFの究極のドライビングってどんなのなんですか??」
東山:「うーん。山田理論は難しい(笑)。FRをバックさせて走るのと同じって言ってた。」
大林:「ほえ? そりゃあまあ、そんな気もしますけど…。」
東山:「FFってのは、リアタイヤで曲げるんだってさ。」
大林:「ハイ、もう着いていけません。説明は後ほどー。」
拓海:「…。なかなか離れない!! というより、差が詰まってる? 直線が短かすぎるのか??」
山田:「…。インプのドライバーはどうやらターボについてはまだ素人だな。平地と比べ、標高の高い峠では、実効圧縮比が落ちないターボ車は有利なんだがな。」
山田:「タービンってのは、ブーストが正圧になるまでは、吸気抵抗となる単なるリストリクターに過ぎない。いくらレスポンスのいいタービンを入れても、NAの吸気慣性効果は得られないのさ。 NAでは、スロットルを閉じると行き場を失った高速で流れる空気がエアクリボックスの中に充填される。アクセルを踏めば、その空気が一気にインマニに入り、瞬間的にインマニ内が正圧となる。簡単に言うと、ブーストが掛かるんだ。だから本当の立ち上がりは、実はNAの方がいいのさ。 ターボ車でNAと同じ運転をすると、立ち上がった後が速いだけ。ターボにはターボの運転の仕方があるんだよ。」
山田:「さて、このコースの下りの肝は左コーナーだ。そこをいかに速く曲げて、インフィールドまで食いついていけるかが勝負だな。」
2台は二つ目の左コーナーへと突入していく。
山田:「ここは4速からのフルブレーキ。軽いインテが有利だ。更に、減速帯とアンジュレーションのバランスで、ABSが誤作動しやすい。こっちはABSレスだから有利なのさ。
草で見えにくいが、この先は逆バンクが付いてるから、アングルを少し戻し目に進入だ。」
「ガーーーー」
ギャラリー:「オオー、速えーコーナリング!! 何だ、あのインテは?? ブレーキ踏んだか??」
拓海:「な!! 立ち上がりで追いつかれてる?? こっちの方がトラクションもパワーも上なのに…。 なぜだ? ターボ車は、立ち上がりに強いんじゃなかったのか?」
山田:「よしっ、追いついた。これでスリップ圏内だ。捕まえたよ。」
ギャラリー:「イ、インテが追いついた!! こんな事って有るのか??」
ギャラリー:「ああ、NAのFF対4駆ターボだろ? 山で4駆ターボが1番速いのは峠の常識、いや、世界の常識だろ??」
ギャラリー:「ああ、だからWRカーはみんな4駆ターボなんだろ??」
山田:「…。忘れもしない、99年WRC ツール・ド・コルス。
ターマーックステージのこのコースで、並み居るハイパワー四駆ターボ勢を相手に優勝したのは、NAでFFのシトロエン クサラだった。
それも、一日雨天を鋏みながらも3位以下に一分以上の差をつけてのワン・ツー・フィニッシュだ。
俺は、あの映像が今でも目に焼き付いている。
4駆ターボが絶対の神話を信じてた俺の考えを変えたのは、あの車なんだ。
シトロエンクサラは、2Lで高回転型のNA。FFで低ルーフの3ドアハッチバック。
フフ、何か、どこかの車を思い出さないか??
そう、このDC2型インテグラと良く似ているんだ。」
拓海:「クッ。完全に後ろに着かれた。相手がスリップを使ってくることは啓介さんとのバトルで分かっているんだ。どうしたらいいんだ? 涼介さんのアドバイスを思い出さなきゃ…。」
拓海:「そうだ! カプチーノの時は、車重で負ける相手にパワーで勝負したんだ。今回もそういうことなのか?? しばらく短いストレートが続くから頑張って引き離してみるか!!」
松本:「俺は、涼介さんが藤原に言ったアドバイスが気になりますねぇ。カプチーノとのバトルといえば、パワーを生かした平地での直線勝負。今回それは、ハズレですからねぇ。」
涼介:「その通りだ、松本。インプレッサの特徴はそのエンジンパワーだけではない。FFベースながら縦置きのエンジンに、低重心の水平対抗エンジン。インタークーラーも前置きではなくホイールベース内に収められている。インプレッサは紛れもなくコーナリングを重視したマシンなのさ。エンジンの扱いやすさで言えば、はっきり言ってパワーも上げやすく、下のトルクがあるランエボの方が上だ。同じ4駆ターボでも、ランエボやGT-Rとは違う運転が要求されるのさ。カプチーノとのバトルの時に、重要なのは車のアドバンテージを引き出す事だと言ったはずだ。今回は、藤原がそれに気づけるかどうかだ。」
啓介:「…。」
山田:「インプの兄ちゃん。俺はその車を良く知っている。所有したことのない車の中では1番乗った車だからな。1ヶ月借りてたし、試乗も全モデルしてきた。ディーラーにレポートまで出したんだぜ。
GC8インプは、その戦闘力の高さも知ってるが、弱点も知っている。」
アクセル全開でパワーバンドに入るインプ。
拓海:「よーし、少し離した。」
山田:「…。」
シフトアップの為、シフトノブを握る拓海。
高回転でパワーバンドをまだ外さないインテ。
山田:「ウリャーー!」
そして拓海がシフトアップした瞬間であった。
「コツン」
拓海:「!!」
拓海:「なっ! リアバンパーにインテが当たった!!」
山田:「ゴメンゴメン。でもここまで攻めないと付いて行けないんでな。」
拓海:「離したと思ったのに…。何で付いて来れるんだ??」
山田:「どんな車でもターボ車である限り、ターボラグの呪縛からは絶対に逃れる事はできない。ターボ車はシフトアップの瞬間に、一瞬ブースト圧が落ちる。その瞬間に高回転型NAエンジンのパワーバンドの広さを利用して、リアバンパーにぶつける勢いで煽るんだ。 お前の運転しているインプは、昔のいわゆる「ドッカンターボ」って奴だ。ターボラグがでかい!! 3速までならシフトアップの瞬間を狙って付いていける!!」
拓海:「うっ、全然離せない。でもこの短い直線の次は丘への上りだ。上りなら離せるか??」
2台は丘の上りへのクランクコーナーへと入っていく。
山田:「…。スリップに入れば3速までは何とか付いていけるな。だがこの先でインプは4速まで入る。仕掛けるのはここだ!!」
丘への上りコーナーへと入る拓海。曲がりながらインプのリアタイヤに荷重が乗りきる。
左の側溝にフロントタイヤを落とし全開のインテ。
4速へとシフトを叩き込む拓海。
再びターボラグを利用し、3速全開でピッタリとインテがついたその瞬間であった。
拓海:「!!!!」
インプのリアタイヤが突如トラクションを失いハーフスピンモードに陥る。
山田:「ヨシ!!」
アウトに膨らむインプ。拓海は必死でインプを立て直す。
インからインテが楽々とパスする。
ギャラリー:「オーーー!!インテがインから抜いたー。」
ギャラリー:「何だ? インプの挙動が乱れたぞ。2駆のインテは全く乱れないのに、、、インプは4駆だろ? 何でだ??」
拓海:「し、しまった!! 行かれた! 一体何が起きたんだ?? いきなりリアがスライドした。。。」
山田:「フフ、決まった。」
山田:「一週間も時間が有ったんだ。スリップについてちゃんと勉強してきたか??
スリップストリームってのは、後ろの車の空気抵抗を減らすだけではない。この速度になると、前の車のリアタイヤにリフトを起こさせる事ができるんだ。そっちのインプはGTウィングは付いていない。セダンボディーの車のCl値は、その形状上大きいんだ。
簡単に言うと、上りで荷重が乗り切ったリアタイヤのトラクションを、後ろからスリップを使って唐突に失わせる事ができるんだ!! これはエボⅦのショップデモカーとのオッカケッコでも使った技さ!!
本当に決まると、ホイールスピンでエンジンにオーバーシュートを起こさせる事もできる、4駆ターボ殺しの技なんだぜ。
(作者注:あんまり教えたくなかったんだけど(笑))
この丘を上れば、下りながら一気にインフィールドに入る。ここからトンネルまで30mだ。30m離せば勝てる。」
2台はインテグラリードで丘の頂上を越える。
「プルルー」
史裕:「え?? 藤原が抜かれた??」
啓介:「なっ! 藤原がインプレッサで?? いったい何が起きたんだ。」
涼介:「…。」
大林:「オ!! 山田さん抜いたらしいですよー!!」
福田弟:「えー??今度はどんなマジック使ったんですか??」
東山:「ん~。」
大林:「ねえ、東山さーん。 前から思ってたんですけどFFって実は速いんですかぁー?? 俺MRしか乗ってないからわからない。」
福田弟:「俺もFRしか乗ってないからわからないです。」
東山:「うーん、速いね(笑)。俺もEG6シビック時代はノーマルエンジンで首都高でGT-Rを煽れたからね。」
福田弟:「そんなことあり得るんですか??」
東山:「やっぱりとにかく軽いのが効いてるよ。ストレートで離されてもコーナーで追いつける。」
大林:「へー。やっぱりFFは軽さですか。」
東山:「うん、軽いのもそうだけど。。。FFの運転ってのは、ぶっちゃけ簡単なんだよ。悪く言えばアンダーだけど、よく言えばスタビリティーが高い。つまり雑な入力に対して、車が寛容なんだよ。
だから誰が乗ってもそこそこ速く走らせられる。特に、軽量なFFにハイパワーのエンジン載せて、機械式LSD付けてハイグリップタイヤ履けば誰が乗っても速い。ぶっちゃけ初心者でもね。」
大林:「でも山田さんは、あるレベルまではFFは簡単だけど、そこから先はいきなり難しくなるって言ってましたよ。」
東山:「その通り。あの人はいつも、始めからLSD付けてハイグリップタイヤを履くのは教育上よろしくないって言ってるよ。コジッてもそこそこごまかしが効くから、失敗に気づかなかったりするからね。その点、ストリームは失敗を許してくれないから勉強になるって(笑)。」
大林:「へー。ちなみに山田さんのインテってLSDは??」
東山:「それが入ってないんだ。機械式どころか、ビスカスすら入っていない。オープンデフなんだよ。」
福田弟:「オープンデフ?? それで曲がるんですか??」
東山:「だって考えてみなよ、ストリームにLSDなんて入ってると思う??」
大林:「そりゃ確かにそうですねえ(笑)。でもメチャ曲がってましたからねー。」
東山:「山田さんが言うには、FFにLSDは進入で失敗した時のごまかしにしか必要ないってさ。まあ、ホントにそうとは思わないけどね、俺は。」
大林:「ふーむ、インリフトしない限りLSDはただでさえ少ないパワーを食いますからねぇ。」
東山:「オ!!大林君すごい!!分かってるじゃん!!」
大林:「そりゃあ、俺の車もパワー不足だからパワー食うものには敏感なのよ。ブツブツ。」
東山:「なるほどねー。俺のミラもやっぱりパワー食われてるんだろうなぁ。」
インテがリードのまま、2台は丘を超え、バトルはインフィールドセクションへと入っていく。
拓海:「くっ、リアが流れてパワースライドしている間に少し離された。4駆でもパワースライドはかなりロスがあるのか?? 向こうのインテグラはどんなコーナリングをしているんだ??」
丘を全開で下るインテ。パワーで少し差を詰めるインプ。
ここから2台はインフィールドセクションへと、突入する。
山田:「さーてと、こっからが本当の見せ場だ。長年研究してようやくたどり着いたFFの曲げ方を見せてやる。リジット4駆の運転はFFとかなり似ている。参考になるところがあるはずだ。後ろからよーく見ておきな。」
3速全開で側溝にタイヤを落とし、ゆるい左コーナーに入って行くインテ。
拓海:「う、突っ込みが凄い! あれは溝落しか?? でも秋名と違って、溝が浅すぎる。あれで意味があるのか??」
山田:「あんまり側溝を使うと腕が上がらないから最近は控えてるんだけどな。こればバトルだから、1番速く走れる走りをするよ。これは、6種類あるうちの進入重視の両輪落としだ。 さーて、ちぎるぞ!!」
側溝を使い驚異的なコーナリグ速度を見せるインテ。反射的に同じラインを取る拓海。
拓海:「う? コーナリング速度で負けてる!?」
山田:「されど200Kg と言ってるだろ。タイヤの太さはほぼ同じ。下りながらのコーナリングはこっちの方が速い。」
拓海:「涼介さんが言っていたカプチーノとのバトルの話はこれか。。。やはり下りのコーナーは重量差が効いてくる…。」
山田:「さて、次はいよいよこのコース唯一の右の高速コーナーだ。」
「チカッ」
一瞬インテのブレーキランプが点灯する。
「カクン、ガーーーー。」
拓海:「!!!」
拓海:「何だ??今インテの向きが…。」
弱アンダーで全開のインテ。
山田:「次は壁に向かって、ドンツキヘアピンの右だ。ここが一番の勝負所だ。突っ込むぞ!!」
ギャラリー:「オーー!! インテのブレーキ壊れたかー?? 刺さったー!!」
「チカッ」
「グッグッグッ」
拓海:「…!!」
フロントタイヤをハーフロックさせながら突っ込む山田。
ABSが付いていないインテのブレーキを、減速帯でハーフロックコントロールする。
山田:「これでフロントの摩擦円が最大となる。ここでブレーキを抜けば、瞬間的に大きくなった摩擦円を好きなように使えるんだ。」
「カックーーン」
ギャラリー:「!!!! オイ。ま、曲がったぞ!! あれが噂のコーナリングか??」
拓海:「!! FFってあんなに曲がるのか? あんな曲がり方、始めてみた。スムーズと言うよりは直角的? ハチロクの曲がり方とはたぶん全然違う。」
山田:「次の左は、草に隠れているが側溝がある。ここは高低差がある上に逆バンクが付いている。側溝を使わないとアクセルオンでアンダーだ。だからここは立ち上がり重視の前輪落しと。」
山田:「ヨイショっと。」
バンパーとドアミラーで草を刈り取りながら曲がるインテ。
山田:「 「こんなに浅い溝に落としても意味が無い」。何人に同じ事言われたか。僅か2cm前後の側溝。もちろん、そんなものにタイヤが引っ掛かるはずはない。ちゃんと他に理由があるのさ。
浅い側溝に落とす効果を俺は3つに分けて考えている。1つは、「ラインの自由度の増加効果」。まあ、これは皆が分かっている当たり前の事だ。溝一本分でも、道を広く使えるのは大きなメリットだ。
そしてその2、「バンク効果」。側溝にタイヤを落とすと僅かだが正バンクが付いたのに似た効果が得られる。内輪と外輪の荷重差、つまりロールを減らす事ができるんだ。僅か2cmと侮るなかれ。効果絶大なのさ。
そして、その3、「ネガティブキャンバー効果」。これは溝に落とす事により、車が僅かに傾く。つまり、外輪にキャンバーが付くんだよ。キャンバーが付いた事によるコーナリングフォースの増加は、説明の必要はないだろう。 特にフロントのキャンバーは付けすぎると直線でブレーキロックの限界が下がる。だが、この溝落しを使えば、コーナリング中だけキャンバーが付く理想的なドライビングが出来るのさっ。このバンク効果と、キャンバー効果で車は平地でのタイヤの限界を超えて、オンザレール的に曲がることができるんだ。」
山田:「フフ、俺はそこまで考えてセッテイングとドライビングをしているんだよ。
インプの兄ちゃん。ただ「やってみたら速かった」じゃダメなのさ。どうしてそうなるのかを考えないと、次の新しいドラテクは発見できないぜ。」
拓海:「速ぇ。ダメだ、、、完全に付いていけない・・・。消されないようにするのが精一杯だ。意地でもここは視界に置いて後半の勝負につなげるしかない!!」
大林:「そう言えば山田さん、今日も月がどうだとか言ってましたねぇ。あれ、何か意味あるんですか??」
東山:「あー。山田さんが言うには、月は理想的なコーナリングマシンらしいよ。」
大林:「はぁ? やっぱりあの人、頭がちょっとオカ…。」
東山:「ハハ。チクってやろっと。」
山田:「最近の車の性能の進歩は著しいのに、ドラテクの進歩ってのは全くと言っていいほど遅い。新しいドラテクのヒントなんてのは、実はどこにでも転がっているんだ。ようは意識の問題さ。」
山田:「例えば月を見ていて何か思わないか?? 月ってのは、地球の周りを定常円旋回しているんだよ。他の衛星はしていない。月だけは特別なものなんだ。
俺が昔、重量物を中心に集めた低ヨーの車が、回りやすい、スピンしやすいのは理解できたが、コーナーがどうして速いのかが理解できなかったんだ。だって、回ることと曲がることは違うだろ?? その疑問を解決してくれたのが月なんだ。月ってのは、自転しながら公転している。車で言うなら、スピンしながらコーナリングしているんだ。そして月は常に地球に同じ面を向けている!! つまり、スピンの周期とコーナリングの周期がピッタリ合っているってことさ!! だから、アンダーもオーバーも出さない(作者注:ウンチクごめんね)。
コーナリング中の車ってのは、どんな車でも実はスピン状態なんだよ。そのスピンとコーナーのアールが合っているから「曲がっている」と言う状態になるのさ。
だから、車はコーナーのアールの中心に対して同じ面を向けている状態が1番コーナリングフォースが高い。
ラジアルタイヤの場合、最大のコーナリングフォースを出すスリップアングルは大体15度から20度。だからそこを維持しながら、アールの中心に同じ面を向けられるセッティングとドライビングをすることが最速となるはずだ。そして、そのアングルを保ちやすい車が、常に最大のコーナリングフォースを発生できる車、つまり速く曲がれる車って事さ。 低ヨーのS2はその点理想的なんだ。車は月と違って、アンダーもオーバーも出すからなっ。
だがFFはそれが非常に難しいレイアウトの車だ。だから速く曲げるには特別な技術が要る。それが、あるレベル以上からFFはいきなり難しくなる理由なのさ。」
拓海:「クッ、ダメだ、離される!!」
大林:「東山さん、さっき乗ってみて山田さんの車ってどんなセッティングでした??」
東山:「俺から見るとドアンダーだな。」
大林:「へ? FFってただでさえアンダーでしょ??」
東山:「うん。でも、山田さんは敢えてアンダーのセッティングにするんだよ。」
福田弟:「そう言えばいつもアンダーの車のほうが好きだって言ってますねぇ。」
石山:「でもFFだったら、やっぱりアクセルでも曲がるようにフロントで引っ張って、リアを振り回せるセッティングの方がいいんじゃないんですか??」
東山:「うーん、確かに昔はそれが速いって言われていた時期もあったねっ。でも山田さんが言うには「タイヤは4つしか無いのにリアの限界下げてどうするんだ」ってさ。特にFFのリアタイヤは転がってるだけだから、いかに仕事をさせるかだって。」
石山:「それで、リアタイヤで曲げるとか言ってるんですか??」
東山:「らしいね。実際、リアタイヤの方が空気圧低いらしいよ。それで粘らせるんだってさ。FFのキモはリアのグリップだっていつも言ってるよ。」
大林:「うーん。分かったような、分からないような…。」
山田:「よし、ここからトンネルまでが勝負だ。次の左2連チャン中速コーナーで完全に消す!! 全開で攻めるぜ。」
拓海:「くっ! 辛うじてインテのテールランプが見える。 絶対食いついていくぞ!」
山田:「良くFFのコーナリングは入り口で90%決まるなんて言うけど、俺に言わせれば100%だ。入り口を失敗すれば100%失敗だ。FRのようにコーナリング中にアクセルでごまかしが効かないからな。FFでもLSD入れれば多少はごまかせるが、それでも限界がある。」
山田:「俺のインテがオープンデフなのは、入り口で絶対に失敗しないと言う自信の証だ!! 行くぜ、一発目!!」
「チカッ」
ギャラリー:「オー!! あれ、明らかに失敗だろ?? 横向きすぎだー! 曲がれねー!! って言うか、止まれねーだろー。」
「ガーーーーーーー」
スライド状態でアクセル全開の山田。
ギャラリー:「ス、スキール音が入り口がら出口まで全く変わらない!」
ギャラリー:「ああ、普通は出口に行くにしたがって半音くらい高くなるだろ??」
「プルルーー」
史裕:「ハイ、史裕…。 」
史裕:「涼介、何か、藤原が離されているらいぞ。」
涼介:「…。インフィールドで離されるのは始めから分かっている。藤原、相手の運転を後ろから見て吸収するんだ。 せっかくこんな所まで遠征しに来たんだからな。 何かを学んで帰るんだ!」
啓介:「…。」
大林:「なんか、今回も山田さん頑張ってるみたいですねー。」
東山:「大林君、さっきの話の続きだけど、山田さんはコーナーをいつも1から10までに分けて考えてるんだ。進入ポイントが1、出口が10って感じ。」
大林:「フムフム。」
東山:「その1から10までを、満遍なくタイヤのグリップを使い切る事が1番効率的なコーナリングらしい。」
大林:「なるほどね。」
東山:「俺の場合、と言うか殆どの人は、少し前半が弱く、後半が強い傾向があるらしい。」
福田弟:「へぇ。ちなみに、どうやったらそれが上手く行ったか分かるんですか??」
東山:「音らしいよ。」
大林:「へ??」
東山:「1から10までタイヤのスキール音が一定なら上手く行ってるんだってさ。」
大林:「スキール音??」
東山:「うん。最適なスリップアングルの時のスキール音ってのは決まってるんだってさ。大体高い音の場合はスリップアングルが大き過ぎるらしい。FRならパワースライドでホイールスピンしても高くなる。」
大林:「ふむ。じゃあ、ちなみにFFでどうやってそのアングルを維持するの??」
東山:「山田さんはコーナーに入る時に、殆どハーフスピンかと思うようなスピードとアングルで入って行くんだ。」
福田弟:「うん。ストリームもそんなでしたね。」
石山:「しかも、フロントタイヤだけ側溝に落としてるしね。あれ結構怖いよ、横に乗ってると。」
東山:「まあね。俺のミラ運転してもらった時も、一発目のコーナーでマジで事故ったかと思ったよ…。」
福田弟:「ちなみに素朴な疑問なんですけど、その時カウンターってあたってるんですか??」
東山:「一応、あたってる事はあたってるねぇ。ただ、少し戻すだけで、決してゼロカウンターまでも戻らない。まして、逆ハンドルなんてありえない。ゼロカウンターですら、失敗でタイムロスになるらしい。後あの人の特徴は、入り口で一発舵角が決まったら、全くステアリングが動かないんだよ。普通切り足したり、戻したり微調整があるもんだろ?それが無いんだ。」
大林:「へー。そんなこと出来るんですかねぇ…。アクセルだけでコントロールってことですか?」
東山:「うん。そこでさっきの、アンダーセッティングの話だけど。。。」
東山:「アクセルってのは、加速する為のアクセル、曲がるためのアクセルってのが有るだろ??」
福田弟:「ま、当たり前ですねぇ(笑)。」
大林:「俺には、曲がるための必殺左足ブレーキも有る!!」
東山:「はは、山田さんが言うには、その他に止める為のアクセルってのが有るんだってさ。」
大林:「は?? 止めるのはブレーキでしょ??」
大林:「じゃあ、加速の為のブレーキもあるの?? そんな、トンチみたいなの勘弁してよー。」
東山:「FF車ってのは、リアが軽いからスピンさせようとする慣性は弱いけど、その分リアタイヤに荷重が乗りにくい。だから、減速時には意外と簡単にスピンするものなんだよ。」
大林:「フムフム。」
東山:「結局スライドやスピンを止めるには、4つのタイヤのグリップを最大限に発揮させる事。スピンはリアが先に限界を超えるから起きるだろ? それでは、リアタイヤに荷重を乗せるには?」
大林:「なるほどー、アクセルですねぇー。」
東山:「ビンゴー。それで車は止まるんだよ。FFなのにアンダーのセッテイングにしてるのは、その時に絶対にスピンしない様にする為さ。更にアクセルによる減速は、VTECのパワーバンドを外さない意味もあるんだよ。完全にグリップして回転数を落とすより、スライドしてでも高回転を維持した方が速い事もあるんだ。パワーの無いNAならではの技だね。」
福田弟:「へーー、そんなことまで考えてのアンダーセッティングなんですねー。」
大林:「うーん理論派!! って言うか、うざいほど理屈っぽい!!(笑) 」
山田:「よし、2発目の左だ。 ここは、後半アンジュレーションが付いてるから、綺麗に前後輪が側溝に落ちるようにアングルをつけて進入だ。」
「ガーーーーー」
山田:「よしっ、決まった。 完全にインプを消したな。」
拓海:「け、消された…。でも一つ目の左で一瞬だけコーナリングの一端が見えた。何だあのコーナリングは?? 俺のコーナリングとは根本的に何かが違う。FFの事は良くわからないけど、あんなことができるのか?? 俺のコーナリングと何が違うんだ? くっ、考えるんだ!」
史裕:「涼介、もう後半なのに藤原が離されてるらしいぞ。 そろそろ教えてくれ、今回のバトルの作戦を。」
涼介:「…。今回のバトル、正直、藤原が相手のインテに勝てるとは思っていない。」
啓介:「はぁ??」
涼介:「考えても見ろ。 あいつは、ハチロクを走らせれば超人的だが、4駆にもターボにも全く慣れていない。 特に、ターボに付いては素人同然だ。」
啓介:「じゃあ何でバトルにインプレッサを??」
涼介:「プロジェクトDの活動は、この走りの聖地神奈川で最後だ。 その先あいつは俺たちから卒業して、一人で歩いていかなければならない。今回のバトルは、俺たちから卒業の為の試練なのさ。これからは、自分で考えて新しい車を走らせていくんだよ。
今までの感覚だけのドライビングから、考えるドライビングができるようになる。プロジェクトDの活動であいつに教えたかった事は、つまるところそれだ。そしてそれが、プロとアマチュアとの差でもある。」
啓介:「…。」
涼介:「そしてそれは、お前も同じ事だ、啓介。」
啓介:「ゴクリ。」
山田:「よし。この先は、正バンクのついた右二つ。そして1つ目のトンネルだ。 ここでインプのライトが見えなければ俺の勝ちだ。悪いが今回は勝ったな。。。 まあ、プライドを捨ててまでS2000じゃなく、FF車持ってきたんだからな。」
山田:「初黒星をつけるが悪く思わないでくれよ。 俺はお前みたいな奴が好きなんだ。ヘタにカートやってたり、サーキットなんかを走ってないところがな。」
拓海:「何が違うんだ、一体何が??」
拓海:「!! 入り口と出口?? こっちは4駆でトラクションで勝ってるはずなのに立ち上がりで煽られていた。 後半のパワースライドが多いってことか?? 出口を変えるとなると入り口も変わるはず。 よし、次の左でインテの真似をしてみるか !」
山田:「フフ。13歳から群馬で峠を運転か。お前は面白い奴だ。俺が最も尊敬する日本人プロドライバーを思い出すぜ。
その若さで、そのテクニックと切れた走り。 瞬間的に臨機応変にコースを攻略する才能。 峠、いや、山道を走るセンス。
藤原 拓海。お前はラリードライバーに向いている。
そして、ハイパワーFRを振り回すセオリーに忠実なFDのドライバー。こっちは、バトル好きでサーキットの匂いがプンプンする。
高橋 啓介。お前はレーシングドライバーに向いている。
GTドライバー、いや、努力によっては、フォーミュラーカーまで狙える逸材だ。」
山田:「モータースポーツを志す人間にとって、日本に生まれた事は必ずしも幸運とは言えない。
ラリーに至っては、特にそうだ。 競技とはいえ、車で公道をかっ飛ばす事に対して、日本人は違和感を消す事ができないんだよ。
WRCですら、北海道でコソコソやるしかない。 ヨーロッパと違って、日本にはその土壌がまだ育っていないんだ。 その手の本格的な学校なんてのも無いしなっ。
自分の意志でプロレーサーを目指そうと思った頃には、もう年齢的に手遅れなのさ。
18で免許取ったド素人が、これからレースデビューして練習したいからプロチームと契約してくれと言ったって無理な話だ。
親が子供の頃からカートやらサーキット走行やらを、金かけて強制的にやらせなければ、正規のルートでは年齢にテクニックが間に合わないのさ。
バレエやバイオリンじゃねえんだから、そんなの納得いかねえだろ??
だから、時間も金も無いプロレーサーを目指す連中は、違法や危険を承知で公道で練習するしかないのさ。
だが、それで成功すれば国民的英雄だ。 そんな大きな矛盾をはらんでいるのが日本のモータースポーツの世界なんだよ。 野球や、サッカーとは違うのさ。
フフフ。プロジェクトDかぁ。全く、面白い事考えやがる。」
大林:「ねえ、東山さん。 最近周りでサーキットが流行ってるけど、山田さんって結局サーキット好きなんですかねえ??」
東山:「うーん。走りたいって言ってるけど。 もし、安くて近くて、24時間やってて、車両保険が利くサーキットが有るなら毎日でも行くって言ってたなぁ(笑)。」
石山:「そんなのあったら、俺だって毎日行きますよ。」
大林:「それって、「公道」って言うんじゃないの??(笑) 」
東山:「結局、サーキットに行ったら「気持ち良く運転」じゃなくて、タイムが全てになっちまう。そうすると、当然金かけた奴が有利だ。その辺が、金銭的にせいぜい年に数回しか行けない俺たち一般人には難しいんだ。あの人、ああ見えて負けず嫌いだからな。自分で金のレギューレーション決めるのが難しいんだろう。まあ、俺もそうだけどね。」
山田:「まったく…。最近の三矢峠では、いい歳になってから、どいつもこいつもサーキットサーキットと。サーキットは確かに楽しいんだろう。合法だしねっ。だが、サーキットでは、時間と金を気にせず、好きなだけ他人の車で練習できるプロレーサーには絶対に勝てない。当たり前の事さ。」
山田:「だが正直言うと、俺は始めからプロレーサーに勝てないとは思っていない。だって、挑戦する前から諦めるなんて、おかしいだろ??
そう言えばこの間、あるモータージャーナリストがこう言っていた。「理論は、練習の近道だ」ってな。
それは、車に乗り始めたときからの、俺の持論だ。走り込み量では、環境に恵まれたプロドライバーには勝てるわけは無い。
だが理論は別だ。 全く金がかからないのが、「ドライビング理論を考える事」なんだ。 その一点についてのみが、俺がプロより勝る可能性が有る、唯一の糸口なのさ。
そして、走り込み量より理論の優位性を示せるステージとなるなら、サーキットよりも、プロとの走り込み量の差が少ない山の方が絶対に有利だ。俺がラリー好きなのは、それも理由なのかもしれない。。。」
山田:「よし、あと右二つ。左隅の砂利に気をつけてと。」
一つ目の右コーナーをバンクを利用して全開で曲がるインテグラ。
ギャラリー:「ウォーーー!! 何だ、あのインテのドライバーは! 頭おかしいんじゃないのか?? 左は壁で、右はダムだぜ。いくら何でも、突っ込みすぎだろ!!」
ギャラリー:「あれが公道でやることか??」
山田:「同じ車で、同じ技術のドライバーと、同じ速さで走るのなら、理にかなった運転をしているドライバーの方が安全マージンを多く取れる。公道において、理論ってのはつまるところは安全マージンなのさ。
俺の場合、最大でも80%。 これ以上はマージンを削らない。 フフ、もしも誰かがぶつけてもいい車と、ロールゲージ、ヘルメット、フルバケに4点以上のベルトを用意してくれて、「とにかく速く走れ」と言われれば、もっと速く走れるさ。
これでも俺はマージンをちゃんと取っているんだ。」
大林:「ねえ、東山さん。そう言えば、この間山田さんが言ってたインプレッサに対する思い入れって何だか知ってます??」
東山:「ああ、始めに衝撃を与えたのもそうだけど、何か車買うときにS2000買うかインプレッサ買うか迷ったらしいよ。」
大林:「え? 全然違う車のような気が…。」
福田弟:「一般に、S2はサーキット、インプはラリーってイメージですよねぇ?」
東山:「うん。でも山田さんは、実はサーキット派ではなくラリー派なんだってさ。」
大林:「え? じゃあなんでS2?(笑)。 FRのオープンカーでラリーなんてバカ、って言うかできるわけ無いじゃん。」
東山:「皆が無理だと言えば言うほど、やりたくなるのが山田さんの性格さ。
実際、4駆やFRターボやFFが多い峠で、敢えてS2000を選んだのは外し技だって言ってたよ。」
福田弟:「確かに、山田さんがS2000で来だした頃には、他にS2は一台も居なかったらしいですからねぇ。」
東山:「最近は増えてきたけどな。本人は嫌がってるけど…。」
福田弟:「ちなみに、東山さんはサーキット派ですよねえ??」
東山:「うーん。まあ、F1好きだしね。頑張れBARホンダ!!ってか。」 (作者注:この原稿は大分前に書かれたものです。 )
大林:「ホームコースが首都高ってだけで、やっぱサーキット派っぽいよ。」
東山:「確かに何度かサーキット走った事有るけど、今はもういいかなって感じ。何かサーキットでタイム削るのに熱くなれないし…。 首都高もいいけど、最近は山の楽しさに目覚めちゃったよ。別に俺達はレーサー目指してるわけじゃないしね。究極のところ、趣味だから楽しければいいんだよ。」
福田弟:「へー、でもなんかこの世界では、峠の延長にサーキットがあるのが当たり前みたいな風潮がありますよね。よく、「もう峠は卒業してサーキット」とか言ってる人居るし。」
東山:「ああ、ゲップが出るほど良く聞くね、そのセリフ(笑)。」
東山:「でも、峠の先には必ずしもサーキットが有るとは限らないんだよ。」
福田弟:「え? じゃあ、何があるんですか。」
東山:「山田さんの場合、峠の先に、また山が有るような気がする。あの人、そういう中途半端な常識みたいなの大っ嫌いだから。ひねくれてるからね(笑)。」
大林:「は? じゃあ今のまま変わらないって事??(笑) 」
東山:「いやいや、先って言ってるじゃん。俺は知っている。フフフ。」
福田弟:「あ、やっぱりラリーですか??」
東山:「うーん。ちょっと違うな。」
大林:「ナニナニ? 教えてー。」
東山:「はは、あの人面白いよ。 何と笑える事に、山田さんの最終的な夢はパイクスピークに出ることらしいよ(笑)。」
大林:「パ、パイクスピーク!!」
福田弟:「それはまた、飛んでますねぇ。」
大林:「いやいや、飛び過ぎだって…。」
東山:「まあ、どうせ趣味だから、夢見とけばいいんじゃない?(笑) 」
大林:「寝て見る夢だな…。」
福田弟:「でも東山さんは、サーキット派っぽいですよねえ。どうして冷めちゃったんですか??」
東山:「確かに、サーキットは対向車も警察もツブシも出なければ、人を跳ねる心配も無い。 安全で、合法で、健全だ。
フフ、だが安全と健全を求めるのなら、俺はテニスやゴルフでもやる。 結局の所、男ってのは、ギャンブルや格闘技が好きなのと同じ。
ともすれば怪我したり、身を滅ぼす危険がある、スレスレの危ない刺激を求める生き物なのさ。 この歳になって真面目に働いてると、こうやってアンダーグラウンドの世界で、たまにバカをやることでバランスを取ってるんだよ。
サーキットがメインで峠は遊びとか偉そうに言ってる奴らも俺に言わせれば皆同じ。 結局同じことやってるんだからな。
フフ、結局俺たちは、スレスレの危険をもてあそぶのが好きなキ○ガイ人種なのさ。ガハハハ。」
(作者注:嘘です。ハンドル握ったらマージンを取って安全運転を心がけましょう。 )
大林:「ひ、東山さんが壊れた…。」
福田弟:「俺、危険なの嫌…。」
拓海:「よし、次の左で一発インテグラのコーナリングを試してみるか。」
インテの真似をして、入り口でアングルを付けてアクセル全開で立ち上がる拓海。立ち上がりでスライドが収束する。
拓海:「!! 何だ今の曲がり方は? 何か変な感じだったけど、決まったのか? そうか。何となくだけど分かってきた気がする。」
拓海:「そうか! ターボ車は立ち上がりに強いんじゃない。 逆に、立ち上がりを重視しないと遅いんだ!!
インプレッサはハチロクと違って、パワーが溢れるほどあるんだ。 初期の減速を恐れないで、ドンと立ち上がった方が速いんだ!! よし、次のコーナーもやってみるか!」
この時、拓海の運転に少しずつ変化が現れてきた。 立ち上がりでのスライド量が減ってきたのである。
拓海:「そうか。ゼロカウンターと言ったって、有り余るパワーを滑らせて捨ててる事には変わりない。そういえば、茨城のゴッドハンドも言っていた! ワンハンドステアは手段ではなく、結果だって。 そうか! 何かバラバラだったパズルのピースが少しずだけど、一つにまとまりかけてきた気がする。 色んなことが、理論的なことが、少しずつだけど分かるようになってきた!!」
山田:「ん? インプのライトが見えてきたな。 ここで見えるのは、想定済みだがちょっと近いな。 コーナリング速度を上げてきたのか?」
バックミラーに目をやる山田。
山田:「お! 立ち上がりが鋭くなってる。 だがここで、この距離ならもう大丈夫だ。 2個目の右は、前半は正バンクが付いているが後半は無くなる。 スライド量に気をつけて進入だ。 ここを立ち上がれば一個目のトンネル!」
「ガーーーー」
山田:「よし、コーナーは後1つ。 最後のトンネルへの直角コーナーだ。
そこを立ち上がって、30mだ。 フフ、だが何だか後ろのインプのペースが上がってきてる気がするぜ。」
バックミラーを見る回数が増える山田。
猛烈に追い上げる拓海。
拓海:「分かってきた!分かってきた! こうやって曲げるのか!!」
「ガーーー、ドーーン。」
拓海:「!!。 はっ、速い! 前輪が駆動しているってのは、こういう事なのか!!」
山田:「くっ、ホントに追い上げてきたな。 さっきまでの走りとは別物だよ。 もうトンネルに入ってきたか。 最後のコーナーも全開で行かないと、30mは危ないな。」
福田弟:「ねえ、東山さん。 前から思ってたんですけど、山田さんが4駆ターボに乗ったらどんなだと思います??」
東山:「うーん。俺も思うよ、それ。 ただ、乗ってみないことには、だーれにも分からない(笑)。」
大林:「でもさ、パイクスピークに出るんだったら、標高や路面を考えると4駆ターボしか有り得ないんじゃない?」
東山:「うーん、確かに。。。 ターボってのは、元々空気の薄い高度を飛行機で飛ぶために考えられたモノだからな。 ターボラグもクソも無い。 標高の高いところではターボが100%有利だよ。 そしてグラベルで4駆が有利なのは、さすがに当たり前。 ただ、あの人はいつも言ってるけど、絶対的な速さを求めていないんだよ。 あの人が求めている物は楽しさであって、速さは楽しさの一要素に過ぎないってね。 まあ、
それは俺も何となく分かるけどね。」
大林:「うーーん。 結局のところ、あの人いったい何がしたいんでしょうねえぇ?」
東山:「さあ、車が好きなんじゃない?(笑) 」
大林:「ズコッ。」
山田:「ここも草で見えないが、側溝がある。 後半のミューの変化を考えて、早めにハンドルを戻すんだ。」
最後のコーナーを全開でクリアする山田。 最後のトンネルに突入する。
山田:「よし、後は直線だ。 NAとは言え、天下のVTEC。直線も決して遅くはない。 さーてと。インプは、どこで現れるかな??」
アクセル全開で、バックミラーに目をやる山田。
最後のコーナーをスライドを抑え、全開でクリアする拓海。
拓海の視界に、インテグラのテールランプが入ると共に、その絶望的な距離に負けを確信する。
拓海:「クッ!」
山田:「おーお、すげえ立ち上がり。 全く凄いよ、お前は。 俺が長年かけて考えた理論を、あっという間に実践しちまうんだからな。
だが残念ながら、完全に30m以上有るな。
フフ、始めからその運転をされてたら、負けてたかもな。 お前の方が、ドラテクは俺よりも遥かに上なんだ。 全くその若さですげえ奴だよ。 俺と違って、お前にはまだたっぷり時間がある。将来何かでかいことをしでかす逸材だぜ。」
山田:「日本では、ラリーはまだまだマイナーなモータスポーツなんだ。 F1があんなに人気が有るのに、全く不思議な話だ。
全日本クラスの大会ですら、どっかの山の片隅でギャラリーも殆ど無く、申し訳なさそうにやってる感じだからな。
それを本当に変えるのは、制度の変更や地道な宣伝活動ではない。」
山田:「一人のスーパースターの登場なんだ!」
「カーーーーン」
山田:「もうゴールだ…。今日の勝利は、記念に胸にしまっておくよ。」
拓海:「くぅー、負・け・た…!!」
拓海:「1m、いや、1cmでも詰めてやる!!」
アクセル全開でインテのスリップに入ろうとする拓海。 インプの、比等長エキマニの排気干渉音がトンネル中に響き渡る。
山田:「フフ、俺はお前のその折れない心が好きだよ。何だか後ろのインプが輝いて見えるよ。」
山田は4速にシフトアップ。 インテグラのB18Cは、確実に逃げ切れる高回転のゾーンに入る。
そして、、、その時は突然訪れた…。
「ガッ」
山田:「!?」
「ガラガラガラガラガラー」
山田:「うわっ!!やっちまったか!?」
インテのシフトノブに伝わってくる、強烈な振動。 インテグラのボンネットから煙が噴き出る。
拓海:「??」
インテグラは突如失速。 痛恨のエンジンブローである。
拓海は難なくインテグラをパスする。
山田:「くっ・・・、こんな日にエンジンブローとは。 負ける時はこんなものか…。」
白煙を上げるボンネット越しに、遠ざかるインプレッサのテールランプを見つめる山田。
山田:「藤原 拓海…。 お前は本当に面白い奴だ。 俺は、一抹の夢を見ずにはいられない。」
山田:「俺には見える。 お前がいつの日か、4駆ターボのWRカーを走らせている姿が。
日本人初の、WRCドライバーズチャンピオンに輝いて、表彰台でシャンパンシャワーを浴びている姿が!! 俺には見える!!」
ゴール地点:
「ドドドドドドー」(スバルのボクサーサウンドです)
「ガラガラガラガラ」(エンジンブローしたB18Cの音です)
ギャラリー:「!!!!!」
「プルルルー」
史裕:「涼介!藤原が勝った!相手はゴール手前でエンジンブローしたらしい。」
啓介:「なっ!」
松本:「!!」
涼介:「エンジンブロー??」
涼介:「フフフ、藤原はどこまで強運なんだ。やはり何か特別な物を持って生まれてきたとしか思えないな。」
涼介:「今回のバトルで、あのインテグラのドライバーは俺が藤原に教えたかったことをかなり省略してくれたはずだ。 これから、神奈川エリアでは更に厳しい戦いが続く。今日のことは、藤原にとって必ずプラスになったはずだ。」
大林:「わ、エンジンブローしたみたいですよー!!山田さん!!」
東山:「なっ!!」
大林:「ていうか、あの人、何機エンジン壊す気なんですかねぇ?」
東山:「コラ、そんなことよりブレーキ効かないから助けにいくぞ。」
「ガラガラガラガラ」
東山:「山田さーん、大丈夫ですか?」
山田:「ああ、何とか…。 でもエンジンは載せ換えですねぇ…。」
山田:「いやはや、やっぱインプレッサ相手だとどうしても燃えるわ。」
大林:「だからって、エンジン燃やしちゃダメでしょ!」
山田:「ガクッ。」
「ドドドー」
拓海:「何か、スミマセンでした…。」
涼介:「何を言ってる。 経緯はどうであれ、勝ちは勝ちだ。 へこむ必要はない。 それに、インプを持って来いって言ったのは俺なんだ。 相手のインテグラはどうだったか?」
拓海:「出来れば、もう一本やりたいです…。」
涼介:「って事は、学ぶことを学んだって事だな。今日はそれで十分だ。 後は、タイムアタックで頑張ってくれ。」
福田弟:「山田さん、次はタイムアタックですね。」
山田:「うん、結果はもう分かってるよ。 間違いなく破られる。 だってあいつ、凄いもん(笑)。」
全開でタイムアタックに飛び出す拓海。 山田の持つ、下りのコースレコード、2’26を2本立て続けに更新。 3本目でタイヤがタレてアタックは終了する。
こうして三矢峠への遠征は終わり、プロジェクトDは次のステージへと旅立っていく。
どうでしたか?楽しく読めましたか?(^^A)
これは、私がハマっているサイトの一部を転載したものです。
この他にもチューニングや車弄りの考え方が簡潔に自論展開されていて何度も読んでいます。
他にも、沢山の知識や情報が載っていますから、宜しければ見てみてくださいね~♪
サイト名:「
自動車を物理する」
↑、このタイトルが好きなんです♪