2011年09月19日
エリシオンの試乗をしてみたからには、いちおうライバルということになっているアルファードは乗り比べておこうという興味本位の試乗です。自宅周辺にはアルファードが何台か止まっているので、他人とかぶるのが心地よくない(のにコロナという量販車に乗っている)私はアルファードはそもそも対象外なのですが、乗り心地がエリシオンよりも遥かに優れ、更にバーゲンプライスで購入できるという納得ポイントがあれば候補に上るかもという程度の気持ちです。
試乗車は2.4リッター、グレード名は忘れましたが中間グレードっぽいような説明を受けました。
渋滞気味の国道と県道、時速60キロ程度まで出せる広めの市道と、もうちょっと速い速度で流れる国道を6:3:1くらいの距離で走りました。時間にして40分少々、いつもながらの素人の感想です。
運転席に座ってまず感じるのは、ハンドルとメーターの位置が何とな~く低いこと。直前視界を確保するためだろうが、ちょっと自然でない感じ。チルトで一番上にセットしてもなお低い。何が自然でないかというと、ハンドルの位置が低いのにハンドルの角度が寝ていないでセダンのように立ち気味なこと。座面を高めにして背もたれの角度も立たせる私の運転スタイルだとしっくりこない。(この不自然さはステップワゴンでは感じなかったがノアでは感じたことを思い出す。)
メーターの質感は高くデザインも見やすくてよい。左右対称のデザインで水温計と燃料計がアナログの針であるところもオーソドックスだがいい車に乗っているという印象を受ける。ただし、メーターパネルの距離が近すぎる。私のような毛様筋の柔軟性がかなり失われつつあるドライバーは焦点を合わせるのが疲れる。
乗り心地は重量を活かしてゆったりとおおらかな感じで全体的には嫌いではないが、路面のひび割れなどの細かい振動を素直にそのまま伝えてしまい、マンホール通過時もちょっと硬い感じの衝撃が伝わってしまうのと、平坦性が低い舗装面ではフラット感が少々足りなくて終始左右に揺れているような感じが惜しい。あとほんの少しフラット感を増して、微小入力に対するつっぱり感をなくせばかなり良いんじゃなかろうか。(それって難しいのかなあ?)
CVTは停止状態から加速するだけなら滑らかで気持ちいい。2トンに迫ろうとするボディーに2.4リッターの組み合わせだから鋭い加速は望めないが普通に使うには必要十分。減速時もCVTにありがちな停止間際に運転者の意図に反してぐいぐい止まろうとするところが感じられなくてわりと自然。
しかし、セッティングはあまりタイトではないらしく、平坦路での緩やかな加速やちょっとした上り坂で速度を維持しようと少しアクセルを踏み込んだだけでとりあえずエンジン回転数を上げるセッティング。そしてアクセルを緩めるとスッと回転数が下がる。モード燃費試験対策にはこのセッティングが良いらしいが、ちょっとしたことでエンジン回転を上下させるのは個人的に好きでない。いいから黙って機械(というかトヨタの理論)に従えというメッセージが伝わってくる。
また、渋滞に近いような低速での巡航はちょっと苦手な印象。ここは逆に燃費を意識したタイトなセッティングになっているらしく、アクセル全閉とミリ開けを繰り返すとややぎくしゃくする。CVT開発に関わるエンジニアの苦悩が伝わってくる。
加速時に聞こえてくる2.4リッター4気筒エンジンの音は、音圧は高くなものの音質はいまいちで、よく言えば軽快な音だが、NZ系エンジンを積むカローラの延長のようなベイィィーンという音にも聞こえる。(アルファードはAZ系)。ただ、町中をおとなしく走るには質感を損なうほど大きな音を発しないので、気にしなければ問題なし。(目くじらの範囲だろうから普通は気にしないだろう、きっと。)
ブレーキは効き始めポイントがわかりにくく、しかも効き始めてからも制動力が不足気味。もちろん踏めば効くのだが、効いていると実感できるところまでのストローク量が大きく、踏んでも効かないというイメージを抱きやすい。この感覚は15年以上前に乗ったコースターと同じ。同乗者に不快感を与えないように極力ショックを感じさせないというコンセプトなのだろう。それも一つの考え方だろうが、減速度の立ち上がりがどうにも2テンポくらい遅れるので調子が狂う。制動力が立ち上がるとこまでスッと不感帯を踏み抜ける足技が必要か。
ハンドルの操舵力はやや軽め。狭い駐車場での切り返しでもハンドルは楽に回る。街乗りではどっしりとした落ち着きはあまり感じない。時速60キロ程度で片輪だけ轍に踏み入れたときなどは少しだけハンドルに外乱が入ってくる。
ドアミラーは大きくて見やすい。ミラーの下4分の1くらいは湾曲していて地面もよく写って良いのだが道路の白線は歪んで映る。
左前輪付近の死角を写す小さなミラーは、いまいち効果がよくわからない。デザインをとるにしても安全性をとるにしても中途半端。
1列目、2列目ともサイドステップがついているので乗降性はまずまず良好。1列目は運転席側にもピラーにグリップがある。2列目のグリップはわりと高いところにあるが、低いところの車内内側に指を引っかけられるくぼみがあり、子育てファミリー受け指数はちょっとだけ高い。
3列目を後ろに下げると荷物スペースは無い。しかし使わないときは左右に跳ね上げができ、広大な荷物スペースが出来る。跳ね上げ方法も容易で、バネが仕込んであるので軽い力で出来る。奥様受け指数も高い。セールス氏にはいろいろな質問をしたが、シートアレンジに対する質問をした時が最も生き生きとしていた。ミニバンを買う普通のユーザーはそういうところを大事にするんだろう、きっと。私にとってシートアレンジはおまけ程度の質問だったが、つくづく私が普通でないことを思い知らされた。
それにしてもこの車は大きさを感じる。エリシオンは似たような大きさながら運転感覚はそれほど大きな車を運転している気分にはならないが、アルファードはいかにも大きな車を運転しているという気がする。四隅が遠い感じ。
全体的にはさすがに高価格車だけあって良くできているし、外観も内装も対価に見合う高級感を備えているように思える。これを買って後悔する人はあまりいないだろう。しかし、やはり個人的にはCVTの運転感覚にいまいち馴染めないのと、登録後3ヶ月あまり経過した試乗車の内装から発せられるトヨタの新車特有の匂い(接着剤か?)が私には合わなかった。試乗後、軽く頭が痛い。
Posted at 2011/09/19 23:10:26 | |
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