samurai blueのブログ一覧

VERUZAに行った翌週、別件の打ち上げも兼ねて奥さんと飲みに行った。
程よく酔いも回った頃、ふとGT-Rの話になった。

本当は行くのが怖かったという話をしたら、軽く驚かれた。


BCNR33の劣化を確認する、それと合わせて、奥さんがこれを受け入れられるか確認する。
途中から興奮して舞い上がって忘れていたけど、実はこの2つの目的があった。


たとえばレガシィのワゴンと比較した場合、GT-Rのほうが便利だとか使いやすいとかいう評価はありえないだろう。
乗用車として考えた場合における、そんなGT-Rのデメリットを指摘されることは、十分予想できる展開だ。
それでも彼女に「やっぱりこれはいやだな」といわれるのはとても怖かった。
でもその確認を避けて通ることは出来ないし、どうせなら早い段階で確認しておきたかった。

でも、彼女の考え方は全く違った。
レガシィからのマイナスではなく、ゼロから考えてくれた。
BNR32,BCNR33,BNR34という3台の中でBCNR33の良さ、メリットという考え方をしてくれた。
「私はこれでいいよ。がんばってマニュアル運転するよ。色は白がいいな。 」
彼女が出した条件は色だけだった。(´▽｀*)ｱﾊﾊ


飲みながら、それがすごくうれしかった、という話をした。
彼女はむしろ、俺がそれほど想い恋焦がれるクルマが現実的な価値観、価格のものであることにいろんな意味で安心したそうだ。
それがもし、現実的な価値観でなければその場で反対した、と。

かなわぬ夢じゃなくて、それはかなえるべき現実なんだよ、とさえ言ってくれた。

そして、そこそこの値段のいいGT-Rを買ったほうがいいよとさえ言ってくれた。
安くて壊れるよりも、そのほうが結果的に安くなるんじゃない？と。

彼女にはいつも驚かされる。
自分が気づかなかった、新しいものの見方、価値観をくれる。それも良い方向に。
彼女といると視野が広く、考え方がポジティブになっていく気がする。
実際にそうなのかもしれない。
人を愛するということはその人の目で世界を見ることだ、と昔どこかで聞いた言葉をふと思い出した。
彼女の目を通してみる世界は、楽しいことにあふれている。多少の苦労さえ、楽しいイベントに変わっていくようにさえ思う。


35万レガシィでさえ、決して無駄ではなかったとさえ思えるようになった。

・安いけど実は程度が良い、というクルマは基本的に無い。
・価格と品物は一致する。
・そこにはかならず値段相応のバランスがある。

それは実際に手に入れてみなければわからなかったことだ。
そして、だからこそ、冷静にリスクを考えつつ、GT-Rの購入を考えられるようになった。


「35万レガシィを買わずに、激安GT-Rを買っていたら、決して満足は出来なかっただろうな。」

そういったら、彼女は笑ってくれた。(´▽｀*)ｱﾊﾊ


「GT-Rの次のときは私のわがまま聞いてね」(￣ー￣)ﾆﾔﾘ
「AT？」
「そうそう！あと低くない車高。（笑）」(≧∇≦)b

オチも忘れないところが素敵だ。(*ﾟーﾟ)

憧れ。

そう、それはきっと憧れなんだろう。

1989年に第2世代GT-R、BNR32が世に出たときにその憧れは生まれた。

「スカイラインGT-R」という名前の重さ。
伝説とさえ呼ばれる戦いの歴史。
Gr.Aで戦うために作られたエンジン。
当時としてはかなり攻撃的だったそのスタイリング。

GT-Rの様々なものが当時中学生だった自分をとりこにした。

湾岸ミッドナイトを読みかえしていて、ドキッとした。
「荻島・・　お前が15の時FDは出てきたと言ったよな　10代の時に知る　それは大事なコトなんだぜ　RGOのボス大田に言わせりゃFDもいろいろと問題が多い　だが10代で知ったお前にはFDは宝石だろう　わかるかその意味が・・」

中学生のときに登場した第2世代GT-R。自分にとってはGT-Rがまさに宝石だ。


いつか手に入れたいという思い。
あんなすごいもの無理じゃないかという思い。

手に入れる機会は確かにあった。
手の届かない金額じゃない。

でも、あきらめた。

いろんなものを理由にして。
MT。
維持費。
自分の運転技術。
家族の使い勝手。
近しい人の意見。
経済的な事情。
先行きの不透明さ。
故障への対処。

無理だ、俺には所有できない。

怖がっている自分がわかる。
GT-Rを手に入れることで引き換えにするもの。
これほどのものへの対価として一体何をを自分が支払わなければいけないのか。
本当に自分が手に入れていいのか、それは許されるのかとさえ思った。

だから、あきらめる。
そこそこ条件を満たし、リスクが少ない車を消去法で選ぶ。

そして後悔する。後悔を繰り返す。
何度も。
何度も。
後悔すればするほど、逆説的に自分の思いの深さを思い知らされる。



またあきらめようとしていた。

昨日の帰り、歩きながら消去法で次の候補を考えていた。
インプレッサWRX STI 4doorのATはどうだろう？そこそこ広いし、十分速い。結構楽しいんじゃないか？

そう思った瞬間、自分の目の前を白いBCNR33が走り抜けていった。

ほんとうにそれでいいのか？と問いかけるように。

少なくとも10年経過したクルマ。
多少水垢も付いてそれほどきれいではない。
NISMOのホイールにLEDのテールランプ。ライトチューン程度。
RB26の、少し高めの直6サウンドが遠ざかっていく。

GT-Rの魅力は衰えてはいなかった。

運転していた年配の白髪の男性に、激しく嫉妬すると同時に、ひどく打ちのめされた気分になった。

自分は何をしているのだろう、と。



だから、今日、厚木のVERUZAに行ってきた。
10年以上経過したBCNR33がどれほど劣化しているのか確かめるために。

店が近づくと、冷静さを失う自分がいた。
信号待ちの最中ニュートラルに戻すことを忘れ、クラッチを離して何もないところでエンストする。

店先に並べられたBNR32とBCNR33。
薄暗い店内にBNR34が置いてあるのが見える。

見たかったのは、180万の1995年式、中期型の白いBCNR33。走行5.8万km。

驚くほどきれいだった。

置いてあるBCNR33をなめるように見回したけど、劣化はうちのBH5Cほどではなかった。
はいつくばってフロアの下回りを見回したが、錆らしい錆びも無い。
コンディションは良好だ。
この価格なら、程度のいいBCNR33が買えるのだ。

GT-Rがきっと大好きで、こちらが聞いてないことまでたくさん話をしてくれたわけありの店長さん。
話しているだけで、ああ、この人もGT-Rが好きなんだとよくわかった。
店長のお勧めもこの白いBCNR33だった。
その不人気ゆえに価格はBNR32より比較的安く、パーツはBNR32ではなくむしろBNR34と共通が多く、信頼性も上がっている。
BNR32のネガをつぶして生まれた、BCNR33。

昔はBNR32が好きな反動からか、BCNR33が嫌いだった。
重くなったボディ。伸びたホイールベース。Gr.Aが無くなり、何のために積まれているかわからないRB26DETT。存在意義がわからなかった。
でも湾岸ミッドナイト34巻での33R解説で評価が変わった。
もっとも限られた条件の中で生まれ、そして現場の努力によってきちんとGT-Rになった車。それが33Rだと。


かつて別れた人に拒まれたGT-R。
乗らない決断を下したのはもちろん自分だ。他人のせいにするつもりは無い。
でも、身内の支えが無くては維持していけない。
家庭の不和を良しとし、それでもモチベーションを失わず、手に入れ維持していく度胸は無い。


今、妻となった人は、「いいじゃない、乗りなよ。」と今日も笑顔で答えてくれた。
「乗ればいいじゃない。だって好きなんでしょ。それがこれから先働いていくために、心の支えになるのならいいと思うよ。」
驚くほどあっさりと言ってくれた。


今改めてその言葉を思い出し、うれしくて涙がにじんでしまった。

相手が大切なものは自分も大切にしたいと考えてくれる人だからこその言葉。


手に入れられるかどうかはわからない。
でも、まだあきらめる時ではないのだと、心から思った。