2011年08月28日
■「SPEEDIは、3月11日の事故以来、何の落ち度も、遅れもなく、正常に本来の役割を果たしていると思う」
「SPEEDI(スピィーディー)」のことである。
3・11の大地震と大津波をきっかけに福島原発の爆発事故が起きたとき、民主党が、せっかく導入した
「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」
のデータを事故直後に公表することをあえてしなかったことは、有名な話である。
SPEEDI(スピィーディー)とは、
「System for Prediction of Environmental Emergency Dose Information」
の略で
「緊急事態において気象条件や地形情報などから放射性物質の環境への拡散を地理的、数値的に予測するシステム」
のこと。
公表しなかった理由を問われて
「パニックになることを恐れた」
とあったが、日本人は、以前からパニックにならないことは、知られていた話ではなかったか。諸外国に比べたら、地震が来ようが、大停電になろうが、どさくさに紛れて、商店などを襲うという火事場泥棒的な行為もほとんどみられなかったはずである。
その後の対応を見ても分かるように、当初は、パニックを恐れたのではなく、事故を過小評価しすぎていたのであろう。その結果、
「大丈夫なのだから、公表しなくてもいいだろう」
と判断したのでだ。しかし、時間たつにつれて、事の重大だが分かってきたのだろうが、時すでに遅しで、福島県民はもちろん、関東の多くの人たちが被曝していた。
その証拠に、事故の規模に関しては、
「チェルノブイリ級の大事故ではない。大丈夫だ」
と民主党政府は言い続けて、民主党政府の判断と、海外の判断とは、ずっとずれたままで、最終的に、
「チェルノブイリ級か、それ以上」
との欧米の判断を認める形で決着がついたのだった。
では、100億円以上かけて開発された
「緊急時迅速放射能影響予測(SPEEDI)」
というのは、何のためにあるのだろうか?
国民を守るために導入したのではなかったのか。
ちなみに、
「不吉な放射能拡散予測―住民避難に生かせなかった日本政府 (2011/08/17) on WSJ(日本版)」 には
「SPEEDIの運営に携わっていた人々は、正常に機能していたと認識しており、原子力安全技術センターの数土理事長は、
〈SPEEDIは、3月11日の事故以来、何の落ち度も、遅れもなく、正常に本来の役割を果たしていると思う〉
と話している」
とある。
■「あまりに隠し立てをし過ぎると、人々は疑い深くなって、些細なことでも、大変なことのように思って言いふらすということもあります」
実は、こういうことは、今に始まったことではない。
これは、幕末期の嘉永の末から安政の初めのことである。
このころは、「安政の大地震」、そして大津波も起きたし、同時に外国船が日本近海に頻繁に出没していた時期でもあった。嘉永6(1853)年といえば、6月にペリーが来航、7月にはロシア使節プチャーチンが来航、翌年ペリーがふたたび来航している。
以下は、そんなころの、当時、名君と評された薩摩藩主・島津斉彬の言葉である。『島津斉彬言行録』(岩波書店)より。
「当時、当局が、国際情勢を国民に秘していた態度は、実は、卑怯の恐怖であるとして、〔島津〕斉彬は、次のように言っていた。
『この節、異船の儀、とかく御秘しに相成り候、人氣の動乱を老中共恐れ候故にもこれあるべく候へども、あまり御秘事過ぎ候へば、なほさら人々疑念を起し、少事をも大事に申しふらし候わけにござ候、日本に生まれ候ものは一人として皇國をあしかれと存じ候ものはこれなき事ゆへ、此度の如き儀、御秘しに及ばず、委しく仰せ聞けられ、存じよりの御尋ねもござ候て、御評決に相成り候へば、人心一和の基にも相成るべく、當時のごとく御秘事ばかりにては、如何ほどの御良策にても、人心疑惑仕るべきは必定に存じ奉り候』(照國公文書、巻一、嘉永六年七月十日水戸老侯ニ與フル書、別啓)」
薩摩藩主・島津斉彬が、何を言っているのかと言えば、
「外国船のことで、ことあるごとに隠そう隠そうとするのは、老中たちは、人々がパニックに陥ることを恐れてのことだとは思うけれども、あまりに隠し立てをし過ぎると、人々は疑い深くなって、些細なことでも、大変なことのように思って言いふらすということもあります。・・・(中略)・・・隠し事をし過ぎると、政府への信用がなくなるので、隠し事はしないで、諸大名との会議の場を持つなら、人心一和のよい機会にもなります」
と説いているのである。
この個所で、斉彬は、
「勇断なき人は事を為すこと能はざるなり(勇気ある決断ができない人は、事をなしとげることはできない)」
と述べている。
参考までに、島津斉彬のことである。
薩摩藩の第11代藩主。島津氏の第28代当主である。日本史上に残る名君。先見の明に優れ、革新的な施策で、薩摩藩の富国強兵をはかる。人材発掘および育成にも長け、下士階級の西郷隆盛や大久保利通を登用した。
以下は、「SPEEDI(スピィーディー)」に関する最新ニュースである。
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●「フクシマの情報公開怠り住民被曝」NYタイムズ報道
2011年8月10日1時45分 朝日新聞
東京電力福島第一原発の事故をめぐり、米ニューヨーク・タイムズ紙は9日付紙面で、日本政府が緊急時迅速放射能影響予測(SPEEDI)のデータを事故直後に公表することを怠ったために、福島県浪江町など原発周辺自治体の住民らが被曝(ひばく)している可能性が高いと伝えた。
長文の記事は、菅政権との対立で4月に内閣官房参与を辞任した小佐古敏荘・東大大学院教授が、事故直後にSPEEDIのデータ公表を政府に進言したが、避難コストがかさむことを恐れた政府が公表を避けたと指摘。
「原発事故の規模や健康被害のリスクを過小評価しようとする政府に対し、社会の怒りが増大している」
と論評した。
そのほか、原子炉のメルトダウンを裏付けるデータ公表の遅れや、校庭での放射性物質の基準値をめぐるぶれなども問題視した。(ニューヨーク=田中光)
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●SPEEDI:予測非公表、「避難活用の発想なし」指摘
2011年8月17日 15時0分 更新:8月17日 15時4分
東京電力福島第1原発事故で放出された放射性物質の拡散を予測する「緊急時迅速放射能影響予測システム」(SPEEDI)の予測結果が、事故から約2週間公表されなかった背景が、政府の「事故調査・検証委員会」(事故調)の調査で17日分かった。
SPEEDIを運用する文部科学省をはじめ、内閣府原子力安全委員会、経済産業省原子力安全・保安院も予測結果を避難に役立てようという発想がなかったと指摘している。
SPEEDIは原発事故などの際、放射性物質の放出量などを入力すると、風向きなどの気象条件や地形をもとに拡散状況を予測するシステム。事故発生当初は放射性物質の放出量などが分からなかったため、3者は放出量を仮定し、予測結果を出した。
事故調は当時の関係者らから事情を聴き、文科省と安全委については
「避難に役立てようとする発想はなかった」
保安院については
「データは不十分で公にするには適当でないという認識だった」
としている。
「公表すべきだ」との批判を受け、安全委は事故から12日たった3月23日、予測結果を初めて公表。水素爆発などが続発した発生当初、住民の被ばくを抑える避難などには生かされなかった。
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●ニューヨーク・タイムズが日本政府当局の「SPEEDI」データ非公開問題を追及報道(机の上の空 大沼安史の個人新聞)
http://www.asyura2.com/11/genpatu15/msg/433.html
投稿者 gataro 日時 2011 年 8 月 10 日 09:31:15: KbIx4LOvH6Ccw
http://onuma.cocolog-nifty.com/blog1/2011/08/i-7608.html
2011-08-09
〔☆ フクシマ・NEWS〕 ニューヨーク・タイムズが日本政府当局の「SPEEDi」データ非公開問題を追及報道 「涙の辞任」の小佐古教授 「必死になって繰り返し」公表を求める 首相の「トップアドバイザーら」がこれを無視 北へ逃げた浪江町の馬場町長「これは殺人に等しい」
ニューヨーク・タイムズは8日、東京支局のノリミツ・オオニシ、マーチン・ファクラー両記者による、
「日本政府、放射能情報隠し 避難民を危険に曝す(Japan Held Nuclear Data, Leaving Evacuees in Peril)」
という、長文の調査報道記事を掲げた。
この中で、とくに注目されるのは、あの
「涙の会見」
を行ない、抗議の辞任をした小佐古・東大教授が、菅直人首相の
「トップ・アドバイザー」
に対して繰り返し、必死になって
「SPEEDIによる拡散地図」
を――と証言していることである。
小佐古教授は、首相官邸の事務局がSPEEDIの存在に気付いたあとも、当局者らは、その予測があとになって問題視されたとき、費用のかかる避難をさせた責任を取りたくなかったことから、その公表を拒否した、とも証言している。
タイムズ紙に対する小佐古教授の証言は、日本の政府当局が「SPEEDI」を公開しなかったことで住民に被曝を強いた事実を告発するものだ。(場合によっては当局者らの責任問題にも発展しそうな可能性を秘めている……ただし、これは、大沼の判断)
また、小佐古教授の教え子であり、菅首相にアドバイスし続けた、民主党国会議員の空本誠喜氏も
「最終的に、SPEEDIのデータを隠したのは、首相官邸の事務局」
と断言したした。
その一方で、タイムズ紙の記事は、SPEEDIを動かしていた文科省が首相官邸にデータを提供していなかった事実も指摘している。
文科省の担当者のケンジ・ミヤモトは
「(ツナミで原発のセンサーが壊れたので)放射能の放出の強さを知ることができなかったから、避難命令が出た場合、責任を取りようがなかった」
と言っている。
しかし小佐古教授は、不完全なデータであっても、放出された放射能のレベルを推測するのにSPEEDIを使うべきだと要求した。それでも住民の避難を誘導するのに使えるマップが手にすることができるかも知れないと考えたからだ。
実際、文科省はそれを行なっていた。SPEEDiでコンピューター・シミュレーションしていた。そしてつくられたいくつかのマップは、放射能雲が原発の北西へ拡大することを明確に示していた。
これに対して、首相アドバイザーの何人かが、SPEEDIのシステムは放射能雲の拡散方向を予測するのに役立たないと主張した。原子力委員会の近藤駿介は、
「事故後の数日間、SPEEDIが作成したマップは一貫せず、風向きによって1日に何回も変わった」
と語った。
「使えないもをどうして発表しなくちゃならないの?」
と近藤氏は言った。
「風向きを見た現地の人の何人かは、わかっていたはずだ」
しかし、小佐古氏やその他の専門家は、SPEEDIの地図は、データを読み取れる人間の手元にあれば、とてつもなく役に立つものだと指摘した。
小佐古氏はまた、
「SPEEDIのデーアの読み取りはとても複雑なもので、文科省と保安院、原子力安全委員会は、データを〈ホット・ポテト(難題)〉のように回すだけで、誰ひとり結果に責任をとろうとしなかった」
と語った。
なお、空本議員によると、菅首相から議員のもとへ、アドバイスを求める電話があったのは、3月15日の夜のこと。空本議員は早速、恩師の小佐古教授を含む私設のアドバイザー・グループを立ち上げた。
チェルノブイリ事故でのソ連当局の対応を研究したことのある小佐古教授は早速、枝野官房長官に、SPEEDIを使って放射能の拡散予測を行なうようアドバイズした、という。
(ということは、枝野長官はかなり早い段階からSPEEDIの存在を知っていたことになる。これに関して、細野豪志は3月23日になって初めて提出を受けた、と同紙に語っている……)
さて、これらの政府機関の当局者はタイムズ紙のインタビューに対し、SPEEDIの責任は自分のところにはないと、責任のなすりつけ合いをするばかり。原子力安全委員会の委員長に至っては、同紙のインタビューを拒絶した。
で、こうした「情報非公開」の結果、現地ではどんな事態が起きたか?
タイムズ紙のオオニシ記者らは浪江町の住民たちの被曝問題を例にあげている。
事故後、浪江町にはトーキョーから何の指示もなかった。このため、町役場の人々は季節風の北風の風上にあたる北へと住民を避難させた。町内の津島地区が避難先だった。そこで子どもたちは屋外で遊び、親たちは川水で米をといで炊いた。
東京の政府当局者がSPEEDIのデータを隠さなければ、被曝せずに済んだかも知れない。
浪江町の馬場有(たもつ)・町長は言った。
「これは殺人に等しい」
と。
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■「小佐古教授他を証人として、首相、官邸、保安院、文科省、経産省、東電を、大量の人々の殺人、もしくは殺人未遂の罪で、ただちに東京地検が動け!」
上記記事に対してのコメントがたくさん寄せられていたので、そのなかからいくつかピックアップ、以下、掲載させて頂く。あえて念を押させて頂くが、コメントの書き手は、私ではない。
「殺人に等しい、そのとおりだがこの言葉の前に大量のがつく。大量殺人に等しい。←これが正しい」
「小佐古教授他を証人として、首相、官邸、保安院、文科省、経産省、東電を、大量の人々の殺人、もしくは殺人未遂の罪で、ただちに東京地検が動け!」
「菅は議員辞職だけでは済まない、留置場で罪を償わせなければ被ばくした子供達が気の毒だ。何も責任を取らずにただ総理を辞めればいいという問題では無い。
伸子も同罪だ、ある新聞で伸子の発言を〈市民感覚でモノを言う〉とあったが、自分の家族が被ばくしなければわからないのだろう。 菅を動かすのは伸子しかいないと言っていたがこのザマだ。 延命、人殺し、これが菅夫婦の実態だ」
「現政権に問題があるのはもちろんのこと。原発事故後の菅や枝野の無知や知らぬふりは、許されるものではない。しかし、菅のみが原発利権と関係のない政治家であることもまた真実らしい。民主党を非難する方々は、自民に戻って、原発・マスゴミ利権の政治が再び君臨するのを望むのですか?中曽根や小泉らのほうがましだとでも?自民党や石原などを何を言おうが、どのように民主党を批判しようが、彼らの策略に乗るべきではない。次に自民や公民を選べば、日本沈没確定」
Posted at 2011/08/28 10:57:49 | |
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