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前回からの続き)
先日の前編から随分時間が空いてしまいましたw
県境を越えて小赤沢温泉に寄り道していましたが、
引続き信濃川発電所を踏査するべく新潟県に戻ります。
来た道をそのまま引き返しても詰まらないので、R405の対岸を走る林道へ向かいます。
途中秋山郷付近の集落を通過。中津川を渡ります。
美しい清流です。
この川の源流は何と群馬県の野反湖。非常に美しい湖と聞いているので
是非一度行ってみたいと思っています。
林道はなぜか川からどんどん高低差をつけ、こんな所を走ります。
ちなみに1.5車線のうえガードレールがないので崖上なんかはちょっと怖いです。
途中でどこを走っているのか分からなくなりましたが、適当に走っていたら運良く以前チェックしていた湧水スポットに出ることができました。
こちらは津南町にある
龍ヶ窪の水。環境省選定の名水百選にも選ばれています。
湧水量が非常に豊富なのが特徴で、すぐそばにある池の水が一日で入れ替わるほどなんだそうです。
結構不便な場所ですが、割と多くの観光客が訪れていました。
水が汲めるポイントは2箇所あります。
清冽に水が湧出しています。では早速一杯。
【採点】竜ヶ窪の水:★★★★☆(5点中4点)
おお、独特のトロッとした滑らかな舌触りが特徴的。味は雑味がなくさっぱりしていて大変美味しいです。
でも、求めているのはこの味じゃない。
さて、大分寄り道してしまいましたがようやく宮中ダムに戻ってきました。
信濃川発電所の踏査を再開しましょう。
JR信濃川発電所は、このように十日町市の宮中ダムで取水した水を、最終的に30km離れた小千谷市の小千谷発電所まで導水。その間には発電施設や貯水池、水路トンネル等様々な施設が点在するという非常に大規模なもの。
宮中ダムは既に
朝方に踏査を済ませたので、ここからは下流に向けて各施設を見て回ります。
こちらは先程見た沈砂池の下流にあるゲート。
ここから水路は地下トンネルへ入っていきます。
信濃川沿いの県道を下流に向けてしばらく走ると、突然巨大な池が姿を現しました。
浅河原調整池です。ヘキサゴンな排水吐の形状が特徴的。
先程のトンネルの出口です。2本のトンネルから物凄い勢いで水が出てきます。
連絡水槽です。この水槽の底から、次の水路トンネルが続いています。
続いてやってきたのは千手発電所。
上の画像の左手は崖になっていて、2基の巨大なサージタンクが並んでいます。
ここから、高低差を利用して導水管で水を落とし、
こちらの発電施設でタービンを回し、
さらに水路は田んぼの中を小千谷発電所へ向け続いていきます。
信濃川との高低差はいったんリセットされましたが、ここから水路は再び高度を稼ぎにいきます。
ちなみに、この導水路は周辺の農業用水として分水されています。
不正取水発覚後の取水停止中も、農業用として若干の取水が行われていたそうです。
この時点で時刻は13時過ぎ。お腹が空いてきたので踏査を中断し近くの道の駅へ。ここでの食事中に、次に行こうと思っていた南魚沼の蕎麦屋についてケータイで調べていると、閉店時間が何と15時であることが判明!こんなところで昼飯食べるんじゃなかった。。(美味しかったけど)
さて、行きにも通ったR253八箇トンネルを引返し六日町方面へ急ぎます。
20分程で六日町に到着。
米の産地として不動の地位を誇るこの地域で獲れる米の品質が高いのは、この地域特有の上質な水が大きな影響を及ぼしている事が良く知られています。
以前、酷道として名高いR352を走破するツーリングに行った際、この付近にある大湯温泉に宿泊しましたが、風呂上がりに宿で頂いた水が余りに旨くて、宿の方にピッチャーでお替りをお願いした位でした。
今回の目当ては、名酒「八海山」の仕込みに使われているという上質な湧き水と、その湧き水を使って打った絶品蕎麦。
まずは閉店時間が迫る中、急いで目的の蕎麦屋「長森」さんへ向かいます。
ここは
「八海山」を作っている八海醸造株式会社の敷地内にあります。

この会社の製品づくりの思想が、工場のすぐ前の水田に表現されていました。

酒造りに最適な品種の米を、工場のあるその土地で育てる、という考え方。
ある種のパフォーマンスなのかも知れませんが、素晴らしい姿勢だと思います。
そしてこちらが「長森」。古い建物を移築したんでしょうか。味があります。

店の裏には一面の蕎麦の花が広がっていました。
まさに地産地消、酒造りと全く同じ発想ですね。

この地で獲れた蕎麦粉、最高の地下水で打つ蕎麦。まずい筈がありません。
基本は東京風の辛目のつゆでいただくのですが、テーブルに置いてある塩をつけて食べると独特の香りと甘みが一層際立つ、素晴らしい蕎麦でした。
新蕎麦の時期にまた訪れなければ。。

さて思いがけず昼飯を2回食べる羽目になってしまいましたので、少しは運動した方がいいでしょう。
この蕎麦を打っている水、最上級のコシヒカリを育む水、銘酒「八海山」を仕込んでいる水、今回私が追い求めてきた、極上の湧き水を汲みに、近くの山へ分け入ることにします。
近くのとある集落の神社にクルマを停めます。
目指す湧水はまだ少し先なんですが、この神社にも湧き水がありました。水量が多くて、凄い勢いで迸ってます。

お賽銭を投げて、ペットボトルに頂きます。
【採点】藤原神社:★★★★☆(5点中4点)
うまい、うまいんです充分に。ただ、導水管が汚れているのか、若干のカビ臭を感じてしまいました。非常に惜しい!
さて、この神社から汗をかきかき山道を登ること数分。
周囲には誰もいません。しかも「熊に注意」的な看板も出ていてちょっと不安がよぎります。しかしもう後には引けません。
やがて、こんな看板が現れます。

すごい!大事にされている貴重な水源であることを実感します。
だれも来ないのか、一面に草が生えていて段々道が分からなくなってきます。
しかし、すぐ先にはこんな風景が。

おおー、固められた護岸も通常の殺風景な感じではなく、森の風景にマッチするよう配慮されているような印象を受けます。
そして、この滝のすぐ横には!

ついにキター!
その名も「雷電様の水」!
流れている滝の水は、全てこの奥の岩から湧き出しているものです。
これだけの量の湧水が1箇所からまとまって出ているのを見るのは初めてかも知れません。
ちなみに、画像がブレているのはこの水場一帯にかなり大量の虫たちが集まっていて、常に顔の辺りに攻撃を仕掛けてくるので仰け反りながら撮ったためです。虫が苦手な方は夏場に来ない方がいいでしょう。マジで巨大な蚊柱の中に突っ込んでいくような感じですから。

今まで見てきた採水地と違って、ここはほぼ自然の状態で水が湧き出しています。少し汲みづらいのですが、岩盤の下にボトルの口を入れて採水します。
(ちなみに、ここだけは5㍑入りのタンクを持ってきましたw)
勿論ペットボトルにも水を汲んでおきます。
しかしこの数分間、気が狂うのではと思うほど大量の虫が顔に当たっていきました。観光客が全くいないのも納得です。
ボトリングが終わる頃には、嫌な汗と沢の飛沫で全身びっしょりになってました。
とりあえず、一目散に水場を脱出。虫の攻撃が落ち着いたところでようやく一杯です。
【採点】雷電様の水:★★★★★★(5点中6点、アレッ)
これだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!
スッキリとした喉越し、喉を通過した後の爽快感、そしてほのかに、しかし確かに舌に残る甘み。全てがパーフェクト。これが今回求めていた極上の水でした。こんな水が毎日飲める新潟県民が羨ましすぎます。
さて、時間は16時を回ってしまいました。
幸せでちょっとキモかった水場を後にし、残りの発電所踏査に戻ります。
何と本日3回目のR253八箇トンネルを通って再び十日町へ。
先程の千手発電所から踏査再開です。
発電所からしばらくの間水田の間を流れた水路は、このゲートで終点です。
左方向が小千谷方面へのトンネル、右側が信濃川への放水路です。
これだけ流量が増えていても、ここからは信濃川へは一切放流していません。まあ信濃川本流も物凄い濁流になってますからね。

相変わらず凄い流量です。
ここから、水路は再びトンネルの中へ吸い込まれていきます。

日が傾いてきました。先を急ぎましょう。
この水路は基本的に地下を通過しているため外からは全く見えないのですが、山の中をトンネルで貫いている証拠を垣間見る事ができます。
それがこちら。

これ、新幹線とか高速道路じゃないですよ、水路橋です。
「
源藤山沢水路橋」といいます。
天蓋はなく、上から見ると水が流れているのが分かるそうです(上記リンク参照)。私は時間と度胸が無くて上に上がれませんでしたが。
アーチが美しい。。
もう1箇所行ってみました。こちらは「真人沢水路橋」。
谷間の狭い道を登っていると突然出くわすので結構衝撃的です。
こちらは2本の水路橋が並行して走っており、年季が入っている事もあってなかなかの迫力を見せています。というか周囲の風景に全くマッチしてないんですけど。
いよいよ小千谷市に入りました。ゴールはもうすぐです。
小千谷発電所、小千谷第二発電所の直上には、2つの調整池がありました。
こちらは山本第二調整池。巨大です。
主に小千谷第二発電所への送水を担当します。
宮中ダムから水路を通ってきた水がドバドバ入ってきています。
その直ぐ下には山本調整池。こちらは小千谷発電所を担当。
千手発電所のタービンを動かし、真人沢水路橋を越えて来た水が流れ込んでいます。
調整池では散歩している人も多く、憩いの場としても定着しているようです。
この山本調整池、離れたところから見るとこんな感じです。
巨大な築堤で水を貯めているんですね。
さらにもう少し離れると、山本第二調整池も見えました。
上の黄色っぽい築堤が山本第二調整池、木々の下に見える緑色の築堤が山本調整池です。
さあ、1日がかりの踏査も遂にフィナーレ。
信濃川に掛かる橋から、小千谷、小千谷第二の両発電所を眺めます。
宮中ダムで取水された水が、発電施設を抜け再び信濃川本流に合流する瞬間です。
山本調整池から小千谷発電所に水を落とす導水管の横で記念撮影。
この上流で魚野川と合流、さらにここ小千谷で発電所からの水を加えた信濃川本流は、さらに巨大な濁流となって下流を目指して流れていきました。
さて、ここまで前編後編とお読み頂いた方がどれ位いらっしゃるか分かりませんが、長々とお付き合い頂き有難うございました。
元々は不正取水問題の報道から興味を持って訪れたわけですが、実際に踏査してみて、このような巨大な発電施設が60年も前から稼動していた事に驚愕しました。
日本一の川をせき止め、山を貫き、巨大な池を作る。。
この発電所のグランドデザインを考えた人はさぞかし楽しかったのではないかと思います。
日々東京で働く我々は、毎日クーラーの効いた通勤電車を利用していますが、それはこんなに離れた信濃川流域に住む人たちの犠牲のもとに享受される快適性でなんだということを実感しました。
それとともに、不正取水を犯したJR東日本を糾弾するだけでなく、エネルギーをセーブして日常生活を送る事の重要性を感じずにはいられませんでした。
このあとは、小千谷の道の駅で温泉、浦佐の「えづみや」さんでコシヒカリを使った定食を頂いて帰京しました。
最後に、美味し米と水の国、新潟最高!
そして、
日本に生まれて、ヨカッター!