
カブリオレの幌を動かす心臓部、油圧ポンプに付いて質問のメールをいただいたので、わかる範囲でお答えします。
構造はリザーブタンクに満たされたフルードを圧送するためにまず電気でモーターを回し、その回転力をギアポンプに伝えて油圧を発生させると言うシンプルなものです。
燃料ポンプに内蔵されるようなベーンポンプよりも簡単な方式ですね。
実際のギアやハウジングはアルミでできていて、回転することで少なからずシャフト等の回転部、摺動部が摩耗します。
摩耗が進めば当然徐々に偏心してくるので、吸い込み量、吐出量ともに減少して、本来の油圧を発生することができなくなり、幌の動くスピードが遅くなったり、最後のラッチを引き込む力が足りなくなって、結果完全なるクローズにはならなくなります。
私の経験した不具合はまさにコレが原因ですね。
解決策としては油圧経路に異物の混入とか油圧漏れしている箇所が無い限り、単純にこの可動部のシャフトを状態のいいものに取り換えるだけ。
ただこのハウジング周辺はオイルストーンで面研したもの同志で密着を保っていますが、各所にオイルシールも多用されています。
実際に分解の時点でOリングがちぎれていた(取り外す時にちぎれたのかもしれないが)箇所もあり、本当の原因はコチラだったかも知れないとの憶測もありますが、換装後に作動音が静かになったことを考えるとやっぱりシャフトもそれ相応の摩耗があったんだと思います。
ターボチャージャーのタービンような常時高温、高回転にさらされる部分ではないので、この摺動部の摩耗対策については特別な処理、設計がされているとは思いません。したがって長期間の使用においてこのシャフトはある意味消耗品ととらえてもいいのではないでしょうか。
では摩耗してすり減った分のアルミ粉はどこへ?
当然油圧経路に流れ込みますね。
もちろんフルードの流入口、吐出口ともに目の細かいストレーナーは付いているのですが、それでも自然沈降してそこに留まらず、ストレーナーで濾しきれなかったものは永遠に油圧経路内を彷徨い続けることとなります。
油圧経路を塞いでしまうような大きさに発展することは無いでしょうが、それでもこれが今度は砥石の役割となって摺動部を加速度的に傷めることは容易に想像できますね。
ましてや万が一この経路に水分が混入した場合を考えると、サビが発生してアルミと言えども固着や異物の噛みこみでポンプにトドメを刺すことになるかもしれません。
実際にはエアブリーザーによりタンク内の圧力調整や外部からの異物の混入を防いではいますが、ポンプはロケーション的にトランク内、タイヤの後ろ等非常に湿気を帯びる、また結露しやすい場所にあるため、念には念をの気持ちで頻繁に状態の確認をするのが良いでしょうね。
いくらシンプルなギアポンプと言えど、あの重い幌をあれだけの大きさのギアで動かすんですからね、ましてや伸ばされたコイルスプリングの復元力を利用して瞬時に飛び出すロールバー機構、このスプリングを伸ばすのもこの油圧ポンプですからね。相当な力持ちです。
日頃から十分に労わってあげないとかわいそうです。
不安をかきたてるような書き方をしてしまいましたが、でも安心してください。
故障したって何とかなります。
ポンプならディーラーで35万円程で入手できますから。
でもべらぼうな金額だよね?
世界に7,000台程しか生産されなかったA124、現存する台数を考えると中古で探しても出てくる可能性は限りなく低い・・・
でも大丈夫。 R129のが流用できますよ。
もちろんポン付けと言うわけにはいきませんが、内部パーツを組みなおせば大丈夫。
おそらく切れちゃってるであろうOリングだって、代用品をホムセンで入手可能です。
モーターは自体は構造上強いので不具合の心配はさほどいりませんが、動かせば金属はすり減り、ゴムパーツの劣化、硬化は年月の経過とともに確実に進みます。
水に強いものは油に弱かったり、油に強いものは水に弱かったりします。
動くものは動かさないといざと言う時に動かないし、柔軟性のあるものは動かさないと柔軟性を失って復元力が無くなります。
もう寒いから・・・
と言って閉めたままにするのではなく、たまには開け閉めしてあげてくださいね~
もちろん常識的な範囲のうちで(笑)
Posted at 2011/10/31 22:57:10 | |
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