繰り返すエンジンブローの謎

RB26シングルターボ600BHPオーバーの車両で、およそ2年置きに軽いブローを繰り返している知人が居る。


全開走行は年に２回ほどサーキットを走るときだけ、それもGSコンで走るので連続周回はせず、１周回ったらクーリングというパターン。更に普段は別の車に乗っていて、Rを動かすのは週末に街を流す程度。

にもかかわらず短いサイクルでブローを繰り返している。原因は今のところ不明だが、私は個人的に思うところがあるので記事にしてみた。



ブローの経緯
①05U(STD)ブロックにT社製2.8Lキットを組んでいたが、サーキットを走ったらオイル消費が激しくなり、バラしたところ、ピストンブロー、ブロック上面割れ。

②24U(N1)ブロック+新品ピストンで組み直してサーキットを走ると、またもオイル消費、マフラーから白煙。バラしたらコレもピストンブロー、ブロック上面割れ。

③ピストンをT社→CPに替え、コンロッドもT社→キャレロに替え、RRR(GT)ブロックを使って組み直したが、サーキットを走っていたらまたもオイル消費。開けたらピストンが大きく摩耗。
RRRブロックをボーリングして再使用を試みるつもりが、これも上面割れが見つかる。

④本人の希望で、新型24Uブロックに新品のT社ピストンとコンロッドという仕様で組み直した。今のところ、サーキット走行やダイナパックテスト等の高負荷を掛けていないため、今後どのような不具合が出るかは不明。

これだけ繰り返すと流石に気の毒。ニッパチ仕様を組むこと4回、Rを良く知る者ならどれくらい費用が掛かるか分かると思う。



この車両がブローを繰り返している一方で、同等以上の馬力を出してる我が家のRは、同じ期間一度もブローしていない。

因みにこの2台、作った店は同じ。ブローの原因は組み方やセッティングの差では無いだろう。
更に言えば、どちらも岡山国際を走っていて、タイムも割と近い。


違いがあるとすれば一点、我が家のRは「重くて硬いフルカウンタークランク」を使っていること。


クロワーのクランクを使っていた頃は、9000rpmを常用しても05Uブロックで全然OK。後に開けてみたが、どこも痛んでなかった。そのまま素組みで使えるレベル。当然ブロックも割れていない。

その後のHKSのSTEP1クランク+旧24Uブロック仕様も、8000rpmで常用しているが全然壊れる気配はない。オイルも食わないし、シリンダーを覗いてみても綺麗なもんだ。



コレ・・・原因はT社のクランクとしか思えない。



経験上ブローを繰り返すエンジンは、主要部品を再利用していることが多い。

本件もブロック、コンロッド、ピストンは何度も交換しているが、クランクだけはずっと使いまわし。組み直す際に曲がりとジャーナルの状態は確認しており、寸法には問題ないのだが・・・


原因として考えられるのは、ある一定以上の回転数、もしくはトルクが掛かった時にクランクに異常な振動（共振）が発生し、ブロックやピストンに疲労が溜まっていくのでは？と考えている。

T社のクランクはロングストロークな上に８カウンター。８カウンターは軽量だが、どうしても振動が出やすい。

純正クランクも振動が大きく、オイルポンプが割れたり、高回転で振れが出てメタルの当りが偏る。


何れにせよ「異常な振動（共振）」が原因で、ブロックが割れたり、ピストンが痛んだりするんじゃなかろうかと。


振動計で測った訳ではないので曖昧な話だが、厚肉でズッシリ重いフルカウンターは芯があるような綺麗な回り方をする（振動が少ない）

それにエンジンそのものの音が違う。

クランクでエンジン音は変わる。もちろんブロックでも音は変わる。
※排気音はヘッドや排気系が支配的、あくまでエンジンそのものの騒音や振動の話。

綺麗に回るエンジンとガサツに回るエンジンでは、同じ馬力でも耐久性に差があるってことだろう。



T社と同じく8カウンターのNISMOニッパチ仕様はどうなんだろうか。

NISMOクランクは関係者曰くかなり硬いらしく、振動が少ないとか。

クランクの硬さが上がれば、振動周波数は高くなり、振幅は小さくなる。無限大に硬くなれば即ち剛体になるわけで、剛体であれば8カウンターでもフルカウンターでも振動はゼロになる。よってクランクの硬さは確かに振動に影響がある。

しかしNISMOニッパチ仕様の人は、そもそもサーキットを走らないため情報が少ない。
言えるとすれば、R34でNISMOはニュル24Hレースを走り切っているし、その後バラしたエンジンも無事であったとのこと。但し、クランクその他が市販のニッパチKITと同じであったかは不明。



ブローの「真の原因」は何なのか、現状は状況証拠と仮説に過ぎない。もう少し深堀してみようと思う。