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2024年02月13日

横Gを利用して前後荷重移動を作る話

ロール剛性に前後差を付けると、横Gを与えるだけで前後の荷重移動が発生する。割と基本的なことだが、長年走っている人でも意外と知らない人が多いので、改めて解説。

例えばFF車は殆どフロントタイヤだけで走っていると思われがちだが、リヤのロール剛性を上げると積極的にリヤタイヤを使えるようになる。結果、トータルのグリップ力が増加し、コーナリングスピードが上がり、ラップタイムが向上する。

一体どういうことか?

端的に言えば「ロール剛性に前後差があるときに横Gを受けると、ロール剛性が高い側に前後の荷重が移動する」これだけ覚えていれば、実用上問題ない。

前後重量バランスの悪いクルマを速く走らせている人は、理屈は分かっていなくても結果的にこれを使っている。またはクルマがそういった設計になっている。



この概念を理解するにはオート三輪の模型で説明すると分かり易い。
模型は車重150gで前後重量バランスはフロント100g、リヤ50gとする。また車体は剛体で足回りは可動しない。概念の説明なので数値の変化は凡そである。

この模型はフロントが1輪であり、フロントは横Gを受けた時に車体のロールモーメントを支えることは出来ない。

つまりコーナリング時のロール剛性の比はフロント:リヤ=0:10である。

ここで等速で左にコーナリングして横Gを受け、左から右側に30gfの荷重移動が起こるとする。
左右の荷重移動量は重量配分に比例して、フロント側が20gf、リヤ側が10gfと、前後に分けて考えることが出来る。

しかしフロントタイヤはロールモーメントを支えられない=荷重移動も支えようがない。

ではフロント右側の荷重移動「20gf」はどこへ行ったのか?

答えは単純、右リヤタイヤが追加で20gfを支えている。

このとき横Gを受けたところで車両重量は変化しない。つまり3輪の「垂直荷重」の合計は150gfで変わらない。各輪の垂直荷重は以下の通り。

静止時:フロント100gf、右リヤ25gf、左リヤ25gf
横G有:フロント 80gf、右リヤ55gf、左リヤ15gf

つまり、加速Gはゼロでありながら、フロントからリヤに20gfの荷重移動が起こっているのである。




極端な例を示したが、前後でロール剛性に差があると横Gを与えるだけで前後の荷重移動が起こる。


この作用をうまく使えば、横Gを利用して前後重量バランスの適正化が図れる。荷重が軽いタイヤに負荷を分散出来るため、トータルのグリップ力が向上してコーナリングスピードが上がる。

FFであればフロントのロール剛性を下げる、またはリヤのロール剛性を上げる。

因みにロール剛性を下げる手段は以下の5つ
①サスを柔らかくする ②スタビを柔らかくする ③足のジオメトリをジャッキダウン特性にする ④ロールセンターを下げる ⑤重心を上げる

FF車のアタッカーたちがフロントスタビレスになっていくのはこういった理由である。フロントのロール剛性を下げて相対的にリヤのロール剛性が高い状態を作っているのだ。

但し前後ロール剛性に差を付けるとボデーが強く捩じられるので、ボデーの捩じり剛性が高くなければ力が伝わらず効果が薄い。言い換えれば前後重量バランスの悪いクルマほどボデー補強(特にフロアの補強)が効果的。

逆にボデー剛性が低いのにコーナリングが速いクルマは、そもそも重量バランスが良い(ロードスター、カプチーノなど)



このようにメリットはあるのだが、デメリットもある。

例えばフロントヘビーなFR車でコレを実践すると、相対的にリヤサスの動きを規制することになるのでトラクションが減る。よって低速からの立ち上がりが不利になる。特に横Gが少ないミニサーキットではそもそも効果が薄いため、ミニサーキットはトラクション重視のセッティングの方が有利なことが多い。


話をまとめると、重量バランスの悪さはボデー補強とセッティングによってある程度は補える。
横Gが高い中速~高速コーナーならば、負荷の軽いタイヤを有効に使えるセッティングがあると覚えておくとよい。




ここまで長々と御託を並べたが、つまるところクルマの運動性能はタイヤのグリップそのものである。

重量バランスが悪かろうが、車重が重かろうが、タイヤを太く出来れば殆ど解決してしまう。

よって、タイヤを太く出来るなら太くしてしまえばよい。

これ以上タイヤを太く出来ないなら、軽量化するか、この手のセッティングを応用する。

以前書いた「タイヤを太くすればグリップは向上する」の概念が理解できなければ、このセッティングが何の役に立つのかも理解不能だろうね。
ブログ一覧 | 日記
Posted at 2024/02/13 18:43:16

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この記事へのコメント

2024年2月13日 23:47
久しぶりにその話を聞きました〜

昔何を思ったかハチロクのリアバネ柔らかくしてドリ車になってしまった事を思い出しました(笑)
コメントへの返答
2024年2月14日 7:39
ハチロクはリヤのロールセンターが高いから、そもそも軽い側のロール剛性が高い設計だが・・・箱が弱過ぎる😵
2024年2月14日 12:28
こんにちは、
三輪車で考えてみるとよく判りました。
ありがとうございます。
セッティングが苦手なので勉強になります。
コメントへの返答
2024年2月14日 14:20
ご理解頂けてなによりです。
お試しあれ😋
2024年2月14日 22:38
お久しぶりです。セッティングが苦手なのでとても参考になります。ミッドシップの場合、どう当てはまるかなと思いました。
フロントのスタビを強くして、リアも社外物を入れてましたが、純正に戻した経験があります。
コメントへの返答
2024年2月15日 12:34
AWはフロントに強化スタビを入れて、ロールセンターアダプタもフロントは厚めの物を使います。加えてフロント周りをボデー補強する。
AWはフロアが割と強いので、効果出ますよ

Rは前後サスのレートは同じで、リヤスタビは強化してます。

カプチは前後のロール剛性に差を付けてません。
2024年2月18日 12:57
前後バランス悪くてボディ剛性低くて太いタイヤ履けない車に乗ってるので思い切り刺さる話ですね笑
コメントへの返答
2024年2月19日 7:50
FFはリヤサス硬めが正解です。フロントのリフト減って立ち上がりのトラクションも有利

バンノ氏のクルマはロールケージ組んであるので、剛性は十分と思いますが、追加でやるならリヤ周りの補強が効きます
後はフロントに柔らかいスタビが有ればいいですねぇ👍

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