
流石に私がトヨタディーラーに就職した頃はシールドビームはほとんど無くて(とはいっても2年ほど前にシールドビームを今だに装着してあるロードスターを買ってしまったわけですが)、当時はハロゲンバルブを装着したヘッドライト全盛の頃でした。
変り種としてチョロチョロとプロジェクター式ヘッドランプを使った車がある程度です。
個人的には永野護のデザインしたロボット達を中学生の頃に見ていた世代の私としては、彼のデザインしたロボット達にある目玉と、プロジェクター式ヘッドライトのあのクリクリ具合とが完全にオーバーラップして見えていましたので、あのヘッドライトは大好きです。
ただ、初期のプロジェクターは暗かったようですね。計算上はそうでもなかったようですけど。実際R32GT-Rも暗かったですから。それでわざわざノーマルレンズに戻してしまった個体もあったようですし。
個人的な観点で言うとクルマというのは擬人化された存在と思っています。つまりロボットのようなもんだと。
で、ロボットというのはお人形さんと一緒で「顔が命」なんですね。究極的には。つまり、ロボットの延長線上にあるクルマも、ロボット同様「顔=フロント周りのヘッドライト・グリル・エアインテークを中心とした造形」が最重要デザインポイントとなるわけです。外観上は。もちろんそのほかのボディラインやプロポーションも重要ではあるんですが、顔周りのデザインのウエートにはかなわないと、個人的には思っています。
もちろん安全上の事もあるんですが、ヘッドライトの技術的進化に惑わされる、というか、変質的なまでにヘッドライトが進化し続ける理由もこの辺に理由があると思っています。基本的に「光り物に目が行く」という事もあるんですが。
ということで。私が新車を納めはじめた頃のクルマは、ヘッドライトの前面に配光レンズのギザギザが刻まれていました。プロジェクターの場合はその目玉本体で配光を決定していましたので、そこだけは素通しのレンズが刻まれていないガラスという事もあり、余計にきれいに目玉が見えていたわけです。
その頃チラホラ出てきはじめていたのがガラスレンズに代わるプラレンズです。素人目には同じ形に見える当時のコロナとカルディナのヘッドライトユニットですが、何故かコロナにはプラレンズが採用されていて、カルディナにはガラスレンズが採用されていました。プラレンズ採用の理由としては「軽量化と成型上の自由度の高さ」という事が理由のようです。
お次に投入された新技術がマルチリフレクターレンズです。
これは、前面のレンズカバーにはカバーの役割のみを果たしてもらい、バルブの光の配光は全て後ろに配置された反射板・配光板の屈折のみで作り出す、というものです。素通しのガラスから見える後ろの配光板のキラキラした反射がとってもキレイなレンズです。ここに来てクルマの目玉はまた一つ違った「つぶらな瞳」を手に入れた、というわけです。
初期のマルチリフレクターはバルブの前面にも反射板が設置されていましたが、その後の配光計算の進歩や、バルブの配置を奥にもっていく様な改良もあり、後の製品ではバルブ前面の配光板やバルブ前方に施された遮光処理も無くなり、よりキレイな表情を手にすることとなります。
これと前後して登場したのが今時のクルマの代表的な装備となりつつある「キセノンヘッドライト(ディスチャージヘッドランプ)」です。
発表当初(マークⅡのツアラー系が日本車としては初くらいだったはずです)、別にどうって事は無いとタカをくくっていましたが、ひょんなことからディスチャージヘッドランプ付きのクルマに乗ることになり、評価は一変しました。こりゃあ良い、とね。1回乗ってしまうと止められません。
こんな感じで、今のところ「ディスチャージヘッドライト+マルチリフレクターレンズor
プロジェクター式ヘッドライト」という組み合わせが主流なんでしょうかね。ぼちぼちとLED式のヘッドライトも出てはいますけど。
ちょっと話は戻ります。Z33の頃のお話です。
あのZではヘッドライトのデザインで一悶着あったそうです。というのは、ああいう平べったいノーズにヘッドライトが埋め込まれているので、当時標準的であった前面カバーにレンズを刻んであるライトだと配光特性が成立しなかったようです。前面レンズのヘッドライトだと60度くらいの角度までが配光要件を成立させるギリギリの所らしくて、でも、そうするとあのデザインが成り立たなくて、という葛藤があったのだとか。
ここで出て来たのがプロジェクターヘッドライトという背景があったそうなんです。あそこまでヘッドライトが寝ていても、プロジェクターのレンズだけで配光を作ってしまうので、角度は度外視してもよくなった、ということですね。
もちろんマルチリフレクターレンズも後ろのレンズで配光を作れるので、全面レンズの角度は気にならないはずです。でも、落とし穴もあったんですよねえ。
それは材質です。
今のヘッドライトは軒並みポリカーボネイト製のヘッドライトカバーを使っています。ところが、単体ではポリカーボネイト製のヘッドライトは日光に弱くって。それで表面に施されたUVカットのクリアー塗料のおかげで耐劣化試験をクリアーしているのですけど、それでも年数を経るとやはり劣化は深刻になってしまい、つまるところ曇ってしまう訳です。
最近のクルマはヘッドライトの造形が自由になったこともあり、大きくラウンドしつつ、かなりボンネット上面やフェンダーに喰い込んだ造形をしていることがほとんどです。
ところがこうすると、お天道様と直接「こんにちわ」をする面積も広がり、より劣化が分かりやすくなる、というクルマも珍しくありません。
思い起こせば、初期の「材質がプラに変わっただけのヘッドライト」ってここまで劣化は分からなかったと思うんです。つまり、配光特性を作ることもあり「60度以上に寝ているヘッドライトが無かった」=「お天道様とコンニチハするには少々角度がきつい」ということで、プラであっても劣化の進み具合は遅かった、とね。
燃費のこともあり、コストとのすり合わせを見つつ、ヘッドライトのLED化には各メーカーとも余念がないようです。と同時にLED化はヘッドライトにとっては熱対策を今ほど気にしなくても良いという事でもあります。
つまり、リアのテールレンズに使っているアクリルガラスが使えるようになれば、今よりももっと耐候性が上げられるので、ガラスの曇りも気にしなくてもよくなるかもしれません。
そうすればもっとキレイな目になる可能性もあるわけですねえ。
まだまだ、ヘッドライトの進化と共にクルマの表情も、もっと豊かになっていくようです。まあ、カッコよければ全て良し、という事もありますけど。
Posted at 2010/01/24 10:17:19 | |
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