2018年06月23日
維持費が安いから軽自動車にするという方が結構いらっしゃいます。
確かに分かり易い形での税金が安いのは事実です。そもそもの話、乗用車の税金が高すぎるのが問題なのですが、比較すれば確かに少額です。ただ、本当に乗用車と比べて安いのか?本来は車両代金とメンテナンス費用やガソリン代・保険代など諸々の総合計で比較するのが本来だと思うのですが、どうも税金面だけの比較に終始しているようで納得しきれません。
ある時、クルマの電気屋さんで言われた事があります。
「なあ柴田さん。あんたトヨペットに居たから知ってると思うが、クラウンやマーク2以上の価格帯のクルマでエアコンが壊れた事なんかあるか?結局そういう事だよ。」心に刺さった言葉です。
確かに言われてみればフロンがR12の頃ならいざ知らず、R134aに変わってから以降はエアコンの故障数は激減しています。
ですが一方で安い車のエアコン故障がそれなりに発生し続けているという事は、安い車は安いなりに手抜きとは言いませんがコストを抑えるためにやむを得ず目をつぶりつつ製造単価の安いエアコンユニットを使っているのだろう、という事です。もっとも安いと言われた所で工場出荷額ですから精々が100円200円というレベルの違いの話なんでしょうけど。
特に近頃は以前にも増してコストダウンのかけ声がヒドいでしょうから「ここを削るんですか?」ってレベルまでやっていると思われます。それが軽自動車と言われても普通車と比べて部品点数がたいして減らせるわけでもなく、最低ラインの製造コストに大差が出る筈もありません。
となれば勢いスズキ車のエアコンに関する延長保証なんていう笑えない話だって現実化している訳です。軽だってちょっとエアコン修理をすれば5万円コースなんてザラな話です。
もっと言うと、見かけ上の燃費低減の為にエアコンの設計が変わっている所もあったりして、そこの耐久性が以前通りのレベルでない、という事例もあるようです。加えて分解修理不可、修理するためには該当箇所のアッセンブリー交換しかメニューが用意されていない事もあった日には目も当てられ無いことになります。
新車を買えば、まだ良い方かもしれません。だが、しかし。
今時の軽自動車は縮小した国内市場だけを見た商品企画のくせにラインナップ数はとどまる所を知らない世界ですから、製造コストアップ要因だらけの新車価格最低ラインは150万コースとなってしまいました。大昔、はじめてローンを組んでヒイヒイ言いながら買ったコロナの新車総額が180万円だった事を思うと「今時の軽って…」って感じです。とても手を出す気になれません。ただ、いくら新車で買った所で年を経れば壊れない保証はありません。
じゃあ軽は中古車を買えば良いのか?
そもそもの話、普通車以上にコスト管理が厳しい軽自動車ですから経年劣化だって普通車以上に進むことが珍しくありません。ダイハツのメカに聞いてもそういう答えが素で返ってきます。加えて新古車ならばまだしも、安さを求めた軽自動車選びをされた方々はメンテナンスもケチることが殆どです。
全てのクルマがそうだとは言いませんが、整備不良車履歴を消すためにオークションを利用する事だって往々にして有る話です。軽に限った話ではありませんが、中古車を買うのなら暫く乗ってみて不具合箇所の洗い出しをする事になるのは覚悟の上で買った方が良いだろうなあと思います。という事は仮に50万円の予算を念頭に置いていたとしても余分に整備費用として10~20万円は考えておいた方が良いだろうという事でも有ります。
大体において昔よく言われた「10~20万円でクルマを手配してくれ」というのは今はおとぎ話です。車両本体20~30万円の中古車というのは大概原価が5万以内ですが、仮に業者オークションで5万円落札したとしても、そこにオークション業者に払う手数料や車の陸送費他を考えれば仕入れは10万円コースです。で、そこに販売利益を加え、車検を取り、分かり易い不具合箇所は整備を加え、名義変更をして納める事を思えば50万円が最低ラインとなってしまいます。小さなモータースでお客さんの下取りを直接販売しているならともかく、「20万円、30万円、50万円」なんて言って定額で大量に車を並べている所の中身を一度くらい想像してみれば、アフターフォローなんて期待するべきではない事は想像しておくべきだと思います。
あと、ディーラーも含めて殆ど全てのお店が
「クルマは売れてから整備する」のが当たり前
という事は肝に銘じておいた方が良いと思います。はっきり言えば「事前に車の調子なんて確認していない」という事です。だって売る前にメニューにない、予想していなかった不具合整備なんぞしていたら納期は遅れるし利益も減っちゃうじゃない。車検さえ通るレベルなら良いのよってのは暗黙の了解です。ぶっちゃけ中古車を保証付きで売ろうとするのは「そういう事情があるかもしれない」位のことは覚悟しておいた方が良いと思います。
売り文句でワイパーゴム替えてありますって言われた所で1本千円以下だし、バッテリーも交換済みって言われたってカインズで売ってるレベルなら軽自動車クラスで2,000円ですから、そんなん売り文句になるのかよ?って思いますが、そう書いてある業者が少なくないという事はそれに釣られる人が少なくないって事しょうねえ。そのくせ、これ何時製造モノよ?というくらい年代物のタイヤが溝があるという理由だけで平然と未交換で販売されているのも当たり前の光景なのでやっぱり買ったあとの要整備費用は別枠にしておいた方が良いと思います。
そうしたモロモロの事情をくぐり抜け無事に中古車を手にした方がきちんとメンテナンス費用をつぎ込むか?という事はまた別の話です。50万円で買った中古車を2年で潰すくらいなら最初から100万円レベルの2~3年落ちを狙う方が、まだ遙かに良いと思います。正直それよりかは普通車の方が軽より安く買え、また長持ちする可能性が高いことが少なくありませんから、そうまでして軽を買うのか?と余計に思ってしまいます。
例えば軽には鬼門としてターボ付きのクルマがありますが、コレがまた何時壊れるか予想がつきません。きちんとオイル管理をしようと思っても整備手帳を見るとメーカー推奨交換サイクルとして「2,500km毎」と書いてあるクルマがあります。
じゃあ、という事でマメに交換すると近頃はオイルパンまでアルミ成形品である軽自動車が珍しくなく、あまりに交換サイクルが頻繁すぎてオイルドレンのねじがバカになってしまったことがあります。結局一体成形になっているアンダーカバーのパーツを丸ごと交換するハメになり7~8万円掛かった例がありました。
あと、保険の話をしておくと、2~3年後を目処に軽自動車にも車種別料率クラスが設定されるという話が先日ありました。という事は今までのように軽自動車という一括りの保険料の話ではなく、普通車と同様にクルマによって保険料が異なるという形になっていくのでしょう。まあ、軽自動車だからと言って事故が少ないという根拠も、損害額が低いという事も無いでしょうし。もしかしたら自賠責保険料の区分も変わっていくかもしれません。特に軽貨物(所謂、軽パコ)の事故率が近頃かなり伸びているようです。
もっとも、そう言われた所でついつい軽自動車に目が行ってしまうのも人情です。エイヤッと買ってみて何事も無ければ御の字。せっかく買った子なんですからちょとは愛情をかけてメンテナンスして頂きたいものです。もちろん、欲しい車が結果的に軽だった、というのなら話は別になるんですけどね。
まあ、一番良いのはきっちりメンテナンスしていると思える業者さんが持っている代車を「これ、ちょうだい」って言ってみて、売って貰えればラッキーなのかな、多分。
結局、金の切れ目が愛情の切れ目です。修理代惜しさに、そもそも高額な中古の軽を短期間で乗りつぶすくらいなら、最初から2~3年の期間限定で乗ってメンテナンス費用の掛からない期間だけおいしいとこ取りし、下取りが高い内にサッサと買い換えを繰り返すのが得策なのかもしれません。もちろん常にお金が出ていく話でもあるのですが。
Posted at 2018/06/23 12:54:53 | |
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2018年06月03日
東洋経済オンラインの記事に「新車販売「脱・値引き」はどこまで定着するか-ネット活用が進まない業界が抱える課題-」と題した記事がありました。
https://toyokeizai.net/articles/-/220080?utm_source=morning-mail&utm_medium=email&utm_campaign=2018-06-03&mkt_tok=eyJpIjoiWVRsaE5XVTJZMkUzT0dVMCIsInQiOiJxeFwvK3RZNHhPa1EyWWJKZzhrUGZJMzdycHRzUXMwbWFONTdmNGxNQUU4XC9zMTljWko3emIxalwvY1wvaDZKMEVJYVVjOEdVNEZCdnFCbU1xblY5Q3pvSjNcLzZkSlhEZ0tQeFRSdWJxS1NxWU5jVDM2K20zT3BQUko2Tmo3Yk1xeVRCIn0%3D
一読した感想は「本当に調べてから書いているのか?」
冒頭「何でクルマはネットで買えないのか?」と始めているのですが、ここからして販売会社に全く取材していない事が窺えます。確かに日本メーカー各社ネット上で出来るのは新車見積までで、諸経費は各販売会社にお問い合わせくださいと続くのが一般的ですが、何故その訳を販売会社なりメーカーに問い合わせたりしないのか。
例えばヤマト運輸のように直接メーカーに発注出来る企業も一部ありますが、少なくともトヨタは販売窓口を各地区のディーラーに限っています。水道に例えれば本管に繋がる水の出る蛇口はディーラーにしか備え付けられていないという訳です。こうしてメーカー側が実際の販売価格に対する裁量権を握っています。
家電製品は各販売店に各社が入り乱れて商品を卸すという販売形態ですから商品の実売価格決定権は販売店に握られてしまいました。クルマの場合は、例えて言えば地元のナショナルショップとか日立のお店にしか商品を卸していない状態です。だから欲しくなったら、そこから買うしかない訳です。
大小のモータースも一般のお客さんと同様で、町場の整備工場も、農協直営モータースも、買取店にずらっと並んでいる新古車だって全てのクルマは地元のディーラーから卸されたクルマです。教習所の教習車もタクシーもレンタカーだって全てそう。たまに見かけるネット販売をしている業者のホームページもありますけど、この業者だって何処かしらのディーラーから仕入れている事に変わりはありません。未使用自動車専門店とかも同様です。
先に挙げたヤマト運輸に納めるクルマの場合は、直接トヨタが受注をしていても登録・納車の実務は各地区の販売会社が行います。受注後にトヨタから各販売店に対して「あなたの所はトヨエースを何台、ハイエースを何台、クイックデリバリーを何台」という具合に担当台数が割り振られます。
こうした販売の実務を取り仕切っている各地のディーラーは各地の地元有力企業の子会社であり、トヨタ草莽の時期からの長年の付き合いとなれば、いくらトヨタだって無碍な扱いは出来ません。クルマの地域を跨いだネット販売が出来無い理由はここにあります。少なくとも私の在籍時には「テリ侵料」と呼ばれていた該当区域の販売店に支払うテリトリー侵害手数料が存在していました。
ちなみに初代ビッツの時にユーロスポーツエディションという名称だったか、一時期ネット限定で販売していた事がありましたが、あれだけでも相当に揉めたようです。ただ、残念ながらトヨペット店ではヴィッツの扱いがなかったので事の詳細は知りません。当時のネッツ店へのディーラー網統合も比較的小規模なディーラーの多いオート店とビスタ店だったから出来たであろう芸当だったと邪推します。
ちなみに補修部品に関しても同様で、トヨタの場合はトヨタ部品共販にしか純正部品を出しません。この為、純正部品の価格統制にも睨みが効いていて、定価のウン%以上の値引きをすると共販からだったか、販売会社本社のサービス部からだったかからクレームが入る、様です。
ただデンソーブランドの部品などは、敢えて例は挙げませんが1割引きどころではない価格でネットでも販売されています。あくまでもトヨタブランドの場合は監視が厳しいという事なのでしょう。
値引き販売に関してはマツダの例が挙げられていますが、あれも相当現場では苦労しているようです。何せ店長クラスの連中は過剰な値引き販売合戦を当たり前としてきた世代ですから現場としては尚更でしょう。
もちろん商品力があることが値引き販売を抑えられる最も好ましい環境なのですが反面、飽きられたらおしまいという事でもあります。実際問題として、違う商品を出し続けられるかどうかは企業体力にもよります。あんまりがんばりすぎるとネタ切れになる可能性も否定出来ません。
また、下取り価格が高額で推移すれば新車値引きが抑えられる好循環ができあがるのですが、それが可能か否かは市場が下す判断です。何でこういうことを書くかというと、中古車価格も高額で推移しているスバルと比べるとマツダの中古車価格評価は未だ低い傾向が強く、マツダの販売店自身が自分で中古車価格を買い支えている内情が透けて見えるんですよね。で、結局マツダの中古車はマツダの販売店に集まる。でも、そこで買った中古車をある時に査定に出してみるとエラく評価が低い。やっぱりマツダ地獄は未だ健在なのね、という感じです。乗りつぶすんなら良いんですが、やっぱり定価販売へ道はまだまだ険しいようです。一般的に認められるブランドというよりは本当に好きな人しか買わないブランドになりかかっている気がするんですよね。今も昔も。
以前、車関連の原稿料に触れている記事がありました。いろんな内情があるのねと思いながら読みましたが、原稿料で食っていく気があるのなら、お金を払ってでも読みたい記事にして欲しいと思いますし、そのためにはもう少し調べてから書いても良いんじゃないの?と思います。
Posted at 2018/06/03 14:54:57 | |
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