先月発売されたカーグラフィック1月号には、小林彰太郎氏の追悼記事と一緒に、911の50周年特集が組まれていたので、ひさしぶりに月刊の車雑誌を購入しました。
この中で、ル・マン優勝経験もあるユルゲン・バルト氏と、伝説の911使いヴィック・エルフォード氏が、911のドライビングに関する事を語っていましたが、その中に興味深いくだりがあったので、今回はそのお話。
ユルゲン・バルト氏
「荒馬と同じで、抑え込もうとすればするほど、いわゆるステアリングをしっかり握って操作しようとすればするほど、操れなくなるものなんですよ。あえて言葉にすると非常に軽い力で”フロントを遊ばせる”という表現になると思うのですが、そうすれば911は上手く走ってくれる。それを分かってくれている人は本当に上手く操作するし、そもそも911とはそうやって操作するクルマなんだよ」
ヴィック・エルフォード氏
「911がモンスターだなんて作り話だ。このクルマに必要なのはひたすら理解し、上手に扱うこと。思い通りに走らせるには優しく導くのがコツで、無理強いは禁物だとわかった。」
どちらも60年代、70年代のレースシーンで、ポルシェを駆って大活躍された二人。
その二人が、「911は優しく扱え」と言っています。
これを聞いて、「うんうん、そういう運転しないと駄目だよね」と頷ける人には、以下の話は、釈迦に説法なので、読み飛ばしてください…(^^;
この「優しく扱え」というキーワード、実はノーマルのナローに標準装備されています。
ひとつは、4本スポークのステアリング。
このステアリングは10時10分の位置と、8時20分の位置にスポークがある為、ステアリングをしっかり握ろうとすると、手の位置がおかしな事になります。
その為、自然と親指を立てた状態でハンドルを握らざるおえなくなります。
親指で巻き込む事ができませんから、必然的にハンドルの握りは軽くなり、四本の指と手の平でハンドルを包み込むような持ち方になります。
そうする事で、手の平全体でハンドルから伝わる路面のフィードバックを感じ易くなり、それに合わせたステアリング操作ができる。
また、スポークに親指が引っかからないので、握力をちょっと緩めるだけで、ステアリングがフリーになるので、手の中でステアリングを遊ばせる事も容易です。
もうひとつがシフトノブ
うちのは73年式で915ミッションなので、通常のHパターンですが、それ以前の901ミッションもシフトパターンが違うだけで、肝心な部分は同じです。
このシフトノブ、床から延びるレバーとノブの間に、スプリング式スリーブを挟み込んで固定しているだけなので、簡単にクルクル回るし、ちょっと力を入れて上に引っ張れば、簡単にすっぽ抜けます(^^;
ナローに乗って間もない頃、運転中にシフトノブが抜けて肝を冷やした、という人は、私だけでは無い…よね?(^^;(爆)
なかには、回転したり抜けたりしないよう、ピンやビスで固定している人も居るかもしれませんね。
しかし、ここで考える
「なんでこの構造が、10年間も改善されずに残っているのだろう?」
それがナローを理解する事の一歩になる。
そして、自分の運転を見つめ直す。
運転中にシフトノブが抜ける、という事は、シフトチェンジの際にレバーに対して上向きの力を掛けている証拠。
シフトチェンジに上向きの力など必要ない、つまり、自分がシフトチェンジの時に力んでいたから、無用な上向きの力が加わっていた訳で、ようは正しい扱いをしていなかった自分が悪い。
同じように、正しく整備されたミッションは、綺麗なHパターンでギアが入るので、レバーは縦か横に動くだけ。
それなのに、シフトノブがいつの間にか回転して、パターン表示が向きを変えているというのは、シフトノブの握りがおかしくて、無用な力が入っている(それをシフトノブが回転する事で逃がしている)証拠。
だから普段運転する時も、出発前にHパターンが正しい向きになっている事を確認する。
目的地に到着して、エンジンをOFFにした時、パターン表示の向きを確認する事で、その時の自分の運転がどうだったか判断できる。
そうこうしているうちに、峠を激しく攻めても、ノブが回転してパターン表示がずれるような事は無くなりました。
そうやって、自分の運転のおかしな所をナローに矯正して貰っているうちに、ナローを優しく丁寧に扱うドライビングが、自然と身に付いてくるのだと思います。
優しく丁寧にというと、腫れものに触るかのように、ゆっくり、そ~と操作するような印象を持ってしまうかもしれませんが、それは必ずしも優しく丁寧と同義ではありません。
ゆっくり、そ~っと操作していて優勝できるほど、ル・マン24時間やラリー選手権は甘くないですからね(^^;
ナローと対話する第一歩は、ステアリングの握りとシフトノブにあり。
その先には、二歩目、三歩目がある訳ですが、最初はここからではないでしょうか?
Posted at 2013/12/24 01:29:35 | |
トラックバック(0) |
ナロードライビング | クルマ