そうそう、プライベーターといえど、パーツ作りでどうしても困ってしまうのが
切削と溶接の2点かと思います。
切削関係はフライス・旋盤。こんなの持っている訳が無い。。。
溶接は技術なのでとりあえずくっつけるだけならまだしも、綺麗に溶かしこんで
美しい溶接ビートを出すのは至難。。。
前者に関しては機械が無い限りどこかにお願いするしかありません。
後者に関しては機械が有ってもプロにお願いした方が無難・・・
事実、私も自宅にMIG溶接機があり、混成ガスでくっ付けちゃいますが、
やってもやってもプロにはかなわないので見えない所や簡単な所は自分でやりますが、
見える所はやっぱり信頼しているプロにお願いしちゃってます。
最近でこそ、近くでは
SKRさんの様な溶接が巧みなところと知りあう事が出来ました。
遠いので気楽に行けませんが、
デザートイーグルさんも惚れ惚れするほどの技術!
ただ、こういったところを知るまでのこれまでは苦難の嵐でした。
若い頃、これもやはり苦い思い出で、車のショップにとにかくスチールマフラーステーの溶接を
お願いしたところ、シブシブというか、やってやってやるオーラプンプンでやってもらい、
出来上がりを見たらヘタなMIGで溶接モリモリ。ウサギのウンコ状態で何だこりゃ?
まぁ、見えないところだから我慢と思ったら装着してすぐ再度折れました。
これで当時5千円。。。 学生の私には泣けましたよ。
で、結局すぐそばに鉄工所があって、ダメ元で頼んだら単なるアーク溶接でやっぱり汚い溶接に
なりましたが、その後は2度と折れませんでした。
ここはビルのH鋼など巨大な建設用の柱などを溶接しているところだったのですが、
その職人さん達は単なる溶棒一つで朝から晩までくっ付けている方達だったので
溶かしこみというか見た目は別として、溶接とはなんぞや?みたいな基本を教えてもらいました。
見た目も重要なファクターではありますが、材料同士が完全に溶け合って融合するのが基本。
この見極めなんて一朝一夕で身に付くものでは無いと痛感しました。
その後、私は金型職人をやっていた時に知り合ったというか、金型修理や修正でお願いしていた
取引先の溶接屋さんとその後16年の付き合いとなります。(今も)
この私が溶接をお願いしている方は半分伝説に近い職人さんです。
現在の年齢は推定73歳(@_@;)
溶接一筋の人生で、とっくに会社は息子さんに任せて、都内某所の商店街でひっそりと
溶接を請け負ってやられています。
行ってもまず気付かないような立地です。
魚屋・八百屋などと一緒に立ち並んでいて、”なぜここに溶接屋!??”とさえ思ってしまうような
間口、一間半の狭い商店です。 細い路地の商店街なので当然、車も停められない。。。
当然、いくらネットで探しても見つかりませんよ(笑)
息子さんと言っても既に55歳を越え、溶接の会社といえどテレビに紹介されるほどの
技術のある町工場です。
ところが、ご自身は技術と会社を託した息子さんをよそに、半分趣味なのか?
半世紀以上溶接一筋だから溶接していないと死んじゃうのか?(笑)
ちっちゃなおじいさんがたった一人で商店街の軒先でバチバチ溶接をされています。
※息子さんに継いでもらったメインの会社は近くに大きく構えてます。
ここに行くと面白いですよ! だってその光景が異様なんです。
こんな普通の商店街に様々な物をもった人が手にもって溶接してもらう為に並んでいたり
するんです。それが皆バラバラ。
バイクの部品、フレーム、怪しいクルマ屋がAMGのマフラーを持っていたり、L型エンジンの
燃焼室肉盛り、あらゆる金型の補修や修正、なんとびっくり!新幹線のブレーキの部品などなど・・・
はてや原子炉の部品まで、もうあげたらキリが無い。 聞いても秘密な部品が多数。。。
国宝級の方なんじゃないかな!??
つまり、他では難しかったり出来ない難易度の高いものが最後に持ち込まれる
駆け込み寺なんです。 頼んでいるのが溶接屋さんだったりもするんですよ(驚)
現在では需要が少ない事からチタンの溶接は辞めてしまったとの事ですが、
それ以外のものなら何でもOK。アルゴン、レーザー・・・
と言っても頼み方が難しい。厳密に素材を伝えたり溶接の仕方も有る程度その後も
応力がかかるから逃がして欲しい!とか”ス”が出ないように完璧に肉盛りして欲しい!とか
あまり熱をかけないでほしい!とか、周辺の歪みを考慮して欲しい!など、
とても素人にはちと難しいかな。。
っていうか、その前になんせ70を超えているチャキチャキの江戸っ子おじいさん。
何せ悪気は無いんですが、武骨で取っつきずらい(笑)
私なんて名前を覚えてもらうのに3年、仲良くなるのに10年かかっていますから(笑)
料金も実に不明確(笑) 感覚価格!? 大体なんでも数百円~数千円。ちょっと凝っていて
高くても3,000円ぐらい。
でも、この価格自体がショップさんに頼む半分以下でありながら技術は一流。
”ここは見た目が大事なので超超きれいなウロコにして!”と言ったらそうしてくれるし、
溶かしこみ重視と言えばそうしてくれる。
私のバイク時代には高価なチャンバーに穴が開いたといえば1mmの薄板を溶接盛りで盛って
直してくれるし、コケてメインフレームが折れたら純正バイクメーカーのアルミフレームと同じ
番手の溶棒で直してくれた。
4AGの燃焼室を削り過ぎてアルゴン埋めしてもらって削っても”ス”は出ないし、と
どれだけお世話になった事か。
特筆すべきは、16年も色々やってもらった中でその後溶接個所やその近辺が再度折れたり
不具合が発生した事が全く無いという事なんです。 本当に凄い!
こんな事を教えてもらったりもしました。 人間が骨折してそこが治ると、くっついた部分が
強くなり過ぎて、その前後だったり脇が折れやすくなる。
溶接も同じで、熱を掛けてくっつけるとその回りが弱くなる。なので使用する溶接棒の
種類や熱のかけ方、溶かしこみの技術で”逃げ”を作ってそこを折れなくする。。。
などなどなど。

※これはデフカバーのインとアウトレットボスの溶接風景
ねっとりする高温のデフオイルが回る場所なのでカバー全体を熱して熱をかけ、じっくりと
”ス”が出ないように内側と外側に盛ってもらってます。このおかげで高温化でも漏れしらず!
私もそれまでは人並みにアークからMIGまでは仕事としてもやっていたし、出来る。
でも、このジイさんと知り合ってから完全に止めました。だって脱帽なんだもん。
職人の技術にはかないません。
ましてこの方みたいに溶接だけで半世紀以上の職人にかなう訳が無い(笑)
ただ、条件としては溶接しか当然してくれないので溶接出来るように下処理しておかなければ
いけないし、ここに持ち込むのが大前提。
時には熱いのを我慢して手で押さえなければならなかったり、自分で治具を用意して
持ち込むなど。。
以上の事から私のプライベーター人生はこのおじいさんあっての弄り人生と言っても
過言ではありません。
現在のエスでもリアメンバーのフルガゼット溶接やデフの加工、先に紹介したオイルパン
バッフルなどなどキリが無いほどお世話になっています。

※エスのリアメンバーガゼット補強板の溶接画像。
手作りでバーリングを施した鉄板を1つずつ溶接してくれてます。
是非、プライベーターの皆さんもこういった腕のよい溶接屋さんや加工屋さんを見つけて
プライベート人生を楽しんで下さい。
私はショップさんには恵まれなかったですが、こういった職人さんに恵まれて今の私があります。