2017年01月27日
すでにブログを書始めて数ヶ月…かなり時間がかかってしまいました。お友達がブログをアップされた事で、投稿することができました。
もう昨年の話しになってしまいましたが、昨年11月に公開された『この世界の片隅に』を鑑賞してぎした。
少しばかり感じたところなど、記してみたいと思います。
【予告編】
この作品は制作費の捻出にクラウドファンディングという形式を採用したり、主人公の浦野すず役である「のん」さんと所属事務所の問題など、本編以外での問題が話題性となった作品です。
舞台背景は、昭和20年の広島と呉とされ、主人公のすずが激動の時代を、強く生き抜いていく姿を描いています。
さて、昭和初期というと、第二次世界大戦~終戦という激動の日本の歴史があります。この時代を生きると言うことは、年代的に私の両親の年代と、その両親(祖父祖母)達のちょうど間くらいあたります。そのため、作中に出てくる当時の生活や言葉は、生前の父から聞いた話しなど思い起こしながらの鑑賞でした。
近年でも、よくドラマや映画に取りあげられる表側の話…第二次世界大戦のさなか、アメリカに徐々に追い込まれ、終戦を迎える日本の歴史的な流れは、学校での授業はもとより、国民なら誰しも知り得るところです。
ときに、今も週に一度仕事で丸の内を訪れていますが、そこに戦後、日本を統治するために席を置いたダグラス・マッカーサーの影と、その先にある皇居を見やった時、此処が激動の日本の歴史の中心だったんだなと言葉にならない感情がこみ上げてきます。
そんな表に表現される史実とは逆に、日本の普通に暮らす国民の生活は、どんなものだったのか、あまり語られていないことが多いように感じます。
この作品は激動の時代を生き抜く、淡々とした日常を送る主人公のすずの目線から描かれています。
しかし、これ以上も以下もない…これこそこが作品のテーマです。戦時中の裏側の人たちを描いた作品だと思い出されるのは『火垂の墓』ですね。
あちらの作品はさらに戦争の裏側の小さな主人公達にふりかかる、非情な現実と運命に心揺さぶられます。そういう意味では『力強く生き抜く』本作とは少し見方が違うといっていいかもしれません。
戦時下当時の日常は、劇場公開時の生活とはかけ離れた物です。食事は軍事統制下にあり、アメリカに圧されてくるに従って、軍が全てにおいて最優先され、満足な食事さえ摂れなくなっていきます。また結婚に対する考え方も、いまの自由恋愛とは違い『嫁ぐ』印象が強く、取り巻く家同士の事情が優先され、個人の意見など挟むことは後回しに…
作中に新婚初夜を迎えるシーンでは『傘はもってきたかい?』と言うくだりがありますが、私は知りませんでしたが、これも初夜を迎える昔のしきたりの様ですね!
そんな嫁入りという肩身の狭い環境下で、唯一、すずの自己表現が許されるたのは『絵』です。
すずの目を通して見えた世界は、目と手を使いすずの世界として描き出され、物語の背骨は節目に描かれるその『絵』を軸に組み立てているように見えます。
小学生の時、幼なじみの為に代わりに絵を描いた時…
鉛筆さえ買えないという表現で、人々の生活が困窮していく様子…
息が詰まるような結婚生活が続くなか、呉の軍港を描いた絵を憲兵に見つかってしまう…いつしか、その『絵』と作画の繊細なタッチの絵風がオーバーラップし、すずが見た世界に代わります。
ここ作品に入り込むに非常に重要なポイントです。
やがてその絵を描き出す、手さえ奪われてしまう厳しい現実…
それでも、すずは日々淡々と普段通りの生活を続ける姿に思わず、ほろほろと泣けてしまいます。
その声を演じるのんさんですが、幼少期から成人まで一貫して同じ声のトーンで演じているように感じます。初めは…
『声色すら変えられんのか…たいしたことないな』
などと思っていたのですが、物語が進むにつれ、演技は逆にわざと声色を変えていないのでは無いかと考え始めました。作画も、すずの顔も体もそれほど変わらない様に描かれているためです。
音楽については、この優しいタッチの作風に、コトリンゴのオリエンタルな曲調のタイトル曲がマッチしていますね。
作画や音楽、キャストなど強力なスポンサーのついた作品だと、どうしてもスポンサーの意向を反映した選択にならざるおえない…いわゆる大人の事情ってヤツですね…この作品はクラウドファンディングという性質か…監督の思う通りに作っているのでしょう。映画全体の作風も一貫している様に感じるのがその良い証拠かなと…
巨大なスポンサーをバックに巨額を投じて作られた映画も見ごたえありますが、不運を逆にチャンスに変えて、こんな作品を世に送り出されるのですから、もちろん片渕監督のパワーも凄いのかもしれませんが、これからこんなスキームを使った作品が増えてくるとしたら、見る側の選択肢も増えてますます楽しいかもしれませんね!
色々書きましたが、この作品はなるべく多くの日本人に観てほしい作品だと思います。
Posted at 2017/01/27 08:12:09 | |
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