
最近、ちょっと気になっているのはBEVの動向。世界的に売れ行きが鈍化していてアメリカのレンタカー会社はBEV車をガソリン車に戻す動きもあるとか。また、欧州などでは補助金や税制などであまりに優遇しすぎたツケが回ってきて優遇措置を取りやめる国も出てきて、結局またガソリン車に回帰する動きもあるとか。
私自身、現時点ではPassat GTEのような PHEV車が一番現実的な選択肢であるように考えていますが、次期導入車種はいよいよBEV車になるのかな、とも思っていました。そんな気持ちに水を差された気持ちがしないでもないのですが、BEV車の問題は結局、バッテリーの充電の問題に尽きると思います。しかし、それとて人それぞれのカーライフのスタイルが違うので、自分のライフスタイルに合うのであれば、あるいは複数台の車を所有できるのなら一台くらいBEVでも良いのかな、とも思います。
そこでHYUNDAI IONIQ 5です。先日、ネットの広告でIONIQ5の15日間という長期試乗の募集があり、しかも車両受け渡し場所に隣県のD、HYUNDAI Citystore福岡も入っていたので、ものは試しと申し込んでみました。なんと言っても日本でインポートカーオブザイヤー、欧米でも各国でワールドカーオブザイヤーなどいろんな賞を受賞しただけにネットや動画サイトでの評判も上々です。私もスタイルや動力性能、それに航続距離などには結構好印象があったので、そのうち試乗したいと思っていました。しかし、さすがに15日間試乗への当選の確率は低そうでしたので、本日ふと思いついて昨年オープンした福岡のHYUNDAI Citystoreへ申し込んで1時間の試乗に行ってきました。

HYUNDAI Citystore福岡はイオンモール福岡の中にあります。自宅から高速を使って予約の時刻ぴったりに到着しました。本当はもう少し余裕があるはずでしたが、イオンモール福岡が広すぎてお店を探すのに手間がかかりました😅。

ショールームにはIONIQ5と一回り小さいKONAが展示されていましたが、今回はIONIQ5一択で試乗させてもらいました。実車は一度だけ家の近所ですれ違ったことありますが、こうして間近で見ると「大きいな」という印象です。実際のサイズをPassatと比べてみるとこうなります。
IONIQ 5
全長×全幅×全高
4635×1890×1645mm
ホイールベース
3000mm
Passat GTE Variant
全長×全幅×全高
4775×1830×1500mm
ホイールベース
2790mm
全長こそ140mmほど短いものの、あとは全部IONIQ 5が上回っています。ホイールベースが3,000mmもあるのが特徴的ですが、前後のオーバーハングがかなり短いのが分かります。
ちなみに、同じBEVでサイズが近いVWのID.4や日産のアリア、それにトヨタのbz4xはこうなっています。
ID.4
全長×全幅×全高
4585×1850×1640mm
ホイールベース
2770mm
アリア
全長×全幅×全高
4595×1850×1655mm
ホイールベース
2775mm
bz4x
全長×全幅×全高
4690×1860×1650mm
ホイールベース
2850mm

必要書類にサインをしてすぐに試乗車の駐車場へ。IONIQ5が2台、KONAが1台ありました。
IONIQ5のグレード展開はこのようになっています。

今回の試乗車はLounge AWDという上から2番目のグレード。前後にモーターを装備したAWDで305PS、605Nというシリーズ最強モデルです。

一通りレバーの操作や設定についての説明を受けた後、若い営業さんを助手席に乗せて試乗スタートです。
まず、スタートした瞬間、結構しっかりクリープするのが分かりました。GTEは普段からオートホールドにしてるので、よけいに前に出て行く感じがします。サスペンションは硬めですがしなやか。また20インチのホイールですが乗り心地はゴツゴツせず、かなり上質だと思います。全長に比して長いホイールベースが奏功しているのかもしれません。
静粛性も素晴らしく、BEVらしい静かさで外部からの音の侵入もよく抑えられています。正直、Passat GTEよりかなり遮音性に優れていると思いました。むしろ、車内でランダムにパチパチと何かを弾くような音が聞こえて来たのが気になり、どっかから軋み音がするのかと思って聞いてみたら、なんと「環境音」のサウンドで暖炉の音?が流れていたのでした😅。他の音に変えてもらって納得しました。それだけ車内の静粛性に自信があるということでしょうね。
また、さすがシリーズ最強のAWD305PS、605Nというパワーがありますので最初の動き出しからぐいぐいとトルクを感じます。ただ、しばらくは市街地の混み合うルートで信号も多く、そのパワーは持て余していました。そこで、もう少し空いた道路で試したいとリクエストしたところ、次の時間帯は予約が入っていないので延長していただけることになりました。
そこで一旦イオンモールの駐車場に戻って改めて内外装をじっくりと見せてもらいました。以下は全て私が試乗させてもらったLounge AWDの内外装です。グレードによっては装備が異なっていると思います。

ボディーの全体的なフォルムはあまりSUVらしくは見えません。全体的にコンパクトにすら見えますが、実際はかなりボリュームがあります。それでいてバランスはとてもいいと思います。ホイールベースが長く前後のオーバーハングがかなり小さいのも上手く収まっていると思います。

このIONIQ5のアイコンともなっているパラメトリックピクセルのDRLが特徴的なフロントマスク。個性的ですれ違うと一目でIONIQ5だと分かります。

私も一度、地元で結構なスピードですれ違ったことがありますが、すぐにおおっ!となりました。(後でドラレコの動画から切り出してみました)

後ろ姿も妙なラインもなく、直線的でいいと思います。テールランプ周りもパラメトリックピクセルの意匠でまとめられています。

ボディーサイドのドアには大きな"Z"の形のプレスラインが入ってます。Passatもそうですが、このプレスラインが作り出す濃淡が美しいですね。ただ、このデザインはちょっと好みが分かれそうではあります。

タイヤ/ホイールは255/45R20。全体的にボリュームがあるボディーなので20インチも大きすぎる感じはしません。タイヤはMichelinのPilot Sport EV。2tを超える重量を支えるためにかなり太いタイヤを履いてます。このタイヤはEV車用に、特に転がり抵抗の低減、グリップ力、それに静粛性を高次元でバランスされたタイヤだそうです。ただ、このホイールのデザインもちょっと好みが分かれそうなところです。私もちょっと微妙です😅。

リアゲートは電動開閉。開口部はあまり広そうには見えませんが、実際は全幅が1890mmもあるので十分です。トノカバーは手動でリアゲートと連動はしません。

全長が4635mmとPassat より140mm短い分、ラゲッジルームの奥行きは少し短めですが、変な出っ張りもなくスクエアで荷物の出し入れはやり易そうです。また、リアシートが前後に動かせるので、リアシートを一番前まで動かせばもっと奥行きは広くなると思います。

ラゲッジルームのフロア下には収納がありますが少しです。この辺りはPassat GTEも同様ですが、バッテリーのためスペースを確保する必要があるのでしょうね。
また、基本がリアドライブなので、2WDもですがモーターのためのスペースも必要なのかもしれません。

ラゲッジルーム左側には12Vのアウトレット、右側には付属しているV2H用のアダプタを接続する端子がありました。

ボンネットを開けると、ん?エンジンカバー?ではなく、

フロントの小物入れ、いわゆる“フランク”ですね。ただ、このモデルはAWDでフロントにもモーターがあるので、その分小さく狭くなってるそうです。まあ、ウェスやちょっとしたパーツなど汚れ物を入れておくのにはいいかも知れません。

また、12Vの電装関係用のバッテリーや、

ブレーキオイルやクーラントのリザーブタンク、ウォッシャー液用のタンクなどもフロントボンネット内です。赤と青の2色の液がどう違うのかは今ひとつ分かりません…。

充電口は車両の右後ろのフェンダーにあります。電動の蓋を開けるとチャデモ用(左)と普通充電用(右)の2つのインレットがあります。このIONIQ5は欧州では800Vもの高電圧の急速充電にも対応しており、0-80%まで18分でチャージできるそうですが、日本向けは上限が400Vに制限されているそうです。
次は内装。

内装全般に白を基調としたデザインですが、明るくていい感じです。他に一部にブラウンを使った内装もあるようですが、私はそっちが好みかな?

運転席にはなんとリクライニングを倒したときにせり上がるフットレスト(オットマン)付き。しかもワンタッチでこの体勢まで動きます。高速のSAやPAで仮眠する時などに便利そうです。
また、シートは上質な本革製でシートヒーターとベンチレーションも装備しています。硬めの座り心地で私は好みです。

また、助手席の背もたれ部分のサイドには運転席からも操作できるスイッチがあります。スイッチの表示からすると、後席の前後スライドの動きもコントロールできそうです。これも便利な機能です。

運転席はさすが、なかなか近未来的なデザインで中央とステアリング奥の2機の同じサイズ(12.3インチ)のモニターが目を引きます。最近の新型車の傾向で、運転に必要な情報とそれ以外の空調やオーディオ、ナビ、それに様々な車両の設定関係を分けて、別々のディスプレイに表示しています。テスラなどは中央のでかいディスプレイに集約されていましたが、こちらの方が使い易いと思います。

運転席前のディスプレイにはウインカーと連動してサイドミラー下のカメラから後方を見ている映像が表示されます。ミラー自体はデジタルではなく通常の反射式ですが、死角となっている部分もあるのでこれはなかなか便利だと思います。

また、この写真は光の関係でちょっと見にくくなってしまいましたが、ナビやオーディオの呼び出しなどは画面からのほかにショートカットの物理スイッチがあるのはポイント高いです。特にボリュームがダイヤル式で残っているのは素晴らしいと思います。

ステアリングヒーターで温められたステアリングを握ってみると、太さも握り具合もいい感じです。コラムの右側には上にウインカー/ライトスイッチ、その下に基本的なドライブセレクトスイッチ。BEV車は変速機が無いのでシフトレバーがなくなり、このような小さなスイッチになる傾向ですが、輸入車なのにウインカーが右なのは珍しいですね。私はすっかりウインカーが左側についてる車に慣れてしまってますが、国産車から乗り換える人は戸惑わずに済んでいいと思います。

ステアリングコラムの左側にはワイパーのスイッチ。こちらも国産車と同じ配置です。

ステアリングのグリップ裏にはBEV車にパドルシフト?と思ったらこれは回生ブレーキの強度をコントロールするパドルだそうです。使い勝手は良さそうですが、BEV乗りの上級者は細かく回生ブレーキの効きをコントロールするのでしょうね。Passat GTEはON/OFFだけですが、しょっちゅう変更しなくても自分の好みに設定できるのは良いと思います。

センターコンソールは機能的には十分ですが、シンプルでコンパクトです。一番奥には12VのアウトレットとUSBポートと小物入れ。

その後ろは途切れていて、シートの横にドリンクホルダーと、

USBポートが2カ所とその下にワイヤレス充電対応のスマホ置き場。私も背面カバー付きのiPhone14Proを置いてみましたが、ちょっと置き方を工夫したら上手く充電がスタートしました。写真は撮り損ねましたが、さらに後ろにアームレストがあります。
また、このドリンクホルダーからアームレストのコンソールは全体を前後に動かすことができます。ドリンクホルダーと前の小物入れの間は何もありませんので運転席と助手席との間はウォークスルーになっており、移動も可能だと思います。
この辺り、機能的によく工夫されていて便利そうではありますが、ファミリーカーのようでもあります。質感は高いのですが、高級さはあまり感じません。まあ、ピアノブラックやクロムメッキのパーツで高級感を出す方向ではないのは確かです。

リアのドアは開口部が広く乗り降りはし易いと思います。また、この写真は運転席を私のドライビングポジションに合わせていますが、リアシートに座ってもかなり前席とのスペースに余裕があります。リアシートも本革製で硬めの座り心地です。またこのリアシートも電動で前後に動きます。これはなるほどと感心しました。後席に人を乗せる時はロングホイールベースを活かしてゆったりと広い空間を確保でき、普段前席にしか乗らない時はリアシートを前方に出してラゲッジルームを広くとるという仕組みです。

また、リアのサイドウィンドウには引き出し式のサンシェードも装備されています。これは個人的には嬉しい装備です。以前乗っていたB6 Passatには装備されていたのですが、B8では無くなっていたので残念に思っています。
さて、一通り内外装を見せてもらった後、今度は少し流れが速くてスピードが出せる2車線の道路をドライブさせてもらいました。さすがBEVのAWD、低速から力強いトルクでこの2tを超える車体をぐいぐいスピードに乗せます。ハンドリングもロングホイールベースにも関わらず、なかなか身軽にレーンチェンジができました。また、ブレーキも効き始めはしっとりとして、少し踏み込めばグッと効いて安心感があります。減速には回生ブレーキも強度を自分の好みに変えられるのがいいですね。
運転支援についてはあまり体感する場面は少なかったのですが、一般道でもしっかり車線逸脱防止機能が働いており、ステアリングに手応えを感じる場面も多かったです。ACCについても一般道ですが少し試してみました。前車の加減速によく追従しますが不自然な感じはなく、また完全に停止するまで自然に減速し、停止します。

ただ、一旦停止すると再スタートは必ずアクセルを踏むかボタンを押さないと再スタートしません。せめて数秒でもいいのでPassatのように前車に追従して再スタートする設定があればと思います。それだけでかなり渋滞時のストレス軽減になると思います。
試乗の終わり頃になって、ちょうど信号待ちで先頭になる場面がありました。助手席の担当氏から「スポーツモードを試されませんか?」と言われてそうだった!と思い出しました。ノーマルモードでも十分パワフルなので忘れてました。モード切り替えのボタンでスポーツモードに切り替えてスタート。
いやあ、ぶったまげました!ものすごい加速で体がシートに押し付けられます。これは一般道で安易に試せないですね。停止状態からあっという間に制限速度を軽く超えてしまい、慌てて減速しました。これはエラい車に乗ってしまったものです。しかもこんな暴力的な加速でも室内は相変わらず静かなまま。凄いです。
試乗を終え、またイオンモールのパーキングに戻って元の位置に戻しましたが、狭い場所の取り回しも全く苦になりませんでした。全長こそPassatより短いのですがホイールベースが長い分小回りは苦手かなと思いましたが、今回の試乗では不便さは感じませんでした。
担当氏からはあまり強くは営業されませんでしたが、それでも納期の短さや補助金のことなど、いろいろ気持ちが揺らぐ案内はしていただきました。特に補助金は2024年度にはまた下げられる可能性もありますので。
私としては基本的に自宅での充電が中心になるので、自宅の貧弱な充電設備で一晩充電してどれくらいの電力を貯めることができるのかが気になるところです。まあ、満充電ではカタログ値で577kmも走ってくれるので、普段の通勤や買い物などは週1回の充電でも事足りそうではありますが、まとめて充電するとなるとその分時間がかかりそうです。充電と言えば、標準で付属してくる充電ケーブルはなんと100V用のものとか。これにはびっくり。この大容量のバッテリーを充電するのに家庭の100Vはないでしょう。一体満充電までにどれほどの時間がかかることやら。
また、パーツの供給やサービス体制、バッテリーの経年劣化の具合などももう少し知りたいとも思います。整備については福岡では近くの整備工場と提携していて、修理や整備はそちらで引き受けることになっています。
まあ、私の予定ではまだしばらくはPassat GTEに乗り続けるつもりですが、かなり心惹かれたのも事実です。

以上、かなり長文になってしまいましたが、それだけ衝撃を受けたHyundai IONIQ 5の試乗でした。
この上は是非、15日間試乗して我が家での充電の具合や私のカーライフのスタイルとの相性も確認してみたいものです。HYUNDAIさん、よろしくお願いします(笑)。