
エーモン両面テープのパッケージには,誇らしげに「200℃ 熱に強い」とか「150℃ 熱に強い」ってあります。
これだけを見ていると「両面テープって暑い時に,はがれたりする。エーモンのは200度までOK。これはいい」と思ってしまうものです。
「あっちは150度だけど,こっちのは200度。こっちの200度の方が偉いんだ」そう感じたりします。
これらは使用温度範囲の上限値を表しています。
数字データを各社の各テープで比較していると,エーモンの温度の上限値が他社より突出していることに気がつきます。
エーモン以外の超強力・強力両面テープは,だいたい80度か90度です。
エーモンの両面テープは,他社より高いから性能もいいのだろう?
でも,エーモンの両面テープのほとんどは住友スリーエム製のような感じなんですが(笑
これらは,以前から疑問に思っていたのですが,今週,ようやく自己解決させることが出来ました。
(当方が理解した範囲で)結論を先に書いてしまうと,一言でいうとエーモンは「接着能力が,少しでも残っていればよい温度」を上限値にしている。他社は「一定の目安をおおむね満足できる性能が残っている温度」を上限値にしている。
同じ試験データなのに,エーモンは数字の解釈を変えているので,
インチキじゃん 客に誤解を与えると思います。
そういうわけで,温度の上限値は(アクリル系接着剤の)超強力・強力両面テープなら,どの会社も似たり寄ったりなので(一般的な用途では)購入時の判断ポイントに加える意味はないと考えます。
先に書いたお値段のことと言い,エーモンって,カー用品店の客をバカにしている,って感じ。
以下,本件に関する説明。(細かいハナシなので,読み飛ばしてもらって結構です。笑)
接着剤は温度が高くなると接着力が低下します。(接着剤の化学物質が活性化するため)
この手の両面テープに使われているアクリル系接着剤は150度ぐらいで溶けてしまい,150度の手前ぐらいではほとんど接着剤の用をなさなくなります。(成分調整をしても200度程度まで)
仮にエーモンが3Mに特注でテープを作らせたとしても(アクリル系使っている限り)150度近辺で,一定の接着力を有する両面テープは作ることが出来ません。さらに高性能なテープは接着剤にシリコン系を使えば作れますがコストがかかりますし,基材も持たせるためにアルミなどを使う必要も生じてきます。
つまり,エーモンが言っている150度や200度で,実用性がある両面テープは(一部を除いては)どうやっても作れないのです。
使用温度範囲はJISのテープ関係規格にありません。各社が社内試験で得たデータをもとに独自に設定しているものです。
さすがに,なんの根拠もなく数字を載せることはないと思います。JIS規格で数字が示されている超強力テープの場合は,おおむねJISの値を満足できる接着力が残っている温度を載せているのではないでしょうか?
(工業用)VHBの総合カタログの使用温度範囲はエーモンと同じ値になっています。カタログの欄外に但し書きがあって「高温における使用時間は用途によって異なりますので詳しくは下記までお問い合せください。」となっています。
このVHBのカタログは一般消費者向けのものではなく,建築関連部材メーカーや電機・自動車メーカー等向けの工業用テープの案内としてあるものです。担当営業や技術者が付いているわけですからこのような説明になっているは理解できます。
それをどうやらエーモンは一般消費者の説明に流用している模様です。お約束とは言えエーモンのパッケージ裏には「高温・高湿下では接着力が低下し,はがれるおそれがあります。」としているので,問題ないのでしょうが。
実際の温度を計ったもの↓
・(JAF)車内温度-危険性が高いのは春先から初夏にかけて
http://www.jaf.or.jp/data/07usertest/
> ダッシュボード付近 ・・・・・・・・ 70.8 ℃
・見よ!エーモンは赤く燃えている
https://minkara.carview.co.jp/userid/193175/blog/19152874/
> 両面テープをはじめとした
> エーモンアイテムは80℃でも問題なく使えるよう
70度や80度になると接着力はどれぐらい低下するのか?
3Mに照会したところ「『荷重の目安』に載せている値は(温度の)条件が一番悪い時のもの」だそうです(*1)。使用温度範囲の高温側(80度までと書いてあるなら80度の時)での試験値を「荷重の目安」に載せている。ということは,常温においては荷重の目安の値を上回る性能があるとみるのが一般的でしょう。
温度が上がれば接着力は下がりますが(3Mの場合)荷重の目安に準じていれば(素材や余裕は別として)温度のことは気にしなくてもよさそうです。
それでも,熱が心配だという方は,スコッチ 超強力両面テープ[耐熱用](KHR-12など)がよろしいと思います。これは3M VHB Y-4609と思われます。
ここでいう耐熱用というのはクルマを念頭にしたものではなくて,3Mとしては台所のコンロ周りのステンやタイル用を想定しているようです,この両面テープの使用温度範囲-20度~180度。荷重の目安は,ステンレスどうし660g,タイルどうし 400gになっています(12mm幅,長さ2cm)。ただ,90度引きはがし試験の値では自動車内装によく使われているポリプロピレン(PP)の値はステンレスより大きく劣っていました。クルマ用としては実用性が今一歩の感がありますが,温度の数字が大きい方がよい方は使ってみるといいと思います。
実際問題,真夏のクルマでも200度になることはないので,エーモンが宣伝に200度と書いても,300度と書いても,どうでもいいような気もします。(仮に消費者保護を目的とした公的機関(国民生活センター等)へ申請したとしても話は聞いてくれるでしょうが調査はしてくれないでしょう。150度になることはあり得ないので著しく消費者の不利益にはならないと思われます。エーモンはその辺りも読んだ上で宣伝文句に付けているのだと推察しています)
ただ,いくら宣伝とはいえ,製造元と思われる3Mが80度と言っているものを200度って書いてしまうのは,どんなもんなんでしょうか?
*1 スコッチ 超強力両面テープ プレミアゴールド[自動車内装用](KCR-15など)のパッケージには「室温25度における荷重の目安」と書いてあります。自動車内装用テープに温度を明示されてしまうと3M DIY製品問合せ窓口の返事はやや信頼性が欠けることに?
▼参考リンク
・3M テープ・接着剤製品 よくあるご質問
http://www.mmm.co.jp/tape-adh/faq/
▼関連リンク
・エーモン工業の両面テープ(2010.11.5)
https://minkara.carview.co.jp/userid/766725/blog/20288286/
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両面テープ | 日記
Posted at
2012/03/31 17:40:06