ツインスプリング

前回バネの逃げ道についてちょっと触れましたので、逃げ道について。

レートが決まっていればダンパーストロークを確保できるストロークをもったバネを選べばいいのですが、固有振動数1.5[Hz]に設定すると多くの車種で直巻きバネではストローク不足となるでしょう。

色々と思い悩んでいた時、ヘルパースプリングを組み込んだ時の合成レートについて以下のことが述べられていることに気付きました。

合成レート = (k1 * k2)/(k1+ k2)
ここで
k1 ： 直列スプリングレート1
k2 ： 直列スプリングレート2

これは電気屋の私には見慣れた「和分の積」と言われる式です。
電気の分野では主に並列の合成抵抗を求める際に使われます。

つまり成り立ちは逆数の和の逆数でしょう。

これが意味するところは
「直列バネには均等に荷重がかかる」
と言うことになると思います。


ここで閃きました。

「同じスペックのバネを2個直列に繋ぐと、レートは半分、許容荷重2倍のバネができる」

と言うことに。

つまりレートの微調整と限られた自由長での許容荷重の増加が見込めると言うわけです。

調べてみるとやっぱり出てきました。
ヘルパースプリングでない直列スプリングを使っている方々が。

私の悩んでいたものは
・組み込める長さが300mm程度
・許容荷重 700[kg]以上
・レート3[kgf/mm]　よりちょっと高くしたい

これを実現するために
「レートの高い短いバネ」
「レートの低い長いバネ」
を組み合わせることで、低レート高許容荷重バネが出来上がるのです。
かつここでそれぞれの許容荷重を揃えることで線間密着をほぼしないバネができるわけです。


やってることはただの可変レートバネですね。
ただし、特注で巻く必要のある可変レートバネをホイホイ買うお金も時間もありませんでしたし、線径、材質の制限をお互いが受けることがなくなるのでより自由度が高いと考えます。

例題
バネ1
レート 4[kgf/mm]
自由長 254[mm]
許容耐荷重 628[kgf]
許容ストローク 157[mm]
バネ2
レート 12[kgf/mm]
自由長 75[mm]
許容耐荷重 534[kgf]
許容ストローク 45.5[mm]

このバネを直列に繋ぐと
レート = (4*12)/(4+12) = 3[kgf/mm]
自由長 = 254 + 75 = 329[mm](中間シートが必要なので5mm程度は加算される)
許容荷重 = 628 + 534 = 1162
許容ストローク = 157 + 45.5 = 202.5[mm]

となります。

これでプリロード300[kgf]かけても700[kgf]以上の余裕があるバネができます。
実際300[kgf]もプリロードをかけなくて良かったため必要十分ですね。

バネ2のほうが耐荷重が低いため、先に線間密着を起こします。
線間密着が起こるのは合成バネに 534 * 2 = 1068[kgf]かかった時となります。
(プリロードと1G荷重も含みます。)
その先の94kgfは4[kgf/mm]で作用します。

【注意点】
例題に挙げたようなバネは恐らく円断面のバネを使うしかないでしょう。
片側に線間密着が頻発するような使い方をすると破断の恐れがありますので、なるべくお互いが線間密着しないようにバランスを取るべきです。

短い高レートバネは
CRAFTZ
EIBACH
TEIN

等で手に入ります。
CRAFTZは比較的レートの選択肢が多く自由長75[mm]で在庫があれば納期2週間程度で入るので良かったです。
EIBACHは自由長89[mm]か102[mm]がこの目的で使えるでしょう。
TEINも自由長100[mm]のものが使えると思います。非常に高レートをラインナップしてるので、メインの低レートになるべく近づけて高許容荷重を狙うにはいいかもしれません。

ツインスプリングの接続点はダンパーケースの上に来るようにするのがお勧めです。
やはり接続点が少しぶれますので、ダストブーツの損傷や、シャフトへの接触が起こりえます。
と言うか起こりました。

ダストブーツ噛み込による破断、倒立式のシャフトへの接触が・・・。



【ヘルパースプリングの延長としてのツインスプリング】
最近のSwift アシストスプリング やハイパコ テンダースプリングはヘルパースプリングの延長としてツインスプリングを使うものです。
本当に遊びを埋めるためだけのヤワヤワバネよりもレートが上がるので合成レートを長く使いたいときはこういったものを使えます。
このバネは密着させて使う設計なので、先に線間密着を起こすようにバランスできるならこれもありですね。