2021年05月02日
チコさんのお店が閉店してから
3ヶ月が経った
チコさんとマスターが頑張って手作りした
店の外観や内装は瞬く間に変えられ
そこに美容室ができた
白いペンキと青い屋根に塗り替えられ
チコさんのお店は見る影もなくなった
この外観をチコさん見たら悲しむだろうな
もう3ヶ月経ったし、落ち着いたかな
そろそろ会って食事でもしながら
またチコさんと話がしたいな
そう思っていた矢先
チコさんからメールが来た
「ポンコツくん、元気にしてますか?
あれからもう3ヶ月
ポンちゃんに会いたい
こんなメールしてごめんね」
たった4行のメールだった
私は、何か変な感じはしたが、特に何も考えず
「お久しぶりです。お店の片付けや荷物の整理は落ち着きましたでしょうか?
マスターも腰が痛いのに片付け手伝いに行けずすみませんでした。
私はいつでも会えますよー
今度の金曜日夜とか、一緒に食事どうですか?」
するとチコさんから返事がきた
「お誘いありがとう(^o^)
とっても嬉しい。
でもマスターがまだ片付け終わらないみたいだから、もう少し待って、またマスターと話して日が決まったら連絡するね!またね!」
私とチコさんとのメールは
これが最後だった
後になってマスターから聞いた話だと
チコさんは閉店後すぐに治療に入った
抗がん剤を投薬して1週間後
アパートのお風呂場から叫び声が聞こえた
慌ててマスターが駆けつけると
チコさんが泣きながら出てきた
「私の髪の毛が。。。」
副作用で抜け毛がバサバサと出た
マスターはただ「大丈夫だから」と抱きしめるしかなかった
それから後は入院しながら投薬を続けていた
毎日病室から見える景色を眺め、味気ない病院食、食べても副作用で気持ち悪くなり、吐いてしまう事もあった
そんな毎日が3ヶ月続き、寂しくなった
私の子どもに会いたくて仕方なくなり
でも病名を私に話してしまったら、私は必ず病室に駆けつけるだろう
チコさんは前職が美容部員
お化粧し、美しく飾った自分を見せ続けてきた
ましてやスッピンだったり髪の毛の薄くなった
自分の姿を見せる事をとても嫌った
唯一面会を許可したのは、前の店のオーナーの
奥さんのみ。その奥さんが来る時でさえ
お化粧しカツラをかぶり
スッピンは見せなかった
だから昔のような健康そうな顔でなくなった
自分を見せる事で、逆に相手に心配させてるしまうのが、とても嫌だったのだ
チコさんは病室で毎日、
携帯で撮った私の子どもの写真を見つめ
「ポコちゃんに会いたい
早く元気になってポコちゃんを抱きしめたい」
そう、何度も言っていたそうだ
子どもの居なかったチコさんにとって
自分によく似た性格の嫁さんと
旦那によく似た性格の私との間にできた子どもを
まるで我が子のように思えて仕方なかったのだと
チコさんが亡くなった後マスターから聞き
初めてチコさんの深い愛情を知ったのだった
チコさんの様子を見るに見かねたマスターが
私に本当の事を話した方がいいんじゃないかと
チコさんに聞いた事があった
チコさんは、私に話したら私は必ず病院に駆けつける。多分毎日のように来るだろう
自分は嬉しいし、ポコちゃんにも会えるのは
嬉しいのだけど、抗がん剤を投与した日は
身体がつらくて、とても人と笑って会話できる
余裕がない。オーナーさんの奥さんと話したり、
会いにきてくれるという事すら
ストレスに感じる時もある
だからそんな余裕のない自分を
見せてしまうかもしれない
だから自分が死ぬまで言わないでほしい
そう、マスターに言っていた
マスターも何度もチコさんに黙って、
本当の病状を私に話そうと思ったそうだが
チコさんが毎日頑張っている姿を見ていると
それが裏切りになるようで言えなかったそうだ
「そうでしたか!
チコさんが元気ならそれでいーです!
マスターの片付け済んで空いてる日ができたら連絡くださいねー、ポンと一緒に駆けつけますんで( ^ω^ )
ではまた!ポンコツandポン」
こんな普通の返事がチコさんへの
最後のメールになってしまうなんて
私は全く予想だにしなかった
Posted at 2021/05/03 00:37:00 | |
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