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花火大会の時期になると思い出す


高校３年の夏

部活が終わり、皆が大学受験に向けて
勉強の毎日を過ごしている間
私は友達と組んだバンド活動に勤しんでいた
コピーバンドだったが、私のMCが面白いらしく
バンドの人気はうなぎ登りだった

街の小さなライブハウスは100人で満杯のところ
200人近くの若者で溢れていた
バンドブームという事もあり
街でギター担いで歩くのが
粋な男子だったのかも知れない

バンドのドラムを叩いていたのは
私の幼馴染。幼稚園から中学まで一緒
高校は違えど同じ陸上部だった事もあり
毎日陸上競技場で顔を合わせていたので
すんなりバンドメンバーに入ってくれた

そのドラムの高校仲間の中にその娘がいた
ライブに友達を連れて来てくれるたび
何度か会話した程度だったが

ボーイッシュで気さくな娘
ミス高校に選ばれた程可愛いい娘だった

その娘には彼氏がいて、到底私が出る幕はなく
顔見知りの友達という立場のままだった

やがて大学受験を迎えたが
案の定私とドラムの友達は不合格
浪人が決定した

浪人という世間から省かれた存在となった私は
ろくに一生懸命勉強したわけではないが
人生の絶望感というものを感じた

失意のなか、とりあえず始めたスーパーでのバイト

そのバイト先にその娘がいた

その娘は地元の短期大学に進学していたが
彼氏とは別れたらしかった

バイトの帰り、彼女を花火大会に誘った

答えはオッケー

初めて女の子と2人きりでの花火大会
楽しみで眠れない日が続いた

花火大会当日
彼女は浴衣で来た

黄色い浴衣にピンクの花柄
肩まで伸びた髪を上に一つにまとめ上げた髪型

とても似合っていた

緊張しながらも
人混みをかき分け、花火の見える場所まで向かった
ふと後ろを振り返ると彼女と逸れてしまった

すると、彼女が手を伸ばし
私の手を握ってきてくれた

2人で手を繋ぎながら見た花火大会

毎年思い出してしまう


その後どうなったかは後日談で。