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あの日流した母親の涙からの罪悪感から

私は就職するとともに母親に車を買ってあげた

日産セフィーロ

井上陽水のCMで一躍有名になったあの車だ


走行距離2万キロの状態の良い代物だった
お値段もそれなりだったが、ローンを組んで
購入した

初任給は大学の奨学金を返す金と
家に入れる生活費、それにこのローンで
自分が遊びに使える金は
雀の涙程度しかなかった

それでも買ってあげないと
あの日の罪悪感は拭えなかった

母親も父親も、この車を気に入り
姉の子どもを連れてドライブや
姉の転勤先栃木や千葉など
さまざまな場所に行った

数年後、ラジエーターとエンジンの調子が
悪くなり、手放さざるを得なくなったころには
既に15万キロを超え、外側の塗装も劣化し
クリア塗装が所々剥げかけているほどとなっていた

私はほとんど乗らなかったが
親がここまで大事に乗ってくれたというだけで

私は満足だった

ありがとう、セフィーロ

私が大学生の頃
実家に帰省すると乗っていた車

母親が所有していて
母親が週に何度かある総菜屋さんパートへの
通勤用に使用していた車だった

マニュアルで軽快なエンジン音

息子が隣町の友人宅や
海にドライブなどで使用するには
ちょうどよい乗り物だった

冬休み
まだ路面に雪がシャーベット状に残っていた頃

隣町の友人の家に遊びに行くため
ミラを借りた

ラジオしか聞けないため
ラジオを切り、アカペラで歌いながら
田んぼ道を運転していた

中学時代から大好きな尾崎豊の
曲を口ずさみながら
アクセルにも力が入り
まあまあのスピードだった

ゆるいカーブに差し掛かり
私は速度を緩めるため、アクセルを離した

カーブの途中で軽トラックとすれ違ったのだが
その軽トラックが後輪を滑らせながら
車線オーバーしてきた

あわててハンドルを切る私

対向車を寸前で交わしたのは良かったが
そのまま後輪がスリップし、車が真横になった

途端、道の端に山になっていた雪がジャンプ台となり

軽い軽自動車は田んぼの中に
ゴロゴロと転がった

2回転、いや3回転しただろうか

私は運転席で両腕を使い体制を維持した

やがて真横に倒れたまま車が止まった

ドアは助手席側のドアが上だった

やたらと重い助手席のドアを開け
潜水艦から出てくるように横倒しの車の上に出た

車はたんぼの真ん中まで転がっていた


ブウーーン
スリップしながら突っ込んできた軽トラックは
そのまま気づきもせず行ってしまった

これはとにかく通りがかりの車の人から
連絡してもらうしかないか・・・

やがて遠くからダンプカーの音が聞こえ
近くまでやってきた
「どうした、にいちゃん。スリップしたか？」

いかにもという感じの50代半ばのトラック野郎に
助けられ、実家まで運んでもらった

重機の会社に勤めていた親父に連絡すると
すぐに親父の会社仲間が重機と一緒にやってきた
クレーンで吊るし、トラックの背中に乗るミラ
前輪が真横になっており、ステアリングはボロボロだった

「あらら。こんなになっちゃって・・・」
一緒に見ていた母親の目に涙が


対向車のせいとはいえ、対応できるスピードではなかった
私の運転も悪いといえる


大学を出て就職し、まず最初に母親に車を買ってやった
ローンを組んでかってやった中古車

日産セフィーロだった

私が大学を卒業し実家に戻ってきた時

もちろん無一文だったわけで

就職し給料をもらい、車購入の資金が貯まるまで

姉が乗っていた車を譲り受けた

それがパルサーだった

黒いハッチバックのオートマだった
姉がいじったのかわからないが
ノーマルよりマフラーが太く、走りが良かったのを覚えている

就職してから2年間、このパルサーと過ごした

高校時代からつるんでいた仲間と海に行ったり
ナンパ旅行と称して山形までドライブに行ったり・・・

山形の山奥まで来て泊まることになり
友達と2人で車中泊にトライしたが、腰が痛くなり断念

男2人で山形市内のビジネスホテルに宿を取った
連休中で空いている部屋は一つ
ダブルベッドのみだった

近くの居酒屋で夕食を食べながら飲んでいると

隣で20代のギャル2人が飲んでいた

しかし、山形弁が濃すぎて何を言っているのか
聞き取れなかった・・・

あの・・さっきから話し声が聞こえてくるのですが
何を話しているのですか？

ギャル（あんたたちどこからきたの？）

新潟っす。男2人貧乏旅行で秋田目指して走っていたら
山形で夜になった、近くのホテル取ったら
ダブルベッドしか空いていなかったんだ

ギャル　（ぎゃははっ、おにいさんたち面白いねー）

ナンパするつもりはなかったのだが
そんな会話から盛り上がり、その後一緒にカラオケに行った
男2人して盛り上がりすぎ、カラオケで泥酔
その場でお開きとなった（お持ち帰りできず）

結局野郎2人で場所を取り合いながら、ダブルベッドで寝た

しかし続きがある

その娘たちはとてもよい娘で
翌日に山形市内を観光案内してくれた

美味しいラーメン屋さん、ソフトクリーム屋さん
市内出身芸能人の実家、車が入れる海岸など案内してくれた


パルサーで思い出すのは
山形で出会った2人のギャルとの思い出だ

そんなハワイアンの帰り

どうせなら喜多方ラーメンを食べて帰ろうと
峠道を走った我が家を載せたミラージュ

親父なりに峠を攻めたのだろう

唸り声をあげるエンジンで
次々とカーブを曲がった

やがて峠を越えて喜多方市内に入った

中心部のラーメン屋を目指したのだが
峠を越えたばかりの郊外で車に異音が

ボンネットから湯気？煙が出た

すぐに車を止めた

場所は郊外のラーメン屋の前
道を挟んで反対側に小学校があった

車を降りると、小学校の音楽室から
その時にピッタリな曲が流れた
ベートーベンの「運命」だった

チャララー♬、チャララリ　ラーラー♪

なんというタイミングだ
一生忘れない瞬間だった・・・

近くにガソリンスタンドがあり
そこのニーチャンが対応してくれた
冷却水の漏れでオーバーヒート寸前だったようだ

なんとか応急措置が施され
時速80キロ以下で帰り、途中で冷却水を補充しながら
走れば帰れるとなった

一安心したところで、目の前のラーメン屋に入った
家族連れとのことで、客席ではなく、奥の居間に通された
なんとも生活感のある居間でラーメンを食べたのだが

その味が、これまで食べたラーメン史上最高に美味かった
・・・と言っても8歳くらいの記憶だが・・・

あれから何度か喜多方にラーメンを食べに行き
その店を探すのだが、小学校もラーメン屋も見つからない・・・
異世界だったのか？

結局ミラージュはその半年後

親父が事故って廃車となった

それ以後、我が家では赤い車にすると
興奮して乱暴な運転になり事故るからという理由で
禁止となった

親父が手に入れた中古カー
ミラージュ

その年の夏の家族旅行は福島だった
今はスパリゾートハワイアンズと洒落た名前で
内装もプールもリニューアルし盛況だが

当時は常磐ハワイアンセンターという
なんとも昭和感漂うリゾートスパだった

それでも当時子どもだった私にはパラダイスのような
楽しさだったことを覚えている

プールで遊び、夜は眠い目をこすりながら
ハワイアンダンスを見た

親父は酒に弱く、夕食後酔いつぶれて寝てしまった

私は当時小3くらいだったか？
母親と姉と一緒に女子風呂に入った
夜も遅かったのか、お風呂場には私たち家族しか
いなかったのだが・・・・

その後一仕事終えたフラガールたちが入ってきた

「わあ、可愛い」
当時まだ女の子と間違われたほどのワタシ
可愛い男の子に見えたのだろう

大勢のフラガールに囲まれて恥ずかしくなって
すぐにお風呂から出たのを覚えている

あれ？ミラージュの話じゃないか