
以前書いたエアブラシ補修の記事ですが、目に見えた反響こそ少なかったものの、PVレポートでは長らく歴代1位のアクセス数があり、密かな感心の多さに驚きでした。参考になっているかどうかはわかりかねますが(汗)
その後別車種で試行錯誤するようになって色々と問題点が出てきまして、最初は追補版を書くつもりでしたが、改めて読み直してみるとあるゆるところで書き足したい部分があり、この際なのでまとめて改訂版として書き直しました。
最近は他でも車でのエアブラシ補修の記事をちょこちょこ見かけるようになってきましたが、参考になれば幸いです。
(注)アホみたいに長いです…
■メリット
タッチペンでは大きすぎ、且つスプレーだと小さすぎる傷の補修、これに尽きます。タッチペンで大きい傷を補修すると、どうしても筆ムラが出てフラットになりません。そして、パールやメタリック塗料だと上塗りでクリアを塗ることになりますが、このクリアの粘度が高くて塗りにくく、普通の色以上に盛り上がりやすい。
その点、エアブラシではクリアでも薄くフラットに塗れますし、塗膜が弱いところにクリアだけ吹くという使い方にも重宝します。
また、タッチペンだとどうしても傷の周囲の縁が残ってしまいますが、エアブラシならスプレーと一緒でぼかせます。この傷の境目がぼやけるだけでも目立ち方が全然違いますから。
さらに、小さい傷であれば薄く塗り重ねていきながら調整ができるので、失敗もしにくいです。
逆にスプレーで小さい傷を補修すると、マスキングだらけで大げさ且つ面倒です。
構造上ONかOFFの動作しかないので、吹き付け量をコントロールするのは難しく、また、吹きつけ量が多いため、うまくやらないとマスキング剥がしたら段差が出来ていることも。
マスキング無しで細かく調整して吹けるのはエアブラシならでは。
加えて、(深く踏み込めば)調色などの細かい調整も可能。ここまで本格的に考えてる人なら、こんな初歩的な解説は不要でしょうが…。
ちなみに、私のカリーナEDは前期パール(046ウォームグレーパールマイカ)ですが、この色は本職の方でも手こずる難しい色。下手な工場に頼むと全く色合いません。このカラーの登場時、ディーラーで板金塗装工場向けの講習会を開いていたという話を元営業の方から聞きました。
タッチペンだとそれなりに色が合うんですが、スプレーだと致命的に色合いません(泣)
スプレー塗料が濃すぎて、一目で色違いがわかってしまうほど。これがエアブラシなら結構緩和できます。調色すればさらに合わせられるんでしょうけど、そこまで器用ではないので(汗)
ボディ以外にもホイールにも使ってますが(ホイール用塗料、普通のシルバー)、こちらも厳密には色が合っていませんが、前述のパールに比べれば全く気になりません。
■デメリット
道具が高い、慣れが必要、作業に時間がかかる、この三点に尽きます。
コンプレッサーまで揃えれば大体2万にはなります。コンプレッサーをエア缶で代用する手はありますが、思いの外エア缶はすぐ無くなるし、中身が少なくなるとエア圧が安定しないデメリットも。私も最初エア缶使っていましたが、結果的に高く付くのですぐにコンプレッサーに買い替えました。
このためだけに買えと言われれば躊躇しますよね。模型でもやらないと他の使い道もないですし。
逆に、既に模型やってて道具お持ちの方は是非と思います。言われるまでもなく試していそうですが(汗)
ちなみに、私はこのためだけに買ってしまいました(汗)
また、毎回使ったあとに洗浄するのも結構面倒です。洗浄用のシンナーのコストもかかりますし。
■エアータッチとの違いは?
今は同じコンセプトのエアータッチやエアープラスというのが出ています。使ったことは無いので詳しいことは書きませんが、ネットの声を拾ってみると、やはり微調整は難しい模様。タッチペン塗料を原液のまま吹き付ける形なので(オーダー色除く)、エア圧も高いはずです。長く大量に使うならコストも嵩んできます。
何より一番困るのが、クリアが吹けず、専用仕上げスプレーで塗るしかないこと。このスプレーはある程度塗料剥がしにも使えることから、シンナー成分の多いボカシ剤に近いもののようです。
クリアが吹けず、結局スプレーに頼らないとならないのは個人的にちょっと抵抗あります。
■塗料について
タッチペンかスプレーの塗料をベースに希釈することになります。これらの塗料はニトロセルロース塗料、いわゆるアクリルラッカー塗料になります。
これを模型用のうすめ液で希釈しますが、注意点としてはホルツの塗料はこの希釈にクセがあるようです。色によるそうですが、うまく希釈できなかったのか、自分自身でも塗面が妙に曇ってしまった経験がありました。
車用の補修用品はソフト99とホルツが二大勢力ですが、どうもこの二社では塗料の成分が微妙に違うようで、使い勝手が異なります。
実車用塗料を車の模型に用いてる方も多いそうですが、そういった方たちもホルツの塗料ではシンナー成分が強いためにプラスチックが浸食されたり、塗面が縮んだりでうまく行かないようです。後述しますが、塗料を希釈したためにクリアを塗るときに塗料が滲む問題があり、その意味でもシンナー成分が強いホルツのものは使いにくいなと感じました。
ちなみに、エアブラシではなくタッチペンをそのまま塗ったときの話ですが、ソフト99のバンパープライマーにホルツの上塗り塗料の組み合わせで何度か使ったところ、妙に剥がれやすかった経験もあり、メーカー混在の組み合わせもオススメしません。
なので、NAロードスターのネオグリーンの補修時を除いて私はずっとソフト99の塗料を使っており、この記事もソフト99のものを前提に書いています。
うすめ液はクレオスから出ているMr.カラーのうすめ液(模型店や量販店の模型塗料コーナーにあります)を使用。成分は合ってますし、実際初期の補修傷はもう10年ものになりますが、特に問題出てないので大丈夫です。
ちなみに、エアブラシ用のレベリングうすめ液もありますが、乾燥時間が大幅に増えて作業しにくい割には仕上がりは大して変わらないので、通常のうすめ液がオススメです。
一度だけ試したことがありましたが、屋外作業しかできない方、車を頻繁に使わないとならない方には作業時間が長くなりすぎる意味でNGだと思います。
ちなみに、ホイールを塗るときはホイール用タッチペンとスプレーが出ていますから、これを使います。ただ、ホイール用タッチペンは現在シルバーとゴールドの2色しかないうえ(以前は6色くらいあったのに…)、なかなか置いてる店もないので、取り寄せが手っ取り早いです。
最近凝った塗装色のホイールが多いですが、ああいうものだとボディ用で近似色を探すしかありません。光沢の強いハイグロス塗装もなかなか難しいと思います。
また、エアブラシの洗浄用のシンナーも必要になります。これも同じMr.カラーのツールクリーナーを使用。これは車に直接使うわけではないので、車との相性は関係ありません。
ちなみに、間違ってこれで塗料を希釈して吹き付けると悲惨な仕上がりになってしまうので、くれぐれもご注意下さい(経験者が語る…汗)。
■ハンドピースについて
車に使うにはノズル口径0.8mm以上のものがいいと聞いたものがありますが、タッチペン+α程度の小さい傷の補修ならよく売ってる0.3mmのもので十分対応できます。
私はタミヤのダブルアクションタイプで0.3mmを使ってますが、この辺の選択は使いたい傷の大きさによって変わってきます。但し、さらに小さい0.2mmだと実車にはさすがに細かすぎるかと思います。
コンプレッサーやエア缶は予算に応じたお好みでどうぞ。
■下地処理
傷に凹みがある場合、スプレーと同じでパテで埋めてから塗ることになります。
但し、パテを使うと、その後上塗りするプラサフの色を塗料で覆い隠さないとならず、当然その分塗膜が厚くなって元の塗面から盛り上がりがち。広範囲のスプレー塗装ならともかく、小さい部分塗装で患部に厚塗りすると、すぐに傷口が盛り上がってしまいます。
そこで私が多用するのが、浅くて小さい傷ならタッチペンの塗り重ねをしてパテ代わりにする使い方。これだと同色の塗り重ねになるのでプラサフがなくても色が透けることがなく、タッチペンの仕上げに薄く吹くだけで済むので作業が楽なんです。
そもそもプラサフの役割というのは…
・下地色の隠蔽
・パテによる塗料の吸い込みを防ぐ
・パテでは埋めきれない微妙な凹凸を埋めてフラットな表面仕上げにする
・地肌と塗料の密着度を高める
・地肌から空気を遮断して防錆する
という点になります。
前述のように、同色同士の塗り重ねになるので下地色の隠蔽は気にする必要がなく、パテのように上塗りする塗料を吸い込んだり、(うまく塗って研磨できれば)面が粗くて仕上がりがフラットにならないようなこともありません。若干の凹凸が出てもエアブラシで吹いてしまえば埋めて誤魔化せますし、そもそもタッチペン+αの面積ならそう気になるほどの凹凸は出ないでしょう。
密着性に関しても、タッチペン+エアブラシなら同じ塗料同士での塗り重ねになるので問題なく、もし鉄板が露出した傷口の場合は筆塗りタイプのサビ止めペイント(タッチペンの下塗り塗料として使用可)、バンパーの素地が露出した場合は同じく筆塗りタイプのバンパープライマーを下塗りすることで傷口と密着させられます。
残る防錆についても、その名の通りサビ止めペイントが防いでくれるので全てにおいて問題なし。
パテだとプラサフでの仕上げが必要ですが、タッチペンならプラサフ抜きでダイレクトにエアブラシに入れることになります。
さらに、パテだと塗料より固いので荒い番手のヤスリを用いた研磨が必要ですが、タッチペンだと1000番以上の番手で済むので研磨作業が楽で傷口にも優しく、何度も重ね塗りしながら高さを調整できるので研磨量も少なく済み、むやみに補修範囲が拡大することもありません。
但し、タッチペンは一度に厚塗りは厳禁で、薄く何度も塗り重ねた挙げ句(インターバルは最低20分間隔)、水研ぎまで一日以上は置かないとならない(理想は一週間)ため、その意味では手間と時間がかかります。
パテの成型は素人にはなかなか難しく(私自身も苦手)、手間がかかってもタッチペン成型の方が綺麗に仕上げやすいので、私は好んで使う手法です。
そして、本来のパテ+プラサフを使う場合。
タッチペン+αの用途で使うなら扱いが難しいところです。
というのも、プラサフも塗料同様にエアブラシで吹き付けることになりますが、タッチアップと違って傷口の周辺まで塗ることになってしまい、その分研磨量や研磨面積、塗装範囲も増えてしまうため、どうしても補修範囲が広がってしまいます。色合わせの難しい素人の部分塗装なら補修範囲が小さいに越したことはなく、そこはなるべく小さく抑えたいところ。
そこで、小さい傷であればエアブラシを使わずに筆塗りでピンポイント仕上げする手もあります。あいにくソフト99だとプラサフはスプレーでしか出ていないため、スプレーの中身を塗料皿に取り出して筆塗りすることになり、スプレー用なので粘度が低くて塗りにくいのがネックなんですが。
ちなみに、ホルツだとプラサフのタッチペンも出ていますが、塗料の項目で前述したようにソフト99とは塗料の成分が異なっており、メーカー違いの塗料を組み合わせて使うのはリスクがあるので選択肢として除外しました。
その他、浅い傷口であればプラサフだけで埋めてしまう手抜き?方法もやったことがあります。
筆塗りで粘度の低いプラサフを重ね塗りするのは面倒かと思いますが、パテより削りやすく、タッチペンほど乾燥時間も要らないので、その点はお手軽。
但し、プラサフは塗膜が弱く(厳密には塗料ではなく、パテを溶いたような物)、完全硬化しても柔らかくてちょっと脆いです。厚塗りしすぎると剥がれの原因になるので、浅い傷限定のちょっとイレギュラーな方法です。
■タッチペン塗料
多分車用に使うのに一番悩むのがここ。塗料の希釈です。メーカーの説明など当然ありません。ググっても具体的な希釈率まで書いているサイトは少ないですし。
私の試行錯誤の結果では、2.5倍(塗料1に対してうすめ液1.5)程度が最適解でした…と今まで書いていましたが、それは色によると言うことがわかったので訂正します(汗)
カリーナEDの前期パール色、046ウォームグレーパールマイカでは基本的に色が濃い目だったため、やり過ぎない程度に薄めて2.5倍でしたが、NCロードスターの34Kクリスタルホワイトパールマイカで2.5倍にすると、明らかに黄色味がかったクリーム色風味に。
これではあまりに色が合わないので希釈率を下げていったところ、面白いくらい黄色味が落ちていき、1.5倍で気にならない真っ白さになりました。希釈が多すぎると黄ばむというのは不思議な現象でしたが、ダンボールに試し吹きしても同じ結果なので、やはりシンナー成分の量が原因のようです。
なので、1.5倍の希釈率を基本として、あとは試し吹きで色合いを見ながら2.5倍までの間で調整すればいいかと思います。この範囲外だと濃すぎ、薄すぎで作業性に問題が出てくるかと。
この希釈率というのは個人差があって難しい要素でして、個人の使い方(クセ)によって変わってきますし、エア圧やノズルの開度、ハンドピースと塗装面の距離も絡んでくるので一概には言えませんが、大まかな目安にはなると思います。
模型の世界だとラッカー塗料は希釈率2~4倍(塗料1、うすめ液1~3)と言われており、私の設定は濃い目になりますが、車用のタッチペンはダマを防ぐために比較的薄めの粘度になっており、また実車用途だと塗膜の厚さや強度が求められること、吹きつけ回数の作業性(薄めだと重ね塗りが多くなって手間も難易度も上がる)なんかを考慮すると、この辺がバランスいい気がします。
事実、前述の34Kクリスタルホワイトパールマイカでは、希釈率を下げていくとはっきりと色が乗せやすくなりましたので、濃い目の方作業は楽だし、難易度も下がると思います。
ちなみに、一度誤って原液で吹き付けたことがありましたが、塗料が詰まり気味で非常に塗りにくく、出てきてもブツブツ音が出て非常に塗りにくい状態。糸を引いたような状態で塗料が出てきたこともあり、典型的な塗料が濃すぎる症状です。
そのうちハンドピースの中が塗料で詰まってきて、断続的な噴射になったりと、酷い有様でした。
さらに塗面も明らかにザラザラで、梨地塗装のような状態。諦めてスプレーシンナーで剥がしました(汗)
逆に薄めすぎて粘性がなくなり、塗った後に爪であっさり塗料が剥がれたことも。薄めた方が薄塗りはしやすいし艶も出しやすいですが、やり過ぎると塗膜強度に問題が出来ます。
後述するように、希釈しすぎると色が溶けて滲む問題もあり、濃すぎなのは論外としても、基本は濃い目の方が安全です。
この辺は調整幅あるように見えて、意外にデリケートです。本職レベルになると気温や湿度でも希釈率は変動するそうですし、計量カップを用いても誤差は結構出てしまうので、目安はあっても厳密な数字はケースバイケースです。
まずは新聞紙やダンボールにでも試し吹きをして感覚を確かめてみて下さい。
■スプレー塗料
もう一つ、スプレー塗料を使う手もあります。
希釈塗料を作る作業的な意味ではタッチペン塗料の方が楽なんですが、塗料単価がかなり高く付きます。タッチペンの正味量は12ml、スプレーは300ml、それでいてスプレーはタッチペンの二倍の単価しかありません。スプレーの場合は缶から抜き出すときのロスがあるので実際には7割も出せれば良い方ですし、タッチペンの方が希釈量が多いのでさらに差は縮まりますが、それでも4倍以上の圧倒的な単価差です。
さらに、ホイール用のクリアなど、タッチペンでは手に入らない塗料もあり(昔は売っていたんですけどね)、逆にスプレーではラインナップされていない色も多く(NCロードスターのクリスタルホワイトパールマイカもそうです)、結局両方使わざるを得ないというのが現状です。
スプレー塗料だとタッチペンよりもサラサラなので希釈が必要ないようにも思えますが、スプレーの場合はエアブラシよりエア圧が高く、ノズルも大きいので、そのままではタッチペンほどではないにしろ、濃度が高すぎます。原液で吹いても明らかに詰まり気味でした。
こちらの希釈率に関しては、クリア塗料で試したところ、1.25倍が最適解でした。
これもタッチペン塗料と同様、色によって前後すると思いますので、試し吹きしながら調整するといいと思います。
■希釈作業
模型での塗装経験などがないと意外に困るのが塗料の希釈作業。
必要なのは、塗料スペアボトル(できれば目盛り付き)、計量カップ、計量スポイト、調色スティックの4点です。これらは全て模型店で揃います。
まず、タッチペンを希釈するときは新品を使うことをオススメします。使い古しだと、塗料の揮発で塗料が濃くなり、希釈率がまた変わってきますので。
私の場合は計測が面倒なので、新品タッチペンをよく振ってから一気にスペアボトルに移し替えます。タッチペンの中に入ってる撹拌用の小さな玉も便利なのでそのまま移します。
そこに計量カップに抜き出したうすめ液を混ぜるわけですが、タッチペンは新品であっても在庫期間が長いと揮発するため、パッケージ記載の12mlがキッチリ入っていないとは限りません。目盛り付きのスペアボトルだと大まかに計測できるので便利でいいです。
あとは蓋をしてよく振り(撹拌用の玉を移し替えている場合)、さらに調色スティックでよくかき混ぜ、そしていよいよハンドピースの塗料カップに注ぎます。重ね塗りで時間を置くときは、再使用時に調色スティックで塗料カップの中を撹拌することをお忘れ無く。
使い終わったら保管するわけですが、長期保管だとどうしてもシンナーが揮発して濃くなりますので、時間が経ちすぎていたら要注意。塗料が明確に少なくなっているなど、明らかに様子がおかしければ、作り直した方がいいです。
そして面倒なのがスプレー塗料の希釈。
スプレーの場合、全量抜きだしは難しく、作っても全部は使い切れないことから、その都度作ることにしています。
スプレーから計量カップに直接抜き出すわけですが、このときストローをノズルにはめ込んでセロテープで適当に固定し(多少の隙間は空いていても構いません)、そこから出すようにするととても楽です。
もちろん、抜き出す前は缶をよく振るのをお忘れ無く。
で、ここからが厄介なんですが、スプレーの場合は塗料にガスが混じり、泡が大量に出ます。また、抜き出し直後は熱交換された塗料が急速に冷えていき、計量カップが結露して盛大に曇るため、目盛りを見るのも大変(目盛りにマスキングテープを貼っておくと見やすいです)。
このままスペアボトルに保管すると、ガスが爆発してえらいことになるため、ここでガス抜きをするのがセオリーなんですが、私の場合は塗料を保管せずにハンドピースに移し替えて使い切っていたので関係ないと思っていました。
ところが…、このガスが悪さをするのか、クリアをこのやり方で吹くと、若干黄ばむことが判明(汗)
ガスで塗膜が酸化したのか、或いはガスの混入で塗料が実際より多く見えたため、うすめ液を本来より入れすぎてしまって希釈率が上がってしまったのか…、とにかくガスは必ず抜いた方がいいです。
ガス抜きするのは簡単です。抜き出した塗料にホコリ防止のためにマスキングテープなどを貼って簡単に蓋をして(密閉すると爆発するので、このくらいの適当な蓋でいいです)、一晩放置するだけ。
あとは泡もなくなってすっかり大人しくなっていますので、そこにシンナーを混ぜて調色スティックで撹拌します。
但し、一晩経つとガスが抜けて塗料が思いの外減っていますので、欲しい量より多めに抜き出した方がいいです(例えば、4ml欲しいなら6ml以上は欲しいところ)。
ちなみに、使い切りサイズで塗料を少量抜き出すと、希釈のシンナーも少量になり(タッチペン+α程度の補修なら塗料4ml+うすめ液1mlの希釈で十分でした)、計量カップで計測するのは難しくなるので、ここで計量スポイトの出番です。
あとはタッチペン塗料と一緒ですね。
■エア圧
エアブラシでもう一つ重要なエア圧ですが(コンプレッサーの場合)、私は1.0kgf/㎝2が最適解でした。エア圧を大きくした方が霧が細かくなって綺麗に仕上がりますし、塗料の希釈も少なく済むはずですが、反面でハンドピースとの距離を置かないとならないので小面積の吹きつけは難しくなり、塗装範囲周辺のスプレーダストも増加、ハンドピースの細かなコントロールも難しくなります。
これも使い方や塗装面積にもよるので、人によるとしか言いようがありません。ベテランの方ならケースバイケースで使い分けしますし、エア圧を高くして塗料を少なめに吹けばぼかし塗装ができるなど、テクニックの一要素にもなるようです。
■クリアの吹きつけタイミング
最近はまったのが、このクリアをどのくらいのタイミングで吹き付けるか?です。
久々にクリアのスプレーを買ってきたところ、パッケージが若干変わっており、カラーの塗装後2~5分後以内に吹くようにと書いてあったんです。
それまではタッチペン感覚で下地のカラーを塗ってから一日置いてクリアを吹き付けていましたが、スプレーやエアブラシならタッチペンより乾燥時間は短いですし、半乾きで塗った方が定着も良くなるんだと思ってこの方式に切り替えたのが運の尽き。
クリア乾燥後にコンパウンドで研磨したら濁ったような色合いになってしまい、パールのように塗料の希釈率のせいでこうなったのかと思って何度も試行錯誤。
結果、犯人はこのカラーとクリアのインターバルの変化でした(汗)
スプレーと違ってカラーもクリアも希釈しているわけで、お互いにシンナー成分が残っている状態。そのシンナーが乾燥して抜けきらないうちに吹き付けるとシンナー同士が仲良しになって結合してしまい、塗料を溶かすわけですね。
つまり、短い間隔でクリアを吹き付けることで下地のパールが盛大に溶けてしまい、それがクリアの中に滲んで濁ったような色合いになってしまったと。
夜、ライトで照らすとクッキリ塗装範囲が濁って見えて、ああなるほどと思いました。本来下に沈むべきマイカが表層まで出てきてしまい、一部のマイカだけが過剰に反射してまばらで不自然で並びです。
スプレーをそのまま使う場合、希釈など全くあり得ない要素ですから、スプレー塗装用の説明書きに従っても条件が違いすぎて思わぬ結果が出てしまうんですね。イレギュラーな使い方の辛いところです(汗)
ちなみに、短い間隔とは言っても、塗料の入替のための時間もあり、30分程度は空けていたんですが、それでも全く足りていなかったようです。
ただ、この現象については作業中に自覚症状もありました。
前述のように30分程度の間隔を開けてクリアを吹くと、同時に塗りたてのパールがいい感じに馴染んでぼけていき、はっきりと傷口の輪郭が目立たなくなっていったんです。そのときはこりゃいいやと思っていたんですが、まさか塗料が溶けて濁ってしまったとはつゆ知らず…。
というわけで、以前のようにインターバルは一日空けました。
この場合、カラーとクリアの塗料の定着は?と思いましたが、クリア吹きつけ前に脱脂だけして塗布しています。研磨して足付けする説もありますが、メタリックやパールで研磨をするとマイカの並びが崩れてしまって色が台無しなこと、同メーカー&同種類の塗料であれば定着に問題ないと判断したためです。
ちなみに、初期のエアブラシ補修跡を見てもクリアだけ剥がれたようなことは一度もありません(タッチペン補修跡も含む)。剥がれるとしたらカラーごと一気に剥がれるパターンですね。
さらに、念には念を入れて簡単に捨て吹きもしました。
最初に吹くクリアをレバー半開で薄~く一吹きして膜を作り、下地が溶けないようにクッションを挟んであげる形です。この後は通常の吹き方でクリアを塗り重ねていきます。
もっとも、そこまでやっても若干溶けた様子はあったので、全く溶けないのは無理のようです。
傷口の輪郭がぼけずに残ってしまったのも残念ですが、全体の色が濁ってしまっては元も子もありません。
そして、ここまでやっても塗装範囲の色違いは残っていました。
下地のパールの色違いがあるので、いくらクリアが透明になってもある程度の色違いは残るんですね。
さらに、ソフト99の通常のクリアだと、塗料自体にもかすかな黄色味があり、クリスタルホワイトパールマイカのような明るい色だとそれが目立ってしまいます。
色合わせはもちろんのこと、塗料の吹き方でマイカの並び方や隠蔽率を調整し、前述のように希釈率でも色が変わり、さらに組み合わせるクリアによっても色合いが…と、気が遠くなるような調色作業。
パールやメタリックの部分塗装は本当に難しいです。
■ウレタンクリア
最近流行のウレタンクリア、塗膜が固くて艶や透明度でも有利という大きなメリットがありますが、反面で2液性のために反応させたら最後、一度で使い切らないとならないデメリットがあります。(ソフト99のものなら)一缶3000円近いのでこれは痛い(汗)
タッチペン+α程度の傷でそこまでコストをかけるのは勿体ないので私は使っていません。
また、失敗してもシンナーで気軽にやり直しができないのも個人的にはデメリットです。その分塗膜が強固なわけですが、不器用人間にはやり直しできないというのはとても大きなリスクです(汗)
ちなみに、10年物のエアブラシ補修跡を見ても、クリアが剥げたなどの経年劣化はないので、大きな面積でなければ通常のクリアであっても耐久性はそう気にしなくてもいいと思います。
もちろんエアブラシでもウレタンクリアは使えるわけですが、その場合ハンドピースの洗浄は徹底的に。強力な塗料だけに、万が一残してしまったら除去不可能です。
塗料によって希釈や洗浄は専用のシンナーを用いるので、その点も注意が必要です。シンナーが強力すぎる場合、ハンドピース内部のパッキンを痛めて寿命を縮めることも考えられますので、色んな意味でお手軽とは言い難い面もあります。
■ボカシ剤
スプレー補修だとボカシ剤が出てきますが、エアブラシならそのまま吹くだけでも多少のボカシにはなりますし、クリアを吹くことで下地色が多少馴染んでくれる現象もあります。腕があればエアブラシの吹き方でもボカシ塗装ができます(私は出来ません汗)。
塗装範囲周辺のスプレーダストのザラザラも、圧の弱いエアブラシなら大したことがないので乾燥後のコンパウンド研磨だけですぐに艶が出せますし。
また、タッチペン+α程度の傷口や、車の補修ではよくある細長い傷口の場合、傷口周辺のぼかしたい範囲だけにボカシ剤を吹き付けるのは物理的に難しいという問題もあり、ここは面積の広いスプレーとは同一に考えられない部分です。
ボカシ剤の使い方を見ると、塗装後1~2分後に塗れとありますが、そんな短時間でハンドピースの塗料チェンジはできないため、そういう意味でも不可能(複数のハンドピースがあればできなくはないですが…)。
そもそも、ボカシ剤というのは塗装周辺のスプレーダストを溶かして元の塗装と馴染ませ、それで色違いを目立たなくする物です。そのため、ぼかした境目はどうしても塗膜が薄くなり、最初はよくても年数経過で境目がくっきり浮き出てしまうなどの問題があり、パーツの分割ラインがないルーフやピラーなどの部位はともかく、部品一本塗りができるバンパーなどの場合はいつもそちらを勧められました。
そういった経緯があるので、私自身出来ればボカシ塗装は避けたいという考えです。
但し、クリアの吹きつけタイミングの項目でも書いたように、間隔を置かずにクリアを塗った場合、下地の滲みはともかくとして、傷口がぼけて目立たなくなったのはありがたい現象でした。滲みによる色の濁りで塗装範囲全体が目立ってしまったものの、傷口そのものは綺麗に馴染んで目立たなくなったのです。
さらに前述のエアータッチの専用仕上げスプレーはボカシ剤のような役割だという話もあり、塗装範囲全体にボカシ剤を吹き付けるのはアリだと思って考えてみました。
しかしながら、塗装を溶かすと言うことは、ボカシ剤の成分の大半はシンナーです。そこに若干のクリアを混ぜたような感じ。
希釈した塗料を使っただけでパールの色味が変わったり、クリアが滲んだりして痛い目に遭ったので、そんなところによりシンナー成分の強い物を吹き付けたらまた溶けすぎてえらいことになりそうです(汗)
いくら傷口が馴染んで目立たなくなっても、その若干のクリア成分によって滲んでしまい、塗装範囲全体の色味が変わっては台無しですからね。
さらに、エアータッチの場合、通常色は希釈無しで吹き付けますが、オーダー色に関しては1.25倍ほど希釈が必要らしく(成分が違うそうで)、その場合は専用仕上げスプレーは使えないので、エアータッチ用ではない通常のスプレーのクリアを塗って、その後ボカシ剤を用いて下さいとメーカー説明にありました。
つまり、希釈塗料にボカシ剤を使うなと言うことです。結局ボカシ剤も専用仕上げスプレーも、原液塗料に使うのを前提の成分なのでしょう。
塗装面をある程度乾燥させてからシンナーを薄く吹き付けたりすれば、うまくボカシ効果だけを得られるかも知れませんが、不器用人間がそこまで攻めたら泥沼確定なので、そこまでは試しませんでした(汗)
■色が合わない
ここまでがんばっても、結局は色が合わないという致命的な問題に突き当たります(汗)
特にメタリックやパールで顕著で、これを部分塗装で色を合わせるのは本職でも難しいわけですから、素人にそうそう出来るはずがありません。
せっかく調色も出来るエアブラシ、そこでがんばればもう少し良い仕上がりになると思いますが、残念ながら私にはそこまで不可能…。
ただ、仮に色合わせが出来たとしても、メタリックやパールの場合は塗料の中に含まれているメタリックやマイカの並びを合わせられず、それで見え方が全く違う色になってしまいます。
私の車はどちらもパールですが、それで嫌と言うほど思い知らされました。
片方のクリスタルホワイトパールマイカの場合、補修部分に正面から光を当てるとなかなかいい発色具合で(入射光と視線の角度が近い正面色)、これならタッチペンより絶対目立たない!とにんまりできますが、入射光に対して角度をつけて少し影になるように見ると(すかし色)、角度によっては途端に黄色味がかって見えてしまってしょんぼりでした。
※参考
整備手帳(
追加写真編もあります)
マイカやメタリックの光の反射によってこうも差が出るわけですが、市販の補修塗料だと、その見え方の差が激しく感じます。
クリアの吹き付けタイミングのところでも書きましたが、マイカやメタリックの並びというのは塗料を吹くときの角度やエア圧、塗料の濃度(希釈率)によって全く変わります。並び方だけでなく、隠蔽率や目の粗さ、均一さ、色の濃さが変わり、全く別の色になってしまうのです。
ましてや、それを正面やすかし等の多様な見え方でそれぞれ色を合わせないとなりません。
さらにクリア自体も完全な無色透明ではないので、色んな意味で新車塗装と元の発色を出すなど至難の業。
本来パール塗装の場合はベースカラーにパール・マイカベース、クリアの3層構造ですが、ソフト99の塗料はベースとマイカが一体になって2層構造になるため、余計同じ色にならないんだと思います。
この点、ホルツのパールは下塗りと上塗りのパールに分かれた3層構造を再現しているので、これなら…とも思いましたが、逆に私の腕では使いこなせないと思って諦めました(汗)
いくら3層構造であっても前述のように吹き方次第でどうにでも変わるわけで、道具も腕もはるかに優れる本職でさえ難しいというパールの色合わせが素人にうまくできるとは到底思えません。塗る手間が一度増えて、下塗りパールの重ね塗り回数で色を調整し、その二種類のパール塗料を同じ範囲に塗り重ねて、シンナー成分が強くて希釈するとクセのあるホルツの塗料を滲まないようにうまく吹いて…、う~ん、腕がない以上、シンプルなソフト99の方がまだうまくやれそうだと感じました。
あれこれ書きましたが、マイカの並びまで素人が上手くやるなど不可能なんですから、なるべく補修範囲は大きくせず、仕上がりには多少目を瞑りながら面積を最小限に留めて目立たなくさせるのが素人補修の肝だと思います。仕上がりを良くするために傷口の周辺にも手を入れて剥がして…というのは(それが出来るのは)腕のある人の話。
ある程度の面積を綺麗に仕上げたいなら、大人しく工場に出すべきかと思います。色々弄りすぎてから出すと、素人補修のリカバリー分、料金も高くなってしまいますし。
大幅加筆で相当長くなってしまいましたが、こんなところでしょうか。
文字情報にできるノウハウはこんなところなので、あとは慣れるしかありません。
残念ながら、練習を重ねることでしか得られないコツというのも沢山あります。
何だかやればやるほど完璧な仕上がりを求めてしまって、でも素人が出来る範囲には限りがあるので、その見極めが難しい。私は「タッチペン+α程度、手間の割に綺麗な仕上がり」という考え方で割り切っています。直すと言うより如何にうまく誤魔化すか。
腕も道具も、所詮は素人レベル…(汗)
自分でやっていると、板金塗装屋さんの凄さが身に染みてわかりますし、あの料金設定も納得ですね。下手に値切って手を抜かれ、天ぷら修理(目先の仕上がりだけを優先するやっつけ修理、時間が経ってから残念なことになる)される方が怖いです。
ただ、そういう本格的な補修を頼むまでもない小さな傷というのも日々乗っていると山ほどありますし、車が新しいうちは補修範囲を最小限に留めて強靱な新車塗装をなるべく残したいところ。そういう小さな部分だけ自分でうまくやれると便利だと思います。
そのような使い方のお役に立てれば幸いです。