
東証と大証の経営統合がとうとう合意に至った。
日本の証券取引所のグローバルベースでの競争力が強化されることは日本企業および投資家にとって歓迎すべきことである。そこで今回は世界における日本の証券取引所の立ち位置や事業内容について確認しておく。
■世界の証券取引所の収入は右肩上がり
まず、世界の証券取引所全体の収入状況であるが、これは右肩上がりで推移してきている。特に取引による収入増が顕著である。証券取引所にとってはいかに取引量を増やすかが重要なのである。これが取引所間のM&Aを促す一つの要因だ。
2007年までは上場銘柄の時価総額が増えていたので、そこからの恩恵は大きかったと思われるが、それ以降はリーマンショックのおかげもあり上場銘柄の時価総額合計は減っている。
それにもかかわらず高い収入状況を維持できたのは、一つには売買回転率が高かったことにある。株価が下落すると投資家は損をするが、証券取引所はそれだけ売買量が増えるため、1人で潤うわけだ。
実際、証券取引所の利益率をみると、比較的利益率の高い産業といえるであろう。
このような収益右肩上がり、そして高い利益率の一つの要因としては、各証券取引所がそれぞれの地域や国においてほぼ独占企業であることが挙げられる。
しかし、PTS(私設取引システム)やECN(電子証券取引ネットワーク)などの電子私設市場が登場し、既存証券取引所のシェアは少しずつ奪われ始めている。
今後も同様に証券取引所が独占状態を維持できる保証はない。むしろ今後の経営環境は厳しくなるだろう。
また、証券取引所による上場企業および投資家の争奪戦も激しくなると思われる。従って、今後も勝ち組でありつづけるためにM&Aを模索するというのが一つの流れである。
■海外取引所の一部は現物株よりデリバティブで稼ぐ
では、世界の主要取引所の収益内訳はどうなっているのだろうか?
各取引所によって収益の細分化の仕方が異なるため、取引所間の収益内訳を完全に横比較できるわけではないが、たとえば、ドイツ証券取引所やシンガポール証券取引所は収入の大半をデリバティブとクリアリングで稼いでいる。
現物株のトレーディングによる収入は10%以下である。現物株よりもデリバティブのほうが証券取引所にとっては利益率は高いため、今後はよりデリバティブの重要性が高まると考えられる。
※たとえばNYSE EuronextやNasdaqではクリアリング収入はトレーディングやデリバティブに含まれており、クリアリングのみの収入が公開されていないため、データ上はゼロに見えるが実際はゼロではない。東証のデリバティブ(金融派生商品)や大証のクリアリング(金融商品の清算・決済)がゼロに見えるのも同様の事情であり、ゼロではない
その点、デリバティブに強い大証が、規模の大きい東証よりも、自身の価値を高く評価しようとしたのは理解ができるし、現物の東証とデリバティブの大証の組み合わせは経営安定化策には寄与すると思われる。
■勝ち残るのは「デリバティブの収益が多い証券取引所」
さて、今後はどういう証券取引所が勝ち残るのであろうか。
大証をはじめ、世界的に多くの証券取引所が上場をしているが、過去5年間の株価の動きを確認してみると、香港とシンガポールの株価パフォーマンスが比較的良いことが見て取れる。
ともに高い利益率を維持し、シンガポール証取は先ほど見たようにクリアリングとデリバティブで大半の売り上げを稼ぎ、香港証取は中国をはじめとする海外銘柄の取り込みで成功している。シンガポール証取でも上場企業のうち2割は中国企業が占め、中国以外の海外企業も2割存在する。
これからは先進国ではなく、経済成長著しい地域から上場企業を誘致し、そして、デリバティブによる収益の下支えが重要ということになるだろう。
その点、今回の東証と大証の経営統合はデリバティブ強化には手を付けたと言えるが、次はやはり海外市場をどう取り込むのかが重要な課題である。
国内の個人投資家にとっても魅力的な海外モノに投資しやすい環境となれば喜ばしい。今回の経営統合はあくまでも通過点であって、これからが本番というのが投資家や上場企業のホンネではなかろうか。
Posted at 2011/11/25 18:48:30 | |
トラックバック(0) |
企業動向(企業再編) | 日記